ということで学園艦内で一番美味しいと評判の肉屋にやって来た。
「コーチ、ここって高いんじゃ・・・」
「あの、私お金ないですよ」
「や、やっぱり他の店に」
「美味しいものならなんでもっていいましたけど、流石にこれは高すぎます」
華のJKが支払うにはちょいと厳しい値段の店と言うこともあり、全員顔が青い。
「大丈夫だって、俺のおごりだから。気にせずジャンジャン食べようぜ」
「でも、流石にそれは・・・」
「だぁぁぁぁ、もう気にすんなっていってんだろ。飲み物はなんだ?」
「「「「ウーロン茶でお願いします」」」」
ほんと息ピッタリだな。
「すみませーん、ウーロン茶五つ、カルビ、骨付きカルビ、ハラミ、ステーキそれぞれ三人前」
「はいよー」
簡単に注文を済ませて一息つく。
「「「「・・・・・・」」」」
そして、四つの視線が俺を刺す、
「なんだよ、そんな見つめてきて」
「いや、なんで私達の好きな肉をしってるのかなって」
「一回もおしえたことないんですけど・・・」
「まさかストーカーですかッ」
「そうなんですかッ」
「ちげぇよ馬鹿ッ」
皆様に納得してもらいたいがために一応いっておくが、俺はストーカーではない。
生前、見た彼女らの設定の中でこの四種類の肉がそれぞれ好物だと書いてあったのを覚えていただけである。
ちなみに、佐々木の場合は正確にいうとステーキではなくニューヨークステーキだったりすのだが・・・
「でもやっぱりおかしいぞ。私達は一度も自分の好物なんて教えたことがないはずだ」
「やっぱりストーカーですか」
「見損ないましたコーチ」
「・・・・・・」
あの、河西さん。無言が怖いよ。
「違うって言ってるだろ。俺がこの四種類の肉が好きなだけだ。というより、そんなこといってると奢らないからな」
「「「「すみませんでした」」」」
「素直でよろしい。まぁ、あれだしいて言うなら俺が俺だからだ」
「「「「なるほど納得しました」」」」
このやり取り前もしたような気がする。デジャヴだな。
「それで、十六夜の中学時代ってどんなんだったんだ?」
「あ、あぁ、純粋にバレーボールを楽しんでいるお前らにとっては少々ショッキングな内容かもだけどいいのか?」
「え、えぇ、少しでもコーチのことをしっておきたいですし」
「私も聞きたいです」
「コーチほどの人だったらきっとすごい選手だったんですよね」
とまぁ、こんな感じで四人の目はずっとキラキラしてる。
「そうだな、どこから話せばいいやら・・・」
こうして、俺はちょっとした昔話を始めた。
そう、あれは中学に入学して始めの頃にバレー部に入部した初日の話だ。
俺の他に入部希望者は五人おり、二、三年生は合わせて七人ほどいたんだ。
まぁ、入部して初日ということもあり、俺達一年生は簡単な練習に参加したり、見学したりしていたんだ。
そんで、入部して少し経った頃に事件は起きた。
いや、事件ってほどでもないけどな。
一年生対二、三年生で練習試合をしたんだ。
俺たちは六人で交代しながら練習試合をしていたのだが、結果をいうとボロ勝ちした。
詳しい点数は覚えていないがたしか半分以上差があったな。
まぁ、一年に負けた二、三年生はプライドがボロボロになりますわ。いやがらせをしてきますわという風にドンドン嫌がらせが増えてきたんだよな。
三年が引退したあとは二年生が五人しかいないということもあり、俺達の中からレギュラーが選ばれたんだが俺だった。俺はリベロとして試合に出ていたのだが、二年生は未だ嫌がらせを続けてくるわ。同級生も自分たちと俺との実力差に嫉妬して嫌がらせをしてきた。
こんな日々が続き、俺は怪我したといい、レギュラーから抜けて卒業前のあの状態までいったわけだ。
簡単な説明を終えると四人は涙を流していた。
「そんなッ、コーチは何も悪い事してないじゃないですかッ」
「そうですよ、自分たちの実力不足をコーチの所為にするなんて最低です」
「十六夜はそれでもバレーを続けてたんだろ。それだけバレーが好きなのになんでッ」
「そいつらどこですか、ちょっと私が絞めてきます」
近藤、佐々木、磯辺は俺は悪くないといってくれた。河西さん、絞めるってアレだよね、物理だよね。やめてよ、怖いよ。目つきヤバいよ。いつもの君に戻って。
「俺の昔話はこれで終わりだ。別にあいつらだけが悪いってことはないさ。俺もいやがらせには倍返しで返してたしな」
そして思い出すのは体育館内クレーター出現事件。
あのときはほんと校長に何度呼びつけをくらったことか・・・
