ストライク・ザ・ブラッド~白き焔~   作:燕尾

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えー、燕尾です。
今回は事前に言っておきます。


ものすっっっっごい駄文です。
こんな感じのシーンを書きたかった衝動があったからです。
読まれる方はお覚悟を!!


第二十三話

 

 

白旗を振りながら接岸してきた揚陸艇(ようりくてい)から下りてきたのは革製の深紅のボディースーツを着た豊満な肉体の女性と革ジャン姿の長髪の男、どちらも登録魔族の腕輪を付けていた。そして最後に聖職者を思わせる黒服に白衣を着た男が上陸してくる。

 

(男は獣人で女の方は――吸血鬼か)

 

劉曹は二人の登録魔族の気配で正体を察する。

 

「よう、バカップル。元気そうだな。仲良くしてたか――?」

 

革ジャンの男が軽い口調で言った。

劉曹は後ろの白衣の男はともかく目の前の二人に面識はない。おそらく古城と雪菜ことを言っているのだろう。

 

「……ロウ・キリシマ……てめえ、よくもぬけぬけと」

 

案の定、古城がロウ・キリシマという男を睨み、殺気だった声を出している。彼は慌てて白旗を振った。

 

「待て待て。恨むならベアトリスを恨めって言ったろ。俺はただの使いっ走りだっての」

 

責任を押し付けられたベアトリスと呼ばれた女は、気怠(けだる)げに髪をかき上げる。

艶かしくも退廃的な色香を振りまく彼女に、古城は言いかけた文句を忘れて黙り込んだ。

どことなく責めるような目つきで、雪菜が古城を睨む。劉曹も呆れたように溜息をつく。

 

「久しぶりですね、叶瀬賢生」

 

無防備に前に歩み出たラ・フォリアが、黒服の男を見つめて言った。

自分の胸に手を当てて、叶瀬賢生が(うやうや)しく礼をする。

 

「殿下におかれましてはご機嫌(うるわ)しく……七年ぶりでしょうか。お美しくなられましたね」

 

「わたくしの血族をおのが儀式の供物にしておいて、よくもぬけぬけと言えたものですね」

 

冷ややかな口調で、ラ・フォリアが答えた。しかし賢生は表情を変えない。

 

「お言葉ですが殿下。神に誓って、私は夏音を(ないがし)ろに扱ったことはありません。わたしがあれを、実の娘同然に扱わなければならない理由――今のあなたにはおわか「そんなこと、どうでもいいんだよ」――なに?」

 

冷気のような低い声でさえぎった劉曹を睨む賢生。

 

「どうでもいいといったんだ。お前らが模造天使(エンジェル・フォウ)を造るためになにをして夏音になにをさせたなんか……ただ」

 

劉曹が途中で言葉を切る。その瞬間その場にいた全員が劉曹が放った凄まじい殺気に身体を強張らせる。

 

「お前らは許されざることをしているんだ。それ相応の覚悟があるんだろうな?」

 

「……はっ、なにいきがってんの? ガキ一人になにができる」

 

凄まじい殺気を放つ劉曹に一瞬(ひる)むも、ベアトリスは劉曹を挑発し気力を保つ。

 

「面倒くさいからそこのガキは置いといてとりあえずこっちの要求を伝えるわ。まずはアルディギアのお姫様、あんたは無駄な抵抗をやめて投降しな。おとなしくしてれば命までは取らないわ」

 

「企業の走狗(そうく)ごときが、このわたくしに指図しますか。ずいぶんとのぼせ上がったものですね」

 

ラ・フォリアが、(さげす)むような視線をベアトリスに向けた。

 

「舐めた口を利いてくれるじゃないの、雌豚(メスブタ)。まあいいわ。今すぐあんたを殺す気はないから。代わりに死んだほうがマシってくらい、気持ちいい思いをさせてあげる」

 

酷薄(こくはく)そうに舌なめずりをして、彼女は気怠(けだる)げな視線を古城たちに向けた。

 

「で、あんたたち二人にはチャンスをあげる」

 

どういう意味だ、と古城はベアトリスを睨む。

ベアトリスはキリシマに視線を送り、彼は甲板に積まれていたコンテナのケースの(ふた)を開けた。

 

「――叶瀬!」

 

「叶瀬さん!?」

 

「……」

 

古城と雪菜はケースの中に横たわっていた少女の名を叫ぶ。

賢生は服の懐から制御端末(リモコン)を取り出しボタンを押す。すると夏音は白い冷気をまとったままゆっくりと起き上がった。

 

