〜カール王国〜
「ハドラーよ。貴様の命もここまでだ。貴様の首を取りバーン様に献上する」
ハドラーがカール王国に到着するとガルヴァスがそう告げた。
「その為に1人でここで待っていたのか? 俺が魔王軍を抜けてから随分律儀になったな」
「貴様に合わせただけのことよ。その方が悔いはあるまい」
「ガルヴァス、いつからだ?」
「何がだ?」
「お前が俺に因縁をつけるようになったのはいつからだと聞いているんだ。俺がお前を出し抜いて魔軍司令となった頃からか?」
「違うな。貴様と初めて戦った時からだ。私が貴様に僅差で負けてから貴様に勝てるだけの実力を持ってもバーン様に認められず、影で暗躍するようになった。だが貴様が魔王軍を抜け魔軍司令の座を獲得しても私には功績がない。だからバーン様をはじめ数多くの魔王軍の連中は私よりも貴様を評価している。言ってみれば穴埋めでしかない。だが私は貴様を倒してハドラーという魔族よりも優秀だと証明してやるのだ!」
「ならばお喋りもここまでだな。行くぞ!」
ハドラーは駆け抜け、ガルヴァスに突っ込む。
「超魔爆炎覇!」
いきなりハドラーの必殺技がガルヴァスに炸裂する。だがハドラーは妙な違和感を感じていた。仮にもガルヴァスはハドラーと同じ身体を持つ。黙ってやられるはずがないのだ。
「(これはオリハルコンか……?!)」
その違和感の正体がわかり、ハドラーはその場を離れる。するとガルヴァスの前には巨大なオリハルコンのチェスの駒があり、ハドラー親衛団と同じものだとわかった。
「何っ……!?」
そのチェスの駒を見てハドラーは驚愕する。だがそれも一瞬だった。チェスは白と黒の二つの種類がある。自分に渡されたのが白だとするならばおそらくガルヴァスに渡されたのは黒だと推測していた。
「ハドラー。私は貴様を倒す為に色々と準備してきた。その為ならば手段は選ばん。ガルヴァス騎士団、出でよ!」
ガルヴァスが声を出す。するとガルヴァスの周りから他のチェスの駒が現れハドラーを囲った。
「フハハハ! 貴様と同じようにバーン様から私もオリハルコンのチェスを貰い、禁呪法で命を吹き込んだのだ!」
「やはりお前はそのような手段しか取れぬのか……」
ハドラーは落胆し、肩を落とす。と言うのもハドラーは1人でここまで来たガルヴァスを認めていたからだ。だが実際にはチェスの駒を使い多勢に任せた。
「勝てば何とでもなる。勝者こそが歴史を作る……行け! 我がガルヴァス騎士団の力を見せてやれ!」
そしてハドラーを囲ったチェス達、ガルヴァス騎士団が襲いかかる。
だがそれは地面から現れた同じオリハルコンのチェスの駒によって阻止された。
「やはりハドラー様の言った通りになりましたね」
そのチェスの中でも一際巨大な駒が変形し、声を出す。
「出来ればこのような展開にはなりたくなかったのだが……頃合いを見計らって地面から出てくるのは流石だ。マックス」
「ありがとうございます。ハドラー様」
ハドラーが用意した見届け人、それはハドラー親衛団のリーダーであるマックスだった。
「何だと……!?」
ガルヴァスはまさか自分の行動を読まれるとは思わずそう呟いてしまう。だがすぐに立ち直り、ガルヴァスは思考する。
「(いくらハドラー親衛団が現れたとはいえ数では私の方が上だ。こちらにはまだ切り札がある)」
ガルヴァスの計略はまだまだ尽きていないのも事実でありガルヴァスはハドラーに対して不敵な笑みを浮かべた。
「丁度いい。我がガルヴァス騎士団と貴様のハドラー親衛団どちらが強いかはっきりさせようではないか」
「よかろう。マックス、あとは任せた」
「御意、我輩にお任せあれ」
マックス達はハドラー達から離れ、ガルヴァス騎士団と対峙し戦い始めた。
「ガルヴァス。もう出すもの出したらどうだ?」
ハドラーはガルヴァスにそう告げる。と言うのもガルヴァスという男はこれだけでは終わらないと身にしみて感じているのだ。ましてやガルヴァス騎士団なるチェスの駒を使っていたのだから尚更だ。
「どういう意味だ?」
すっとぼけた態度でガルヴァスが返事をする。
