昨年は別の小説を書いていたせいもあって更新することはございませんでしたが今年こそは更新をしていきたいと思います
「半端者。貴様、雷竜ボリクスの孫と言ったな」
「ええ、血縁関係があるのは事実よ」
「ボリクスのジゴスパークはこんなものではない。本物のジゴスパークというのはこういうことを言うのだ!」
竜王がそう言い放ち、ジゴスパークを放つ。それはジゼルのジゴスパークよりも遥かに強力なもので当たればただではすまないものだった。
だがそれをジゼルは吸収し、白く光輝く竜へと変貌していく。
「グレイナル……!」
「グレイナル?」
「最近の若い奴らはグレイナルも知らんのか……全く嘆かわしいものだ。今の貴様の姿はかつてガナン帝国を滅ぼした空の英雄と呼ばれた竜に酷似している」
「大した英雄様ね、それは」
「だがしかし如何にグレイナルに似ていようとも所詮半端者は半端者。屠るなど容易いこと。死ねドルマドン!」
竜王が呪文を唱え、ドルマドンを唱えるとドルマドンの形がドラゴンの姿となり、ジゼルを襲った。
「邪魔よ!」
雷の球がドルマドンを押し退け、竜王に直撃する。
「ほう……やるではないか。全盛期のオルゴ・デミーラと並ぶ程だな。だがこの我、竜王に敵う術はどこにもない! 例え大魔王バーンが相手だったとしてもだ!」
竜王の凄まじい雄叫びが響き、竜王を除くその場にいた全員がダメージを受ける。
「それはおかしい話よ」
「あ?」
「だって今の貴方はまだその域に至ってない。パワーで言えばまだエスタークの方が上よ」
「だから貴様は半端者なのだ!」
竜王の身体が筋骨隆々の身体へと変化していき、真の姿を表した。
「これが本当の竜王……!」
「真・竜王となったこの我に敵うものなど存在はせぬ。だが進化の秘法を使うことで、更に強くなる」
進化の秘法により真・竜王の腕が3対に増えるだけでなく、メタル化し、結界のようなものが展開される。
「常にマホカンタ、常にアタカンタの結界……って所ね。それを突破するにはジゴスパークかブレス系でやるしかない」
「だがこの通り、儂の身体はメタル化している。これによりありとあらゆる属性攻撃を受け付けん!」
「……なら、これしかないってことね!」
ジゼルが息を吸い込み、氷と炎のブレスを混ぜ合わせ、それを一直線のビームのように放つ。
「!」
それを見た真・竜王が避け、羽ばたき3対の腕からドルマドンを重ねると先程の竜状のドルマドンよりも遥かに巨大かつ密度の高い闇のエネルギーがジゼルを襲った。そしてジゼルは次のオーロラブレスを吐くのを中断し、呪文を唱えた。
「マホステ」
ありとあらゆる呪文を無効化する霧が発生し、それをジゼルを包み込むとドルマドンが掻き消される。
「ほう、マホステを覚えているとはやるではないか。これで我は呪文は唱えることは出来ても貴様に致命傷を与えることは出来なくなる。ならば物理攻撃しかあるまい!」
真・竜王がジゼルに迫り、インファイトを仕掛けるとジゼルが距離を測り、再びそれを放とうとするが真・竜王がそれを許さず、追撃する。
「やっぱりね。属性攻撃が効かないとはいえその性質はあくまでもメタル化によるもの。つまりメタルスライムに影響を与えられるブレス、オーロラブレスなら影響を与えられる!」
「ほざけ! 半端者めが!」
ジゼルがオーロラブレスを吐きそれを溜め、真・竜王がそれを防ぎ躱し攻撃に移る。それらの攻防が延々と続く。
「(ソアラよ許し──どういうことだ?)」
ジゼル達が攻防を繰り返す一方。
ソアラを切りつけてしまったバランは悲しみよりも違和感を覚えた。
この世界にはくさった死体という魔物がいるが、六軍団長どころかそこらにいる魔物であり、戦闘力そのものは魔物の中ではドラゴンにも劣る存在である。見た目こそ生前のそれに酷似していたがくさった死体となったソアラを一撃で屠るなど物理的にはバランにとって容易いことである。
バランが覚えた違和感、それはソアラを切った感覚が人間を斬った時でもなければくさった死体とも違う別のものになっていたことだ。
