「う…ここは?」
クロコダインが目を覚ますとそこにいたのはラーゼルだった。
「気がついた?」
ラーゼルはそう言ってクロコダインの頭にあったタオルをどかした。
「お嬢さん…ここはどこかな?」
クロコダインは紳士にそう言ってラーゼルに尋ねた。
「お嬢さんじゃないよ、ラーゼルだよ!」
「ではラーゼル…俺達はどこにいるかわかるか?」
「お母さんならよく知っているから呼んで来るね。」
ラーゼルはそう言って退室した。
「(さて…ラーゼルの母が出てくるまで状況を整理するか。)」
クロコダインはそれまで状況を整理することにした。
「(まず俺達はダイ達とは別ルートで親衛騎団と戦った。そしてその戦闘の最中にマックスとブロック、そしてマックスの操る城兵の駒が俺達を下敷きにして潰した…流石の俺といえどもマックスと城兵の駒の両方の重さには対応できずにそのまま意識がなくなった。)」
クロコダインは黒の核晶が爆発したことに気づかず、意識を失ったのだ。無理もない。それだけ大規模な爆発だったのだ。
「(しかし、俺は目が覚めたら包帯を巻かれた状態でここにいた…一体俺が気絶している間に何が起こった?)」
現在のクロコダインが包帯を巻かれるということは相当な重傷である。どのくらいかといえばギガブレイク100発分に相当するといえばわかるだろう…
「そういえばホップ達は…?」
クロコダインは周りを見渡すと個室だとわかり外へ出ようとした。
「あ…」
そして外へ出るとそこにいたのはジゼルだった。
「起きた?」
「まさかジゼル…お前が助けたのか?」
「いや詳しくいえば違うよ。これからそれを説明するから皆が起きたら外に出るように言っておいて。」
「皆…?」
「そう、クロコダイン…貴方が一番の重傷を負ったんだから個室にして治療したのよ。ほらあそこに皆いるわ。」
ジゼルは扉を指差してそちらに向かせるとクロコダインは頷いた。
「そうだったのか…」
ホッと一息をついてクロコダインはその場に腰をかけた。
そして全員が気づき、外に集合させた。
「これで全員揃ったね。」
ジゼルの言葉に全員が頷く。
「これから私達がやるべきことは大魔王バーンを倒すこと。」
「その通りだ…あくまで俺達は大魔王バーンを倒すという共通点があるということにしか過ぎない。」
「簡単に言えば敵の敵は味方ってことだな。俺個人としてはてめえらなんかよりも憎い奴がいるし、てめえらと協力することは何一つ問題はねえよ。」
ハドラーの言葉にフレイザードが付け足すとマックスも声を出した。
「我輩達親衛騎団はハドラー様の命令に従うまでだ。」
「こいつは頼もしいぜ…」
ポップがそう言ってその場の空気を少しでも明るくしようとしたがそうはいかなかった。
「…大魔王バーンは強い。おそらく私、ダイ君、ハドラー様、バラン、ベンの五人が全員総掛かりでも勝てないほどに強い。」
「…冗談だろ?おふくろがそんな弱気なんて。」
フレイザードが信じられない顔でジゼルを見るがジゼルは首を振った。
「はっきり言うけどこれは冗談じゃない。あいつは…ハドラー様並かそれを上回るくらい魔力を持った魔法使いのメラゾーマを超えるメラを放つような奴…今の時点じゃ少なくとも大敗北するのは目に見えている。」
それを聞いてポップ達は絶望的な顔になった。それもそのはず…ポップは魔力に関してはハドラーと同等である。そのハドラーのメラゾーマがバーンのメラで押し切られる程バーンは強いのだ。
「そ、そうだ…魔神ダークドレアムはどうだ!?あいつに勝てば…」
フレイザードは魔神ダークドレアムの伝承を知っていた…その伝承はダークドレアムに勝てば願いが叶い、前回ダークドレアムに勝った当時の勇者達一行は当時の大魔王デスタムーアを滅ぼして欲しいと願ったところデスタムーアを物理的に、しかも一瞬で消し去ったという伝承だ。フレイザードはそれを利用しようとしていた。
「却下。ダークドレアムは人間に対しては弱いけど私達魔族の天敵。主力が人外である以上倒すことすら無理。それならまだバーンに挑んだ方がマシ。」
しかしダークドレアムは魔族に異常に強く、魔族の天敵とも言える存在だった。これまでの歴史の中で人間のみしか願いを叶えていないのが何よりの証拠だ。
