途中、ちょっとしたハプニングが起きたりしますが、そこはほら
しゃらくせぇってな感じで(笑)
結局喫茶店には一時間ほどいたのだが、パフェを食べ終ったあとも美味しそうなケーキがあったので頼んでしまった。
自動車部のみんなも喜んでいたのでまぁいいだろ。
さて、次は工場に行って部品をもらうのだが、まだ三十分ほど時間に余裕があった。
特に行くところもないのでベンチに座っている。
「いやぁ、悪いね」
「ごちそうさまでした」
「でも大丈夫?大分お金かかったんじゃないの?」
「大丈夫だって、まだ貯金も大分残ってるし。たまには後輩からのお礼?も受け取っても罰は当たらないだろ」
面目なさそうにしているナカジマにそういった。
全く、食べているときはそんな素振りを全く見せないのに食べ終わるとこれか。
こいつはアレだな、ギャンブルとかで金が無くなったあとに後悔するタイプだ。
まぁ、ギャンブル何てしたことないんだがな。ギフトゲームする世界に飛んでたら絶対にすぐ負けてた。
そう考えると案外この世界に来たのは幸運だったかもな。
「ひったくりよッ」
ベンチの背もたれにもたれて空を眺めようとしたそのときだった。
女性らしき人物の声が響く。
すぐさまそちらを向くと原付に乗った男性らしき人物が高そうなハンドバッグを片手に持って慌てて走っている。
そして、その後ろには先ほどの声をあげた女性だろうか、原付に乗った男性を追いかけている。
「私、初めてひったくりの現場を見たかも」
「私もだ」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ。捕まえるのを手伝わなくちゃ」
「でもさ、どうやって手伝うのよ」
ナカジマとホシノが呑気にひったくりの現場に立ち会えたことに感動しているとスズキが声を荒げる。
犯人を捕まえるのを手伝おうとするスズキだったがツチヤの意見がごもっともであり、何もできない。
「と、とりあえず警察」
そこでスズキは警察を頼る。
「んじゃ、めんどくさいけど犯人捕まえますか」
「ちょ、十六夜どこいくの?」
「まさか、捕まえる気か?」
「原付にどうやって追いつくって十六夜なら余裕か」
「危ないよぉ」
「ちょっとばかし本気出すか。荷物見ててくれ」
俺は足に力を入れて原付の方向へ飛び出す。
俺のスタートダッシュは音速を超えて最初からトップスピードをだすがあまり早すぎても止まるのが大変なため徐々に速度を落としていく。それでも原付には余裕で追いつくのだが。
原付の横に並ぶと犯人はこちらを見て驚いている。
当たり前だ。普通の人間が原付に走って追いつくわけがない。
俺が異常というか十六夜が異常なのだ。まぁ、サーヴァントも異常だが。
「ほらよっと」
犯人の進む先に回り込み、犯人が突っ込んできたところをラリアットを決めて原付から落とす。
運転手のいなくなった原付は暴走して走り出すが、俺が横から蹴りをかまし転倒させる。
「よう犯人さん。今日の俺は機嫌が良かったんでな。なんとなく捕まえてみたんだが」
犯人に話しかけるがどうやら気絶しているらしく反応がない。
女性から奪ったであろうバッグを取り返し一度犯人をそこへ放置するとすぐにバッグを取られた女性とホシノたちがやって来た。
「はぁ、はぁ、はぁ、ありがとうございます」
「いえいえ、気が乗っただけですから。バッグってこれですよね。どうぞ」
女性の年齢は二十代後半ほどの人でみゃー先生より若干若いかなってくらいだと思う。
「無茶したら駄目だよ十六夜君」
「大丈夫だって、なんたって俺だぜ」
「おうおう、流石十六夜だぁ。ヒーローみたいだな」
「原付に追いつけるお前はもうオリンピック選手にでもなればいいんじゃないか?」
スズキ以外はなにも心配はしていないようだ。
まぁ、散々と俺が異常なところは見せているからなのだが。
それでも心配してくれるあたりやはりスズキは天使だ。異論は認めん。
「なんとお礼をいったらいいのか」
「お礼なんていりませんよ」
「でも、それじゃあ」
「大丈夫ですって」
「珍しく十六夜が敬語だ」
「十六夜の敬語って入部するときの挨拶くらいじゃない?」
「そういえばそうかも」
気色の悪い敬語を使う俺が新鮮なのだろう。
