オレンジペコに淹れてもらった紅茶を飲み一息ついたところで再び話は始まった。
「そういえば十六夜、やけにダージリンと仲が良いように思うのだが?」
まほがそういった。
「ふふふ、私と彼は既に恋び「違うからな」照れなくてもいいですのよ」
このお嬢様はいきなりとんでもないことをいいやがる。
いや、ダージリンの彼氏とかチョー最高じゃねと思うのだがな。
「ほう、ではどんな関係だと?」
先ほどより声が低くなったまほがジロリとこちらを睨む。
「ちょっとした顔見知りから好敵手と呼んでいいのか?」
「そうですわね、私もみほさんたちを好敵手だと思っていますわ」
「とまぁ、そんな感じだ」
「好敵手か・・・みほと戦った感じはどうだった?」
やはり姉ということもあり妹であるみほの心配はずっとしていたのだろう。
まほは生粋の西住流である。それに対しみほはというと西住流とは違ったどんな状況でも対応して相手を倒すという感じだ。
本来の西住流とは圧倒的な火力を用いて短期決戦を得意としている。
たとえ、勝利のためにどんな犠牲を払おうとも必ず勝つ!そんな流派だ。
しかし、みほの場合は仲間と共に勝つを主にしており犠牲は出さない。
簡単にいうと西住流と真っ向から喧嘩を売っているようなものである。
まぁ、そんなみほだからこそあいつらは全員ついて行ったん。だろう。
「みほさんとの試合はとても面白かったですわよ。こちらの予想通りの戦法を取ってきたとすれば急にこちらでは予想でもできないような作戦を成功させますの。戦車の性能はお世辞にもいいとはいえませんが、それを覆すだけの予測能力、対応能力、信頼関係が大洗学園にはありますわ。特に十六夜さん率いる歩兵隊はどの学園の歩兵隊よりも厄介だと私は思いますわ」
ダージリンはそんな風に俺達のことを思っていたのか。
「こちらのデータによりますと十六夜さんの身体能力は明らかにオ〇ンピック選手を大幅に上回っています」
アッサムがノートパソコンの画面をこちらに見せると棒グラフと折れ線グラフが映っていた。
「十六夜さんだけではなく大洗学園の歩兵隊は全員が高い身体能力を持っています」
次々に画面が切り替わるのだがなんと全員分のデータがあるらしい。
アッサムって絶対数学とか得意だよな。
「十六夜たちと戦ってからさほど時間は経っていないというのにこれほどのデータが取れたのか」
まほはどこか関心しているようだ。
「ふん、そんな戦い方では所詮ただの悪あがき、王者の戦いには勝てないわ」
機嫌の悪いエリカが紅茶を飲みながらそういった。
「十六夜たちのの身体能力の高さは嫌というほど理解しているが、やはりこれを見ると改めて色々と思うことがあるな」
「まほさんと十六夜さんの関係は幼馴染といったところでしょうか?」
「あぁ、そうだな。概ねそんなところであっている」
「もしよろしければ小学生時代の十六夜さんのお話を聞かせていただけません?」
「いいだろう。私が十六夜と初めて出会ったのは・・・」
ダージリンとまほは二人で俺の過去話をする。恥ずかしいからやめてもらいたいのだが止めようにもとまらなさそうなのでそっとしておく。
「紅茶のおかわりをどうぞ」
俺のティーカップに紅茶がなかったのを見てオレンジペコが再び紅茶を淹れてくれた。
「サンキュー」
「はぁ、あんたも何のんびりとお茶を楽しんでいるのよ」
突然エリカがそんなことをいいだす。
「なんだ、俺がお茶を楽しんでたらおかしいか?別にいいだろこれくらい。せっかくオレンジペコが淹れてくれたんだから」
「それよりも次の対戦相手はどうするつもりなのよ?」
「次って「おそらくアンツィオだろう」だな」
次の対戦相手はアンチョビ率いるアンツィオ高校。アニメと同じならP40も出てくるだろう。
「そうだな、アンツィオのCV33の機動力は厄介だな」
「ま、まぁ、どうせ次の戦いで負けるでしょうけど。なにか策はあるのかしら?」
