インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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「私の家に来ない?」

 

「ねえ一夏くん、今度の日曜日って暇?」

 

放課後の図書館、机で本を読んでいた僕にアリサが声をかけてきた。クラスでも席が前と後ろという事で普段からよく話しているし、僕の学校では給食ではなく弁当なのでよく一緒に食べている。最初はおどおどとしていた彼女だが、今は僕と普通に話せる様になった。他の人はまだ無理だが……

 

「その日は柔道の練習が無いからいいけど、どうしてだ?」 

 

「えっと……その、良かったら私の家に来ない?」

 

「アリサがいいなら行くけど」

 

ちなみにだが彼女のことは前まで誘宵さんと読んでいたが、彼女からの希望でアリサと読んでいる。

 

「良かった、なら午後1時に学校の校門で待ってて」

 

嬉しそうな顔で話すアリサ。そして僕たちはそのまま下校時刻まで図書館ですごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして約束の日曜日、僕は何時も学校にきていく様な服でアリサを待っていた。現在午後12時45分、日曜日という事もあって学校にはクラブ活動で来ている野球少年達がグラウンドで大騒ぎしている。僕は少し早く来てしまったので、バックから本を取り出して、ベンチに座り読み始める。

 

「…………」

 

じっくりと本を読む、一字一字を確かめる様にゆっくりと。もうすぐこどもの日という事もあって、

あちらこちらの家に鯉のぼりが揚がっている。

時々だが車が目の前の車道を通り過ぎていく音が聞こえる。一台、また一台と、僕の目の前を通り過ぎて……行く?

 

ブロロロロロ……

 

通り過ぎて行く筈の車が僕の目の前で止まった。本から眼を離し僕の目の前に止まっている車を見る。

 

リムジンだった……リムジンだった!!

 

特に大事な事でも無いが二回言った。それだけ僕は驚いている。テレビなどで見た事はあるが、実物で見た事は今まで無かった。長さ自体は対した事では無いが、こんな場所にリムジンがくることに驚きが隠せない。

だが、何故僕の目の前で止まったんだ?僕の知り合いにリムジンに乗る様な人間はいない、強いて言うならば発明でお金を稼いでいる束さんくらいだが、あの人は車を運転できる年齢でもないし、誰かに頼んで運転してもらっているのは考えにくい。では誰が乗っているのだろうか?いや、もしかしたら乗っているのは赤の他人で僕の知り合いではないのかもしれない。

そんなことを考えている内にリムジンの後ろの扉が開き、中から人がおりてくる。黒色のワンピースをきていて、服のサイズから少女だと言うことがわかり、僕は少女を足からだんだんと顔を見るように動かす。

 

アリサだった

 

「ごめん一夏くん、待った?」

 

普段学校学校に着てくる様な服とは違う。気品の溢れる綺麗なワンピース、彼女の美しい長い髪を少し高そうな髪留めで留めているおかげで彼女の澄んだ翠色の瞳が見えている。

でも、何故彼女がリムジンから降りてきたのか僕にはわからなかった。しかし、彼女はリムジンから降りてきたのだろう。

 

「う、うん。今来たところです、はい」

 

そんな事を考えているせいか、僕の言葉使いは非常におかしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついたよ、一夏くん」

 

あれから約一時間後、俺はアリサと一緒にリムジンに乗って住宅街から市街地へと移動した。リムジンの中はなかなか豪勢な作りになっていました。リムジンから降りるとそこにあったのは巨大なマンション。いわゆる富裕層、それも上位の人間が住む様なマンション。

 

「ここが私の家だよ」

 

「ま、マジですか……」

 

 「さあ、行こう!」

 

アリサに手を引かれて中に連れていかれる。

 

 

 

 

 

 

 

あれからマンション中に入り、エレベーターが登ること数十階分。エレベーターは停止して扉が開いた。

扉が開くとその先には一組の夫婦が待っていた。男性の方は藍色の短い髪に黒の瞳、年は大体30代だが体を鍛えているらしく下手な若者よりか肉体年齢は若いだろう。女性の方も三十代だろう。腰迄届く様な紫銀の髪をかんざしで止めている。顔つきから見て、日本人ではない。

 

「ただいま!パパ、ママ」

 

アリサは駆け足で二人の元にいくと、男性の方に飛びついた。普段の学校生活の何倍もアグレッシブな彼女をみて驚いてしまう。ああ、この人達は家族なんだ。僕の今の家族とは違う。しっかりとした目に見えないもので繋がっている。

 

「おかえり、アリサ。君はアリサのお友達かな?」

 

男声はアリサの頭を撫でながら此方に目を向ける。僕はピクリと体を震わせ、きをつけする。

 

「は、はい!アリサさんとはクラスメイトで仲良くさせてもらっております。お、織斑一夏です!」

 

僕が自己紹介をするとアリサの両親は驚いた表情をした。

 

