インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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少し間が空きましたが無事です。

なんとかしてこの作品を終わらせなければ、オチは見えているんだ。


第134話

 

 

「アハハハハハハ!!!!もっと、もっと暴れさせろォ!!」

 

破壊、破壊、破壊、破壊。

 

圧倒的なまでの破壊の音が周囲に響き渡る。

 

あたり一面は既に崩壊させられた校舎の瓦礫に溢れており、今も敵が攻撃を行う度にその量は増え続ける。

 

並のISでは出せないような圧倒的な威力のエネルギーの弾丸が次々と撃ち込まれる。

 

「……困りましたね」

 

IS学園の教師である山田麻耶は一方的に攻め込まれている現状に焦りを隠すことができない。

 

この場には彼女の他に数名の教師がいるが、たった一機のISを前に圧倒され続けている。

 

そのISは通常のISの三倍近いサイズだ。腕や足の長さだけでも並のISの全長と同じくらい、手足の太さは比較にならない。

 

そして火力は比較にならない。その手足から放たれるエネルギー砲の直撃を食らってしまえばシールドエネルギーの大半は削り取られてしまうだろう。

 

その火力と肩を並べることができるのは白式や黒零といった覚醒したISコアを使用した機体だけかもしれない。

 

しかも速度や機動力も並ではない。覚醒してないコアを使用しているISではもしかしたら最高の性能なのかもしれない。

 

一個のISコアではここまでの性能を引き出すことはできない。

 

だからこのISには──

 

「複数のコアが使われていますね」

 

敵のISの解析を行った山田麻耶は

その現実を信じたくはなかった。

 

敵のISには少なくとも10個のISコアが使用されている。手足と胴体にそれぞれ二個ずつ、胸にある一個のISコアだけが篠ノ之博士が作り上げたオリジナルで、残りは量産型のコアだ。

 

だがそれらはデュノアの使っているデュアルコアのようなものではなく、ただ単に同時に使用されているだけだ。

 

それでもこの火力なのだ。

 

 

 

「……あんな数のISコアを動かして体に負担はないのかしら」

 

通常であれば複数のISコアを同時に使用するのは体にかなりの負担がかかる。デュノアの使っているデュアルコアであれば話は別なのだが。

 

あの数のコアを使用するとなると、下手をすれば肉体に痺れなどの後遺症が残ってしまう。それだけ脳に負担がかかってしまうのだ。

 

実際、かつて実験で複数のコアを同時使用した際のパイロットの体には負荷がかかり、後遺症を患ってしまった。

 

だが麻耶の目の前で暴れまわるISの操縦者には後遺症を恐れる事によって生じる躊躇いは一切感じられなかった。

 

「出せ!あの黒いのと白いのを!!殺してやる!殺してやる!アタシの体を奪っていったあいつらを殺してやる!!」

 

暴れまわるISをこれ以上は放置しておけない。

 

数機のISで巨大なISを取り囲む。

 

「……ぁあ?そんな雑魚数機でスカーラ様のルインシュナーの相手になるわけねえだろうが!!」

 

スカーラの四肢を数機のISが超硬度のワイヤーで縛り上げる。

 

そしてその間に残った教員たちは敵の胴体めがけて一気に攻撃を仕掛ける。

 

「アハ!何処までも平和ボケしている。そんなので止められるかよ!この雑魚どもが!!」

 

ルインシュナーの四肢が胴体から分離される。分離された四肢は空中で自由自在に動き回り、それぞれを縛っていたISに攻撃を仕掛ける。

 

「な!?」

 

IS学園の教員たちはルインシュナーからの予想不可能だった攻撃に対して、対応が一手遅れてしまった。

 

縛り上げたワイヤーは意味をなさず、空中を自在に動き回る手足は幾度も殴打を繰り返す。

 

「このスカーラが、ただのデカブツを使ってたまるか!」

 

更には単なる胴体にすぎなかったパーツが変形して一機の通常サイズのISに変わった。

 

左手には盾、そして右手には剣、今までの異形な巨体からは想像できないほどの普通のISがそこにはいる。

 

「今なら、普通のISだ!!」

 

打鉄の後継機にあたる第3世代の機体に乗った教員が真っ向からスカーラに迫る。

 

「舐めんなよ!!」

 

スカーラは迫ってきたISの攻撃をかわし、首裏を盾で殴り、最後に浴びせ蹴りを食らわして地面に這い蹲らせる。

 

「お前らみたいな平和ボケした相手に殺されるわけないんだよ!!」

 

周囲に飛び回っていた手の一つが、一人の教員をその巨大な手で鷲掴みにした。

 

