本日三話目です。
さて、ちょっと油断してしまった結果、俺はヨーヨーで拘束されてしまった。
全くなさけねぇな、師匠に見られてたらなんていわれるか・・・
「私が煙草吸ったことないのがそんなに意外だったかい?」
「ま、まぁな、体中から煙草の臭いがするもんだからな。それよりこれ、ほどいてくれないか?」
「やだね、折角、捕まえたんだ。うちの舎弟ども可愛がってくれたわびも入れないとね」
身動きの取れない俺を見ると普段うちの家族(きよひーなど)が向けてくる視線に似たようなものを向けてくる。姐さんに背筋がゾクッとした。
「ハハハ、こうなりゃ袋のネズミだ」
絶対絶命だとおもわれたときだった。
「ちょっと、あんたたちやめなさいよ」
今まで扉の近くにいたそど子が俺の前に立つ。
「アンッ、あんたはすっこんでな」
そういってそど子を殴ろうとする。
「はいストップ」
ヨーヨーの紐を引きちぎりそど子の前へとたち姐さんの拳を受け止める。
「俺を殴るならまだしも、そど子を殴るのは見逃せねぇな」
「なっ、あんたどうやって抜け出したんだい」
すぐにヨーヨーを見る姐さんは紐が千切れていることを確認すると表情が一気に変わる。
「最初っから逃げられたってことかい」
「まぁな、平和的解決をしたかったんだが、こうして手が震えてるにも関わらず俺を守ってくれたそど子が殴られるって思ったらいてもたってもいられなくてな。もう一度いっとく、降参しろ」
「だから嫌だっていってるだろ。どいつもこいつも私が女だからって手を抜きやがって」
急に雰囲気が変わりヒステリックに叫び出す彼女から一度離れる。
「サンキューそど子、こっからは油断しねぇからそこでじっとしてろ」
「え、えぇ」
まだ震えている手をしっかりと握ってやり、頭を撫でる。
「さぁて、俺も本気だすけど許せよ」
「はん、私のヨーヨーは二個だけじゃないんだよ、いけっファ〇ネル」
新しいヨーヨーを四つ取り出すと片手に二個ずつもって同時に投げてくる。
「ほらほらほらッ」
神業ともいえるほどに美しく円を描く四つのヨーヨーに素直に関心する・・・が
パシッ
「なっ」
「残念、この程度の速さじゃあ止まって見える」
四つのヨーヨーを掴み一瞬で距離を詰める。
彼女の瞳をジッと睨み軽く脅す形で最終忠告をした。
「これが最後だ、降参しろ」
「・・・わかった。私の負けだよ。あんたの名前は?」
「さっきいったんだがな、逆廻十六夜だ。あんたは?」
「鳴瀬アキラ」
「おっけー、それじゃこっから出て行け」
「十六夜ね、覚えた。絶対リベンジしてやるからな。今度は違うところで」
「はいはい、リベンジはいつでも受けるが他人の迷惑になるようなところではやめてくれよ」
「わかった」
そういって、彼女たちは部屋から出て行った。気絶している男共は俺が担いで投げ捨ててやった。
「ふぅ~、しっかし、汚ねぇな」
彼らが出て行った後に残っているのは煙草の吸殻に酒の瓶や缶。
「片付けするから手伝えよそど子」
「え、えぇ。分かってるわってじゃなくてそど子って呼ばないで」
「はいはい、じゃあみどリんな」
「それもやめなさい」
「分かりましたよ園先輩」
「分かればいいのよ」
俺とそど子はこの散らかった部屋を片付ける。
「別に掃除まで手伝わなくても良かったのに」
「帰りはどうするんだよ。また絡まれるぞ」
「・・・そうね、ありがとう」
「どういたしまして、俺のほうこそありがとな」
「私がいなくても変わらなかったでしょ」
「それでも、身を張って助けようとしてくれたんだ。でも、次からは気を付けろよ。いっとくが、俺はこの世界で十本の指に入るくらいには強い男だと思う」
「まさか、といいたいところだけど、あれを見たらね」
落ちてたゴミ全てを拾ったあとは船舶科の人に任せて俺達は上へと上がった。
「今日はあいがとう逆廻君」
「はいはい、ということで報酬は忘れるなよ」
「分かってるわよ。でも、意外だったわ。無遅刻・無欠席・学年一位の成績で授業をサボっている以外、悪い事はしてないのね」
「まぁな、俺って実は冷泉よりも優等生なんだぜ」
「調子に乗らないのッ」
そど子を学園まで送ったあと、俺は自動車部へと向かった。
「ちぃーっす」
「おっ、来たな」
「今日は仕事が山盛りだよ」
「早速だけど、そこにある段ボール全部あそこに運んで」
部室に入るとすぐに仕事を与えられる。
まぁ、今日運ぶ段ボールはそこまで重たくないので楽なのだが・・・
「ふぅ~なんだか最近は自動車よりも戦車の方が整備しているような気がするな」
自動車部の部長であるナカジマが額の汗を拭いながら呟く。
「確かに、でも、自動車より整備のし甲斐があるけど」
「分かる」
「いつか履帯でドリフトしても大丈夫な戦車を作りたい」
聞いているだけでもうちの自動車部はどこかずれているように思える。
履帯でドリフトってな、まず履帯でドリフトすることがおかしいから。まずそこに気づけよッ。
「十六夜はなにかある?戦車道をしててこういう機能がほしいって思うの?」