「第四真祖に、獅子王機関の剣巫。そして、ついでにそこのガキ。三人ががりでもかまわないからさ。この子と本気で戦りあってくれる?」

 

「ふざけるな。なんで俺たちがそんなことしなきゃなんねーんだ!?」

 

「そんなこと、決まっているでしょうが。売り込みに使うのよ。我が社の"天使もどき"が、世界最強の吸血鬼をぶち殺しました――ってね」

 

物分りの悪い幼児を見るような、鬱陶(うっとう)しげな表情でベアトリスが言う。その直後、

 

召喚(サモン)――獅子王アリウム、黒竜王アルタリカ」

 

今まで黙っていたが、我慢の限界だった。劉曹は自分と契約を結んだ二体の王を召喚する。そして、

 

「我、汝と契約を結びし力を解放するもの」

 

続けて言葉をつむぐ劉曹。彼の周りに巨大な旋風が巻き起こる。

 

召喚(サモン)――顕現せよ。鷹王オウガ」

 

甲高い奇声を上げ、現れたのは巨大な鷹だった。

白炎の獅子にも劣らない身体に羽ばたくたびに凄まじい風を巻き起こす大きな翼。鋼をも貫く鋭い(くちばし)

召喚を終えた劉曹は古城が今まで見たこともない憎悪にまみれた目をしていた。

 

「さあ、始めようか」

 

「おい待て、劉曹!」

 

「たかが吸血鬼と獣人だ。すぐに終わらせてやる」

 

聞いた者をすべて凍らせるような声で言う劉曹を古城は制止しようとする。しかし、劉曹は聞く耳を持たなかった。

古城もベアトリスたちが言っていることには腹が立っている。だが、劉曹の怒りは異常なものに思えた。

 

「はっ……言ったはずだよ、あんたがいきがったところでなにも出来やしない」

 

ベアトリスは異様な瘴気を噴出す夏音を見てニヤリと笑う。

不揃いな翼を展開して、夏音がゆっくりと浮上する。見開かれた彼女の目に感情の色はなく、瞳孔は焦点を結んでいない。

 

「あなたはそれでいいのですか、賢生」

 

制御端末(リモコン)を握る賢生を見つめて、ラ・フォリアが問いかけた。

賢生は、王女の視線から逃れるように背後を振り向き静かに言う。

 

「やれ、XDA-7。最後の儀式だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に動き出したのは雪菜だった。

翼を広げ浮上する夏音に弾丸のような勢いで跳躍し、銀の槍を突き立てる。が、

 

「くっ――!?」

 

夏音に穂先が届く直前に雪菜は弾き飛ばされてしまった。

 

「これは!?」

 

槍を地面に突き立てながら着地した雪菜が驚愕の表情でうめいた。

以前"仮面憑き"と戦ったときと同じように禍々しい光が雪菜の槍を阻んだのだ。

 

「夏音が起動する前に魔術を無効化させようとしたみたいだが無駄だぞ。夏音はいま存在自体が天使になっているといっても過言ではないからな」

 

極めて冷静に雪菜に告げる劉曹。その声色が普段の劉曹からはでないほど感情の無いものだった。

 

「その通りだ。人の手で生み出した神の波動が、本物の神性を帯びた模造天使(エンジェル・フォウ)を傷つけられる道理もあるまい」

 

後に続いて雪菜の持つ銀の槍を眺めながら説明する賢生。

 

「そんな……ことが……」

 

雪菜がきつく唇を噛む。真祖の眷獣すら(たお)し得る彼女の槍が、ここまで完全に無効化されるのは初めてのことだったので、さしもの雪菜も動揺を隠せない。

それなら、と雪菜は制御端末(リモコン)を持つ賢生に向き直り、走り出そうとする。だが、それをわかっていた劉曹は雪菜を呼び止める。

 

「待て、姫柊。言ったはずだ。あんな雑魚どもなんざすぐに終わる」

 

「楠先輩……?」

 

どこか様子がおかしい劉曹に雪菜は違和感を覚える。彼らを見る劉曹の目に正気が無い。

 

「フフフフフ、殺す、殺してやる。じっくり嬲って絶望を味わわせてから殺してやろう」

 

そう言う劉曹は殺気の塊だった。湧き上がる泉のように劉曹から力が感じられる。

その膨大な力の前に全員が固まる。

 

「おい、劉曹! ――ぐっ!?」

 

