インフィニット・ストラトス ファントム   作:OLAP

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第117話

「ああ……ああ」

 

エネルギーに肉体を貫かれ、クロエは膝から崩れ落ちる。地面に倒れそうになった彼女の肉体をゼロは咄嗟に抱きしめた。

 

「おい!おい!」

 

ゼロは消えかかりそうになるクロエの意識を必死に呼び止める。

 

「私は……私は」

 

「黙ってろ!傷は浅い!すぐに治療すれば命は全然助かるんだよ!それにテメエはナノマシンがあるだろうが!……死ぬな、殺すぞ!」

 

傷口を救急キットを使用して塞ぐ。

 

「……そうか、なら……少しだけ眠らせてもらうよ」

 

そう言ってクロエは瞳を閉じた。

 

ゼロは慌てて脈を測る……まだある。死んではいない。だが治療が必要である。

 

「良かった……だが誰が………………!?」

 

一機のISが此方に迫ってきている。そしてそのISの反応を見た瞬間に嫌な汗が大量に流れた。

 

「ガーベラァアアア!!」

 

「久しぶり、会いたかった」

 

ネオ所属、ゼロとは長年の因縁がある好敵手ガーベラ。

 

このタイミングで、ゼロ達とクロエ達両者が疲弊しきったこのタイミングでネオは現れた。

 

最悪だとゼロは心の中でぼやいた。

 

敵はあと何機いる。

 

少なくともガーベラともう一機、クロエを狙撃した機体がいるはずだ。

 

「さあ、楽しみましょう!」

 

ガーベラが接近しながら大斧を構える。ゼロはクロエを抱えている為に対処するのが困難になっている。

 

「させないよ」

 

瞬間移動で百春が二人の間に入り込み、左腕に付けられてある『真雪』の盾で大斧の一撃を受け止めてみせた。

 

「兄さん!」

 

「エム、任せた!」

 

近づいてきたエムにクロエを渡す。ビットを使えるエムならば両手が塞がっていても戦えると判断したからだ。

 

その時だ。

 

クロエの搭乗する黒鍵からNo.1000のコアが分離した。

 

黒い光を放つ球体、球体から妖精のような翼を伸ばし、大きく翼を羽ばたかせている。

 

その光景を見たこの場にいる全員の動きが止まった。No.1000に魅入られている。

 

あまりにも蠱惑的で、あまりにも魅力的で、あまりにも禍々しかった。

 

No.1000が飛んでいく。漆黒の羽を羽ばたかせ、災厄の化身はある場所に向かう。

 

その先にいたのは一機の全身装甲タイプのIS、漆黒のボディにはこれと言った特徴は一切見られない。必要最低限の装甲しか付けられていない

 

本当に特徴がない。

 

あえて言うなら、右手に持っている弓型の遠距離用のエネルギーライフルだけだろう。

 

「煩い、奴だ」

 

声はボイスチェンジャーにかけられている為無感情に聞こえる。

 

黒いISはNo.1000を左手で掴んだ。No.1000は翼を縮小させ、ISの左手に収まってみせた。

 

「チッ!」

 

No.1000をネオに奪われるわけにはいかない。凶悪凶暴すぎるじゃじゃ馬は今この場で回収しなければならない。

 

迫り来る黒零に対して漆黒のISは弓を突きつけ、そして矢をつがう事なく指先にあるトリガーを引いてエネルギーの矢を放った。

 

「効くか!」

 

ゼロは零落極夜を開放させた右手でソレを打ち消し、瞬間移動と錯覚できるほどの超高速の瞬時加速で黒いISとの距離を詰めた。

 

ゼロの拳が黒いISの頬を捉え、装甲を砕いた。

 

続けざまに連続攻撃を仕掛けようとしたが、No.1000が黒い色の強烈な光を放ってゼロを押し返した。

 

「ほう、こんな事も出来るのだな」

 

黒いISが声をはなった。

 

その声はボイスチェンジャーによって変えられていなかった。先ほどのゼロの一撃で破壊されてしまったようだ。

 

その声を聞いた瞬間にゼロ、百春そしてエムの心臓が僅かに止まった。それ程までにその声は衝撃的だった。

 

それは男の声だった。

 

それだけならまだマシだった。

 

黒いISにのるその男の声は三人がよく知っている人間の声だった。

 

「全く、何が最高の兵器だ」

 

男がISのヘルメットを外し素顔を晒した。

 

 

 

 

 

 

「……………兄、さん?」

 

 

 

 

 

仮面の奥にあったのは、よく見慣れた『一夏』の顔だった。

 

 

 

 

 


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