インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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今回はアリサ視点です。


クラス代表決定

「それでは、七組のクラス代表は誘宵アリサに決まりだ」

 

既婚者の担任の言葉の元、ホームルームはすんなりと終わった。

 

IS学園の入学式も終わり、その次の日の授業でのホームルームで行われた、今度のクラス代表戦に出場する選手が他薦で私に決められた。

 

最初は、企業代表の仕事で忙しいために断ったのだが、担任の先生曰く、代表戦が終わった後は殆どお飾りみたいなものだと言われたので、受けた。

 

 

 

担任の先生が教室の外に出て行ったのを合図にクラスメイト達は一斉に何処かに向かって行った。

 

大方、新しく入った男性IS操縦者の織斑百春でも見に行ったのだろう。

 

そんなになってまで見に行くものなのか私にはよくわからない。

 

男性IS操縦者なら一夏くんがいるし、兄弟だからと言って私が織斑百春になびく事はない。私は一夏くんが好きなのだから。

 

私はそんな事を考えながら、左手の薬指につけてある指輪を愛おしく撫でた。

 

「アリサちゃーん、噂の男子生徒の所に行かないの?仲が良いんじゃないの?」

 

後ろの席から、中学時代からの友人である樫木智沙が声をかけてきた。

 

「……どうして?」

 

「え?だってアリサちゃんの荷物の中に百春くんと写ってる写真あったじゃない、子ども時代の」

 

…………は?

 

私が織斑百春と写真をとった?

 

私にそんな記憶は無いし、彼と話した記憶も一、二回。しかもそれらは一夏くんが一緒にいた時の事だから、私が織斑百春と仲が良いなんて事はあり得ない。

 

……そうか。そういうことね。

 

「智沙ちゃん、あれは織斑百春じゃなくて。織斑一夏、彼の双子の兄よ。私は織斑百春じゃなくて、一夏くんと仲が良かったの。そこは勘違いしないでね」

 

智沙ちゃんにむけてニッコリと笑うが、智沙ちゃんは酷く怯えていた。何故だろうか、わからない。

 

「さてと、今日の授業は終わったみたいだし。部屋に戻ろ」

 

机の横にかけてあった鞄に荷物を詰め込んで、肩にかけると、私は教室を後にした。

 

廊下に出てみれば、一つの教室の前に女子生徒たちが蟻のように集まっている。

 

量から判断すれば、二、三年生もきている、物好きだな。

 

だが、寮までの道のりで一番の近道はあの集団を通り抜けるルートなのだが、正直な事を言って面倒くさい。

 

なので遠回りをする事になるが、人ごみを避ける事にした。

 

「お待ちになって」

 

後ろから声をかけられた。振り返って見れば、そこには金髪ドリルがいた。

 

何処かで見た事がある。

 

確か誘宵グループの諜報部から送られてきた資料で見たことがある。

 

名前はセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生で試験を受けなかった私を除いた生徒の中で、最も入試結果が良かった生徒。

 

誘宵グループと比べれば格は幾つも落ちるが、其れなりの規模の財閥のご令嬢さんだったかしら。

 

専用機は第三世代機IS、ブルー・ティアーズ。BT兵器と呼ばれる遠隔操作型の武装を持っており、セシリア・オルコットはこの武装を扱う適性が高かったために与えられたそうた。

 

カタログスペックを比べれば、私のISの性能の方が高い。当たり前だ。こっちはコアが作り上げたのだから。

 

そして特筆すべきは、根っこからの女尊男卑精神の持ち主らしい。その事だけで私は彼女と仲良くなろうとする気はない。

 

ISが使えるから女は偉いなどと勘違いしているらしいが、そんなモノは不安定すぎる。ISに整備は付き物だし、開発も必要。その中で男性が占める割合は高い。それなのに男性をけなすと言う事は自分の首を締めるも同義。

 

付け加えるならば、男性の中でもISを使える人はいる。

 

 

ああ、一夏くんに心ゆくまで甘えたい。

 

 

全く、女尊男卑家は六組のあの女だけで嫌なのに。どうしてアレが日本の代表候補生になって、IS学園にはいれたのかわからない。親のコネ?

