魔軍司令親衛隊隊長の恋愛!   作:ディア

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今回はダイのスランプの原因です。



テランにて……

「ポップ……」

「よう、ダイ。どうしたんだ? そんなどんよりした顔して」

「……ポップはさ、スランプに陥ったことってある?」

「スランプというよりは、でけえ壁にぶち当たっちまったよ。俺は」

「デカイ壁?」

「ダイは竜の騎士、マァムは先生のパーティの仲間の娘、ヒュンケルは先生の一番弟子。アバンの使徒は皆、俺を除いて特別な力や才能を持っているんだ」

「そ、そんなことないよ!」

「無理に励まさなくていいんだ。俺の事は俺がよく知っているんだ」

「ポップ、メドローアを使える時点で普通じゃないって! あれって確かメラとヒャドの系統魔法を同じくらいにしなきゃダメなんだろ? 俺にはそんなことは出来ないよ」

「そうか。じゃあダイ。お前に出来る事は何だ? メドローアは強力だが、実戦じゃただの砲台と変わらねえんだ。それに対してダイの武器は剣じゃないのか?」

「剣?」

「正確には魔法剣。あれを極めるしかねえよ。お前の親父さんのドラゴニックブレイクだっけか? あれは竜闘気の剣技だから竜闘気の少ないダイかやっても劣化版にしかならねえんだ」

「……そうだね」

「俺は先に壁を超えに行くぜ。ダイ」

ポップがその場を立ち去り、一人になりダイは回想する。

 

~回想~

 

ダイはその空間にいた。ただ白く淡い摩訶不思議な空間で、その先には白銀の竜がいた。

「私の名前は聖母竜。竜の騎士の生と死を司る神の使い」

「その聖母竜が何でここに?」

「単刀直入に申します。大魔王バーンの他に私を害する存在が現れたのです。貴方にはそれを討伐して貰いたい」

「害する存在ってヴェルザーのことか!?」

「いいえ。あの石化した竜にそのような力はありません。しかしヴェルザー領の人外であることは確かです。それを討伐しなければ大魔王バーンよりも神々にとって脅威になるのは事実」

「バーンよりも?」

「ええ。魔界のヴェルザー領に行き、私を害する存在を討伐しなければ竜の騎士を産み出す力を失ってしまうでしょう」

「それって……竜の騎士が生まれなくなるってことなのか?」

「その通りです。本来であれば私が竜の騎士に干渉して討伐させるなどあってはならない。しかし現時点でその存在はバーンよりも格下。叩ける内に叩いておかねばならない」

 

「少し待って貰えないだろうか? (マザー)よ」

それに異議を唱えたのはバランだった。

「貴方は……私が創り出した方の竜の騎士ですね」

「そう、私が貴女に創られた竜の騎士のバランです。そしてこの子、ダイは私と人間との間に生まれた混血児。どういう因果は知らないが竜の騎士としての力を受け継いでしまった。(マザー)よ貴女にお尋ねしたい。ダイのようなことは初めてなのでしょうか?」

ダイのようなこと。それはつまり竜の騎士が子供を産み、その子供がまた竜の騎士となる例だ。

「答えはイエスとしか言えません。初代の竜の騎士を創造して以来、ダイのような例はありませんでした」

「そうか。しかし大魔王バーンを無視してまでその害する存在を討伐する必要性があるのでしょうか?」

「先ほども言いましたが現時点でこそバーンよりも格下ですがその存在はいずれバーンを凌ぐようになります。ですから早めに倒さねばなりません。それに竜の騎士はそもそもマスタードラゴン亡き後、人、魔族、竜の神々が世界のバランスを崩す者を倒すために産み出した種族です。しかし長い歴史の間に悪しき者の力はますます強大になっていきました。今、世界を席巻している大魔王バーン至っては神すらも超越しており、現在の竜の騎士の力ではどうこう出来る相手ではありません」

 