「お初にお目にかかるぜ、竜の騎士さんよぉっ!」
その言葉と共に斬ったソアラが崩れ別の魔物が現れる。フレイザードのような目つきに加え身体は死の大地で出来た岩で出来ており禁呪法で創られた生命体と判断出来る。
「何者だ?」
「俺の名はグランナード。かつてハドラー様に地底魔城で創られ、竜王様に新しい身体を貰った兵士でさぁ」
「またハドラーの元部下か……」
「アンタも元部下だろう? まあそんなことはどうだっていいンだ。それよりもアンタの奥さんの魂は俺が預かっている」
「何だと?」
「俺を倒せばアンタの奥さんは解放される──っと!」
無言でバランが剣を振るうがグランナードが腕でそれを防ぐ。
「そう焦ンなよ、竜の騎士様よォ。まだ話しの途中だぜ。対処出来たから良かったものの俺達の身体のうちどれかにはアンタの奥さんが封じられているんだ。アンタの奥さんは永遠に苦しむことになっていたンだぜ」
グランナードの分身が地面から次々と現れるとバランが歯を食いしばる。
「貴様……!」
「悪く思うなよ。アンタの竜闘気による物量作戦でいったら間違いなく俺が圧倒的に不利だ。その不利を覆す為の手段を取っているだけのこと。さあ、死んでもらうぜ!」
グランナードAがバランにそう告げ、腕を刃状へと変え、バランに斬りつけようとするがバランにダメージは通らない。それもそのはず、今のバランは竜闘気を纏い、並大抵の攻撃は竜闘気によって防がれてしまう。火力に欠けるグランナードでは現状を打破する手段に欠ける。それ故にバランが警告の一言を放つ。
「無駄だ。いくら貴様らが攻撃しようとも竜闘気を纏った私に傷を負わせることは不可能。死にたくなければ早くソアラを解放──」
バランの言葉を無視し、グランナードがバランのコメカミに指を突き出すとめり込む。
「なっ、離せ!」
並大抵の攻撃ではバランに傷を負わせることすら出来ない。ではどうするべきか? グランナードが出した答えは一つ。
この呪文は僅かな魔力と全生命エネルギーを使い、敵を殲滅する呪文である。命を犠牲にするというだけあり、その威力も並大抵のものではない。非力なものが竜の騎士に与えられる唯一の攻撃手段、それがこの呪文だ。
「
空気が爆ぜると同時に閃光の輝きが周囲を照らす。
そしてその輝きが消えると竜魔人となったバランが君臨していた。
「危うく死にかけたわ!」
バランがグランナード達を睨みつける。流石のバランも自己犠牲呪文を使われ焦りがなかった訳ではない。あの時バランは咄嗟に竜魔人となりグランナードの腕を切り落とし、その場から離れ爆発の被害を軽減していた。もしそうしなければバランは大ダメージを負うことになっていただろう。
「テメェ良くもグランナードAを!」
「貴様が考えた作戦だ。その失敗を私のせいにするな!」
「うるせえ! テメェら、やっちまうぞ!」
グランナードB、グランナードC、グランナードD……が一斉に襲い掛かる。
「(全く厄介な奴だ。フレイザードの狡猾さに加えてハドラー以上の禁呪法。次々と生やされてはキリがない!)」
バランはグランナード達を確実に処理するも次々と増えていくグランナードに苦虫を噛み潰したような表情になる。
一気に殲滅してしまえばどうということはないが、バランにはそれが出来ない。ソアラの魂を封じられている以上グランナード達を一体ずつ処理しなければならないが今の状況ではグランナード達が雪崩れ込み、いずれバランに
「(やむを得ないか)」
バランが剣に竜闘気を溜め、ビーム状に放つとグランナード達の身体が上半身と下半身に別れ、一瞬硬直すると共にバランが次々とグランナード達の核を斬り殲滅していく。そしてそれを繰り返していくと僅かに光を感じ取り、その個体がソアラの魂を封じていると確信した。
「うおぉぉぉぉっ!」
その個体以外を全滅させるとバランが剣を突きつける。
「動くな。動いたら殺す!」
「……」
「貴様がソアラの魂を封じているのだな?」
「さあ? もうとっくにくたばったんじゃねえの?」
「惚けるな。貴様がソアラの魂を封じているのはわかっている。僅かながら貴様からソアラの魂を感じた」
