ベンとダイの試合が終わり、次は誰と誰が戦うか揉めた。
「それじゃおふくろ、この腹違いの妹弟達に経験って奴を積ませてやるけどいいか?」
「腹違いって、確かにそうだけど親衛騎団の皆は私にとっても可愛い子供よ」
ジゼルはそう言って苦笑し、アルビナスをみる。
「ふん、実にくだらない。禁呪法で作られた駒が子供なんてほざく甘さは捨てたほうが良いのでは?」
アルビナスがジゼルを嫌うのはアルビナス自身がファザコンだからだ。それ故にジゼルがハドラーと仲良くするのが許せなかったし、ジゼルを義理の母とも認めていなかった。
「……」
ジゼルは悲しそうな顔になり、アルビナスを見る。
「少なくともてめえらのように言われた事をやるだけの駒よりかはマシだぜ?」
フレイザードはジゼルが悲哀の表情になったのを見てアルビナスを挑発する。
「フレイザード。それは私達に喧嘩を売っているのですか?」
アルビナスはそれに乗った。デルムリン島で見せたハドラーの単純な性格がここに来て現れてしまった。
「フレイザードお兄様だろ? アルビナス?」
「私達親衛騎団に勝てたらそう呼んであげますよ」
「っておい! アルビナス、俺達を巻き添えにするなよ!!」
ヒムが突っ込むがアルビナスは無視した。
「兄より優れた妹弟なんぞ存在しねえって事を証明してやるよ」
「既に俺達が参加することになってやがる」
ヒムはフレイザードのターゲットになったことに肩を落とした。苦労人の部分は間違いなくジゼルに絡まれた時の魔軍司令時代のハドラーそのものだった。
「我輩は敵に備えたい、故にこの勝負降りる」
「マックス!!」
「許せ」
こうしてマックスを抜いた親衛騎団とフレイザードの戦いが始まった。
「フィンガー・フレア・ボムズ!」
早速フレイザードは必殺技であるフィンガー・フレア・ボムズを放ち、攻める。
「オリハルコンにそんなものは効かないのは知っているでしょう! フレイザード!!」
アルビナスはそれをものともせず、突っ込んでフレイザードに立ち向かって行った。
「待てアルビナス!」
だがそれを止めたのはシグマだ。彼は決して油断しない。その為、真っ先にフレイザードが自分達に無駄だとわかっている呪文を唱えたのか? という疑問を真っ先に持ち、アルビナスを止めたのだ。
「へえ、結構やるじゃねえか。だけどそいつはもう動かねえぜ」
フレイザードはそう言ってアルビナスを嘲笑う。
「何をバカなことを……っ!?」
アルビナスが動こうとするが炎の鎖が邪魔をして動けなかった。
「そいつは俺の岩から禁呪法の応用で作り出した炎の鎖──さっきフィンガー・フレア・ボムズを放った時にてめえにぶつけてやったんだよ。もしもお前が忠告を無視してあの時動いていたら親衛騎団全員巻き添えだぜ」
フレイザードは得意げに解説すると真顔になった。
「この鎖を解こうなんて考えるのは止めときな。俺以外の奴らがその鎖を解こうとしたら大爆発を起こしてお前もそいつも巻き添えを喰らう。そこでおとなしくしていな!」
フレイザードはもうアルビナスに用はないと言わんばかりにヒム達に目を向けた。
「(こんな技で封じてしまうとはな)」
マックスはフレイザードがアルビナスの動きを封じる程強くなっていたことに驚いていた。マックスの中のデータでは以前のフレイザードなら文字通り秒殺だったが今は全然違う。駒の動ける範囲が広い程強いという訳ではないがそれでも駒の中で最も動ける範囲が広い女王……アルビナスの動きを封じたのだ。同じ親衛騎団のメンバー達に出来るかと言われれば無理と答えるだろう。それだけアルビナスの動きを封じることは不可能に近いのだ。
「(だが相性が良いとは言えここまで出来るとは……以前のハドラー様のように復活したら強くなるようになっていたのか?)」
だがマックスはフレイザードの技だけに注目した訳ではない。フレイザード自身についても注目したのだ。マックスの考える通りフレイザードはパワーアップしていた。しかし死んで復活したからという理由ではない。あえて言うならジゼルがラーゼルを守る為にフレイザードを強くしたのだ。以前なら魔軍司令初期の弱いハドラーの為に調節していたが今回は違う。ジゼルの凍てつくマヒャドとマグマから復活したのだ。ハドラーと重ねる必要性がなかったとは言ってはいけない。ジゼルはハドラーとの間に子供が欲しかっただけなのだから。
「さてと……今度はてめえらか」
フレイザードは残った3人(フェンブレンは不在、マックスは不参加)を見て笑った。
