インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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シロノ

    気づいたら白い部屋で寝ていた。あまりにも現実とはかけ離れている白色の空間。俺はそこにある真っ白なソファーで寝ていた。

 

    俺はここを知っている。No.000のコアを初めて動かした時に連れてこられた部屋だ。

 

    取り敢えず起きてみよう。そう思い、体を起き上がらせる。

 

「起きたのですね」

 

    少女の声が聞こえた。透き通った可憐な声が。それは俺にとって聞き覚えのあるものだった。俺が束さんの研究所にいった時に初めて聞いたISの声、そして俺がISを動かすきっかけになった声 。

 

「白騎士……」

 

    No.001のコアの人格、真っ白なワンピースを着たその少女は俺に名前を呼ばれると、少し不機嫌な顔をした。

 

「その名前で呼ばれるのは嫌です。シロノって呼んで」

 

    シロノ、それが彼女の名前か。 テーブルを挟んでもうひとつのソファーに座っている彼女を見て。

 

「じゃあ改めて、こうして会うのは始めましてだな。シロノ」

 

「よろしく、一夏」

 

    笑顔で返事をするシロノ。

 

    そう言えば部屋の中を見回したが、あいつがいない。

 

「ゼロなら直ぐにきますよ」

 

「ゼロ?……ああ、No.000の名前か」

 

「はい、No.000だからゼロです。偶然にも貴方のコードネームと同じですね」

 

     あれの名前がゼロねえ。偶然俺のコードネームと同じなんて、凄いな。

 

「それで、今日はなんで呼んだんだ?」

 

「ん……ええっと、ほらゼロが呼んだのよ。それなのにゼロの奴、何処かに行っちゃってね。ほらあの子ワガママでしょ。困ったよねー」

 

    何処か動揺してるように見えるシロノ。なんでそんなに動揺してるんだ。

 

    そう思っているとシロノの後ろに誰かが立っていた。

 

    No.000、ゼロだ。右手にはティーポットを持っており、左手で手刀を作っている。そしてそのまま左手でシロノの頭をコツンと軽く叩いた。

 

「いてっ…………ゼロ、いきなりそれはひどくない?」

 

    頬を膨らませながらゼロに抗議すシロノ。なんか意外だな。

 

「ひどくは無い。イチカを呼んだのはオレじゃなくてオマエだろ。なんとなく話がしたいという理由で」

 

「もう、それは言わないでって言ったじゃん!

 

「オマエがオレのせいにしたからだろ。それより、紅茶だ」

 

    ゼロはそう言いながら、俺たちの前に置かれてあるテーブルの上にあるカップに紅茶をそそいだ。そしてカップの近くに茶菓子としてスコーンを置いた。

 

    目の前に置かれたティーカップを掴み、一口啜る。

 

    美味しい。精神世界なのに凄い美味しい。ティーカップを一旦置いてスコーンを齧る。こちらも美味しい。

 

「……まだまだ弱いな。このままだとオマエは何もできないぞ」

 

    ゼロが唐突に呟いた。

 

    『何もできない』

 

    この言葉の『何も』が何を示しているのか、俺にはなんとなくわかる。それには決して確信は持てないけど。

 

「わかっている。そんなの俺がよくわかっているさ。弱い、このままだと遅かれ早かれ戦場で死ぬだろうな。だからもっと強くなって見せる」

 

    強い眼差しでゼロを見る。ゼロは持っていたカップをテーブルに置き、返すように此方を強く見てくる。

 

「…………そうか、なら頑張ってみろ。オレはオマエの側で見守っていてやる。困っているなら助けてやる。なんせ、オレはオマエの相棒だからな」

 

「ふふっ、ゼロも一夏には優しいんですね。その優しさを少しは私にも分けて欲しいなー」

 

「うるせぇ……」

 

 

    それから、取り留めのない色々な話をした。 

 

    数年振りに再会した友人たちのように、俺は今までのことをシロノに話し、それをシロノは頷きながら聞いていた。

 

    そして時間が過ぎていき、俺は二人に別れの挨拶を済ませて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    再び目覚めるとまたしても白い部屋だった。でもさっきまでいた部屋とは違い、薬品の匂いで満たされている。首を動かして周りの様子を伺ってみると四方を白いカーテンで覆われている。

 

(ここは……病室か?なんでこんな場所に)

 

    なぜここにいるのか疑問に思いながら一夏はベッドから起き上がる。まだ目ははっきりとせずに妙な気だるさが体に残っている。

 

「なんで病室にいんだよ。確か敵と戦ってそれでシルヴィアさんが来て…………そうか、それで気絶してあの部屋にいたのか。なるほど」

 

    あの戦いが終わって直ぐに気絶してからどれくらいの時間が過ぎたんだろう。ここが本部の医務室だから少なくとも三時間は過ぎているはずだ。

 

「そうだ……ティファがいた。行かないと、早く、早くティファの元に」

 

    ベッドから起き上がって、ベッドの近くにおいてあったサンダルを履く。近くにあった亡国機業の制服に着替えて、出口の扉に向かう。

 

(ティファがいるのは何処だ?まあ、誰かに聞けばわかるか)

 

    扉の前に立った時、扉が一人でに動いた。この扉は自動扉では無いので一人でに開くことはない。誰か入ってきたのだろうか。

 

「あれ?一夏、起きたんだ」

 

    オータム、俺と同じ施設にいた橙色の髪の少女。今は同じ部隊に所属している。

 

「ああ、今な。身体はどこも異常ない」

 

「そう、なら良かった。心配したぞ、シルヴィアさんに担がれてお前がつれてこられた時には」

 

「そうか、すまない。それで俺はどれくらい寝てた?」

 

「えーっと、確か六時間ぐらいかな」

 

「そうか、ありがとう」

 

    六時間か……ならティファが起きてる頃か?    早くいかないと。

 

「俺がお前に渡した女の子、今どこにいる」

 

「三つ隣の病室だけど、どうして?」

 

「いや、なんでも無い。ありがとう」

 

    三つ隣か、行くか。

 

    オータムの横を通って病室を出ようとした時、オータムに肩を掴まれた。

 

    少しだけ気恥ずかしそうな顔をしながらオータムは。

 

「あの……その……無事で良かった」

 

「うん、ありがとう」

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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