東方司操録   作:”≠”

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こんにちは、≠です。
特に言う事はありません。
それでは第壱話、どうぞ。


謎の青年

 ここは真っ白な空間。

 

 

 何も無い。いや、「無」があった、と言うべきか。

 

 

 「無」は、いつしか意思を持つようになった。

 

 

 それがいつなのかは誰にも分からない。

 

 

 これはそんな「無」のお話。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ―深い森の中

 

 一人の男が何か探し物をしながら歩いているようだった。

 

 「…おっかしいなー?確かこの辺に…おっ、あったあった。」

 

 そう言って、彼は地面に突き刺さったソレを引き抜く。

 どうやら彼は、彼が探していた物を見つけたようだ。

 その手に握られていたのは…真っ黒な刀。

 

 「いやー見つかってよかったー失くすとまた怒られるところだった…」

 

 どうやら彼にとってあの刀は余程大切な物らしい

 

 「落ちる時に能力使ってたのが拙かったかなー…まあそのおかげでこの辺りの地形を多少把握できた。」

 

 そう言いながら黒い刀をどこからか取り出したこれまた黒い鞘に納める。

 落ちる時、というのにはツッコまない。

 

 「うっし、じゃあ着いた事だし…?」

 

 その時、彼の耳にとても小さな、集中しなければ聞こえない程の音が聞こえた

 その音は―  

 

 「…か助…て!」

 

       ―人間の声。

 

 「っ!」

 

 彼はどうやらそれに気づいたらしく声のした方に全力で走り出した。

 

 (クソッ!やっぱりまだこの身体は慣れないなッ…!)

 

 そう思いつつも先程悲鳴が聞こえた場所に近づいていた

 

 「誰か助けて!」

 

 はっきりと聞こえてくる声、その声は女性、それもまだ幼い少女の声だった。

 それに加え、低音のそれに吐き気を催すような声で話す「化け物」

 

 「クカカ…こんな森の中に誰か居ると思ってんのかあァ?」

 

 「うう…」

 

 彼女は必死に逃げようとするが、どうやら足首を挫いたらしく立てないでいる。

 

 「久しぶりの食事だ…さて、どこから食ってやろうか…」

 

 「ひっ…」

 

 少女は、恐らく彼女が初めて感じたであろう「死」への恐怖で声にならない悲鳴をあげる。

 

 「…決ーめたァ、やっぱり生きたまま頭からだよなァッ!」

 

 少女を食おうと近づく化け物の顔。

 

 「カカカ…いっただっきまーすゥゥ」

 

 「おい」

 

 突如響く声。

 

 「あ?」

  

 食事を邪魔された化け物は「彼」を睨み付ける。

 

 「テメェおいニンゲンンンン…俺の四日ぶりの食事を邪魔したなァァ?」

 

 「そこの人、離れておいて」

 

 彼は化け物を無視し、言う。

 

 「えっ…あの…」

 

 来るはずがない助けが来たことに対し、驚きが隠せない彼女。

 

 「!成程足が…じゃあそこから絶対に動かないで」

 

 「はっ…はい…」

 

 「オイテメェッ!無視してんじゃねぇッ!」

 

 大声で叫ぶ化け物に―

 

 「うるさいよ…黙ったらどうだい?」

 

 少し挑発をする

 

 「テメェ…調子に乗んじゃねェェッ!」

 

 そう言い、一直線に突っ込んでくる化け物

 

 「―フッ」

 

 その攻撃を真上に回転しながら跳ぶ事で回避、そのまま、いつのまにか取り出した刀を変形、弓へと形を変え、素早く数本の矢を放つ。

 

 「何ィッ―ぐあッ!」

 

 放たれた矢は化け物の手足を貫通、そのまま地面に深く刺さり、化け物を倒れさせる。

 

 「クソッ!この程度…グッ…抜けないだとォ…?」

 

 化け物は力任せに引き抜こうとするが、矢には返しがついてある為、簡単には抜けない。

 更に身体を痺れさせる毒を塗ってある。

 

 「ふぅ…段々コレにも慣れてきたな…」

 

 そう言い、手に持った弓を再び刀に戻し、鞘へと納めながら言う。

 

 「さてと…どうする?君。」

 

 彼は地面にうつ伏せで倒れている化け物を見ながら言う。

 

 「クソッ…テメェェ…殺すゥゥ…食ってやるゥゥ…」

 

 化け物はその眼に怒りを燃やしながら彼を睨む。

 

 「ハァ…全く…君は暫くそこで寝てると良い」

 

 そう言いながら矢を消す。矢が無くても毒が回り、動く事もままならないだろう。

 化け物が何か言ってくるが、無視して少女の下へと向かう。

 

 「君、大丈夫かい?足以外の怪我は無い?」

 

 「あっ…えっと…大丈夫です…」

 

 「そう、なら良かった。君は何処から来たの?」

 

 「も…森の向こうの村からです…」

 

 少し怯えながら言う少女。

 それもそうだろう、先程まで生と死の狭間に居たのだ、怯えない訳が無い。

 

 「歩ける?なんなら送ろうか?」

 

 「いっ…いえ、大丈夫で…ッ!」

 