こういう機能か・・・特にないのだが、この世界では歩兵というものが導入されている。
なにかしら新機能があった方が戦車道の試合でも面白いことができるだろう。
「そうだな、ATフィールドとか」
「それヱ〇ァじゃん。他には」
「なんかバリアっていうの?まぁ、要するにだ。うちの戦車は装甲が薄いからな。耐久値をあげたい」
「なるほど~他の戦車を見たことが無いから装甲の分厚さは分からないけど、十六夜がそういうんだったらそうなんだろうな。そっか、装甲の耐久値をあげるか・・・よし、集合ッ」
ナカジマが俺以外の三人に集合をかける。
ひそひそひそひそ・・・小声のせいで良く聞こえないのだが、俺はとりあえず頼まれた仕事である段ボールをどんどん運んでいく。
「それで、どうやってそれを作るんだ?」
「そこは、ここをこうして、ちょっとこの部分を加工すれば・・・」
「なるほど、そうすれば着脱もできるしね」
「だったら参考にDVDでも借りるか?」
「そうだね、帰りに寄って帰るか・・・」
「そうかそうか、その手があったのか・・・でも、レギュレーション違反とかになったりしない?」
「大丈夫だと思う。一応ルール内では装甲の材料を守っていれば大丈夫だって、だから材料にさえ気を付けていればこれは大丈夫」
「よし、完成するのはまだまだ先になりそうだが、少しずつ作っていくか・・・」
どうやら作戦会議が終了したようだ。
「それで、どうなったんだ?」
「ふふふ、内緒だ」
「そうそう、内緒内緒」
「まぁ聞いたらビックリするだろうな」
「少なくとも他の学校では思いつかなさそうだしね」
なんともまぁ、仲のいい四人だこと。なんだか仲間外れにされていないか?
まぁ、いいけど・・・
部活動も終了し、下校しようと思い歩いていると体育館から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「根性だ」
「せーのっ」
その声はアヒルさんチームのモノだった。
どうやらバレーの練習をしているみたいだ。というかバレー部って廃部したんじゃなかったけ?
体育館使ってるけどいいの?
「よう、こんな時間に練習か?」
「あっ、コーチ」
「コーチこそなんでこんな時間に?」
「あれ、十六夜まだ残ってたのか?」
「まさかご指導を・・・」
俺を見た途端にコーチと呼び出す一年にいつの間にか名前呼びで定着し始めた磯辺キャプテン殿がこちらに寄ってくる。
「さっきまで戦車道の練習してたんじゃなかったのか?まさか、それ終わってからずっと練習してたのか?」
「あぁ、そうだが」
「こういう時間じゃないと体育館使えないですし」
「朝練は他の部活が使って、放課後も使われるから」
「みんな帰ったあとじゃないと使えないんですよ」
すんごい明るい顔でバレーボールを抱きかかえる四人を見ていると泣きたくなってくる。
「なんでバレー部を廃部にしたんだろうな・・・」
「人数が足りないからだろ」
「だよねーもう少し人数が増えたらいいのに」
「でも、戦車道でいい成績を残せばきっとバレー部も復活するはずだ」
俺にはこの子たちの健気な姿が眩しすぎる。
俺の中学時代の男子バレー部なんてあれだったし、女子バレー部も練習そっちのけでずっとおしゃべりしてたのを思い出す。
あいつらに体育館使わせるよりこいつらに使わせた方がずっといいと感じる。
「あんまり遅くまでやって体壊すなよ」
「はい、心配ご無用ですコーチ」
「朝昼晩と三食しっかり食べて睡眠もしっかりとれば体を壊したりしません」
「勉強ももう少し頑張れば・・・」
「戦車道も楽しいし、疲れることはあっても、辛かったりしんどいことなんてありません」
ほんと、見てるだけで元気になれるな。バレー部復活できればいいな。
「よし、俺が練習に付き合う」
「「「「ほんとですかッ」」」」
「おう、その代わりヤハハ超厳しいぞ」
「「「「望むところです」」」」
体育館が使えるギリギリの時間まで俺は四人にサーブを打ったり、トスをあげたり、スパイクを決めたりと色々な練習をした。全員が目をキラキラさせて練習するもんだから俺の方が嬉しくなってきた。
「「「「ありがとうございました」」」」
「いや、俺の方こそ滅茶苦茶楽しかったぜ。俺の中学にお前らが居たらもっと楽しくバレー出来てたかもな」
「コーチの中学って・・・」
「気になるなら話してやるけど、とりあえず服着替えて飯食うか。家に来いっていいたいところだが、あいにくと今日は休みでな。なんか食べたいものあるか?」
「なんでもいいです」
「私もなんでもいいです」
「コーチが決めてください」
「私は美味しいものであれば」
難しいな・・・そういえばこの四人って肉が好きだったよな。
「よし、肉食うか」
もう少しこういった小ネタが続きますがお許しください。
本音をいっちゃえばガルパンってキャラが多いからそれぞれの交流とか増やさないといけないということでこう感じで各チームとの親睦を深めております。