それではどうぞ。
~テラン王国~
その頃、ハドラーがダイ達と合流し話し合っていた。
「ダイ、バラン。たらればの話になるが、あの時俺の身体に黒の核が埋め込まれていない状態で、お前達と戦っていたらどうなっていたと思う?」
「竜魔人となった状態で戦わなければお前を倒すことは出来なかっただろうな」
「何故だ?」
「竜闘気や攻撃呪文、剣術だけではお前を倒すには火力不足だからだ。だが竜魔人にはそれがある」
「そうか……なら竜魔人となれ、バラン」
いきなりハドラーが覇者の剣を抜いて、バランに襲いかかるが、金属音が響く。だがハドラーの剣を防いだのはバランではなくダイだった。
「バラン。ダイに庇われるほど衰えるということは、どうやら貴様自身にも問題があるようだな」
それはバラン自身がダイの反射速度より劣っているということ他ならない。ハドラーの言葉によってそれに気づかされたバランが口を開いた。
「随分と饒舌だなハドラー。弱い犬ほどよく吠えるというがまさしく今の貴様そのものだ」
「その通りだ今の俺は弱い。そしてお前もな」
「何だと?」
「バランもしもだ。ジゼルの化けたエスターク並みの実力者が魔王軍にいたらお前一人だけで倒せるのか?」
「竜魔人となれば可能だ」
「では仮に竜魔人となってそいつを倒したとしよう。しかしその先にはそいつよりも格上のバーンがいる。万全の状態でも勝てるかどうか怪しい相手に、万全ではない状態で挑む。それはわざわざ犬死にするようなものだ」
「何が言いたいハドラー」
「気付いているのではないのか? このままではバーンに立ち向かったところで敵う術はない。俺とお前が力を合わせても傷をつけるだけに止まるということを」
「……」
「バーンを倒すに当たって強くなることに越したことはない……バラン。俺との決闘を受けろ。それも生死を掛けたものだ」
「なんでそうなるんだ!?」
ダイが声を粗げ、ハドラーに尋ねる。
「至極単純。俺達程の力量となれば生死を掛けた決闘をすることにより勝者はその力を取り入れることが出来る。バーンを倒すにはどちらか片方が犠牲にならねば奴に勝てん」
「ダメだよ! こんな決闘受けたところでどっちかが犠牲になるだけで終わるじゃないか!」
「ダイ、お前には聞いていない。俺はバランに聞いている。それで受けるのか?」
バランは目を瞑りしばらくの間思考する。そして目を開き口から結論を出した。
「その決闘受けよう。ただし余計な横槍が入るかもしれないがそれでもやるのか?」
「その心配はない。冥竜ヴェルザーと雷竜ボリクスが竜の頂点となるべく闘った真竜の闘いは何人足りとも横槍を入れることはなかった。実力者同士が拮抗していれば真竜の闘いのような状態になる」
「ならば、最初から全力で行かせてもらうぞ! 離れていろダイ!」
バランが竜の牙(装飾品)を握り血を流すと、竜闘気が高まり竜魔人となる。
「ギガブレイク!」
バランが先制でギガブレイクを放ち、ハドラーに襲いかかる。それをハドラーは超魔爆炎覇で迎え撃った。その瞬間熱風の竜巻が起こり真竜の闘いの再現が始まった。
「ハドラー、お前の予想通り真竜の闘いを再現したな。流石、私と共闘しただけのことはある」
真魔剛竜剣を振りハドラーの身体を切るがハドラーは全く気にせず超魔生物の再生力を利用し傷を治しながら得意の接近戦に持ち込む。
「それだけ俺達の力が拮抗している証拠。共闘して頼もしい相手が敵になると恐ろしいとはよく言ったものだな」
ハドラーの爪がバランを襲い、青い血を流させるがどれも致命的なものはない。
「その台詞を私はお前ではなくジゼルに向けて放つがな」
だが確実にこのままではバランが不利になることは明白だ。その理由としてバランは常に血を流しているがハドラーは攻撃した瞬間にこそ流れてはいるがすぐに傷が治り止まる。血を流しすぎれば頭の回転はおろか、身体も動かなくなる。故に長期戦が不利と感じたバランは距離を離し、短期決戦に持ち込もうと力を溜める。
