インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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白騎士事件

 

 

僕は束さんのラボにある画面である映像を見ていた。今、このラボにいるのは四人。僕、束さん、アリサそして皇さんの四人である。目の前の画面に写っているのは一機のIS、その名も白騎士。白騎士は今現在、太平洋海上のとある数隻の戦艦から日本の首都である東京に向けて放たれたミサイルを備え付けられてある近接ブレードなどを使い撃ち落としていく。ミサイルを爆発させることなく切断していく白騎士、今それに乗っているのは僕の姉である織斑千冬。

 

「なんで……なんでこんなことになっちゃったんだろ」

 

束さんは両膝を床につけて、顔を両手で覆いながら泣いている。

 

 

 

 

 

あれは束さんが偶然制作してみたもの、宇宙空間での行動における障害物などの排除を目的とした武器を積んでいた白騎士。その試験運転をしていたその時、事件は起きてしまった。

 

『今から三十分後後、太平洋海上の

艦隊から日本の首都、東京に目掛けてミサイルを発射する。それを見事にISで防いでみよ』

 

突如束さんのパソコンに送られてきた謎のメッセージ、それを見た僕たちは誰かからの悪ふざけかと思ったが、次に送られてきたメッセージを見た僕たちは絶句した。

それは生中継の映像だった。内容はテレビのニュースでよく見るような何処かの省の大臣が会見を行う様な場所だった。そして中央には老人が写っていた。会見の内容はこうだ。

 

『つい先程、日本の領海内に正体不明の戦艦数隻が侵入してきました。今のところ戦艦には何の動きも見られませんが、もしかしたら万が一という事態もありますので、各地に自衛隊を配備させております』

 

映像は途切れ、沈黙が僕らの世界を支配する。どういうことだ、これはドッキリか?達の悪いイタズラか?エイプリルフールならとっくの昔にすぎちまったぞ。嘘だと言ってよ、誰か……

 

「ちーちゃん……聞こえる」

 

沈黙を破ったのは束さんだ。

 

『どうした、束?』

 

「今太平洋から日本に向けてミサイルが放たれ様としているの、だからそれを撃ち落としにいって」

 

『どういうことだ?』

 

「いいから行って!」

 

『!』

束さんは千冬姉に連絡をとって、ミサイルを撃墜する様に頼んだ。姉さんも最初は訳がわからなかった様子だが、滅多に見せない束さんの真剣な言葉に姉さんは従うしかなかった。

 

 

白騎士事件

のちのこの騒動の一般的な呼び方である。あるジャーナリストはこれは篠ノ之束がISを宣伝するものだと言った。しかし、事実はちがう。

結果としては発射されたミサイルは白騎士と既存の軍隊の手によってすべて打ち落とされて、被害はなかったという。勿論白騎士は事件の後直ぐに軍隊の前から消えた。

 

 

 

 

束さんはソファーに座りながら頭を抱えている。

以前束さんが話した事だがISには兵器としての可能性もあると言っていた。何故かと言うとISには特徴的なシステムが幾つかある。搭乗者を守る絶対防御などなど。ISを開発する段階でコアが発現させたと言ったそのシステム。それは間違いなく兵器として転用すればかなりのものとなる。それを恐れた束さんは宇宙開発という面を重視して学会で発表した。それは人類を新たな場所に連れていくISのあるべき姿だと思ったからだ。

しかし、現実はそう甘くはなかった。いざISを発表したものの、只の女子高生が発表した物などまともに相手にもされなかった。普段から色々な物を発表している束さんだが今回は今までの物とは違った。

ようやく理解してくれた誘宵グループ、束さんの思いが叶う。そう思った矢先にこれだ。

僕は束さんになんて声をかけて良いのかわからなかった。それはアリサも同様でさっきから僕の腕にしがみついている。皇さんは皇さんでさっきから席を外している。

 

そして時間は過ぎて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってくれたな、全く」

 

とある日本式の屋敷、その縁側に1人の老人が座っている。白髪ではあるが禿げてはおらず、どことなく若々しいオーラを放つ男性。右手に扇子を持ち、先程からそれで左手の掌をパシパシと叩いている。

 

「これは儂が動いたほうがええな」

 

老人は近くにおいてあった羽織を着るとそのまま立ち上がり、屋敷の中へ入って行った。

 

「やれやれ、面倒事を起こしおって。少子高齢化に女尊男卑の傾向など解決しなくちゃならん事がまだあるのに。それにまだみつからんようだしのお」

 

はあ、とため息をつく老人。

 

「まあ、それも儂の腕の見せどころかの。はーはっはっは!」

 

豪快に笑う老人。

 

「この轡木十蔵の」

 


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