「そ、そんなっ……! それじゃ大魔王バーンを無視してその害する存在だけを倒せっていうのか!?」

ダイは聖母竜の言葉を聞いて驚いていた。エスタークを封印した神達の心が折れる程の相手だとは予想していなかったからだ。

「そうです。竜の騎士の弱体化を防ぐだけでなく、より進化していくならばその害する存在との戦いで得た経験値も必要不可欠なのです」

「だからって大魔王バーンを無視すればそれこそ地上が滅びるよ!」

「幼き竜の騎士よ。貴方の気持ちもわからなくありません。しかしこれは神々の意思なのです」

「神の意思だと?」

「神々は、地上が破壊されても地上を戻せば問題ない。現在地上にいる人々は犠牲になってもらうしかないと考えています。私とてそれに反対しました。しかしそれは聞き入れて貰えませんでした」

「それでせめてもの反抗に、竜の騎士を進化させようと考えたのか……」

「その通りです。しかしそれまでの竜の騎士では進化は出来ません。イレギュラーとも呼べる貴方ならその未知の可能性を切り開くことが出来るでしょう」

(マザー)。先ほどから気になっていたのですがその存在とは何者ですか?」

「私にも詳しくわかりません。しかし先ほど申したようにその者は今でこそバーンよりも格下ですが、放置すればバーンをも凌ぐ脅威的な存在となります」

「今は、格下なのだな?」

「はい。その者はまだバーンほどではありませんが脅威的な存在であることに違いありません」

「ならば(マザー)。そちらの方の時間はまだあると言うことだ。しかしバーンに関してはそう悠長なことも言っていられない。現状、バーンに全力を注がなければ均衡は一気に崩れ、ダイの仲間達は皆殺しにされるでしょう。そうなればダイは永遠に後悔することになる。そうあっては進化も退化となるでしょう」

 

「……バラン、貴方が言いたいことはわかりました。私はダイの意見を尊重します。先ほど大魔王バーンに勝てぬというのは竜の騎士単体ならばそうでしょう。しかし私の力を宿すことにより力を10倍以上まで引き上げることが出来、勝ち目が少しだけ上がります」

「10倍……!!」

「しかし私の命が削られ、私の力を宿すには一人、それも力を引き出せるのは一度きりのみとなります」

「一度きり……!」

それを聞いたダイが動揺し、バランを見る。しかしバランは既にその答えを出していた。

 

「ダイ。お前がその力を宿すのだ」

「えっ!? 父さんの方が強いから父さんが宿した方が良いと思うけど」

「ダイ、お前は私よりも人の優しさを知っている。私がその力を引き出したとしても野獣となって暴れまわるだけに終わるだろう。人の心を保ち、魔族の魔力を扱い、竜の力を真に引き出せるのはダイ。お前だ」

「……」

そしてダイが頷き、聖母竜の近くに寄る。

「決まったようですね。それでは私の力を授けましょう……!」

そして聖母竜が一つの珠となりダイの身体の中に入っていくとどこからともなく声が響く。

「この力に慣れぬ内は制御出来ずに戸惑うことも多々あり、特に最初の頃は竜の騎士の力もマトモに引き出せないでしょう。しかしこの力を扱えるようになったとき、貴方は間違いなくバーンを倒せます。自分を信じ、バーンをそしてその存在を倒して下さい」

そしてダイ達は元の世界に戻り、現在に至る。

 

~回想終了~

 

「自分を信じろか。ベンやクロコダイン、ハドラーに父さん、そしてジゼルを超える自分をイメージをしなきゃダメだな」

 

そしてダイは剣を持ち、イメージの中でそれらと戦う。ベンは圧倒的な速さで翻弄されてしまう。クロコダインとハドラーは攻撃が当たるもののダメージはほとんどなく返り討ちにあう。そして竜魔人となったバランとは相討ち。ジゼルに至っては力ずくで無理やり突破されてしまった。

 

「あーっ、全然ダメだ! 少なくともあの五人相手に勝てなきゃバーンを倒せないのにどうして勝てるイメージが湧かないんだ?」

しかも五人のうちクロコダイン、ハドラー、バランの三人はダイと戦って一度以上負けている。それにも関わらずダイが勝てるイメージが湧かなかった。

「どうにかしないと……」

ダイの眠れぬ夜は続く。




いやしかしあれですね。オリ主が一切出ないってのはどういうことなんでしょうか?
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