「お前のことだ。アレで終わりではあるまい」
「流石はハドラー、よくぞ見抜いた」
ガルヴァスが笑い声を上げ、ハドラーを褒める。
「豪魔六将軍達よ、出でよ!」
ハドラーを囲むように6人の将軍達が現れ、構える。
「ふっふっふっ……流石の貴様と言えどもこれだけの人数相手に敵うまい! やれ!!」
「「「「「「おおーっ!!」」」」」」
六将軍達が声を上げ、ハドラーに襲いかかる。
「雑魚は引っ込んでいろ! メラゾーマ!」
ハドラーのメラゾーマが六将軍の1人、ベグロムに直撃し焼き殺す。だがこれで終わりではない。
「ヘルズ・チェーン!」
ハドラーの手首から出された鎖が百獣将軍ザングレイの持つ戦斧ザンバーアックスに絡みつけ、振り払う。
「な……!!」
ザングレイがザンバーアックスごと振り払らわれ、隣にいた魔影将軍ダブルドーラを巻き込んでその場に倒れる。
「フィンガー・フレア・ボムズ!」
だがそれをただ見てボケっとするほど六将軍は甘くない。デスカールがフレイザードの技フィンガー・フレア・ボムズを放ち攻撃する。
「やったか!?」
フレイザードと同じ称号を持つ魔族の男、氷炎将軍ブレーガンがそう言い、前に出る。
「馬鹿者、ハドラーは炎に関係するものであれば耐性を持っている! あの程度でハドラーがやられるか!」
ガルヴァスの言う通り、ハドラー相手にその系統の呪文でダメージを負わせるにはバーンのような膨大な魔力の持ち主でない限り到底不可能だ。しかもデスカールの出すフィンガー・フレア・ボムズはフレイザードの出すものよりも劣化している。つまりハドラーのダメージはほぼ皆無だ。
「その通りだガルヴァス」
ハドラーのヘルズクローがブレーガンの胸に刺さり、ブレーガンはその場に倒れた。
「これで後4人だな」
4人の内2人は死んでこそはいないがハドラーのヘルズ・チェーンによって身体を倒されただけでなく気絶しており、起き上がるには時間もかかる。現在相手にできるのはデスカールとメネロの2人だけだ。
「貴様ら足止めすらも出来んのか!」
ガルヴァスはその体たらくに激怒し、怒鳴り声を上げる。
「「も、申し訳御座いません!」」
「もう良い! 貴様らはガルヴァス騎士団のところに行って援護しろ!」
「「ははっ!」」
2人はルーラを使い、ガルヴァス騎士団の元へと向かった。
「初めからこうすれば良かったものを……」
「黙れ! 貴様に僅かな差で敗北した私の気持ちがわかってたまるか!」
「だからこうしてお前と対峙しているのだろう。元々俺とお前はそう言う者同士だ」
「ならばこれ以上の言葉は不要だ!」
ガルヴァスが両腕を広げ、炎のアーチを作り出す
「!」
それを見てガルヴァス同様にハドラーも両腕を広げ、炎のアーチを作り出す。
両者が唱える呪文、それはベギラゴン。最強と言われるギラ系呪文の中でも最上位に位置する呪文。それがベギラゴンだ。
「「ベギラゴン!」」
両者のベギラゴンが中央でぶつかり合い、接戦する。
「ぬぉぉぉぉっ!!」
ガルヴァスが雄叫びとも言える声を上げ、ハドラーのベギラゴンを押していく。
呪文は術者の精神状態によって左右される……ガルヴァスはこれまで何度もハドラーに敗れ去った。だがガルヴァスはそれを越えようとしており精神状態はとても良い。またハドラーよりも超魔生物になるのが遅かった分、超魔生物の研究が進みガルヴァスの力が上なのだ。
「ぐっ……!」
その一方、ハドラーは苦戦していた。ガルヴァスが予想以上に強くなっていたことに動揺していたのだ。それ故にハドラーの精神状態は悪くなり、ガルヴァスに追い詰められていく。
「ハドラー様〜♡」
そんな時、1人の女性の声が聞こえた。隙あらば自分に抱きつき、自分に尽くしてくれる魔族の部下であり、妻ジゼル。
「お父様頑張ってー!!」
そしてその間に生まれた娘の声も聞こえてきた。
「(ジゼルやラーゼルのためにも負ける訳にはいかん!)」
そのジゼルとラーゼルの顔を思い出したハドラーは覚醒し、ガルヴァスのベギラゴンを押し返した。
「何だと!?」