「俺は大魔王バーンに言おう。なぜなら勝つのはこの俺だからだーっ!」
そしてそれを待ち構えていたかのようにハドラーが突撃して竜魔人に最高の一撃を放った。
「超魔爆炎覇ーっ!!」
バカの一つ覚えのように突っ込むその姿勢はどこか清々しく、バランを魅了させた。
「ドラゴニックブレイクぅぅっ!!」
だが見とれて動けないほどバランとて馬鹿ではない。むしろ逆。ハドラーの動きに魅了されたからこそバランの本能を刺激し、竜闘気で覆った剣がハドラーに向かい、決着が着いた。
「ぐあっ!」
「ぬぅぉっ……!」
両者共に剣が深く突き刺さる。その瞬間、両者を取り巻いていた竜巻がある人物を襲った。
「がぁぁぁぁぁっ!!!」
「ハドラー!」
その人物はハドラー。バランの本能がハドラーを僅かに上回ったのだ。
「(私が竜の騎士としてではなく普通に産まれていたならば逆の立場になっていただろう……)」
バランがそんな仮説を立てて竜魔人を解き、尻餅をつく。
「ハドラー。確かにお前の力を吸収させて貰ったぞ」
バランはハドラーとの闘いで自分が成長していたことを確信していた。それ故の発言だった。
「ハドラー様!!」
そこへやって来たジゼルがハドラーを介抱し、ベホマをかけるが今のハドラーは魔法を受け付けない。その理由はバランが竜闘気を纏わせたドラゴニックブレイクによる攻撃がハドラーを傷つけていたからだ。これがギガブレイク以外の魔法剣だったり、通常の攻撃であればハドラーの傷はすぐに治っていただろう。そのギガブレイクですらハドラーの致命傷になり得るかどうか怪しいものだ。故にバランは致命傷となり得るドラゴニックブレイクに賭けた。
「……ジゼルか」
「何でハドラー様、こんな真似をしたんですか!?」
「馬鹿と思われても仕方あるまい。しかし俺はどうしても気になった。自分の力が竜の騎士相手にどれくらい食いつけるかをな」
「エスタークじゃ、ダメなんですか!?」
「あれはお前だろう。エスタークではない……後治療するからといって俺の胸板に引っ付くな。ベン、取り外せ」
「無理です。ジゼル様を引き剥がすには俺の力でどうこう出来るレベルではありませんから」
薄ら笑いでありながらもベンの目は暖かく、それは恋人同士を見守るようなものであった。しかし約一名空気を読めない男がいた。
「飲めハドラー。私の血は竜の血を含んでいる。強靭な精神力がなければ回復出来んがそれを飲んで回復することだな」
「空気読んでよ……父さん」
バランの行動を見たダイがボソリと呟き、頬をかく。ハドラーを一人の武人として認めたことは有難いが空気を読んでからそういう行動をしてもらいたいものだ。
「バランの血なんて飲めたものじゃないですよ、ハドラー様。竜の血の純度が高い私の血を飲んで下さい!」
ジゼルが自ら血を流しハドラーにそう進言すると飲み始めた。
「あぁ……っ、んっ……! ハドラー様、激し、いっ」
光悦とした表情でジゼルが腰を振り、ハドラーの腹に押し付ける。
「止めんか。ダイの教育に悪いだろうが」
ハドラーがその動きを止めると竜の騎士二人が目を丸くしていた。
「えっ? そうなの?」
「私は戦闘以外疎いからそういうことはわからん……」
「バラン、お前がダイを魔王軍に連れていったらダイがとんでもないスケベになっていたかもしれんな。ジゼルのせいで」
「……」
ハドラーのあんまりな言いぐさにジゼルが珍しく反論せず、それが気になったベンが声をかけた。
「ジゼル様、どうされました?」
「いや、ちょっと気になることが」
「何でしょうか?」