「ブロック、ヒム、今回は私の指示に従ってくれ。私に作戦がある」
シグマは槍を構え、いつでも動ける準備を整える。
「ブローム!」
「わかった」
ブロックとヒムはそれを了解し、目を合わせ、3人が同時に動いた。
「へえ? 3人同時にやりゃ俺を倒せるってか?」
フレイザードは輝く息でブロックを攻撃し、それを避けた2人はフレイザードの右半身──つまり氷の身体の部分を攻撃しようとしていた。フレイザードは今まで強力な氷系の技を使ったことがない。あえて言うなら現在使っている輝く息くらいだろう。
「ヒートナックル!!」
「ライトニングバスター改!」
そして2人はフレイザードの右半身に向かってメラ系とイオ系の特技を放った。イオ系はともかく、氷の身体にメラ系は天敵である。それ故にヒムのヒートナックルが効くかと思われた。
「2人して痛えじゃねえか」
だが実際にはほぼ無傷、ヒム達はそれに目を開く。
「俺のヒートナックルとシグマのライトニングバスター改を受けて無傷だと!?」
「そう驚くなよ。確かに今までの俺ならこの右半身は無くなっていただろうな。だがおふくろの凍てつく氷のおかげで炎すらも凍らすことが出来るようになって、てめえらの技の属性をなくしたんだよ」
「無茶苦茶だぜ」
ヒムはこの状況にも関わらずに笑っていた。
「ブロォォーム!!」
そう、ヒムが笑っていたのはフレイザードに突っ込んでくるブロックにフレイザードが気づかなかったから笑っていたのだ。
「なるほど、それがお前達の作戦か。考えたもんだ」
フレイザードは半ば関心しながらブロックを見てギリギリのところで避けた。
「はあっ!」
避けたところを見計らい、シグマはフレイザードを取り押さえた
「てめえ! それが目的か!」
フレイザードは暴れるが解けない。
「今だ! ヒム!」
「ヒートナックル!!」
シグマの声でヒムがフレイザードの右半身に炎の拳を炸裂させた。
「がはっ!」
だがそこにはフレイザードはおらず、右手を失ったシグマがいた。
「シグマ!?」
ヒムは慌てて手を抜き、シグマを見る。
「何故だ?! 何故いきなり消えたのだ……!?」
シグマはそう言って消えたフレイザードに尋ねた。
「弾丸発火散の応用だよ」
それを聞いた一部のギャラリー達は納得してしまったが親衛騎団のメンバーはわからない。
「弾丸発火散は俺の身体の小さな岩をバラバラにしてそれを当てる技。今回はその身体がバラバラになる原理を利用してやったって訳だ」
そしてフレイザードは3人をアルビナスと同様に炎の鎖で拘束すると、高らかに笑い声を上げる。
「これで俺の勝ちだ! ひゃーっはっはっはっは!」
フレイザードの勝ちが決まった瞬間だった。
「まさか私達が負けるなんて……」
アルビナスは影を落として、ブツブツと呟いていた。
「さてそれじゃアルビナス? 俺のことをフレイザードお兄様って呼んでみな?」
「くっ、フレイザード……お……兄様」
「よく出来ました!」
フレイザードはニヤニヤと笑い、アルビナスの頭を撫でた。やっていることは最低であるがジゼルからすれば微笑ましく、ジゼルも混ざった。
「それじゃアルちゃん! 私のことはお母さんって呼んで!」
かつてないほどジゼルの笑顔が眩しく輝いており、ハドラーも苦笑していた。
「呼びません! 言うとしてもジゼル様くらいです!」
アルビナスはぷりぷりと怒り、口を閉ざしてしまった。
ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「はい、という訳で今回はフレイザードが勝ちましたね。魔改造され過ぎじゃないですか?」
B「まあ今回のフレイザードの技、炎の鎖のモデルはDBの四星龍から生まれたものだからな。その影響でめちゃくちゃに魔改造されてしまったんだ」
C「それは仕方ありませんね」
A「そういえばまた作者が新しい小説を書いたらしいですよ?」
B「またか…確かターニアを主人公にした『ドラゴンクエストⅥ〜ターニアの冒険記〜』だったな。」
C「それに関しては作者は原作をプレイしながら書いているみたいですよ?この小説は原作をほとんど読んでいないくせに…」
A「それはともかく、次回は誰と誰が戦うんですか?」
B「次回は…お前達なんじゃないか?今まで戦ってないし…」
C「マジですか!?って時間だ〜っ!!」
ABC「次回もお楽しみに!!そして作者の書いている作品もよろしくお願いします!」