「この、化け物がああああ」
その場から離れて先ほどのベンチに戻ろうとしたとき、気絶していた犯人が大声で叫び出しホシノに突進する。
その手には光が輝く何かがあり、形状を見ると包丁だった。
「えっ」
ホシノは突然のことに動けなくなっている。
他のみんなも同じだ。
「死ねぇぇぇ」
そしてホシノと犯人との距離がゼロとなる。
「なぁ、お前・・・なに俺の先輩に手ぇ出してんだ?」
ゼロとなる直前に俺がホシノと犯人との間に入り込み犯人の振りかざしていた包丁を二本の指でとらえる。
「ば、化け物ぉ」
「んだよ、気でも狂ったか?化け物ってなぁ、失礼なてめぇの振りかざした包丁が遅すぎただけだろ。
こんなノロマな攻撃じゃ赤ちゃんでも避けれるぞ」
怯えた犯人は包丁を両手で持って力を入れる。
「ノロマなうえに力もない。まったく情けないなぁ」
そろそろ面倒なので包丁の刃を折る。
パキンと綺麗な音を奏でた包丁の刃は地面に落ちる。それと同時に犯人も腰を抜かす。
「ひったくり程度なら俺もとやかくいったりはしない」
犯人の顔に俺の顔を近づけて睨みつける。
フルフェイスのヘルメット越しにでも犯人の目が怯えていることが分かる。
「俺の大事な先輩に手だして只で済むと思うなよ・・・コロスゾ」
ビクっと全身を振るわせて再び気絶する犯人。
「はぁ、久しぶりにキレたかも」
「い、十六夜?」
「ホシノの方こそ大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
「今度こそ警察の到着だな。ってそれより時間は大丈夫か?」
「時間って・・・ヤバいッ」
「忘れてた」
「早く戻らないと」
「走れば五分で着くからみんな急いで」
犯人の身柄を軽く拘束して原付に括りつけて放置する。
警察の人には女性の方から話をしてもらうことにして、俺達は工場に向かう。
そこまで離れてはいないはずだから今ならまだ間に合うはずだ・・・
「セーフ」
「「「はぁ、はぁ、はぁ」」」
四人とも息切れを起こしており膝に手をついている。
「こういうときって後輩は先輩にタオルとスポーツドリンクでも渡せば良いのか?」
「な、に、いって、んの」
「いや、ひ、久々に、はしったぁ」
「でも、間に合った、よ」
「大丈夫かい?」
そんな彼女たちを見た工場の人は心配してくれている。
こうして、無事に戦車の部品を受け取った俺達はヘリで学園艦に戻って学園で戦車をリペアすることになった。
徹夜は確定し、俺も珍しく履帯のメンテを手伝った。
「頑張ってるぅ十六夜ィ」
「おっ、アストルフォか。どうしたんだ?」
「エミヤが晩御飯だって、みんなで食べてねって」
「サンキュー助かる」
日も落ちて真っ暗となったごろにアストルフォが重箱を持ってきてくれた。
アストルフォは来月からこの学園に編入する予定だ。
何故今まで通っていなかったかって?俺が入るまでは女子高だったせいだ。
一つ上のアストルフォはギリギリ入れなかった。容姿だけならいけそうだが・・・
「十六夜のお姉さん?」
「違うよ。僕はアストルフォ。十六夜の兄だよ」
「へぇ、お兄さんなんだ・・・えっ、ウソ」
「明らかに女性に見えます」
「流石にその嘘にはだまされないよ」
「残念だけど男だよ。エッヘン」
アストルフォの美少女のような外見で男と言い張る彼を見て自動車部は困惑する。
「こんな可愛らしい格好してるが俺の一つ上でちゃんとした男だ。女装は趣味らしい」
「趣味って、まぁ、そうともいうかな」
「あっ、そうだ。これ帰ったらみんなに渡しといてくれ」
「なにこれ」
「お土産、袋に名前が書いてるから一人ずつ渡してくれ」
「オッケー。ありがとう十六夜」
「気にすんな。エミヤにも言っておいてくれ。弁当ありがとうって」
「じゃあ、僕は帰るね。あんまり無理しちゃ駄目だよ」
「分かってるって」
とまぁ、こんな感じでアストルフォが自動車部にきたことで軽くカオスな展開にはなったが、なんとか翌朝までに戦車を全てリペアできた。
そこで俺は思った。やっぱりこの部活は何かおかしいと・・・
ようやく動き出す戦車。
やっとここまで来たよ。
次回、ライダー大量発生
ではまた次回お会いしましょう。
せーの!パンツァーフォー