ジゼルはヒムの攻撃を避けて攻撃する……がヒムはそれを見抜き避ける。ジゼルが再び攻撃しヒムに攻撃する暇を与えない。ヒムはそれを打開しようとするがジゼルのフェイントに翻弄され体勢を崩す。
「!」
ジゼルはその隙を見てヒムに正拳突きを放つ。正拳突きは強力だが今までの攻撃の中で避けやすいだけあってヒムに避けられてしまう。
「(勇者達以外にここまで強え奴がいるなんて聞いてねえぞ!)」
ただジゼルが優勢なことに変わりなく徐々にヒムは追い込まれ苦しい顔をした。
「信じられないって面だね」
ここでジゼルはヒムを挑発することにした。ジゼルはヒムの性格を見抜き、どんな風に挑発をすれば良いか理解していた。ダイを葛藤させたのもダイの性格を理解していたからだ。
「……っ!」
ヒムは怒りに満ち、思わずジゼルに手を出すがジゼルはそれを難なく避け、カウンターを入れる。
「あいにくだが私の目的は大魔王バーンただ一人。戦闘センスだけのお前如きに勝つどころか苦戦していたら大魔王バーンに鼻で笑われるんだよ!」
生まれて間もないと言うのにジゼルの動きについて行っている。それだけでもベン以上の戦闘センスがあるということなのだが、ヒムに足りないのは経験だ。圧倒的な経験の差がジゼルを優勢にさせている。それどころかヒムは息を乱しているのにもかかわらずジゼルは息を乱してすらいない。その事実がヒムを余計腹立たせた。
そしてジゼルの蹴りが入ろうとした瞬間、声が響く。
「ヒム! 退きなさい!」
アルビナスはそれを見てあまりに不利だと感じ、ジゼルにいつの間にか近づいて口から棘のような物を出した。それにヒムは慌てて横に飛ぶ。ジゼルはそれに反応出来ずに避けられない。
「ニードルサウザンド!」
そしてアルビナスの技が決まり、脳に刺さり死んだ。
それがジゼルでなかったならばの話だが。
「ふんっ!」
ジゼルは避けずに棘をもう片方の足で薙ぎ払い、ヒムの飛んだゴーレムのようなオリハルコンの人形のちょうど目の当たりに刺さった。
「ブ、ブローム!?」
「ブロック!!」
ゴーレムのような人形、ブロックはそれに狼狽え、その場にいた人形達が駆けつけた。
「凄え……」
するとジゼルの後ろからそんな声が聞こえた。ジゼルはその声の主を探すとダイ達が見え、ポップがその声の主だとわかった。
「おや、ポップ君。久しぶりだね」
「あんためちゃくちゃ強かったんだな」
「まあカールの破邪の洞窟に入っていたからね。とはいえ私1人だと流石に全員は倒せないから2、3人くらいは相手できない?」
「2人だけでも十分だよ! 3人くらいなら俺たちがやるから大丈夫!」
ダイ達のメンバーはダイ、ポップ、マァム、クロコダイン、ヒュンケル、ザムザである。一方ハドラー親衛騎団はヒム、アルビナス、ブロック、シグマ、フェンブレンの5人。これでジゼルが2人足止めするというならダイ達は2対1で有利に戦えるのだ。
「どうやら貴方達は勘違いしているようですね」
アルビナスはそう言って溜息を吐いた。
「勘違い?」
「そう、いつ我々ハドラー親衛騎団が5人だと言いましたか?」
「ま、まさかもう1人いるっていうのかよ!?」
「その通り!」
マァムの足元からオリハルコンの手が現れ掴むと徐々にその巨大な姿を現し、マァムの両足を持ち上げ、握りしめた。
「あぁぁぁーっ!?」
マァムはその握力の強さに耐え切れず、殴ろうとするがその巨大なオリハルコンの人形には届かず、次に足を握っている腕を攻撃しようとしたがその前に背中から地面に叩きつけられた。
「がはっ!?」
マァムは咳き込み、吐血するがそのダメージは大きい。
「マァム! しっかりしろ!」
ヒュンケルが駆け寄り、マァムに薬草を食べさせ、ダメージを回復させた。
「誰だ! お前は!」
そしてダイがその巨大なオリハルコンの人形に立ち向かうとその人形は真剣な目をしていた。
「我が名はマックス。かつてバーン様のところでは守護神マキシアムとして世話になっていたが昔の話。今ではハドラー親衛騎団の団長を務めるマックスだ」