「バランは私が腰振ってもダイ君にそれを見せさせないどころか唖然としていたところをみると性に関する知識が全くと言って良いほどない。だけどダイ君はそこにいる。それっておかしくない?」
「……あ。確かに」
「そうなると二つほど説が浮かぶ。一つはソアラさんが浮気……」
それを言った瞬間ジゼルに物凄い殺気が襲いかかる。
「ソアラは浮気などせん! それにダイが竜の騎士である以上私の息子であるのは明白だ!」
一瞬、ダイやベンが竜魔人となったバランが見え、恐怖した。
「そう、ソアラさんが浮気して別の男の種を貰ったとしても普通の子供しか生まれない。ダイ君が竜の騎士である以上それはない」
「もう1つの説とはなんだ?」
「もう1つの説はソアラさんが神の涙を使ってバランとの子供を設けた……これが一番考えられるわ」
「神の涙か。確かにあり得るな」
ダイ以外の全員が頷き、納得した。
「ベン、神の涙ってなに?」
困った時のベンペディアと言わんばかりにダイがベンにそれを尋ねた。
「神の涙は何でも願いを叶える神々のアイテムだ。ただし悪し者の願いは叶えられんというものだ」
「つまり正しい心を持っていると叶うの?」
「そういうことだ何が基準なのかは不明だがな。だから仮にお前の母が浮気していて、その子供を竜の騎士にさせようともその願いは叶えられん」
「だから皆納得していたのか……」
「そうだ。だからお前の両親はバランとソアラで間違いないということだ」
「ところでジゼル。お前達は何の用でここに来たんだ?」
「それが、ベンがダイ君と修行したいからここに来たんですよ」
「俺と?」
「そうだ。一番俺の実力に近いのはクロコダインだ。だが雪辱を果たすその時までクロコダインとは戦えん。だからその次に近いお前と実践形式で修行しようと思った訳だ」
「私達じゃダメなの?」
「冗談はよしてください。ジゼル様達相手では火力が足りずにジリ貧に終わるだけですよ」
「お前の得意な立ち回りやイオグランデでもか?」
「ええ。立ち回りってのは本来足りない火力を補うもので、イオグランデも一撃必殺の技。一度でも耐えられると自分以上の相手ならば勝ち目はありません」
「つまり俺なら勝てると言いたいのか?」
ダイが剣を握り、戦闘体勢になる。
「勝てる。少なくともお前は未熟だ」
「そうかよっ!」
「甘いっ!」
それは一瞬だった。飛びかかってきたダイをベンが沈め地面にめり込ませる。
「ダイ、お前は何のためにあの白銀の竜と会ってきた?」
「聖母竜のことを知っているのか?」
「詳しくは知らん。しかしその関係の予測は出来る。大方、竜の騎士を産み出した存在だろう。……話を戻す。その聖母竜とやらがお前達に何かしら警告をしてきたはずだ。その警告を聞いておきながらこの有り様とは……親衛騎団の連中と戦っていた方がマシだったな」
ベンの言葉がさらに突き刺さり、ダイは再び唇を噛んだ。
ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」
A「いやー、出番がねぇっ!」
B「いきなりそれか?」
C「出番がある奴はいいよなぁ……何せBは作者のお気に入りだし」
D「二回も原作主人公を倒したあたり作者のお気に入り具合が半端ないということがうかがえるな」
A「くっそー……俺だって、本気出してやるぜーっ!!」
B「お前達の本気見せてみろ!」
C「うっしゃぁっ、俺も気合い入れてやる!」
D「儂は影の功労者となろう……出番は増えるだろうし」
A「さて、時間が迫ってきたので恒例のアレを!」
B「この小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜぇぇぃ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む……」
ABCD「次回もお楽しみに!!」