そのまま壁に貼り付けにし、掌からエネルギーを放つための準備を始める。

 

「かわしてみろよ!!かわしてみろ!!」

 

手に込められているエネルギーは普通のISでは耐えられるものではない。

 

下手をすれば絶対防御を貫通されてしまうかもしれない。

 

殺意の塊が教員の間近に突きつけられる。

 

「じゃあ終わり」

 

放たれたエネルギーがISを貫き、鷲掴みにしていた教員を投げ捨てた。彼女は僅かに息が残っている。今ならばまだ助かるかもしれない。

 

だが動けない。

 

これ以上戦力を削れば確実に戦線は崩壊してしまう。今は助けるための人材を向ける事すら難しい。

 

「さあ、戻ってこい」

 

散らばっていた手足が胴体のある部分に集まり、変形を行って再び合体を行った。

 

「………あぁ、そろそろクスリが切れる頃合いか。この機体強いのはいいが、クスリ打たないと肉体が持たないのは厄介だな。今度からは予備を準備しておくか…………最後に大暴れだ!!」

 

ルインシュナーの全身のありとあらゆる場所に取り付けられた砲台から四方八方に向けて、大小大きさの異なるエネルギー弾が周囲一面に放たれ、校舎を破壊していく。

 

「止めてみろよ、止めれるモノならなぁ!!」

 

 

──その時、光が視界を埋めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、百春とガーベラが戦闘しているエリア。

 

戦いは苛烈を極めており、すでにかなりの時間戦闘を行ってはいるが決着がつく気配がない。

 

極限に近い集中を行い続ける両者、その集中はいつ途切れてもおかしくはない。

 

だがそんな気配は一切感じられない。

 

「…………攻撃が通じなくなってきてる?」

 

違和感を覚え始めたのはいつからか、ある時を境に攻撃が空間を捻じ曲げられることによって防御されている。

 

空間の捻れは百春とガーベラの間に存在する距離を崩壊させる。捻じ曲げられた空間に阻まれて刃がガーベラまで届かない。

 

「……単一能力か」

 

これを見て百春が真っ先に疑ったのは零落白夜や零落極夜のような単一能力の存在であった。

 

「…………いや、違う」

 

敵がそんなのを発動させた気配は一切感じられなかった。オートで発動するものであれば最初から発動させておけば良かったはずなのに、攻撃が通じなくなったのは戦いが始まってから時間が経過した頃だった。

 

「……単なる技術………空間…………そうか」

 

百春の頭に一つの考えが浮かんだ。

 

そしてすぐさま対応に移る。

 

真華を手にとり、相手との正しい間合いを探る。間合いが狂ってしまうのであればそれを修正すれば良いだけ。

 

真華で袈裟懸けを行う。

 

だがその攻撃はやはり空間が捻じ曲げられることによって防がれる。

 

だがそこまでは百春も織り込み済み。空間の捻れをよく観察する。

 

「成る程」

 

返す刃で逆袈裟懸けを行う。

 

「何度も同じ手を」

 

再度空間が捻じ曲げられてしまい、攻撃が防がれそうになる。

 

「今!」

 

だが空間の捻れは突如真逆の方向に力をかけられて元の空間に戻ってしまう。

 

「ッ!?」

 

ガーベラは僅かに反応が遅れてしまった。

 

元の空間で、正しい間合いによって動かされた真華はガーベラが乗る『白薔薇』の胴体を僅かに傷つけた。

 

「チャクラで空間を捻じ曲げて防御していたのか……種がわかれば怖くはない。コッチが真逆の力をチャクラでかければよいだけだ」

 

百春はガーベラの相手が自分で良かったと思った。相手がチャクラを使って防御してくる以上、此方もチャクラを使えなければ攻撃が通らない。

 

もしこれがチャクラを使えない人が戦っていたら一方的に倒されるだけだっただろう。

 

「………傷つけられた………私が……ゼロ以外に?」

 

ガーベラが百春によって傷つけられた装甲をワナワナと震える指でそっと優しく撫でた。

 

「許さない、私を傷つけていいのはゼロだけなのに………だから殺す」

 

「殺されないよ………死ねないからね」

 

「そう………ん?…….チッ!」

 

ガーベラが突然今の戦いを放棄して何処かへ飛び去って行った。それはまるで何かから逃げるような様子であり、百春はその事が非常に気になった。

 

「……何が?……マズイ──」

 

 

 

──その時だ。

 

 

 

莫大な量のエネルギーが天から放たれ、IS学園は光に包み込まれた。

 

 

 


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