Warcry boys―――われら、平穏なる夜明けを見んために   作:懲罰部隊員

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入学式です。
半年前まで高校生だった作者の記憶を頼りに書いてたので、懐かしい気持ちになります。

銀英伝のあの人が先生として登場です。


第一話 once&forever

 エドマンドは両親に、じゃあ先に行くよ、と言ってから家を出た。

 どたどたと騒がしくやってくる面々がエドマンドを見つけるとさらにその足を速めた。

 「おー、エド!」

 小暮駆、碇シンジ、李小狼の三人だ。彼らはエドマンドと中学の同級生だったのだ。

 「まったく、互いに高校の制服が似合わんなあ」

 「ハハハ。そうだな」

 四人は激しくド突きあいながら歩み続ける。

 「そういえば小狼とシンジと駆はコレも一緒だよな」

 エドマンドは小指を立ててニヤリ。他の三人はうれしいような、気恥ずかしいような、そしていくらかの憂いを秘めた笑いを浮かべた。

 と、言うのも、エドマンドは四人組の中で唯一彼女がいなかったからである。いや、いたのだ、ついこの間まで。しかしエドマンドとその彼女は、下手な恋愛ドラマが裸足で逃げ出すような展開を経て決定的なすれ違いが生じてしまい破局してしまったのだ。

 「…」

 「ん、まああれだわ、高校デビューして彼女もゲッチュー、なんつって、タハハ」

 不穏な空気を察したエドマンドは無理やり話題を明るい方向へ転換させることを試みたが、ギャグの滑り具合と相まっていっそう空気を重くしただけであった。

 電車に乗り、東京の一部を再開発した新東京市の新日暮里へと向かう。近年の国土再開発によってあちこちに再開発の波が押し寄せ、行けども行けども都市がなくならない時代になってきた。各地の土建屋と彼らからわいろをもらっている連中はホクホク顔であろう。

 新日暮里高校もやはりここ二十年くらいでできた公立高校である。海鳴、夜見山両市を中心にいくつかの市町村の越県合併によって誕生した新東京市は人口三百万、単一の学区を形成している。学区の再編や学校統廃合などでこの高校にやたらと生徒枠が割り当てられるようになり、新日暮里高校では一クラス60人を超えるようなこともざらにあった。

 「電車から見てもわかるが、この街ビルばっかになったな」

 「つい2,3年前までこの辺田んぼだったのに。いつの間にか高層ビルが林立してやがる。昔懐かしの景色は本当に過去のものとなってしまったか」

 エドマンドは前世において1930年生まれ、この世界は201X年だから、前世通りに生まれていれば80過ぎのジジイである。この時代に生まれたからデジタル機器には慣れているが、時折友人に比べ爺臭いセリフを吐くことがあった。

 「間もなく、新日暮里中央、新日暮里中央」

 四人が駅に降り立つ。改札を出て3分ほど歩いただけで新日暮里高校の校門に到着する。

 「行くぞ」

 「ああ、行こう」

 彼らはまず校門に入って、それから昇降口前に掲示されているクラス編成表を見た。

 エドマンドの感想。

 「夜見山出身者が多いな」

 小狼の感想。

 「なんか不吉な気がするのは気のせいか…」

 駆の感想。

 「クラスの三分の一ぐらいの人、死亡フラグだろ」

 シンジの感想。

 「死亡フラグ?なにそれ僕のこと?」

 次の瞬間シンジが周囲にいた新入生一同に

 「おいメタ発言やめろ」

 とボコボコにされたのは言うまでもない。なぜかシンジはまんざらでもない様子だったが。

 

 教室の空気は緊張感がみなぎっている。その一方でエドマンドが指摘したように同じ中学の出身者がかなり固まっていたこともあり、極端な緊張状態ではなかった。

 駆、小狼、シンジの彼女たち―――、夢野歌、木之本桜、惣流・アスカ・ラングレーらがそれぞれ三人に走り寄って行った。さっそくさっき恥をさらしたシンジをアスカがシバきあげ、シンジのまんざらでもなさそうな悲鳴が響いていた。エドマンドは横目で見ながらそれをふっと笑っている。ふと気づくと、彼とは違う中学の出身者一同がこの公開SMプレイを遠巻きに見物し始めていた。女子陣は完全に引いているものが多いが、男性陣はというと。

 

 「くそ…あんな美人に踏まれて蹴られるとは、うらやましい」

 「我々の業界ではご褒美です」

 「ドMはまかせろー」

 「フェアじゃないね」

 …思ったより早くこいつらと同志になれそうだ。エドマンドは本気でそう思った。

 

 「やめてよアスカぁ」

 「あんたまた私をオカズにしてたでしょ!いってごらんなさいよこのバカシンジ!」

 …朝から深夜番組なみに危ないセリフが飛び出している。小狼はだめだこりゃと頭を抱え、シンジは言葉攻めに快楽の頂点に達しかけ、駆は夜見山などの出身のスポーツ少年たちと何かについて語り始めていた。小狼が聞き耳を立ててみると

 

 「あいつ、おとなしそうな顔してなかなかやるじゃないか…」

 「だろ。シンジはうちの中学じゃキングオブムッツリだったからな」

 「マジか。風見とタメを張れるぜ、あのムッツリぶりは」

 「最早ムッツリじゃねえだろ。公開SMプレイだろ」

 やっぱりこいつらも下ネタでコミュニケーションをとっていた。確かに初対面の人と打ち解けるには便利な話題ではあるのだが。

 ガラリと戸が開き、ドイツ系移民の美丈夫が入ってきた。

 「あの人が担任の先生?かっこよくない?」

 「うん、誠実そうでいいね」

 「ウホッ♂イイ男」

 部屋が軽くざわつく。その教師は部屋のざわつきが収まるのを待ってから口を開いた。

 「みなさん、入学おめでとう。私が一年間このクラスを担当することになりました、ナイトハルト・ミュラーです。よろしくお願いします。入学式は体育館であるので、9時40分までに廊下に出席番号順に整列しておくように、以上」

 比較的穏やかな口調であったためか、生徒一同のプレッシャーはさらに低減された。先ほどの公開SMプレイでほとんどなくなっていたような気もするが。

 

 そんなこんなで始まった高校生活。はたして彼ら彼女らはどうなることやら。

 




シンジがほとんど公開処刑ですね、これ…。

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