「織斑……そうか、君が。まあ、玄関で立ち話もなんだから上がってきなさい」

 

男性はそう言うとアリサを抱えたまま、奥さんと一緒に廊下の奥の扉に入って行った。僕も靴を脱いでスリッパを履いてついて行った。でも、僕にはアリサの父親の言葉がどうも気になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ一夏くん。改めて自己紹介するね、僕は誘宵皇<いざよいこう>。そしてこっちは」

 

「妻のレインです。アメリカ出身よ」

 

あれから僕はリビングに案内されてアリサが隣に座り、向かい側にはアリサの両親がすわっている。今僕が座っているソファーもかなり柔らかい、きっとかなり高価なものなのだろう。

 

「この家について気になっているようだね」

 

皇さんが僕の眼を見て訪ねてきた。その様子はまるで自分の子どもを見る父親の様に。

 

「君は誘宵グループって知ってる?」

 

誘宵グループ、それは世界的にも有名な一大財閥であり、その分野は一般の生活用品から工業製品など幅広く事業を展開している。その名を知らない人はこの日本ではいない程だ。それくらい市民の生活に浸透している。

 

「勿論知ってますよ……誘宵?あのもしかして」

 

「そう、その通り。僕は誘宵グループの現会長で、レインは僕の秘書を務めてるよ」

 

驚いた。ということはアリサは令嬢ということになる。なんだろう、そう考えると僕の背中に嫌な汗がダラダラと流れる様な気がしてならない。

 

「一夏くん。実を言うとね、僕は君に感謝しているんだよ」

 

「感謝ですか?」

 

僕は今日初めて皇さんとであった。それなら感謝される様なことなど何もないはず。

 

「アリサの事でね」

 

皇さんがそう言うと僕の隣にいるアリサがギョッとした眼で皇さんを見る。

 

「パ、パパ何をいうの」

 

「僕たち夫婦はね、アリサを小学校までは一般の公立小学校にかよわせたいんだよ。僕もそうだったからね。それで通わせてみたものはいいんだけど、アリサは人見知りが激しいらしくてうまく友達を作れなかったんだ。だから、僕たちはとても心配したんだよ」

 

「……うう」

 

俯きながらそしてどこか気恥ずかしそうにしているアリサ。そういえば確かに彼女とは学校でよく一緒にいるが、僕以外と一緒にいるのは見た事がない。……まあ、僕も友達いなかったんですけどね。

 

「でもね、四年生になったある日、学校から帰ってくるなりすぐにレインに抱きついてね。『今日学校で一夏くんとね……』って君と学校で起きた出来事を話したんだよ」

 

染み染みと話す皇さん。ふと隣を見るとレインさんがハンカチで目元を拭いていた。

 

「僕はすごく嬉しかったんだよ。アリサに友達ができた事もそうだけど、何よりあんなに楽しそうに話すアリサは見たことなかったからね。僕も学生の頃はよく君の……って話しがずれてしまったね」

 

君の?皇さんは何を言おうとしたのだろうか。

 

「そういう事だから僕達は君に凄く感謝しているんだよ。これからもどうか娘を頼むよ」

 

そう言うと皇さんは僕に向かって頭を下げてきた。

 

「パ、パパ!」

 

「そんなの当たり前ですよ。彼女は僕にとっての最初の友達でもありますし」

 

そう言うと皇さんは頭を揚げる。その顔はまるで端から僕がそう言うと見抜いているようだった。

 

「君ならそう言ってくれるとしんじていたよ、それでこれからどうするんだいアリサ?」

 

皇さんがアリサの方を見る、僕もアリサの方を見ると耳朶まで真っ赤にしてうつむいていた。そしていきなり立ち上がると

 

「もお!パパなんてしらない!」

 

アリサはリビングを飛びたして行った。僕はアリサが飛び出して行った後、ふと皇さんの方を見て見ると。

 

「アリサにもうしらないって言われた。僕はどうすれば……」

 

「大丈夫よ、貴方。アリサは少し照れて恥ずかしかっただけですから」

 

(凄え落ち込んでる!!)

 

ソファーの上に体操座りしながら、レインさんに慰められてた。

 

「反抗期になったら言われるって覚悟してたけど、こんなに早く、こんなにきついものなのか」

 

僕は皇さんをほうっておいて、アリサの後を追いかけた。

 

 

 

それから僕は姉さんに電話で遅くなると伝えた後、アリサの部屋で一緒に遊んだ。僕が彼女に勉強を教えたり、本を一緒に読んだりしながら。すごく楽しかった。これが友達と一緒に遊ぶ事だと思えたし、笑っているアリサの顔を見て僕はさっきの話もあってかすごく嬉しかった。その後、僕はレインさんに晩御飯を食べていかないかと誘われたのでご馳走になった。すごく美味しかった。そしてとても暖かかった。

そして僕は改めて思った。

 

 

この家族は確かな絆でつながっている。

 


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