大学生になり、高校時代との違いに戸惑いを感じています。
小説家になろうで別の名前で活動を始めました。
病室のベッドでティファは寝ている。初めて会った時よりも成長した顔を見ながら、初めてあった時よりも艶の落ちた髪を優しく撫でながら、俺は彼女が起きるのを待っている。
病室のベッドの側に椅子を置いてそこに腰をかける。
最後に彼女と会ったのは、去年の四月だ。春休みを利用して、アリサの家にティファの家族たちが
来た時以来だ。あの時は皆で色んなとこに出かけたな。
まあ、今は思い出に浸っている暇なんてないか。さっきまで起きていて泣き疲れ寝ているのだろう。目から頬にかけて涙の跡が見える。
安心させたい。
無事だったと伝えたい。
心の奥から感情が漏れ出してくる。喜び、自責、悲しみ、様々な感情が入り混じっていくのがわかる。自分ですらこの感情をどう処理すれば良いのかわからない。
「……ん、んん」
彼女は僅かに声を漏らし、そしてゆっくりと眼を開けた。
何と声をかけたらいいのだろうか。わからない。けれど俺の口は既に動いている。彼女のために。頭では決まっていない。けど心は決まっているのだろう。
「おはよう、ティファ」
何と酷く、情けないのだろうか、己自身が嫌になってしまう。
何故もっと彼女を安心させる言葉をかけなかった。
「…………イチ……カ?」
呆然とした様子の彼女に何と声をかけたらいいのかがわからない。
瞳に涙を浮かべ、今にも泣きそうになるティファ。泣きそうになったので、安心させようと思ったのもつかの間、彼女がベッドから起き上がり、俺に抱きついてきた。
「良かった!生きててくれね良かった!アリサから居なくなったって聞いたから凄く心配したんだよ!」
溜まっていた感情を吐き出すティファ、込められていた者を吐き出し、心の奥から喜んでいるのだろう。
居なくなった……か、アリサは俺がまだ生きているって信じてくれているのか。あいつらは死んでると思って墓に名前までいれたのに。
「怖かった……怖かった! パパもママも知らない奴らに殺されて、私も誘拐されて!知らない場所で殺し合いして…………だから! もう……」
俺に抱きついたまま、ティファは震えながら泣き始めた。
俺の履いている制服のズボンに大粒の涙が零れ落ちる。零れた涙はズボンに染みを作り、また零れ落ちる。
「大丈夫だ。俺がいる。だから安心して良い」
涙が零れないようにティファの顔を胸元に寄せて強く抱きしめて、優しく、子供をあやす母の様に頭を撫でる。
「……ありがと……ありがとう」
むせび泣きながら、ティファは声を出す。
頭を撫でながら、優しくと彼女を抱きしめる。数分で彼女は泣き止んだ。ゆっくりとティファを離し、面と面を向かい合わせる。
「大丈夫か?」
「ありがとう、イチカ。まだきついけどだいぶ落ち着いたよ」
ニコリと笑いながら返答するティファ。けどその笑顔も無理をしているのか少し引きつっている。
「……そうだ、イチカ。ちょっと近づいて」
「ん?どうした」
椅子をベッドに近づけてティファに近づく。
「よいしょ」
両手で俺の顔を動かないように固定するティファ。そして自分の顔を俺の顔に近づけ
唇と唇が触れ合った。
一瞬にも感じ、果てしなくも感じた。意識が元通りになると自然とティファの背中を掌で撫でていた。
変化があった。
舌が口の中に侵入し、俺という存在を確かめるかのように口の中を動いていく。
それから数秒後、どちらから口を離したのかわからない。
ゆっくりとゆっくりと時間が過ぎていく。気恥ずかしさが心を満たし、何か声をかけないとと思う気持ちが俺を押し出す。
「えへへ、初めてなんだよ、これ。イチカは?」
答えにくい。キスをしたのはこれで二度めだ。始めてはアリサとしたキス。不意にされたそれは暖かかった。
だが、嘘をつくわけにはいかない。
「…………いや、二回目だ。初めてはアリサとした。誘拐される前に、アリサからしてきた」
「…………そう、なんだ」
不機嫌そうでそして悲しそうな表情をしながらティファが返事をした。
「やっぱり最初はアリサなんだねえ。ちょっと不満」
頬を膨らませながらティファはそっぽを向いた。
それから彼女を宥めるまでにかなりの時間をかけた。
これから頑張らないとな、俺。
最近のキン肉マン面白いですよね。
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