それを見てガルヴァスは動揺してしまい、ガルヴァスのベギラゴンは消え去ってハドラーのベギラゴンが直撃する。
「どうやら魔法の勝負では俺の勝ちのようだな」
ハドラーがそう言い、ベギラゴンを喰らったガルヴァスに近づく。ガルヴァスの身体は超魔生物故にベギラゴン程度ではダメージを負わない。
「そのようだ……だが!」
ガルヴァスはベギラマを後ろの方向へと二発放った。
「何の真似だ?」
ハドラーがそう尋ねたのはガルヴァスの後ろで気絶していた六将軍のザングレイとダブルドーラが灰となったからだ。つまり意図的にやったとしか思えないのだ。
「勝てなければ勝つ手段を選んだまでだ」
そしてもう二発も残った六将軍の2人へと放つ。ガルヴァスの企み、それは豪魔六芒星を完成させることにある。豪魔六芒星は豪魔六将軍全員が死んだ時、ガルヴァスに六将軍達の力を分け与える。つまり生き残っている六将軍を殺すことによってパワーアップするのだ。
その事にデスカール達は気づいておらずガルヴァス騎士団の援護をしていた。
「マヒャド!」
直撃するかと思われたその瞬間、マヒャドを唱える女性の声が響き渡り、ガルヴァスのベギラマは女性が唱えたマヒャドによって掻き消されてしまった。
「何者だ!」
その正体を探るべくガルヴァスは声を出しあたりを見回す。ガルヴァスの知る限りメネロは妖魔将軍であるものの攻撃呪文は得意ではなくマヒャドなども当然使えない。
「あ、あ……!」
そしてガルヴァスはその人物を見つけるやいなや鼻水を出してしまった。
「(ふっ……あれは幻聴ではなかったようだな)」
ハドラーはガルヴァスとは対称的にその顔を見て笑っていた。
「よくもまあ自分の部下に対してそんな非道なことが出来るわね」
ハドラーの部下であり、妻でもあるジゼルがそこにいた。
「ジゼル、ラーゼルはどうした?」
「今はぐっすり寝ています。フレちゃんに預けてありますから大丈夫ですよ」
ハドラーはやはりジゼルらしいと思い、頷く。
「そうか。だがその2人を避難させておけ。決着をつける際に邪魔だ」
「でも……」
「何、すぐに終わる。終わったらラーゼルと一緒に川の字になって寝よう」
それを聞くとジゼルはすぐに頷いた。
「かしこまりました!」
そう言ってジゼルは裏切られたことによってショックを受けている六将軍の2人を抱えて避難した。
「(随分と臭い台詞を吐くようになったものだが……悪い気はせん)」
ハドラーはガルヴァスを見るとガルヴァスは安堵しており、余裕すらも感じられた。
「ジゼルがいなくなって安心していたのか?」
「貴様とジゼル、2人を相手にしていたら勝てんが貴様1人ならば話は別だ」
「生憎だがお前は勝てん。何故ならお前は自分の為に本来守るべき部下を殺したが俺には守るべき部下の為に戦うからだ」
「そんな綺麗事で勝てるほど世の中は甘くないぞ!」
ガルヴァスが拳を作り、ハドラーに殴りかかる。しかしハドラーはそれを掌で受け止めた。
「どうした? それがお前の力か?」
「黙れ!」
ガルヴァスはその拳からハドラー同様にヘルズクローらしきものを出しハドラーの拘束から逃れ、そのまま顔へ向ける。しかしハドラーはそれを難なく避け、ヘルズクローでガルヴァスの心臓を貫く。いくら超魔生物であっても心臓を貫かれれば死んでしまう。
「うっ……!」
そしてガルヴァスは息絶え、死亡した。
「これが守るべきものがある者とない者の差だ……」
ガルヴァスが死んだことにより、ガルヴァス騎士団は動かなくなり、その場で停止する。
「決着が着いたか……」
マックスは戦いが終わったことに安堵し、その場に座る。
「我輩は空気を読んで帰るか」
ジゼルとハドラーの2人きりにさせようと思い、マックスはその場を去っていった。
〜〜
「それで貴方達はどうするの?」
「……どうするとは?」
デスカールが口を開くとジゼルが答えた。
「ガルヴァスが死んでそのまま魔王軍に帰って居場所はあると思う?」
「ないでしょうな」
デスカールは即答した。と言うのもデスカールは六将軍の中では有能でありこれから先のことも理解していた。
「それじゃあ私の部下にならない?」