落ち着かせようと古城が劉曹の肩をつかむ。その瞬間、古城の手が弾き飛ばされた。

ジンジンと痺れるような痛みが襲う。まるで劉曹から拒否されたように。

 

「先輩、大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ。だけど一体劉曹になにが起きてんだ? この感じはいったい……」

 

「呪力や仙術の類ではありませんね。どちらかというと魔力に近い感じがします」

 

ラ・フォリアが冷静に分析する。それでも正体はわからなかった。

 

その中でもただ一人――雪菜だけは覚えがあった。

 

「まさか、あれが神力……!?」

 

「わかるのですか、雪菜」

 

問いかけてくるラ・フォリアに雪菜は頷く。

以前に西欧協会の殲教師、ルードルフ・オイスタッハと戦った際に雪菜は劉曹の力を受け取った。そのときのものと似ていたのだ。

しかし、今劉曹から感じられる力はあのようなものとはまったく別――凍てつくような冷たさだった。

 

「ですが、これは別物――というより逆だと思います」

 

「どういうことだ?」

 

「楠先輩が使う"神力"は二つの性質があると思うんです。おそらく楠先輩の"感情"で性質が変わっているんじゃないでしょうか?」

 

「感情……確かにいまの劉曹は普通ではありませんね」

 

ラ・フォリアは心配そうに劉曹を見る。

虚ろな目はなにも映さず小さく呟いている。その間にも劉曹の神力が上がっている。

 

「なあ、いま劉曹が戦ったらまずくないか?」

 

「劉曹がこのまま力を振るえば島ごと吹き飛ぶでしょう」

 

最悪の状況を想像した古城にラ・フォリアが付け足すように言う。

 

「古城、雪菜。劉曹のことはわたしに任せてもらえませんか?」

 

「大丈夫なのか、ラ・フォリア?」

 

「はい。これでも劉曹についてはわたくしもわかっているつもりなので」

 

そういって、決意したように前に出るラ・フォリア。劉曹は虚ろな目で呟いている。

 

「殺す……殺す……」

 

「劉曹」

 

ラ・フォリアはギュッと劉曹を抱きしめた。劉曹からの拒否反応で激しい痛みが奔るが関係ない。

 

「劉曹、落ち着いてください。もう誰もあなたを使ったりしません(・・・・・・・・・・・・)。大丈夫です――ちゃんと劉曹(あなた)を見ていますよ」

 

耳元で優しく囁くラ・フォリア。抱いている劉曹の身体は生きているとは思えないほど冷え切っていた。

ラ・フォリアは抱く腕の力を強める。

 

「……ラ……フォリ…ア……?」

 

徐々に劉曹の身体に温もりが戻っていく。それと同時にラ・フォリアを襲っていた拒絶の痛みが退いていった。

 

「はい、劉曹」

 

途切れ途切れに呼んだ名前にラ・フォリアは笑顔で答える。次第に劉曹の目に正気が戻っていく。

そして力の奔流が止まり、先ほどとは打って変わって急激に収まっていく。

 

「大丈夫ですか? 辛いようでしたらもう少しこのままでも――といいますかずっとこのままでも……」

 

「いや、大丈…夫……」

 

若干恥ずかしさ交じりに言うラ・フォリア。そこで劉曹は気がつく。彼女の柔らかさに。

 

「――――悪いっ!!!!」

 

顔を真っ赤にしてバッと離れる劉曹にラ・フォリアは惜しそうな表情をする。

もっと、あのままでもよかったのに、そう言いたそうにしていた。

劉曹は抱かれていたときの色々が頭の中で渦巻いていたのか、顔を紅くしてひとこと。

 

「迷惑かけた」

 

「全然迷惑なんてありませんよ。むしろわたし的にはまだ足りないくらいです」

 

自分の失態にただただ紅くなる劉曹。二人の間に妙な空気が生まれる。

 

『…………』

 

劉曹の力を目の当たりにして固まっていた全員が、今度は二人に呆れるような視線を注ぐ。

 

「……姫柊」

 

「なんですか……」

 

代表するように古城が力なく口を開く。雪菜も疲れたように返事をする。

 

「なんで俺らはこんなイチャついているところを見せられないといけないんだ」

 

「見てるこちらも恥ずかしいですよね……」

 

敵を目の前にして繰り広げられた光景に二人はため息をつくしかなかった。

 

 






はい、今回はちょっと短めに終わりです。

ええ、こんなひどい文。さっさと終わらせるに限ります。

次回は少し長めに投稿する予定でふ

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