「さて、余の部下である三将軍達をよくぞ倒した……とでも言っておこうか勇者ダイ」
「誰だ!?」
「余の名はガナサダイ。ガナン帝国の皇帝だった男だ」
「そのガナサダイが何の用だ!?」
「余の望みはただ一つ。バーンの首よ」
「なっ……だったら何故俺の邪魔をするんだ!? 俺も目的は大魔王バーンだ!」
「貴様の首をバーンにくれることでバーンと一騎討ちする契約をしているのでな。それに貴様はどのみち処刑しなければならない。余の帝国を作るには邪魔だ」
「そんな契約バーンが守るものか!」
「メラゾーマ!」
ダイの言うことなどガン無視してガナサダイがメラゾーマを放つ。
「クソっ、やるしかないのか」
ダイがメラゾーマを避け、ガナサダイから距離を取り剣を抜いた。
「そう言うことだ。余は貴様を殺し、そしてバーンを倒し余の帝国を再興させる。貴様は余を倒し、バーンを倒して世界に平和をもたらす。目的を達成するにはどちらか死ななければならぬ」
ガナサダイが杖を振ると灼熱の炎がダイに目掛け飛んで行った。
「海波斬!」
その炎を切り、ダイが一気に詰め寄る。ガナサダイが魔法使いと同じタイプ、つまり近接戦が苦手かつ体力が少ないと判断したからである。その判断は正しく、ガナサダイの不意を突かれた顔がダイの視界に映った。
「やるではないか」
「うっ!?」
しかし右から衝撃が走り、ダイが左へと転げ回る。
「つ、強い……! ギュメイよりも遥かに」
「その口振りだとギュメイに苦戦したようだな。だがギュメイ達三将軍が束になっても余に勝てぬよ」
「あんなに強い将軍達が束になっても敵わないだって……!」
「それはバーンとて同じ。あやつの前では三将軍はおろか、この形態の余を倒すことなど造作もない」
「この形態?」
「一部の魔族は魔力が多過ぎて力を出すと姿を変える者がいる。余もその一人。その姿を見せてくれよう」
老人のガナサダイの姿がみるみると骨の竜のような姿に変化していく。
「(な、なんだこの力は……!? あながちバーンを倒すというのもハッタリじゃない!)」
そして形態変化が終わるとダイに待っていたのは絶望だった。威圧感に関してはバランすらも凌ぎ空気が淀んですら見えた。
「さあ、余の本気の力を味わうといい」
「(いや、俺は二度と負ける訳にはいかないんだ!)」
心が折れかけたダイはジゼルとの対戦を思い出し、不屈の精神で持ちこたえた。
「ライデインストラッシュ!」
剣を逆手に持ったアバンの使途の奥義、アバンストラッシュにライデインを付加したライデインストラッシュ。無論ダイとてこんなもので倒せるとは思っていない。しかし牽制の役くらいには立つ。
「ますます面白い。時代が時代ならば貴様をスカウトしていたほどだ」
そんなことをほざきながらガナサダイがいつの間にか手にしていた盾で防ぐ。盾には何一つ傷がなかった。
「(う、上手い……! 俺のライデインストラッシュを暗黒闘気で防いだ)」
ダイが心の中でガナサダイを評価する。ガナザダイの盾に一瞬だけ暗黒闘気が見え、それがガナザダイを発したものだと気付き、盾を使って防御に適した形に変えたのだ。
「ふんっ!」
もう片方の手に持っている槍を振り回し、ダイを攻撃する。しかし攻撃力こそ高いがラーハルトの槍よりも遅かった為に避けることが出来る。
「ドルマ」
しかしそれも淡い期待。避けた先にガナザダイの放った弾幕状の闇呪文ドルマが待ち伏せていた。
「うおぉぉっ!」
ダイがそれを竜闘気で防御するがガナサダイの放つ弾幕がさらにダイを襲う。
「先程言ったことは訂正しよう。バーンとの一騎討ちがなければスカウトしていたかもしれぬ」
「そうかよ!」
一気に竜闘気を解放させ、ダイが弾幕を蹴散らす。そしてその隙をついて放射型のアバンストラッシュを放った。
「アバンストラッシュアロー!」
先程のライデインストラッシュに比べ、威力こそ弱いが素早く、ドルマ程度であれば切り捨てられる。
「愚か者め、余の盾を忘れたか?」
それを防ぐ為に盾を突き出し、ガナサダイが防御に移った。アバンストラッシュアローはライデインストラッシュよりも威力が弱く、ガナサダイに攻撃が届くどころか盾に傷すら負わない。
「百も承知だ。アバンストラッシュブレイク!」
ダイはすかさずその盾を目掛けて闘気を込めた剣を振るう。そして先程のアローとブレイクが盾の一点に交差する。
「何っ!?」
暗黒闘気を纏った盾に亀裂が入るのを見て驚愕の声を上げる。時間と共に亀裂が広がっていき、ついに盾を破壊した。
「おのれぃ……」
「ガナサダイ、俺はお前の弱点を見切ったぞ。その馬鹿デカい図体のせいで避けることが出来ない。だから防御することに徹底して攻撃を打ち消そうとしていた。しかしその防御の要だった盾はもうない。もはやお前に勝ち目はない」
「勝ち目がないだと? 笑止!」
「うわっ!」
不敵な笑みを浮かべ槍を振り回すガナサダイ。その風圧でダイが吹き飛ばされ、激突する。しかし激突した先にいたのはラーハルトだった。
「ダイ様!」
