IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜買われた少女の物語〜   作:アリヤ

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待たせてしまって申し訳ございませんっ!!

投稿する暇がなかなか見つけられず、なんとか投稿できるようになりました……


第二十三話

『E-13地区内にて爆発音が発生!! 繰り返す――』

「……なっ、一体どうやって侵入をっ!?」

「スコール、これは流石にまずいのではないかっ!?」

 

 オータムと別れたスコールとMは、アジト内に侵入者が居たということに驚いていた。

 シュヴァルツェ・ハーゼだけでスコールが率いる亡国機業のアジトを舐めているのかと思ったが、シュヴァルツェ・ハーゼ以外に単独行動をしている人間がいるという話であれば変わってくる。しかも、スコールたちにとってその場所はあまりにも危険だった。

 E-13地区は十分程度前に通り過ぎた場所で、そこまで侵入者に気づかれなかったことに驚きだった。監視カメラがあるというのに、侵入者の存在を今まで知らなかったのだから、驚くのは当然だった。

 

「……兎に角急ぐわよ。非常通路に来られる前に脱出するわ!!」

「解ってる!!」

 

 急がなければ追いつかれると思ったスコールとMは、走って目的地である非常通路の入り口へ向かった。スコールとMが逃げ切らなければ、オータムをわざわざ残した意味がなくなってしまう。他の亡国機業の人間の為、そしてオータムの為にも、絶対に逃げ切ってみせると――

 

「っ、見えたわっ!!」

 

 走っていると、目的地の非常通路の入り口にたどり着いた。入り口付近には非常通路からの侵入、もしくは侵入者が非常通路へ行かせないように、亡国機業の人間が待機していたが、スコールの姿がこちらに近づいてきていることに驚いていた。

 ここにいる二人はスコールと同様に、先ほど起こった爆発音で、確実にこの場所に向かっている可能性が高いと気づいたが、何が起こっているのか理解しきれていなかった。

 

「スコール様、一体どうなって」

「詳しいことを話している場合ではないということくらい解りなさい!! 私達は今すぐ非常通路から脱出するけど、あなた達二人はこの非常通路を閉鎖しなさい!!」

「し、しかし他の人間が――」

「そんな悠長なことを言っている場合ではないわ!! 確定情報ではないけど、爆発音がした時点で何人か殺されているでしょうから、さっさと命令されたことをしなさい!!」

「りょ、了解!!」

 

 スコールに命令された二人の亡国機業の人間は、スコールとM、そして自分たちが非常通路の入り口から入り、非常通路の入り口を封鎖するように操作した。

 すると、ゆっくりとシャッターが降りてきて、一分程度で閉めることができた。

 

「ふぅ、とりあえずこのシャッターがあれば時間稼ぎにはなるでしょう。とりあえず急ぎましょう。あなた達二人もついて来なさい」

「わ、分かりました……」

 

 スコールの言葉に二人は従い、そのままスコールの後についてくることにした。

 状況が解らないが、何者かが侵入してきて、スコールとMがアジトを捨てて逃げようとしていることは理解できた。スコールが逃げるということは、相手はとんでもないということくらい想像できるし、いつもスコールと共にいるオータムの姿が見えないことから、非常事態といえるだろう。

 

「後それから、この先にある、非常用シャッターも一つ一つ閉鎖しなさい」

「わ、解り――」

『E-25エリアにて、非常用シャッター最終防衛が破壊、これより全ての非常用シャッターを作動させます。また、隣接するシャッターの管理権限は危険因子を取り除くまで解除出来ないようにロックします』

「っ!? まずい、次のシャッターが閉まる前に通り抜けないと!!」

 

 E-25エリアの非常用シャッターというのは、先ほどスコールが二人に命令して閉めさせた非常用シャッターのことで、スコール達はその場所から既に七分ほど走っていた。要するに、こちらに向かって来ていることを意味していた。

 そもそも非常用シャッターは爆発にも耐えられるような構造になっていて、たとえISが部分展開したIS兵器であろうと耐えられるほどの性能があった筈なのだ。それをいとも簡単に破壊されしまったとなれば、もはや非常用シャッターは邪魔物でしかなかった。

 次の非常用シャッターまで一分も掛からないところにあり、既にスコール達がいる所から見えていたので、その非常用シャッターが完全に閉鎖する前にくぐり抜けた。

 くぐり抜けられなかった場合、非常用シャッターに隣接している非常用シャッターなので、スコールの権限ですら開くことが一時的に出来なくなり、敵に絶対に追いつかれてしまうからだ。

 しかし、次の非常用シャッターを開けるまでに、今通り抜けた非常用シャッターが壊されたら、次こそ閉じ込められてしまう。だから悠長にしている場合ではないと考え、スコールはこの場にいる三人に急ぐようにと促した。

 

「急いで次の非常用シャッターを開けるわよ!! 開ける前にこの非常用シャッターが破壊されたら逃げ場がなくなる!!」

 

 ISを使えば急いで脱出することが可能だが、この非常通路はISが移動できる程の大きさを持っていなかった。ISがなかった時代から存在していた非常通路なので、ISが通り抜ける想定がされていなかった。

 スコール達はなんとか次の非常用シャッターまでたどり着いたが、すぐにスコールのセキュリティーカードで一時的に解除して非常用シャッターを開けた。非常用シャッターが破壊されたことによって、非常用シャッターを解除できるのがスコールのみとなってしまったからだ。

 非常用シャッターが開き始めたのを見て、すぐにスコール、Mという順番で完全に開いていない状態で通り抜けたが、三人目が通り抜けようとしたときに、放送が入った。

 

『非常用シャッター第三防衛が破壊されましたので、非常用シャッター第二防衛をロックします』

「っ!? 急ぎなさい!!」

 