「でもまぁ、お前らみたいに一生懸命、我武者羅にバレーに取り組んでる奴が近くにいたら中学はもっと楽しかっただろうな」
自然と笑みが零れるのが自分でも分かるくらいに俺の表情は緩んだ。
その場は重苦しい雰囲気に襲われたかの如く静まる。
四人を見たらなんともいえない顔をしているあと、室内が高いせいか、頬が若干火照っているように見えるので実にエロい。いや、なんでもない。
「さて、肉も焼けたし。食うか」
結局あのあと、追加でカルビ、骨付きカルビ、ハラミ、ステーキをそれぞれ二人前ずつ追加で頼み、塩タン三人前を頼んで腹が膨れた俺達は店を出て家に帰っている。
「ごちそうさまでしたコーチ」
「ごちそうさま。練習の手伝いまでしてもらったのにごちそうにまでなってほんと悪いな」
「ということでこれからもご指導よろしくお願いします」
「お願いします」
「そうだな、暇なときは練習の手伝いするか、なんなら試合とかもしたいな・・・」
店を出ると既に真っ暗になっており、女の子だけで帰すのは危険だと思い。俺は四人を送るために全員の家を回ることにした。
「その、送らなくても大丈夫ですよ」
「そうですよ、ごちそうになっただけで終わらずに家に送ってもらうなんて」
「優しすぎますよ」
「も、もう大丈夫だぞ。ここからは私達だけでも帰れるから」
「そうですか、じゃあバイバイっていうとでも思ったか。ばぁ~か、お前らみたいな別嬪さんは俺みたいな悪い男が誘拐しちゃうんだぞ。分かってるのか、お前らの容姿がかなり整ってること」
「「「「なっ」」」」
全員顔がポンッと赤くなり下を向く。
「ヤハハ、可愛いな。でもまぁ、やっぱり女の子一人で帰らせるのは男として気が引けるんだ。
ということで、コーチ命令、おとなしく送られなさい」
四人の家はそれぞれ近くらしく、いつも四人で帰っているらしいのだがやはり女の子だけで返すのは不安だ。
そういうことで、送っているのだが・・・
「コーチって何が好きですか?」
という質問を佐々木にされた。
「好きってどういう風にだ?」
「そうですね、食べ物とか色とか、趣味とか戦車とか、あと女の子とか・・・」
「そうだな、好きな食べ物は父さんの作った料理全般。好きな色は特にない。
趣味は読書と鍛錬、好きな戦車はあんこうチーム、カメさんチーム、アヒルさんチーム、ウサギさんチーム、カバさんチームが乗ってる戦車」
「そうなんですかッ」
「あぁ、みんなが頑張って乗ってる戦車が好きなんだ」
「やけに今日は随分と臭い台詞を吐くな」
「ヤハハ、事実だって。お前らが頑張ってるから俺達歩兵はサポートするんだ」
「じゃ、じゃあ女の子は・・・」
「俺がいうと思うか?」
「思いません。だ、だったら好きなタイプとかッ」
「俺が好きになったらそれがタイプだ」
「そんなあいまいな答え何て認めませんッ」
やけに近藤がしつこいな。
ってか、よく見ると他の三人もうなずいてるし
「さぁ、十六夜よ吐くのだ」
「コーチ、素直に吐きましょう」
「そうですよ、さぁ、さぁ」
「わぁーったよ、わかりましたよ。俺の好きなタイプは特にない。強いていうならその子にしかない魅力に惹かれる以上。これ以上の質問は受けつけません」
というかさ、武部にもおんなじ質問されたよな。なんでだ?やっぱり年が近い異性のタイプは気になるのか?
「なるほど・・・では、私の魅力ってなんでしょうか?」
河西がモジモジしながら近づいて来て聞いてきた。
「なぁ、それ本人の前でいったら告白だって分かってるよな?」
「それくらいでは告白にはなりません」
「なっ、だったら私の魅力?」
「コーチ、私の魅力も教えてください」
「そ、その私も・・・」
そこからは、何一つ答えなかった。ただたんに恥ずかしかったからだ。
しかし、口にはしないが、彼女らの魅力といえばやはり一生懸命なところだろう。
個人の魅力でいえば、磯辺はチームを纏めるリーダーシップ見てる側までもがついていきたくなる。
近藤はムードメーカーでいてくれるだけで笑顔になれると思う。
佐々木は結構フレンドリーでノリもいい武部とはまた違った話やすさもあり、若干天然。
河西はキリっとしており凛とした雰囲気に見えるが短気かもしれないが、芯が強く、ほっとけないところがある。
うん、これだけの魅力を持ってるんだ。彼女らはきっといい人を捕まえることができるだろう。
みゃー先生みたいにはならないはずだ。
次回からアンツィオ編へ突入したいです。
にしてもみゃー先生・・・頑張れ