魔軍司令親衛隊隊長の恋愛!   作:ディア

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元親衛隊隊長、武人と戦う

「それじゃ行こうか」

 

 ダイ、バラン、ジゼルの3人は海に潜り海底の門をぶち壊しに向かった。

 

「よく来たな」

 

 そこで出会ったのはフェンブレン。彼はバランに潰された目を治さずにここに立っていた。その理由はバランにやられた時の屈辱を忘れない為であり誰よりも──それこそ主人のハドラーよりもバランに挑む為だった。

 

「邪魔」

 

 ドカッ!! 

 

 瞬殺である。特に見せ場もなくフェンブレンは叩き潰され比喩表現抜きに海底にめり込んだ。

 

「さて、行こうか」

 

 ジゼルはそう言って2人を促した。

 

「ああ、そうだな」

 

 バランはそれに承諾し、頷いた。

 

「(俺は何も突っ込まないよ)」

 

 ダイは2人のやりとりに突っ込むことすらも止め、そのまま海底の門をこじ開けた。

 

 

 

「ダイにバランにお前か。俺には時間がない。早く始めよう」

 

 ハドラーは3人を見、マントを外した。一見すると舐めたように見えるが実際は違う。ハドラーは黒の核晶の影響で身体を蝕んでいた。それ故に余裕がなかった。

 

「それじゃ私から行こう」

 

 ジゼルはそう言ってハドラーの前に立った。

 

「ゼシカとかいったな。マックスから情報は聞いてある。全力で行かせて貰うぞ!」

 

 マックスはジゼルが強いと報告しハドラーが戦いたくなるような相手に誘導した。ジゼルの作戦を不意にはしなくなかったのだ。

 

「ああ、こちらも行かせて貰うぞ!」

 

 ジゼルは疾風突きの要領でハドラーの懐に入り心臓を目掛けてハートブレイクを狙うがハドラーはヒム程甘くはない。

 

「ふんっ!」

 

 ハドラーの攻撃だ。ハドラーはシンプルに殴りに行き、格闘戦へと持ち込んだ。

 

「流石は元魔王といったところだ!」

 

「そんなかつての栄光に縛られたからこそ俺は敗北し続けたのだ! 己の地位を可愛がっている男に勝利などない!」

 

 ハドラーが優勢になり、ジゼルを押し始めた。これには理由がある。ハドラーを救うには一瞬心臓付近にある黒の核晶を凍らせる必要があるのだ。そのためにはハドラーを止まらせる必要がある。ハートブレイクを出したのもその一つの理由だ。だがハドラーはそれを許す程弱くはない。むしろジゼル個人が戦った中で五本の指に入るくらい強いと思ったくらいだ。

 

「まさか人間の身体でここまでやるとはな。マックスから聞いた評価よりもずっと上ではないか」

 

「そっちもね。ここまで強いとは思わなかった。だけどもう終わらせようハドラー!」

 

 ジゼルの身体がブレ、左手でハートブレイクを放つとハドラーはそれに直撃した。

 

「ぐおっ……!?」

 

 そして身体に異変が起きた。ハドラーの身体は動かなくなった。ジゼルはハドラーの心臓付近を切り裂き、黒の核晶に手を突っ込んだ。

 

「マヒャド!」

 

 ジゼルは黒の核晶をマヒャドで凍らせた。

 

「うおおおっ!!」

 

 しかしまだ半分といったところでハドラーが動き始めジゼルの腹を殴った。

 

「くっ!」

 

 ジゼルは飛ばされ、腹を抱えた。

 

「(ここまで強かったなんて予想外ね。笑っちゃうわ)」

 

 ジゼルはそう思い自虐気味に笑った。ハドラーが自分よりも格下だと思っていた。それは事実だがジゼルには油断もあった。かつてのハドラーが持っていたように。

 

「(でもそれでこそ私の惚れた魔族ハドラー。絶対に助けなきゃ妻として失格よ!)」

 

 だがジゼルはハドラーを救うためにここまで来たのだ。気合の入り方も半端ではない。

 

「面白い」

 

 またハドラーは笑っていた。ハドラーは竜の騎士以外にこんな強敵に巡り会えるとは思わなかったのだ。ハドラーに黒の核晶を埋め込まれていたが故の皮肉だろう。

 

「バラン、この戦いどう思う」

 

 父親を呼び捨てにしてダイはハドラーとジゼルの戦いの感想を聞いた。

 

「二人とも強い。竜魔人状態の私と互角と言っていいだろう」

 

「そんなに?」

 

「私は敵を過小評価する傾向があるからな。もしかしたらそれ以上かもしれんが、とにかく言えることは私は竜魔人にならないと絶対に勝てんということだ」

 

