鎮守府憲兵隊の事件簿   作:文月蛇

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皆様、お久しぶりでございます。

やっとこさ投稿です。

アニメに感化されたって?

その通りでございます!←










第四話 提督育成計画(仮)

 

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府は歴史ある施設である。それは幕末の開国から遡る。大日本帝国海軍の主要軍事基地であり、そこに司令部が置かれるのは当然の既決とも言える。新旧様々な建造物が立ち並び、海軍の将校や下士官、または兵士がひっきりなしに歩く。

 

施設では極秘施設など、普通の職員であろうとも入れない場所が存在する。言ってしまえば、許可無くそこに入ると軍規に触れた者として拘束されて、軍法会議に掛けられるのである。軍事機密としてもレベルが高いその場所にいつものように甲高い悲鳴が響き渡った。

 

 

「キャアアアアアアアアァァァァ!!」

 

軍事機密のあるエリアは基本的立ち入り禁止である。例え、そこからか弱い少女の悲鳴が聞こえたとしても原則立ち入って良い物ではない。でも、そこを通る職員は聞こえてしまい、驚いたような顔をして行く訳なのである。他にそれを聞いた佐官や将官あたりになると「またやってる」「おれも彼処へ!」と羨望と侮蔑の視線を交えながら行くわけで。区画を守る警備兵からしてみれば、胃薬が幾つあっても足りないわけである。

 

「ここってさ、音通らないんだよな」

 

区画の出入り口を守る警備兵は横にいる同僚に声を掛ける。

 

「ああ、お偉いさんがここの子供達の声を聞こえないようにしたとか」

 

「しっ!声が大きい」

 

ここにどのような人物が住んでいるのかということは門外不出の情報である。警備兵は立場上知る訳なのだが、万が一漏れた場合は首が飛びかねない。若しくは、辺境の地へと送り出される可能性も考えられる。自身の失言を認めるように口を手で塞ぐ兵士は同僚に先ほどの答えをもう一度伝えた。

 

「壁は防音にしてあるし、窓にも二重の防音窓が採用されている。まあ、この場合はあれなんじゃない?」

 

彼らはこの区画内にある憲兵の詰め所を思い出す。人当たりの良い4人の憲兵達。彼らは彼処で何をしているのか。出来れば、あんな仕事はしたくないと首を振った。

 

 

警備兵がそんな悠長なことを言っている間、艦娘のいる中の区画ではとんでもない痴態が繰り広げているなど、彼らが知るよしもなかった。

 

 

 

「落ち着け!俺は赤城のお尻を触ってないんだからな!加賀、その南部を下ろせ!」

 

「無理ですできません承服不可能ですあなたを蜂の巣にしないかぎり私の怒りはおさまりません」

 

「うわわぁ、私の次に赤城さん。正妻の加賀さんがいるのにぃぃぃ」

 

「羽黒落ち着いて、提督ぅぅ?ちょっとお話(物理的な)しましょうか」

 

そこには涙目の赤城と無表情で息継ぎもせず、自分のやりたいことを言い切った南部拳銃を構えている鬼神加賀と赤城と同じく被害者の羽黒。そしてその姉である足柄の手には海軍でも悪名名高い精神注入棒が握られていた。

 

「さーて、提督。処女航海しますか?艦娘のお尻が好きそうですから、これを刺して行けばよろしくて?」

 

「足柄おちつけって・・・。あ、そうだそうだ。今度エリートづくしの合コン連れてってやるからさ!」

 

「・・・くっ、ケッコンカッコカリで正妻の加賀に同じようなこと言ってご覧なさい?」

 

「あの・・・はなせばわかる?」

 

「問答無用」

 

ここは首相官邸でもなければ、提督にふさふさの髭が生えているわけでも、名字に犬がいるわけでもない。ただ、海軍将校に対して艦娘が同じような台詞を言うなんてどんな当て付けだろうか。

 

一方、止めようとしていた憲兵であったが、割って入れば南部を発砲しかねず、よく見てみれば某BB弾で撃つ精巧なエアガンであるため危険はない。しかし、足柄から譲渡された海軍精神注入棒を持っていて戦艦並みに火力が増強されていた。

 

「もうやだ、この軍」

 

その光景を見ながら、憲兵の剣崎軍曹はため息を付きながら頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

海軍には元々憲兵は存在しない。日本の憲兵とは一般的に陸軍である。そもそも、海軍に憲兵と同様の軍事警察機関を持っていなかったのだ。そのため陸軍から出向した憲兵が海軍司法警察官となり、捜査を行っていた。しかし、検察官を務める海軍の法務士官が指揮官としており、部下の犯罪は隊長が軍の憲兵としての役割を担っていた。簡単に言って、部下の後始末を上司が警察官となって取り締まっていたと言っても良い。