 立とうとした彼女は足の痛みに顔を歪ませる。

 

 「ほら、無理しないで…村…どっち?」

 

 「…あっちです…」

 

 「分かった。じゃあ送るね。目を閉じて」

 

 「?何故ですか?」

 

 そう問いかける少女に対し彼は言う

 

 「いいからいいから、ほら…空間把握…座標確認…」

 

 「?わ、分かりました…」(この人…何を…)

 

 「座標指定…移動開始」

 

 その瞬間、不思議な感覚がした。まるでいきなり別の場所に飛ばされたように…

 

 「…目、開けて良いよ」

 

 目を固く瞑ったままの少女に告げる。

 

 「…えっ?」

 

 少女は目を開き、驚愕する。

 そう、本当に別の場所に飛ばされていたのだ

 今居る場所はおそらく少女が住んでいるであろう村が見える平原。

 

 「えっ?嘘…なんで…?」

 

 信じられない、と言った顔をする少女に対し、彼はこう言う。

 

 「村、ここで合ってる?」

 

 「えっ…えっと…はい…この村です…」(一体どうやって…)

 

 自分の住む村に戻れた事に安堵する少女。

 それと同時に彼のした事を不思議に思う。

 

 「よかった、じゃあ怪我を治すから、歩いて帰れるかい?」

 

 「えっ?怪我を…治す?」

 

 少女は思った。

 この人は一体何者なのか…と

 

 「うん、怪我は…ここだね…治癒開始」

 

 少女の足首に手を置き、何か唱える。

 すると、彼の手が光りだす。

 

 「…よしっ、これで…。じゃあ、立ってみて」

 

 光が消えた手を降ろしながら言う

 

 「あ、はい…あ、あれ?立てな…い…」

 

 「?…あぁ、腰が抜けちゃったか…まぁしょうがないよねぇ…」 

 

 足の怪我は治ったがどうやら腰が抜けてしまったらしく、立てないようだ

 

 「もう大丈夫だよ、ほらゆっくり立って…」

 

 そう言って彼女の手を取り、ゆっくりと立ち上がらせる

 

 「あっ…」(暖かい手…)

 

 「あっごめん、嫌だった?」

 

 「いっいえ…何でもないです…」

 (凄く暖かい…どうしてだろう…安心できる)  

 

 「うん!問題無いね!ここから村もそう遠く無い…歩いて帰れるかい?」

 

 ここから村までは目と鼻の先。これなら大丈夫だろう。

 

 (この人は…いえ、この人の事を考えるのは後にしましょう!)

 「はい!ありがとうございました!この恩はいつか必ず返します!」

 

 「アハハ、そういうのはいいよ、自分が勝手にした事だしね。後、できるなら敬語やめてもらえるかなぁ?堅苦しいのは嫌いでね…」

 

 「…え、ええ、分かったわ…ともかくありがとう。貴方が居なければ私は今頃あの妖怪に食べられてたわ…」

 

 「アレ、妖怪って言うんだ…あっ、名前で思い出したけど、名前、聞いていいかい?」

 

 「ええ、私の名前は八意…八意永琳よ…」

 

 「永琳、か…覚えたよ。次からは一人だけであんな所に行っちゃ駄目だよ?」

 

 「ええ…なら次からは、貴方が一緒に行ってくれる?」

 

 「アハハハハ…暇だったらねー…ところで、あんなところで何してたの?」

 

 「ああ…薬草を…でもあの妖怪に邪魔されて…」

 

 どうやら彼女はあの森の中に薬草を採りに行っていたらしい。

 

 「なるほど…ならまた今度採るの手伝うよ」

 

 「ええ、是非お願いするわ、妖怪に襲われるのはもうこりごりよ…」

 

 「そうだね…護身術も教える必要がありそうだ…」

 

 「護身術…それなら、弓の使い方を教えて欲しいわ!」

 

 目をキラキラさせながら言う永琳。

 

 「弓…か、大変だよ?それでm「いいわよ?」…じゃあまずなんで弓なのか聞こうか?」

 

 「貴方の弓が格好良くて綺麗だったから…じゃ駄目かしら…?」

 

 そう言う永琳。成程、ロマン武器とか言う奴ですね分かりません。

 

 「…分かったよ、じゃあ、それなりの訓練はしないとね。まあ、とりあえず今日は村に帰った方がいいと思うよ?」

 

 「ええ、そうするわ…ねぇ、貴方はこれからどうするの?」

 

 「僕はとりあえずこの辺りに住もうと思う。空気も良いし、広いし…ね」

 

 「そう…なら、また後日、来ても良いかしら?」

 

 首を傾けながら問いかける永琳。

 いいともーって言いたくなる。

 

 「うん、むしろ歓迎するよ」

 

 「ふふ…ありがとう。ところで一ついいかしら?」

 

 「?なんだい?」

 

 「貴方の名前、聞いてもいいかしら?」

 

 「ああ名乗ってなかったね。僕の名前は―

 

 

 

 

                    ―零無、だよ。」




はい、以上第壱話となります。
皆様、いかがだったでしょうか。
これからも不定期ではありますがゆっくりと投稿させて頂きたいと思います。
それではまたお会いしましょう、さようなら。





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