インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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サマーウォーズとトイストーリー3は同じ時間帯に放送はヤバい。どっちを見るか迷う。


今回は次の回を書きたいがために雑になった部分があるかもしれません


宵の誘い

「ラァッ!」

 

「甘いッ」

 

漆黒の太刀を振るう。しかし容易く受け止められる。足払いをくらい体が上下逆さまになる。

 

そしてつづけざまに顔面に向けての蹴り。咄嗟に顔の前で手を十字に組んでガードする。

 

蹴られた勢いで後ろに飛ばされる。剣を収束して両手にビームピストルを展開。体勢を立て直しながら敵に向けて撃つ。

 

しかし、敵はそれら全てを掻い潜りこちらに近づいてくる。ビームピストルを収束、再度太刀を展開して構える。敵は真正面からこちらに向かってくる。

 

太刀対徒手空拳、普通ならば太刀のほうが有利ではあるがこれはISの戦闘。何が起きるかわからない。

 

敵が己の間合いに飛び込めば、敵が攻撃をしかける前に一撃を入れて倒してみせる。

 

二メートル。

 

一メートル。

 

ゼロ。

 

上段からの振り下ろし、敵目掛けて放たれるその斬撃は並の盾ならば容易く切り裂いてしまう。

 

敵の肩に太刀が触れそうになる。俺はその時、僅かながらの勝利への確信を得た。

 

だがそんなものは瞬きをするよりも速く、俺の中から消え去っていった。

 

太刀が側面に打ち込まれた掌底によってへし折られた。

 

かなりの実力と集中力がなければ不可能な芸当だ。いや、それらに加えて俺が未熟なのも要因の一つか。思いのほか速度も出なかったし。

 

俺は咄嗟に太刀から手を離して後方へと下がる。しかし、既に遅い。太刀のお返しと言わんばかりの踵落としが俺の肩に直撃した。

 

膝から崩れ落ちそうになったがなんとか留まった。

 

敵が拳を構え、全力の右ストレート。

 

直撃する。

 

そう思ったが、拳は俺の顔の前で寸止めされた。

 

「よし、今日はこれで終わりだ」

 

敵がISを解除した。こちらも同じくISを解除する。

 

「ありがとうございました、シルヴィアさん」

 

俺は自主練習に付き合ってくれた人物、シルヴィアさんにお礼を言う。

 

「気にしなくて良い。言っただろ力を貸してやるって、良いんだよあんたはまだ子供って言える年齢なんだからさ」

 

「そう……ですね」

 

かれこれシルヴィアさんとの一対一での訓練を始めてかれこれ数ヶ月となる。週に二回か三回のペースでIS用の訓練場が取れる時に訓練している。

 

数ヶ月すぎているので普通ならば小学六年生なのだがそんなの俺には関係ない。俺の最終学歴は小学校中退、下手したら幼稚園卒業だ。まあ、元の生活に戻る気は今は無いのだからいいか。

 

よくよく考えれば小学校六年生の俺が戦場の最前線で戦っているのは可笑しいのだが、俺自身が選んだ道なので少年兵と言われようが構わない。

 

そして束さんとの再開からも数ヶ月となる。あれ以来000にはこれといった変化は生じていない。そして束さんから貰った004は結局ティファ以外に扱えるものがいなかったため、ティファに貸すことになった。

 

「あたしは戻るからあんたも速く戻りな」

 

「わかりました」

 

訓練場を出て更衣室にはいる。

 

「ふう……」

 

ベンチに座り込み、ため息を吐いた。疲労感が出て行く気がする。更衣室に入る時に持ってきたスポーツ飲料の入ったペットボトルを口に加える。

 

喉を流れていくスポーツ飲料が気持ち良い。全てを飲み干してくずかごの中に捨てる。

 

訓練をつけて貰っているのは嬉しいのだが、どうも最近上達している気がしない。何か目の前に壁がある気がしてならない。

 

今のままじゃいくらやっても無駄なのか?シルヴィアさんに相談してみるべきか。

 

〈通信が入りました〉

 

通信が入った。インカムのみを展開して通信を受け取る。

 

「はい……」

 

『あら、お疲れみたいね』

 

通信の相手はスコールさん、何のようだろうか。

 

「今までシルヴィアさんに付き合って貰って自主練習してたんですよ」

 

『それはいいことじゃない。それじゃあ、お疲れのところ悪いんだけど任務があるわ。数日間の泊りになるから、準備してから私の部屋に来なさい』

 

任務か、何日ぶりだろうか。入隊してから幾つの任務を受けたのかわからない。何人の人を殺したのかさえ覚えていない。

 

「わかりました」

 

通信がきれたのでインカムを収縮。ゆっくりと立ち上がってから着替え始める。ISスーツを脱いで下着を履き替える。脱いだISスーツは収縮する。シャツを着てその上から白を基調とした亡国機業の制服に袖を通した。最後にアリサから貰ったネックレスを付けて、着替えは終わった。

 

さあ、任務だ。

 

 

 

 

 

 

「日本支部への視察なら俺がいなくても良かったんじゃないですか?」

 