 

しかし、あの戦争の際に占領地の増加に伴って陸軍出向の憲兵では人手不足に陥った。平時ならともかくとして、戦時中の高ぶりが押さえられない兵士達。そして、占領地の警察機構としての運用。海軍は新たに軍内部の犯罪を取り締まる軍事警察機関を設立した。

 

海軍特別警察隊と呼ばれ、警察としての役割の他に防諜にも携わっていた。当時の規模としては軍全体の組織としてではなく、占領した地域一帯のために作られたものであるため、当然鎮守府勤務などはなかった。

 

戦争終結後、海軍は特別警察隊の軍事警察と防諜任務を分けるために海軍警察と海軍情報局の二つに分離。海軍警察は陸軍の「憲兵」という呼び方を残したまま現在に至っている。他にも「海警」とも呼ばれるものの海上保安庁とも、被る恐れもあるため、殆ど使われてない。英名としても「Military police」と呼ばれるため大差ない。

 

任務も陸軍憲兵と同じくして、軍内部の犯罪を取り締まるなどしている。そして、日本の鎮守府に設置された区画にも同じ事が言えた。

 

「でもさー、僕何もしてないんですけど」

 

「分かってる。君は何もしていないのは知ってるからさ」

 

この風景はどこかで見たことがある。交番で勤務しているお巡りさんが小学生が落ちていたと百円玉を届けるシーン。お巡りさんは報告書に記載しようとしていたが、それに価値があるだろうか、そして子供の善意に報いるために、警察のある制度を言って百円玉を返したりする。実際、有ってはならないことだけれど、それはフィクションであるため現実には起こらなかったりする。そもそも、百円を拾った子供が交番に届けるなんて光景を見たりはしない。

 

・・・・話はそれてしまったが大体のイメージはつかめていると思う。憲兵が椅子に座り、書類を書いている間、それを見ながら緑茶をすする子供の姿が。

 

その子供の服装はこの憲兵詰め所の中では一番位が大きかった。彼のために特注で作成された純白の第二種軍装。肩の階級章には中佐のものが取り付けてある。

 

これはコスプレか何かだと思いたい。だが、実際の所。この少年は大日本帝国海軍の将校なのである。上官である。もう一度言おう上官である。さらに大事なことなので三回言ってやる。この小学生が上官なのだ。

 

「軍曹さん、目が据わってます」

 

「おっと、失敬失敬。そういえば中佐は今年で11歳でしたね」

 

直属の上官ではないものの、彼が上司でなくてよかったと彼と話す剣崎軍曹は安堵した。中佐は11歳とは思えぬような愛らしい容姿であり、くりりとした目や愛くるしい表情を見るに、同姓の彼でさえ、可愛らしいと思わせるのだ。中佐の写真をネットにアップすれば、世のショタコンが鎮守府に列を成して現れること必須である。もっとも、軍曹の場合は異なる。彼の場合、それは自身の子供や姪と接するような。悪く言ってしまえば孫を甘やかすおじいちゃん的な。庇護欲が掻き立てられる訳なのだ。

 

なぜ、彼が海軍中佐という地位についているかというと全ては艦娘に関係している。彼女達がどのように日本を守護するようになったのか、それは艦娘と契約する「提督」に関係している。契約とかどこの厨二病と言われるかもしれないが、彼女たちの契約は重い。彼らは所謂「波長」の合う人物を提督と仰ぐ。提督は男でもあれば女性でもある。彼のような小学生もあれば、海軍を退役した老将軍であっても珍しくない。彼女らは軍属やどっかの民間人を「提督」と定めていた。

 

 

そんな提督と仰がれ、可愛がられるショタ中佐は、とある相談のために憲兵詰め所にやってきている。

 

「あ、はい。小学校ならば五年生です」

 

(あ~やばい。俺の息子なら毎日お菓子かおもちゃを買い与えそう)

 

剣崎は自身に宿る庇護欲や父性本能が昂ぶっていることを悟る。

 

「そうですか、まあ勉強大変でしょうね」

 

「大丈夫です。いつも、秘書官の翔鶴に色々と教えてもらっていますから」

 

このショタ提督は秘書官に正規空母翔鶴を任命している。銀色の髪に赤と白の巫女のような服を着ていて、弓から艦載機を発艦させる彼女。空母の艦娘は容姿や性格は他の艦と違って落ち着いた高校生または大学生のような雰囲気である。小学生のような駆逐艦とでは同級生として見られがちな彼は頼れるお姉さんとして秘書官を翔鶴に選んだのだろう。

