~パプニカ王国~
ジゼルはハドラーの命令でパプニカに来ていた。
その原因は少し過去に遡る…
~回想鬼岩城~
「ハドラー様!何の御用でしょうか?!」
ジゼルはハドラーに向かって目をキラキラと光らせてハドラーの命令を待っていた。
「ジゼル…お前はパプニカ攻略に行け。これはバーン様の命令だ。」
「へ?パプニカ攻略って…ヒュンケルが担当している…あそこですか?」
「ああ、なんでもレオナ姫とか言う王女を取り逃がしたとかで…どうした?」
ハドラーはジゼルの様子が変だと気づき話しを止めた。
「…いえ、なんでもありまぜん…ヒック…どうぞ…」
ジゼルは涙を流しており、ハドラーのマントを掴んでいた。
「ジゼル…無理をするな。もし俺でよかったら泣きついていいんだぞ…」
流石のハドラーもジゼルを可哀想に思ったのかジゼルに優しい言葉を掛けてあげた。
「ありがとうございます…うわーーーん!!」
ジゼルはハドラーに目が腫れるまで泣きつき、感謝していた。
泣きつき終わった後、ハドラーが優しく声をかけ、ジゼルを安心させた。
「それじゃ頼んだぞ。俺はお前を待っている。」
それは言葉の通り、期待して待っているという意味だったが…
「はい…!(ハドラー様への愛がやっと届いた!!今日はいい日ね!!)」
ジゼルはハドラーにプロポーズされたと勘違いし、鬼岩城に出るまではハイテンションだった。
~回想終了~
「はぁ…」
とはいえ、ジゼルはハドラーの命令と言えどもハドラーと離れることを嫌がる。そのためジゼルは少し落ち込んでいる。
「そう気を落とすな…」
ヒュンケルがそうなぐさめるが今のジゼルには逆効果だった。
何しろハドラー以外の男と仕事をするのだ。
浮気の疑いをかけられたらジゼルは自殺する覚悟は出来ている。
「気を落とすな…?そもそも気を落とす原因を作ったのは、パプニカごときすぐに落とせなかったあんたのせいでしょうが!!」
ジゼルはヒュンケルがパプニカをすぐに落とせなかったことを指摘し、ヒュンケルを黙らせる。
「すまん…」
ヒュンケルは謝罪の言葉しか出ず、ただ謝るしかなかった。
とはいえヒュンケルはパプニカ王国を壊滅寸前までに追い込んでいる。その上パプニカ国王を殺し終わっており、後は後継者のレオナ姫を殺すか生け捕りにすればパプニカ王国は攻略完了だ。
しかし、そのレオナ姫が行方不明であり部下全員で探しても見つからない。
「それはそうと…レオナ姫に顔は見せていないんでしょうね?」
ジゼルはヒュンケルがレオナ姫に会っていなければ国の使者としてまだ使えると思っていたが…
「いや…それはあると言えばあるが…」
現実は残酷である。ヒュンケルは不死騎団長として顔を見せてしまったので使えないことが分かった。
「あ~もう…ダメじゃん。ヒュンケルはもうマダオね、マダオ。」
「マダオ?」
「まさにダメな男。略してマダオ。」
「そこまで言うか!?」
「言うわよ。」
「ぐはっ…!」
ジゼルはヒュンケルに精神攻撃を放った!効果は抜群だ!
「さて…もう遅いからご飯にするわよ。手伝ってヒュンケル。」
「料理なんて出来るのか?」
「材料があればほとんどの食べ物は調理出来るわよ。」
「なるほど。」
「だけど今は肉しかないよ?それでもいいなら作るけど…」
「頼む…」
~親衛隊隊長料理中~
料理はあっさりと出来上がり、ヒュンケルはそれを食した。
「美味い…!」
あまりの美味さにヒュンケルは声に出して表していた。
「でしょ?ほら、そんなに慌てない。」
「しかし…!こんなに美味いのは初めてだ。俺がアバンやミストバーンに師事していた頃もこんなに美味いのは…なかった…」
ヒュンケルはそう言って涙を流していた。
「そう…じゃあ、食べ終わったらもう寝なさい。勇者と言っても人間だし、夜出かけるような真似はしないでしょう…明日からダイ抹殺に行きなさい。」
「分かった。また明日。」
「ええ…おやすみ。」
~翌日~
朝になり、ジゼルはヒュンケルの寝た所を見て見たが…もうそこにはおらず、既に出かけていたことが分かった。
「さてと…レオナ姫は適当に歩いて探しますか…」
そう言ってジゼルは歩き始めて、壊れたパプニカ城の中へと入って行った。
~パプニカ城内~
「結構派手にやったわね…」
ジゼルがパプニカ城内を見た感想がこれだ。
何故なら…パプニカ城内は無茶苦茶に荒れており金銀財宝なども見当たらずに、いかにもコソ泥がやりました的な感じだった。
「…ん?あれは…?」
ジゼルが歩いていると、光るものを見つけて近づくと…青い宝玉の入ったナイフがあり、ジゼルはそれを拾った。
「これはパプニカ王家のナイフ…?なんでこんなものが…」
ジゼルはそれを見てパプニカ王家のナイフだと分かった。何故なら、そのナイフには王家の紋章が書かれておりすぐに分かった。
なお、パプニカには後二本ほどこのナイフと宝玉の色こそ違うが同じナイフがある。残りの二本のうち一本はダイが所有しており、もう一本はレオナが所有している。
「なんにしても持っておいた方が良いわね…何かの交渉に使えるかもしれないし。」
ジゼルはそう言うとパプニカのナイフをしまい、再び歩いて行った。それが後々彼女を救うことになる。
ジゼルは城内を外へ出ようとすると…戦闘をしているダイとヒュンケルの姿が見えた。
「(まずい!)」
ジゼルは咄嗟に隠れて気配を消した。その理由は先ほどジゼルが拾ったナイフにある。
もし、ナイフを持っていることがばれたら…?そう思ってしまい、ジゼルは咄嗟に隠れたのだ。
それに元々ジゼルは見つからないようにする行動に慣れていない。それ故の行動だった。
しかし、ダイ達はジゼルの気配に気づくはずも無い。それもそのはず。ジゼルの視力は竜の血を半分受け継いでいるせいか、かなり良い。その上、咄嗟に気配を消したためバレるはずもない。
「他の入り口から出るしかないわね…」
ダイ達がジゼルの入ってきた入り口付近にいるためそこからは出られない…となれば他の場所から抜け出すしかない。そう思って、ジゼルはすぐに行動に移した。
そして他の入り口から外へ出てみると…ジゼルは目を丸くした。
「クロコダイン!?」
死んだはずのクロコダインがヒュンケルの技をくらっているのを見たからだ。
「まさか…クロコダインが魔王軍を裏切った…?」
ジゼルは状況的に考え、ヒュンケルがダイ達に味方するはずはない。となればクロコダインがダイ達を庇い、味方になったという考えが浮かんだ。
しかしクロコダインは忠義に厚い男である。バーンは当然のこと、六軍団長の中でもハドラーに対して忠義を見せておりジゼルもそのことを良く理解していた。
そのクロコダインが裏切ったと考えにくいが…
「とりあえず、行って確かめましょう…!」
ジゼルはダイ達がガルーダに捕まって逃げたのを確認し、ヒュンケルの元へと向かった。