ハイでましたツンデレ発言。なんだかんだいいながらみほのことを心配しているエリカだったらきっとこの文の訳はこうだろう「負けたら許さない。絶対決勝までやってこい」の筈だ。
えっ、違うって?まぁ、どうでもいいけど。
「策のうちに入るかは分からんがあいつらをノリに乗せたらだめだとは分かっている。アンチョビは他の選手になつかれているようだしな。きっとうちには手ごわい相手になるだろうな」
「そうよ、今回は運が良かっただけ。次は負けるに決まってるわ」
「やだね。どうせなら決勝まで行ってまほやお前と戦いたい」
「フンッ、そのときはボロボロにしてあげるわ覚悟していなさい」
「ヤハハ、お前らがボロボロにされるんだよ。こんとこ間違えるな」
「相変わらずの減らず口を・・・いいわ、そこまでいうなら私達が勝ったらあんたには何か一ついうことを聞いてもらう」
「ああ、いいぜ。その代わり俺が勝ったら勿論、お前も俺の言うことを聞いてくれるんだろうな」
「グッ・・・まさか変なことを」
「まぁ、それも魅力的だな。お前って美人だし。でも、そういうのはしねぇから安心しろ。強いて言うならみほと仲直りしてもらいたいんだ。それが無理ならあんこう踊りを踊ってもらおう」
「なっ、ひ、卑怯よ。あんこう踊りってあの全身タイツで踊る奴でしょ」
「そうだ。あんこう踊りを踊るかみほと仲直りするか精々俺達に負けるまでに決めておけよ」
ムキィっと声を出すエリカ。絶対勝ってやるんだからといって俺に指を指す。
一方、ダージリンとまほはというと・・・
「それでだな、そのときの十六夜ときたらだな・・・」
「そうでしたのッ・・・なるほど十六夜さんはそんな風に・・・」
まだ俺の話を続けていた。
お茶会を終えてダージリンたちと別れてから俺はまほとエリカと海辺に来ていたのだが、完全に忘れていたことがある。それは今日、冷泉のおばあさんが倒れるのだ。
大洗の病院まで泳いでいくといっていた冷泉なのだがまほがヘリを提供してくれたおかげでなんとか病院まで行けたのだ。
それが起こり、まほとエリカは学園に帰ることができなくなってしまった。
「なぁ、なんであんな早々とみほたちと別れたんだ?」
「何故って話しかけずらいだろう」
「いや、みほは「ありがとう」っていってたのに」
「恥ずかしいだろ」
「はぁ~駄目だこの姉」
「隊長を馬鹿にするなッ」
「はいはい、ステイステイっと・・・それで、今日は止まる場所あるのか?」
「・・・ホテルにでも泊まるとする」
「まほはみほの家にでも泊まればいいんじゃねぇか?」
「ちょっと、私はどうするのよ?」
「野宿しろよというまで俺は鬼畜じゃないからな。家に来るか?」
「誰があんたみたいな男と一緒の家に」
「俺以外にもいっぱい住んでるから安心しろ。しかも、飲食店だからなハンバーグ激うまだぞ」
「ハン・・・バーグ・・・ゴクリ、ハッ」
「まぁ、どうしても嫌っていうなら飯だけは奢るからホテルでも好きな所で泊ってくれ」
「・・・分かったわ」
一応納得したようでまほはみほの家に泊まり、エリカは家に来ることになった。
ちなみに、みほに連絡させようとしたがヘタレてしまったまほに代わってみほに事情を説明したのは俺だ。
エリカが家に来るといったら急に声が低くなって怖かったのだが・・・
それに、今夜は大洗に向かおうと思う。
武部が付いているとはいえやはり冷泉一人だけでは心配だ。
冷泉の両親は既に亡くなっている。
原因は交通事故、両親と別れる前に喧嘩をした冷泉はずっと後悔している。
そんな冷泉の家族はばあさん只一人だ。彼女にとってばあさんだけが唯一の血のつながりがある家族である。
きっと、ばあさんが死んじまったら冷泉は冷泉ではなくなるだろう。
普段は無口で無表情で眠たそうな彼女だが、そんな彼女でも笑顔になることはある。
甘いものを食べているときとか、いい夢を見ているときとか・・・
俺はなにをしても彼女から笑顔を奪わさせるようなことをさせるつもりはない。
次回は冷泉と十六夜のイチャイチャ回です。
冷泉も本格的に十六夜に攻略されてしまいのか・・・