 

すると、ショタ中佐はもじもじと顔を赤らめながら顔を伏せ始める。その様子に剣崎はどうしたものかと思いを馳せるが、とある答えに行き着いた。

 

そうか、これは恋だ。

 

剣崎はそう理解した。誰しもこういう体験をしたことがあるだろう。小学生の時に近所に住む大学生のお姉さんに恋心を抱いてしまうのだ。まだ、幼い自分は自分の気持ちがよく分からず、わかった頃には、そのお姉さんはどっかへ引っ越してしまう。そんな淡い恋心をどうしたらいいのか分からず、顔を知っている良き相談相手の憲兵さんに彼は訪ねてきたのである。

 

剣崎はより良い助言が出来るかどうか不安に思うものの、それ以上にショタ中佐に頼られていることに嬉しさがこみ上げていた。

 

剣崎は意を決して彼に事情を聞いてみた。

 

「中佐、どうされました?」

 

「えっと、ここに来たのは内密に相談したいことがあって」

 

もじもじとしながら話す中佐の頭を撫でたい衝動に駆られながらも、我慢しながら彼の言葉を聞いていた。

 

「いいでしょう、この話は私と中佐の秘密ということで」

 

詰所の窓を閉め、中佐の急須に新たな緑茶と机の引き出しからお茶請けを出す。剣崎は長い話になるだろうと思ったのか、姿勢を楽にして襟のボタンを一個外して話を聞いた。

 

「さっきも話したんですけど、よく翔鶴が勉強を教えてくれるんです。それで、学校の勉強以外にも海軍の教本もよく勉強させられます」

 

彼はまだ義務教育を終えておらず、修了した大人向けの本も艦隊運営のためには読まねばなるまい。彼の台詞から察するに、彼女は殆んど全てを教えていた。

 

「色々やってたんですけど、分からない科目があって」

 

と彼は持っていた革製の鞄から一冊の教科書を取り出した。それは、誰しも学んだが、同時に子供達にとってある意味敏感な科目。保険体育であった。

 

剣崎は成る程ね~、と腕組みをする。彼は十一歳。大人への階段を登ろうとしている第一段階である。身長は伸びるし、男らしくもなる。筋肉質になったりするだろう。突然の変化に彼らは戸惑いを覚えるだろう。その戸惑いや疑問を解消するためにその科目は存在した。

 

「保険体育か、懐かしいな。何処が分からないんだい?」

 

「えっと、本当は全部分かってるから大丈夫なんですけど・・・」と彼は言葉を濁す。剣崎はどういう事なのか疑問を抱く。すると、なぜここに来たのかポツリポツリと話し始めた。

 

『翔鶴お姉ちゃん、これ教えて』

 

彼は最初、翔鶴さんと呼んでいたらしい。しかし、彼女からお姉ちゃんで言いと言われ、呼び方を変えることにしたらしい。何時ものように執務机の横の椅子に座って勉学に勤しむ。何時もの日常であった。そして、その時に学んでいたのが保健体育である。身体の筋肉や血液などの動き。そして、「ダメ・絶対」の標語で知られる薬物問題。そして男女の成長による変化であった。

 

彼はこの項目があることに驚きつつも、初めて彼女に教えてもらうことに抵抗を覚えた。それもそのはず、既に大人へと成長を遂げていて、憧れでもある女性にそれらのことを教えてもらうのだから。抵抗がないはずがない。すると、教科書の文章を読み終えて、顔の真っ赤な彼の耳に翔鶴は息を吹き掛けた。

 

『ふぁ!』

 

『女の子みたいな声出すのね』

 

『止めてよ、翔鶴お姉ちゃん!』

 

『フフフ♪』

 

真っ赤な顔をして恥ずかしい思いをするショタ提督に翔鶴は笑みを浮かべる。余談であるが、艦娘は全て容貌の整った者ばかりである。性格に難があったり、破天荒な物言いや男勝りな所があったとしても彼女達の容姿には「美少女」「美女」と言っても過言ではないだろう。それは翔鶴などにも当てはまる。腰まで伸ばした銀色に輝く髪に男を惚れさせる美貌。まだ、十代後半と思える顔つきであるにもかかわらず、スタイルは良く出るところ出ている。大の大人でさえ鼻の下を伸ばすような美少女であるのだ。そんな彼女が勉強を教えてくれるなんてなんと幸運であろう。

 

ショタ提督は翔鶴に恋心を抱いていた。しかし、子供と言えでも曲がりなりにも提督である。頭脳は同年代と比べても良く、翔鶴の横に立つまでにはまだ時間が掛かることも。

 