「……ケッ、その通りだよ。俺がアンタの奥さんの魂を封じている」
「今すぐ解放しろ」
「先代のグランナードは地底魔城でしか活躍出来ないという不完全な状態で産まれた。しかし人間の魂と先代のグランナードを同化させることで大地そのものの魔物として竜王様は俺を創造したンだ」
「つまり貴様が死ねばソアラも解放されるということか」
「平たく言えばそうなるが俺達の痛みは全てアンタの奥さんに還元している。後一回攻撃したらアンタの奥さんは解放される前に消えるぜ」
「でまかせを──」
「でまかせだと思うならなんでこんなにも光が弱々しいのか考えられないのか?」
「それが真実であれ偽りであれどのみちもう遅い。私もソアラも、そしてお前もな」
バランがグランナードの核を貫き、前へと向く。そこには真・竜王がジゼルやハドラー、ベンを追い詰めている光景があった。
「グランナードも死んだか……まあ良い。どの道我の前にひれ伏すのだからな」
「ほざけ、貴様に私をひれ伏すことなど出来はしない。いくら貴様が竜の王とて竜の騎士には叶わん」
真・竜王とバランがそう対峙し、火花が飛散る。
「気をつけてバラン! そいつはメタル化している上にアタカンタとマホカンタのバリアを常に張っているわ。その対象外の技でしかダメージは与えられないわ!」
「なるほど。ならば竜闘気、それも遠距離でなければならんということか」
竜閃紋を放ち、真・竜王に攻撃するが真・竜王は全くのノーダメージ。
「この程度では効かぬか」
「くだらん真似をするな半端者!」
真・竜王が試されたことに憤怒し、ベギラマを放った。
「(奴のベギラマは通常のベギラゴン以上……となれば、避けるしかない!)」
バランが納刀し、ベギラマを避け、真・竜王の懐へと潜り込む。
「バカが!」
戦闘において懐に入ることはインファイトに持ち込むということであり、多少の傷を覚悟にする戦闘スタイルに切り替えることに他ならない。しかし真・竜王にはアタカンタの結界があり、インファイトに持ち込んだところで傷つくのはバランのみである。
真・竜王の拳がバランを襲おうとした瞬間、バランが直ぐ様剣を抜いた。
「気炎万丈!」
バランの剣が真・竜王の拳をチーズのように裂いていき、その腕は犠牲となる。
「バカな……っ! 何故アタカンタが作動せん!?」
「アタカンタはマホカンタの物理版だ。私が攻撃すれば何事もなく弾き返すが既に攻撃を弾き返したものであればその対象にならん」
「つまりカウンターってことね。そういう抜け道があるなんて、流石竜の騎士ね」
「だ、だが我が物理攻撃しなければ良いだけのことだ! これでも喰らうが良い!」
業炎のブレスを吐き、周囲を焦土に返すとともにバランが伏せ、ジゼルに顔を向けた。
「ジゼルっ! 例のブレスを!」
「待っていました! そのブレス!」
「しまっ……!?」
真・竜王のブレスはオーロラブレスとは異なり威力が高いだけの炎のブレスであるのに対してオーロラブレスは相反する属性を混じり合わせた消滅の息である。故にそれを直撃してしまった真・竜王は自らの身体が消滅するとともに、その未来を見た。
「(かくなる上は……!)」
真・竜王が最後の悪あがきにそれを作動する。
グランナードは本来ハドラーの禁呪法を用いて生まれた魔物であるが、真・竜王はそのグランナードの魂を利用して死の大地そのものに命を吹き込んで蘇らせた。しかしバランの手によってグランナードは倒れ、大地も元に戻りつつあった。
だが完全にグランナードの魂が消えた訳では無く、僅かながらに残っていたグランナードの魂が
「いかん! 空へ逃げろ!」
バランがそう警告すると全員空へ避難し、爆風に巻き込まれる形で舞い上がった。
かくして魔界の第三勢力、竜王軍は真・竜王が滅びたことにより消滅し、残った有象無象も竜王軍から脱退していくことになる。
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尚、次回更新は未定です