マックスはマキシアムの時にハイエナのように弱った敵を確実に殺すというやり方からミストバーンから侮蔑されていた。ただバーンはマキシアムがミスをしないので放っておいたが、とあるミスをしてしまった。それはガルダンディーだ。ガルダンディーはキルバーンに追われる前に欲張ったマキシアムに狙われておりなんとか逃げ切ったがそれが原因となりマキシアムとしての人生を終え王の駒に戻った。そしてハドラーの部下マックスとして生まれた。
「そしてハドラー様の忠実なる僕にして死の大地を守護する我がハドラー親衛騎団を紹介しよう」
マックスは全員の顔を見渡し親衛騎団のメンバーはうなづいた。
「俺の顔は忘れちゃいまい。親衛騎団の兵士ヒムだ」
ヒムは好戦的な笑みをし周りを見た。
「私は戦場を駆ける騎士シグマ。以後お見知りおきを」
ランス状の槍を持った馬頭が礼儀正しく挨拶をした。
「我が名はフェンブレン! 親衛騎団のビショップにして完全無欠の狩り人よ……」
全身刃だらけのフェンブレンが刃を光らせ、不敵な笑みを浮かべ笑う。
「もう1人は残念ながら怪我を負う負わないに関わらず喋れないので我輩が紹介する。親衛騎団の城兵ブロック」
マックスはジゼルを忌々しく睨むがジゼルは無視だ。
「ブロ~ム……」
今までの雰囲気が台無しになりそうな勢いでブロックが返事をした。無理もないだろう……先程シグマに抜かれたとはいえ目に棘が刺さっていたのだから。
「そして私は女王アルビナス」
アルビナスが自己紹介を終えるとマックスは満足そうにうなづいた。
「我輩達はそんな世間話をしに来たのではない。ハドラー様からふるいをかけるように言われているのでな」
マックスは自分の重量からかドスドスドスと音を立てて歩き、ダイ達から離れていった。
「キング・スキャン!」
そしてマックスはジゼルごとダイ達をスキャンした。
~某所~
一方フレイザードはラーゼルの世話をしていた。
「兄様、兄様!」
驚異的なスピードで成長したラーゼルは人懐こい笑みでフレイザードに抱きつき、フレイザードはそれを温度調節した火の石の方へと移した。
「全く……ここまで懐くとは思わなかったぜ」
フレイザードはそう言いながらも満足気に笑っていた。
「兄様、お母様ってどんな人なの?」
ラーゼルはフレイザードの話を聞いていくうちにジゼルがどんな人物か気になり始め、フレイザードに尋ねるようになった。
「お袋か? お袋は強い奴だよ」
「強い?」
「ああ期待していな。お袋に会うまでの間は俺の過去の話でも聞いていろ」
「うん……兄様ありがとう」
「俺が生まれたのは今から一年くらい前だ……」
フレイザードはラーゼルに過去の事を話し、魔王軍に所属していたこと、ダイ達に敗れたこと、そして自分達のもう1人の親……ハドラーの事も話した。
「それじゃバルトスっていう魔物も兄様同様に禁呪法で作られたの?」
ラーゼルはヒュンケルの育ての親であるバルトスに興味を持った。
「まあ所詮そん時生まれてすらいない俺の話だからハドラー様に聞いた方がいいぜ」
「ヒュンケルは?」
「ヒュンケル? あいつは女誑しだからダメだ。お袋が鈍感だから良かったものの……よりにもよってハドラー様の前でプロポーズしたんだぜ……まあお袋はバッサリと断ってヒュンケルを振ったけどな。その後のヒュンケルの絶望した姿は面白かったぜ……クククッ!」
すっかり兄馬鹿になっていたフレイザードは魔王軍時代に目の敵にしていたヒュンケルをラーゼルに近づけまいと教育をしていた。
「そうなの?」
「ああ、本当だ」
フレイザードのラーゼル育成は順調だった。
ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「まさかマキシアムが親衛騎団になるなんて思いませんでしたね。」
B「これもジゼル様のせいだろうな…」
C「影響与えすぎです…俺達の出番は与えないくせに…」
A「同感だ。俺達の出番よこせ!」
B「フレイザードの出番が多い!もっと減らせ!」
C「くそっ…時間だ…」
ABC「次回も見てくれよな!」