『さては、私の事想像しちゃったかな?』

 

翔鶴は顔を近づけ吐息が掛かる所まで近づける。彼の心臓はバクバクと勢い良く鼓動し、体温が上昇する。

 

『し、してないもん』

 

と苦し紛れに彼は言う。無論、嘘である。教科書を読んでいる間、彼の頭の中には翔鶴しか存在していない。それを分かっているのか、翔鶴は悲しそうに顔を伏せる。

 

『提督は私の事、何にも思ってないのね。私・・・』

 

顔を伏せてしまう彼女を見たショタ提督は慌てる。苦し紛れに言った台詞が翔鶴を傷付けるなんて思わなかったのだ。彼は、あたふた慌てるが、言ったことを否定すれば悲しまずになると思った。

 

『ち、違う。ほ、本当は翔鶴のことを・・・・』

 

好きと言う瞬間、翔鶴はさっきの俯いた雰囲気が嘘のように、満面の笑みを浮かべて提督に抱きついた。

 

『フフフ、冗談。私の事想ってくれるなんて嬉しいわ』

 

当然、提督に前から抱きついている。出るところ出ている翔鶴の身体付きは提督にとっては刺激が強すぎであった。

 

そして、提督は既に男へと成長していた。

 

『あら、なんか硬いものが?』

 

その言葉に提督はビクリと身体を震わせ、翔鶴の拘束から逃れた。そう、提督はつい最近から男としての成長を遂げていた。しかし、急な身体の変化に戸惑っていたのである。保健体育の授業でなぜそうなるのか理解したが・・・・つまりはそういうことである。

 

『提督の主砲が・・・』

 

『えっと、そのごめんなさい!!』

 

幾ら幼いと言えど、提督はもうそういうお年頃。恥ずかしさのあまり手で隠してしまうが、翔鶴は笑みを浮かべて顔を近づける。

 

『大丈夫です。それに、私の事想ってくれて感激です』

 

翔鶴はあろうことか、耳許に顔を近づけると優しく提督の主砲を愛撫し始めたのだ。

 

『お姉ちゃん・・・・!?』

 

『私は貴方の艦娘、これを沈めなければ勉強に集中できませんよ』

 

 

 

 

 

「ちょっと待って、これ何処のコミケ三日目に売ってる同人誌だよ」

 

剣崎はショタ提督から聞かされた内容を聞いてため息混じりに話す。その事を話した提督は既に茹で蛸のように真っ赤である。

 

「その後は・・・・まあ、何て言うか事を為したので?」

 

「えっとその・・・、怖くなってここに」

 

まあ、何かあったことは理解できた。走り回る駆逐艦よりも、そして島風よりも速いのではないかと思うぐらいの走りで憲兵詰め所にやって来た。その事を咎めようとしたが、彼の顔を見て一大事だと察し、中へ招いた。しかし、こんなことになっていようとは、誰も想像しなかっただろう。

 

手を出したのは提督ではなく、艦娘なのだから。

 

幾らか年を言っていれば分かる。例えば高校生位ならまだ分かる。中学生ならばボーダーラインギリギリだ。いや、多分ダメだろう。そして小学生。100%犯罪である。

 

「どうしようか・・・・う~む」

 

既にセクハラを行う艦娘に対してのマニュアルがある時点で色々と不味いのだが、逆にセクハラを受ける事は例がない。稀な例としては、提督に一途な恋心を寄せる戦艦金剛があるが、彼女の場合は中年の脱サラ提督であり、愛妻家なので無効である。しかし、犯罪っぽいショタ提督を誘惑する艦娘は非常に不味いのだ。

 

「如月曹長に・・・・いや、無理かも」

 

彼女は若干不味いかもしれない。彼女も彼女でかなりオタクに染まっており、彼女の場合は「小学生の提督!?良いじゃない!襲うのを推奨します」と叫ぶのではなかろうか。

 

彼女はロリコンの同義語であるが、異性であるショタコンなのかもしれない。

 

剣崎はそう思い、絶対補給科がネタとして持ってきている黒電話に手を掛けようとした。

 

ダンッ!