 

……私が言えた事ではないな。

 

 

 

彼女の自身に満ちた目は何処からくるモノなのだろうか。教えて欲しい。

 

「誰でしょうか、見たところ一年生のようですが」

 

取り敢えずは、彼女を見極める為に探りでもいれてみようか。本部もブルー・ティアーズのデータが欲しいと言っていたし。こちらの手を隠しながら模擬戦ができれば、最高なの。

 

ワザと怒らせるような発言をしてみた。プライドの高い彼女なら、この一言はイラつくはずだ。

 

「……私をご存知ない?」

 

餌を与えられてない釣り堀の魚のように簡単に引っかかった。

 

チョロい。

 

「ええ、知らないわ。有名人の方ですか?それとも、只の自尊心の高い女尊男卑家の方ですか?」

 

「私を、イギリスの代表候補生にして、入試成績トップのセシリア・オルコットをご存知ないのですか!?」

 

「国家代表ならともかく、百人以上いる代表候補生、いちいち覚えてられないわよ。それと、私は入試免除で参加してなかったから、よくわからないのよ」

 

事実、私は特別枠なために入試を受けていない。

 

私の言葉を受けて、オルコットさんは酷く怒っている様子だ。

 

「誘宵グループのご令嬢がまさか、ここまで失礼な方とは思ってもいませんでした。やはり、極東の人は……」

 

後半の方は小声で言っていたが、しっかりと聞こえている。

 

「その極東の人間が作ってるモノで遊んでいるイギリス人は何処の誰でしょうか」

 

「何ですって!」

 

「別に貴方の事だとは一言も言ってないけど。それで、御用は何かしら。今日は月命日だから、一夏くんのお墓参りに行きたいの。だから早く済ませて」

 

「一夏くん?……貴方は優秀な女性だと思っていましたのに。まさか馬鹿な男にたぶらかせれていたなんて」

 

先ほど私に嫌味を言われたからそのお返しなのだろう。なんとも言えないかな。

 

けど

 

「ねえ」

 

「っ!」

 

只声をかけたのにそんなに驚いた様子をしないでよ。

 

「私はね、貴方達女尊男卑家が何を言おうが知ったことじゃないの。どうでもいいから」

 

オルコットさんの額に汗が流れる。暑いのかしら。

 

「でもね、一夏くんとパパの悪口を言う奴は許さない。覚えていてね」

 

その瞬間、オルコットさんは青ざめた顔で唾を飲み込み、地面にへたり込んでしまった。

 

彼女に背を向けて、私は廊下を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後のことだ。私は自室のパソコンでクラスメイトに撮影してきてもらった他のクラス代表の映像を確認している。

 

明日がクラス代表戦なので、私以外……正確に言えば四組の子もか、練習に熱が入っていた。

 

対戦カードも発表され、織斑百春や、いきなり二組に転校してきた中国の代表候補生とは決勝で当たることになっている。

 

二人の映像は確認したが、相手ではない。織斑百春は専用機である白式を与えられ、単一能力である零落白夜を使えるが、武装は剣一本しかないため、戦法は瞬時加速による奇襲が主だと思われる。

 

二組の代表は専用機、中国の第三世代機IS甲龍を使用している。厄介な武装を持っているが、対処の使用はある。実力も機体性能も私たちの方が高い。

 

 

 

そして私の一回戦の相手は六組のクラス代表、そして日本の代表候補生である『鹿狩瀬裕子』。女尊男卑家。

 

正直な事を言えば彼女との戦いは勝ったも同然。

 

問題はどれだけ手札を隠した状態で勝つかだ。

 

彼女の戦い方は、あの織斑千冬に憧れているのかわからないが剣を主体にした戦い方をしている。

 

……そうだ、ならばこっちもブレード一本、かつ性能を落とした状態で戦おう。うん、それがいい。

 

 

 

パソコンをシャットダウンして、一息いれる。

 

「明日が楽しみだね、アイリス」

 

左手の薬指につけた指輪型のISの待機形態をなでながら、私は笑った。

 




サイコマン…………まじで今回のシリーズの功労者だろ。

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