「ネズミが一匹増えたか。だがネズミ一匹増えたところで──」
「ダイ、無事!?」
マァムが入り、その後にポップ、ヒュンケルと続く。それを見たガナサダイが口を開いた。
「ネズミが何匹増えても同じこと。この皇帝に敵わぬものなどない」
「ダイ様、ところであの化け物は?」
「ガナン帝国のガナサダイ。さっきの将軍達の主人だ」
「ほう……アレが」
ラーハルトはガナサダイを見て感心した声を出す。それもそのはず、空気が淀んで見えるほど魔力を放出しているガナサダイは強者であると評価しているからだ。
「貴様ら、覚悟はいいな?」
目が血走る程、ガナサダイがキレそれを始める。
「げえっ!」
「なんだこの攻撃は!?」
「動きが読めん!」
その動きはダンスの動きのそれでありながらラーハルト達を確実に攻撃する。しかも急所に何度も当たる為にラーハルトやヒュンケルの鎧を剥がしていった。
「これぞ槍の舞。やられた諸君痛かったかね?」
「くそっ……!」
痛恨の一撃を喰らったラーハルトが蹲りながら手放した槍に手を伸ばす。
「ぐわっ!」
しかしガナサダイはそれを許さず、冷酷に尻尾でラーハルトの足を床に縫い付けた。
「まず一匹よ」
「し、信じられねえ。あのラーハルトが手も足も出ないなんて……!」
「魔法使いの小僧、皇帝たる余が魔王でもない魔族一人に手こずるとでも?」
そしてガナサダイが槍をポップに向け、突き刺す。
「ヒャドストラッシュアロー!」
だがそれに待ったをかけたのはダイ。アバンストラッシュにマヒャドを付加させた必殺技がガナサダイを襲う。
「何っ!?」
「メラストラッシュブレイク!」
メラゾーマを付加させたアバンストラッシュのブレイクがダイと剣と共にガナサダイを切りつける。そして先程放たれたヒャドストラッシュアローと重ね合わせ、一つの奥義へと昇華し、ガナサダイの身体を斜めに真っ二つにした。
「オーロラクロスブレイク!」
その奥義の名前はオーロラクロスブレイク。魔法剣版メドローアがここに誕生した。
「お、のれ、こんな小僧に我が野望を阻止されようと、はな」
「まだ生きているのか……しぶとい奴だぜ」
「だが余はガナン帝国の再興を今は出来ずとも必ずしてみせる。それまで平和な世に浸っているが良い……ごふっ!」
そしてガナサダイの死体が砂状になりラーハルトを縫い付けていた尻尾もラーハルトを解放した。
「しかしオーロラクロスブレイクだっけ? あの技。魔法剣版のメドローアじゃないか」
「うん。本当はメドローアの性質を持った魔法剣にしたかったんだけど、俺ポップみたいに器用じゃないからマヒャドとメラゾーマの二つの魔法剣にして分けたんだ。それならほんの一瞬合わせるだけで済むしね」
「それだけではない。あの形にしたことで竜闘気が魔力を包み込んで敵に切りつける時にメドローアの効果を生み出せるようになっている。魔法を無効化する竜闘気ならではの技だ。アバンストラッシュの……いや比較にならん程の威力だ」
「そんなに違うの?」
ラーハルトの治療をしていたマァムが口を挟み、ヒュンケルに尋ねる。
「だがそれはタイミングが合えばの話だ。マヒャドとメラゾーマの魔法剣が重なるという現象上、タイミングが少しでもずれるとお互いに打ち消しあってしまいアバンストラッシュどころか海波斬にも劣る。ハイリスクハイリターンの大技だ」
「うん。そうなんだよね。何度かオーロラブレイクを練習したけど失敗ばかりだったよ。今回出来たのだって偶然だよ。オーロラクロスブレイクの無属性版のアバンストラッシュクロスの方がタイミングが合いやすいからオーロラクロスブレイクはバーンまで取っておきたかったけど、それだと勝てそうになかったから、本当にやむを得ずって感じだね」
「だとすると、バーンの時も一か八かの大博打になるのか。ダイ、ちょっと耳を貸してくれ」
ポップがダイに耳打ちすると、ダイはそれに頷き、笑みを浮かべた。
ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」
A「いやー、驚いたな……」
B「何がだ?」
C「そりゃ俺たちだけじゃなくジゼル様の出番がほとんどなしで終わったからじゃないか?」
D「この下り、前にもやったような気がするのは儂の気のせいか?」
A「やったが、そういうのは気にしないほうがいいぜ、出番は間近なんだからな」
B「次はザボエラとの戦いか? だとすると、ザムザか? あいつならありそうだ」
C「ザボエラとザムザの戦いというと、この場では言えないあの作品を思い出す……」
D「あの作品は、終始ザムザのターンだったがこの作品はどうなるのだろうな?」
A「さて、時間が迫ってきたので恒例のアレを!」
B「この小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜぇぇぃ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む……」
ABCD「次回もお楽しみに!!」