 

擬音語にするなら、それは銃撃音に似ているだろう。しかし、この場合は違った。金属の衝突した音に等しい。

 

黒電話に突き刺さるのは零式艦上戦闘機であり、パラシュートからパイロットの妖精が降りてきた。

 

「え、なんだこれ!」

 

妖精が特攻してくるなんて何の冗談だろうか。パラシュートで降りてくる妖精は驚いているショタ提督の頭へチョコンと乗っかってため息を吐いている。

 

「あらぁ、提督は勉強をサボってこんなところにいたんですか。探しました」

 

剣崎はその声の主である者へ首を向ける。そこには儀装を装着し、正規空母の証である弓を持った空母翔鶴の姿があった。その後ろにはあたふたと慌てる妹の瑞鶴の姿もあった。

 

「お姉、ちょっとこれは不味いって」

 

「瑞鶴、ちょっと黙って」

 

「はい!」

 

その顔はなんと表現すべきだろう。例えるなら、鬼と表現しても良いだろう。こんな顔をする翔鶴を見る者は余りにも少ない。

 

「さぁて、提督さん。勉強を続けましょう」

 

「ちょっと待て、憲兵が許さ・・・」

 

と剣崎は止めようと、提督と翔鶴に和って入ったが、直ぐ様艦爆を向けられた。

 

「落ち着け、貴様は提督が子供だと言うことを知っているのか!」

 

「知っています!だからこそ、私は提督を・・・・言わせないでください」

 

「え、どう言うこと?」

 

「「知らなくていい!」のです!」

 

本当なら愛は年など関係ないとか言うかもしれないが、恥ずかしいのか言えないのだろう。

 

「まだ子供だろ?あと五・六年すれば凛々しくなるはずだからさ!」

 

「そんな、今が良いんです!」

 

「まだ早熟なんだから見逃せや」

 

「まだ青いから良いんです!」

 

会話は平行線を辿り、弓はプルプルと震えている。そろそろ、潮時であろう。

 

「提督を渡して下さい。さもないと!」

 

「さもないと、なんだ」

 

「貴方をロリコンの犯罪者と皆に伝えます!」

 

「それ、艦爆で撃沈されたほうが良くないか、ソレ!!」

 

憲兵詰め所には、一触即発の事態を迎えていた。いつ艦爆が発艦して爆撃されてもおかしくない状況であって、弓に込められた力がゆっくりと無くなりつつあるのが見えた。

 

そして艦爆が離陸しようとしたその時、脇から艦爆を片手で掴みとり発艦を阻止した人物がいた。普通、そんなことを出来る艦娘が居る筈もなく、ましてや普通の兵士であれば出来ない芸当だ。

 

「何をやっているのかしら、翔鶴ちゃん?」

 

その声の主はマフィアも裸足で逃げ出す位の殺気を漂わせ、額の血筋が浮き出ている。彼女はこの憲兵詰め所の責任者、如月曹長であった。

 

「ひっ!」

 

その光景を見た瑞鶴は悲鳴を挙げ、まだ幼い提督は泡を吐いて気絶する。バックのBGMが「ゴゴゴゴゴ!」と流れるようで、その怒りの矛先である翔鶴は最早無条件降伏しか存在しなかった。

 

「ごめんなさぁ~いぃぃぃ!!」

 

 

その叫びは区画を越えて鎮守府全てに聞こえてしまった。しかし、何時もの事であると皆はそれを無視した。人間の適応力は非常に強いものであった。

 

 

 

 

二時間の説教タイムを経て、別室で説教を受けた翔鶴は疲労度限界の顔付きで剣崎とショタ提督の元へやって来た。

 

「提督、ごめんなさい!」

 

翔鶴はこれまでのことを謝罪した。提督は以外にも満更でもなかったらしく、二人は手を繋いで無事に帰っていった。端から見れば、仲の良い兄弟にすら見える二人は仲良く手を繋いで自身の執務室へと帰っていった。

 

「ふぅ・・・・さて日誌を書くか」

 

既に日は落ち、夕暮れ時。剣崎はため息を吐きながらも、机に勤務日誌を出して今日のことを書こうとするが、今回の一件をオブラートに包みながら書くのは至難の技であった。

 

しかし、どのように翔鶴を説教したのだろうか。

 

剣崎はその事が気になり、近くの机で書類作成に追われる如月に声を掛けた。

 

「曹長、翔鶴に何と言ったんです?」

 

「え?簡単なことよ」

 

と、曹長は笑って答えた。

 

「自分好みに育てなさいって言ったのよ」

 

 

「光源氏か!」

 

 

その叫びは執務室のショタ提督に届くことなく、翔鶴による提督育成計画は着々と進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




翔鶴を持っている提督殿であれば分かるかと思いますが、性格がかわっているかもしれません。

正直言いますが、翔鶴はうちの艦隊にまだおらんのです。

瑞鶴はいるのですが、姉が居ないのは悔しい限り。

なので、お持ちの提督であれば、何卒見逃してくれると幸いです。

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