助手席に座り、肘をつきながら窓の外を流れていく景色を眺める。日本の首都、東京は平和そうだ。

 

訓練から数時間後、俺は任務でスコールさんと共に日本の東京にきている。

 

今回の任務はスコールさんと合同で行われる亡国機業日本支部の視察。

 

亡国機業には世界中に支部が存在しており、時折本部からの視察員が派遣される。支部の主な活動は支部のおかれている国やその近隣の国でのスパイ活動、そして本部と同様に実働部隊での戦闘行為などなど。更に支部長は半年に一度本部で行われる総会に参加しなければならない。

 

「そうね、確かにそうよ。けど今回の目的はそれだけじゃない。貴方に休息を取らせるためよ」

 

運転しながらこちらを見ることなく、スコールさんが答えた。

 

「どういうことですか?」

 

モノクロームアバター全体の休みならちゃんと貰ってるし、休息が必要なわけではない。

 

それなのにどうしてこんな事をしたのか。

 

「貴方、最近自主練ばかりして休んでないでしょ。あと少し壁にぶつかってるらしいじゃない。シルヴィアから聞いたわよ」

 

確かに俺はここ最近自主練ばかりしてあまり休んではいない。

 

「確かに休んでませんけど。それに伸び悩んでるのは誰にも言ってませんよ」

 

「意外にそういうのはわかるのよ、大人っていうものはね」

 

わかる物なのか、大人というのは凄いな。

 

「支部につくまで時間はあるわ、少し寝ていなさい」

 

「命令ですか?」

 

「違うわ、お願いよ」

 

スコールさんは運転に集中しながら、こちらにウインクをした。

 

そういうことならお言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから無事に支部の視察も終わり、現在は亡国機業の傘下の機業が経営しているホテルの一室。俺とスコールさん、それぞれに一部屋ずつ案内された。

 

飯は既に食い終わり、あとは風呂に入って寝るだけとなった。

 

ベッドの上に寝転がり、やることもなくただ天井を見上げている。普段ならば操縦技術をあげるためにISを腕だけ部分展開して、糸がきれないように綾取りをしたり、お手玉をしたり、裁縫をしたりするのだが、スコールさんから禁止された。

 

スコールさんからの命令は只管身体を休めること、筋トレは勿論禁止。任務は明明後日まであるらしく、俺たちは日本国内を観光していくらしい。

 

もしできるなら家の墓にも行きたい。親不孝なことをしてるから、いく資格もないかな。

 

「…………アリサ、どうしてるかな」

 

姉も弟もどうでもいいが、アリサが今どうなっているのかがきになる。

 

最後に見たのは見たのは俺がはNo.000を取りにいった帰りに墓の前にいるのを偶然見かけた時、あの時のアリサはまるで最初に見た虐められていた時の雰囲気そのものだった。

 

歯がゆかった。彼女に何もできない俺が悔しかった。彼女に悲しい思いをさせた俺が悔しかった。彼女を後ろから抱きしめて安心させたかった。

 

でもできなかった。

 

それをしてしまえば覚悟は鈍っていた、今この裏の世界で生きて行くという覚悟が。

 

だがいつか必ずあってみせる。この身を血で穢してしまってでもあってみせる。

 

身につけているネックレスを握りながら俺は思った。

 

「……そろそろ風呂に入るか」

 

ベッドから起き上がり、風呂場へと向かう。久しぶりに一人で風呂にゆっくりと入れそうだ。亡国機業の風呂場は集団浴場だからな、ゆっくりと入ってなんかられない。

 

グレイのやつが騒ぐから俺とアドルフが黙らせるために沈め、それをジークが静観するのがいつものことだ。

 

だが今日は違う俺の入浴を邪魔するものはいない。さあ、どれくらい風呂に入っていようか。

 

「一夏、いる?」

 

この声はスコールさんか、何のようだろうか。今日は部屋に戻って寝なさいとさっきレストランで言われたのだが。

 

「はい、何かようですか?」

 

扉を開けて、スコールさんを中に招く。スコールさんは備え付けのソファーに座り、任務の時のような真剣な表情を見せている。俺も対面するように座る。

 

「一夏、貴方に緊急だけど任務よ」

 

「任務?俺は明々後日まで休息じゃなかったんですか?」

 

身体を休めろと言ったのはスコールさんだ。それなのに任務とはどういったことなのか。

 

「ごめんなさいね、今ISを持っていて、日本にいるのは私と貴方ぐらいなのよ」

 

「……つまり、ISが必要だと?」

 

ISは貴重なため、支部にはおかれておらず本部にしかおかれていない。

 

だから俺に白羽の矢が立ったのか。それにしてもISを必要するなら相手もISを保有しているということか?

 

「そうよ」

 

「それで、その任務っていうのはなんですか?」

 

スコールさんはよりいっそう真剣な表情になり、任務内容を告げた。

 

「数時間前、誘宵グループのご息女である誘宵アリサが修学旅行中に突如現れた国籍不明のISに誘拐された。一夏、貴方の任務は誘宵アリサを救出することよ」

 

「……………………」




というわけで次はこの物語をリメイクした時から考えていた『誘宵アリサ誘拐』です。

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