「ダークドレアムの路線は無理となればジゼル殿…破邪の洞窟はどうだ?俺もあそこでパワーアップしたし、あそこならばアイテムも呪文も手に入る。」
クロコダインがそう言って自らの経験も話した。
「悪くない…でもその中に入って効果的なのは人間である貴方達と経験不足の親衛騎団くらい…私達はあまり効果的じゃない。」
「じゃあどうするのさ?」
ダイがそう言ってジゼルに尋ねる。ここまで否定されたら流石に尋ねるのは当たり前のことだ。
「私が稽古をつける。」
「…ちょっと待って下さい。ジゼル様。」
ベンがそう言ってジゼルに意見を出す。
「何?」
「少なくとも一対一の勝負で私を打ち負かしてからジゼル様の特訓に参加してはどうでしょうか?そうでもしないと大魔王バーンに勝てるとは思えません。」
ベンはジゼルに僅か数秒でボロボロに負け、その自分以下であればジゼルの特訓についていけない…現時点でベンがベンを超えている、あるいは同格と思っているのは強い順にジゼル、竜魔神状態のバラン、現在のハドラー…それにクロコダインだった。
「…確かにそうね。」
ジゼルは確かに自分が相手ではあまり意味がないと思い、それに納得した。
「でははじめに…ダイと戦わせて貰います。」
ベンはダイを指名し、トライデントを投げ地面に突き刺さる…
「ええっ!?俺と!?」
ダイはまさか自分が指名されるとは思っていなかったのだ。ベンはクロコダインから話を聞くとクロコダインに敗れクロコダインに恨みを持っていると思っていたからだ。
「本当はリベンジでクロコダインと再戦したいのだが…バランを破った実力を見ておこうと思ってな。」
ベンはトライデントを抜き構える。
「…わかった。剣も戦えって言っているし。」
ダイは剣を抜き構える。
「話が早くて助かる。」
しばらくの沈黙の中、誰かの汗が静かに落ちた。
「!」
そして二人はそれを合図に同時に動き、鍔競り合いをする。
「ふんっ!」
力のあるベンがダイを押し切り、ダイをトライデントで貫く。
「竜闘気!」
しかし、ダイは一瞬だけ竜闘気を全開にして身を守ると今度は剣を火に纏い、それを振った。
「火炎大地斬!」
ヒュンケルの大地斬を上回るダイの火炎大地斬がベンに襲いかかる!
「くだらん!はぁぁぁぁっ!!」
しかしベンからしてみればなんでもなく、ベンは爆裂切りでそれを打ち消し、イオラを10発放つ。
「くっ…!!」
ダイはそれを凌ぐのが精一杯でベンの接近を許してしまう。
「貴様それでもバランを倒した男なのか!?これならバランの方がよっぽど強いわ!!」
ここでベンは父親であるバランと比較させ、刺激を与える。このままベンが勝っても何一つ意味がないからだ。刺激させなければ怒りを抑えること、怒ったとしても新しい技を思い浮かべさせるのが重要だ。
「(ディーノ…必ず勝て。私に出来ることはお前の勝利を祈る事くらいだ…)」
バランは愛する息子であるダイが頑張る所を見て、そう願った。誰でも子供は応援したくなるものだ。
「遅い!遅すぎるわ!!」
ベンは得意の二回行動でダイを追い詰めていき…トライデントをダイの首元の前で寸止めした。
「これで…決着は着きましたね?ジゼル様?」
ジゼルは黙って頷いた。通常であればジゼルなら頷かないのだが…そうもいかない。ダイがここで竜闘気を使って防御しても相手がベンでなくバーンだったら無意味になるし、ベンはその事を理解していたがジゼルに念のために確かめたのだ。
「勝負は俺の勝ちだ。ダイ…もしも相手がバーンならこんな生易しいものではないぞ…覚えておけ。」
ベンはトライデントを戻すとダイにそう言って元の場所に戻った。
「…」
ダイはジゼルやハドラー、バラン相手ではなくそれ以下の相手に負けてことにショックを受け、下唇を噛んだ。
ダークドレアムは魔族に異常に強い設定です。そうでもしないとダークドレアムを倒す基準のレベル60でも苦戦するデスタムーアを遊んで葬れないはずですから…
ちなみに作者個人の話ですがデスタムーアは初見から3回連続全滅したのに対し、ダークドレアムは1回も全滅しませんでした。一番ひどかった初見殺しはⅧのラーミアでなくドルマゲスですね。あれはない…と個人的に思いました。