「私めでよろしければ引き受けましょう」
デスカールはジゼルの誘いを引き受け、ジゼルに向かって膝をつく。
「デスカール!?」
「どうせジゼル様に助けられなければガルヴァス様に殺されていた。この方あってこそ儂は生きている。故に仕えることに決めた」
「デスカール仕えてくれて有難うね」
ジゼルの笑顔がデスカールに炸裂し、デスカールは照れてしまった。それを見たメネロは面白くなさげだった。
「あたしは残念だけどジゼル様の部下になる気はないわ。あたしは最高の職場を用意してくれたガルヴァス様に忠誠を誓ったからね。例えどんなことがあっても恨まないし憎めないよ」
「メネロ……その割にはプルプル手が震えているがそれはなんだ?」
「こ、これは何でもないよ! いやハドラーに対する憎しみよ!」
「メネロ無理をするな。どうせ女限定で加虐趣味を持つお前のことだ。その鞭でジゼル様を攻撃してジゼル様の泣きそうな顔を拝めたいのだろう?」
「うるさい!」
「ところがジゼル様の下につけば女に命令されている自分が嫌になってしまうのでないのか?」
「だまれだまれ黙れぇぇ!」
メネロは鞭を振り回し、デスカールを攻撃しようとした。だがそれはジゼルに止められてしまい鞭も没収されてしまった。
「はいそこまで。とにかく無理に仕える必要はないからどこでも好きな場所に行きなさい」
ジゼルはそういってメネロに鞭を返した。
「デスカール。最後に同僚としての願い聞いて貰えないかい?」
「何だ……?」
「私を殺してガルヴァス様の隣で眠らせて欲しい」
「……わかった。動機はどうあれお前がガルヴァス様を慕っていたのは事実だ。その願いを叶えてやる」
デスカールは自らの爪を使い、メネロの心臓を貫いた。
「さぁ行きましょう。ジゼル様」
デスカールはメネロをガルヴァスの隣に埋めるとジゼルとともにその場を去った。そしてメネロはガルヴァスと会えたかはわからない。だがデスカールという男が新たに仲間となったのは違いなかった。
ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」
A「なんか増えた?と思ったやつ前へ出ろや。」
B「いきなり暴力的だな!?折角後書きコーナーに新人が来たんだから歓迎しようぜ!」
C「Bの言うとおり!新しく入ったDよろしく!」
D「…いつもこんな感じなのか?後書きコーナーに採用されることになった元不死将軍デスカールだ。よろしく。」
A「本名はいっちゃダメでしょ本名は!」
B「ところどころ出番云々で話す俺たちだって似たようなもんだがな…」
C「それとこれとは話が違いますよB。」
D「それよりも前の更新が半年以上前だがそれについては突っ込まなくていいのか?」
A「作者だってなぁ…やる気になれば2日で仕上げられるんだよ!この話もそうだったし!」
B「ただやる気が沸くまでものすごい時間がかかるだけなんだ!」
C「ウジョー様の小説『ハドラー子育て日記 異世界旅行編』が更新されているのを見て自分も書かなきゃマズイと思ってようやくやる気を出したくらいだぞ。それから2日前に手をつけて5000字超なんてありえねえ文字数を書きやがったんだ…」
D「確かに5000字オーバーはものすごいことだが…色々伏線が出来てしまったぞ。それについては…」
A「さー時間だ!」
B「そんなわけで次回はifエンドか普通に進むか迷っているわけだが…」
C「それはまた次回のお楽しみってやつですね。」
D「…ifエンドだとどうなる?」
A「俺たちの口からは言えん!何せ半年前から考えていたことだ!ガルヴァスに関わらないことだけは確かだ!」
B「そんな訳でこの小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします。」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む…」
ABCD「次回もお楽しみに!」
A「…新人うまくいったな。」
B「これからもやらせようか。」
C「そうですね。」