 スコールに言われてなんとか一人は通り抜けることができたが、開こうとしていた非常用シャッターが閉まってしまい、一人を取り残してしまう結果となってしまった。この非常用シャッターは先ほど放送で言っていた非常用シャッター第二防衛だったので、たとえスコールであっても解除する事が出来なくなっていた。

 

「私のことは気にせずに行ってください!! こうなってしまった以上、私が助かる可能性はありませんから――」

「……そう言ってくれたのは助かるわ。でも、ごめんなさい」

 

 非常用シャッターによって閉じ込められた一人は、スコールが後悔させないように伝えた。スコールも解っていたことなので一言誤り、スコールを含めた残り三人と一緒に逃げることを最優先にした――

 非常用シャッターを開けなければならないのは残り一つで、それさえ開けることが出来れば、時間を取られる必要はなかった。残してしまった一人が侵入者に対抗して、多少でも時間を稼いでくれたらロックされる前に開けられる可能性があった。

 しかし、非常用シャッターが何とか開けられたところで、危機が迫っていることには変わりがないだろう。非常通路を抜ければ近くにある島の森に抜けられるように造られ、その島に隠してあるボートで脱出することで、ようやく逃げ出せるような形になるため、それまでに侵入者に追いつかれないかという心配は残っていた。

 さらに言えば、この非常通路が侵入者に知られている時点で、ボートの存在を知られている可能性だって考えられた。そうなればISによる脱出を試みるしかないが、そうなればシュヴァルツェ・ハーゼにも気づかれるだろう。ほぼ積みかけているけども、可能性を信じて逃げるしかなかった――

 

「っ、見えたわ!!」

 

 最後の非常用シャッターが見えると、スコールはすぐさまセキュリティーカードで非常用シャッターを開いた。ここに来るまで繰り返したように、完全に開く前にくぐり抜けるような形で、スコールを含めた三人は通り抜けた。そしてそのまま非常通路の出口が見えたので、そのまま突き進んでいった。

 

『非常用シャッター第二防衛が破壊されましたので、非常用シャッター第一防衛をロックします』

 

 その放送が聞こえたのは非常通路の出口を開いた頃で、また第二防衛が破壊されたということが何を意味しているのか理解できてしまった。

 

「……このまま森の中に隠れるわ。ボートで逃げたとしたら、自分の居場所を言っているようなものよ」

 

先ほど置いていったしかし悲しんでいる場合でないことに変わりがなく、とにかく今は見つからないようにすべきと森の中に隠れることにした。

 すぐにボートに乗るという選択肢もあるが、相手がIS所有者であれば逃げる意味もないと感じ、森の中で行方を眩ませる方法がよいと考えていた。しかし、これも逃げ切ったといえるものではなく、単なる様子見にしかならなかった。

 

「……この辺りに居ましょう。見つかるか変わらないけど、一旦作戦を練り直さなければ逃げられなさそうだから」

「しかしスコール、これからどうするんだ? ここまで来たら逃げる方法なんてボートしかないが……」

「Mが言った通り、逃げる方法はボートしかないわね。ISを使うなんて見つけてくださいと言っているようなものだから、ボートという選択肢しかない。けどそのまま逃げでも気づかれるでしょうから、今考えているのはどうにかして相手を欺かせる方法よ。それでなければ逃げられないでしょうから――」

 

 スコールが大雑把に伝えると、Mは既にスコールが何かしらの策があるのだろうと予測できた。そのため、勿体ぶっている場合ではないと考えたMは、すぐにスコールに方法内容について教えるように促した。

 

「それで、何か策はあるのか? その言い草からして、一つくらいあるのだろう?」

「……よく解ったわね。私が考えた方法は、誰も乗っていないボートで欺かせ、その間に逃げるようなことをするとかね。だけどそれだけでは危ういから、誰かが犠牲になる方がありがたいのだけど、これ以上犠牲を出したくないというのも本音ね」

「……なるほど、この方法だと誰かを犠牲にすれば可能性が上がるから、スコールは言いにくそうにしていたのか。しかし、手段を選んでいる場合ではないから、犠牲にするとしてもしないとしてもこの方法にすべきだ」

「……そうね、そうしましょうか」

 

 とりあえず手段は決まったが、今度は誰かを犠牲にするかしないかという議論になってしまった。この中で犠牲にするとしたら一人しか居ないのだが、その事を伝えることはあまりにも酷なことでなかなか言えなかった。しかし、何かを感じ取れたのか、スコールが犠牲にしようとしていた彼女が、自ら名乗りでた――

 

「……私がその囮をしますよ。確実に生き残れる人が一人でも居た方が、殺された仲間のためでしょうから」

「けど、それがどういう意味をしているか解っているの!?」

「解っていますよ。だからスコール様が悔やむ必要はありません。自らの意志で犠牲になるのですから――」

 

 彼女の目は覚悟をした目をしていた。たとえ自分が死ぬことになろうとも、スコールとMを絶対に逃がすという程の覚悟を――

 

「……解ったわ。せめて、あなたの名前だけ教えてもらえるかしら?」

「エフィリナ……エフィリア・フェリスです」

「エフィリア・フェリスね。名前を覚えておくわ」

 

 彼女――エフィリア・フェリスの覚悟を聴いたスコールはエフィリアのためにも、絶対に逃げてみせると覚悟を決めた。最低でも、Mか自分が生き残ってみせると――

 

「それでは、行ってきます!!」

 

 エフィリアの顔は笑顔で、これから死に行くというのに笑顔を見せるとは思わず、スコールが泣きそうになっていた。

 そして、エフィリアは自分の任務を遂行させるために、スコールとMから離れていくのだった――

 


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