 

 

 そしてバランはハドラーを見ると心臓の付近に黒の核晶が埋め込まれていることに気がついた。そしてそれが半分凍りついていることにも

 

「っ!」

 

 バランは動揺した。何故ハドラーの身体に黒の核晶が埋め込まれているのか? そしてあのゼシカという女はそれに気がついていたのか? バランは様々な疑問を持ったが自分達に出来ることはこの場にいる二人にヒャド系とバキ系以外の攻撃呪文を使わせないことだ。

 

「《ダイ聞こえるか!?》」

 

「《何、これ? 一応聞こえるけど》」

 

「《竜闘気の応用でお前にテレパシーをしている。よく聞け。ハドラーには黒の核晶が埋め込まれている。もしもハドラーに向けてヒャド系とバキ系以外の攻撃呪文を使えば……黒の核晶が大爆発し、死の大地は真っ平らになる》」

 

「《じゃあどうすれば!》」

 

「《今はゼシカという女が止めているが万一ハドラーと戦うことになったらヒャド系とバキ系以外の攻撃呪文は唱えるな! ゼシカに今は任せろ》」

 

「《うん、でもむやみにハドラーを傷をつけたら爆発するんじゃないの?》」

 

「《その心配はない。ゼシカが先ほどマヒャドをやったおかげである程度の衝撃なら爆発しないようになっている。とにかく攻撃呪文を唱えるな》」

 

「《わかった》」

 

 そしてバランはテレパシーを止め、再び観戦していた。その理由はバラン達が加勢したところでバーンに黒の核晶を爆発させてしまう可能性があったからだ。

 

「(なんと無力なのだ、私は)」

 

 バランは唇を噛んだ。これほどまでに無力だと感じたのはソアラが死んだ時以来だったからだ。ソアラは悲しみしかなかった。しかし今回は違う。ゼシカ一人に任せてしまうことが悔しかったのだ。

 

 

 

「(格闘戦では少々不利か。ならば!)」

 

 そんなバランの気持ちも知らずにハドラーは魔軍司令時代の切り札の呪文、ベギラゴンを唱えた。

 

「ベギラゴン!」

 

 そしてその呪文はジゼルに向かい、襲いかかる。それをジゼルは両手を構えて冷気を作った。

 

「マヒャド!」

 

 それはただのマヒャドではない。いくらジゼルでもただのマヒャドであればハドラーのベギラゴンに押されてしまう。そこでジゼルは本来片手でも出来るマヒャドを両手で融合させ、威力を通常の2倍近くまで上げた。

 

「ぬぉぉぉっ!?」

 

 ハドラーはそれに押され、ジゼルのマヒャドに直撃した。

 

「やった……?」

 

 ダイがそう呟き、ハドラーを見るとピンピンとしていた。その理由は超魔生物の体質のおかげで自動で回復していたのだ。

 

「ふっ、驚いたぞ。俺のベギラゴンをマヒャドで押し切るなんてな」

 

「よく言うよ、そのマヒャドが直撃しても回復されちゃ頭いたいね」

 

 ハドラーの賞賛の声をジゼルはバッサリと切り捨て頭を抱えた。

 

「(ふむ、今ので呪文の方ではこちらが若干有利と見た方が良いか。しかしそれではジリ貧という作戦になる)」

 

 ハドラーは短期決戦に持ち込みたかった。その理由はハドラーは自分が何もせずとも時間が経過すれば死ぬと自覚していた。そのため、長期戦でダラダラとやるよりも短期戦で一気に決着をつけたかった。

 

「ゼシカ、そろそろ決着をつけよう」

 

 ハドラーは覇者の剣を取り出し、魔炎気を出した。

 

「そうね」

 

 それを見たジゼルは片手に全ての魔力を込め、冷気を放出する。

 

「超魔爆炎波!」

 

 ハドラーの必殺技、超魔爆炎波がジゼルを襲う。

 

「アイス・ハートブレイク!」

 

 ハートブレイクにヒャド系の呪文を足した技がハドラーを襲う。

 

「貰ったぁっ!」

 

 僅かばかりかハドラーの超魔爆炎波がジゼルに襲いかかるのが早かった。

 

「くっ!」

 

 ジゼルは技を出したまま足を動かし、無理やりそれを避けた。

 

「何っ!?」

 

 ハドラーはそれに驚いた。まさか技を出している時に足を動かせるとは思っていなかったのだ。それ故にハドラーの超魔爆炎波は外れた。

 

「アイス・ハートブレイク!」

 

 そしてジゼルの技が決まり、黒の核晶を完全に凍らせた。


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