ミストバーンがパプニカを襲っているその頃、ジゼルは思考していた。
「(ハドラー様を救うにはハドラー様と直接戦う必要がある。そこまで持ち込むにはどうすれば良い?)」
ジゼルはハドラーを救う為に自分と戦う必要があった。その理由は至って単純でハドラーに仕掛けられている爆弾はいくら強力とはいえ所詮は機械で出来た爆弾──要するに爆弾に火がつかなければ良いのだ。そのためジゼルが得意のヒャド系の呪文を唱えて爆弾に火をつけなくさせる。それがジゼルの作戦だ。
しかしこの作戦は欠点がある。もしもバーン達がその作戦に気づいてしまったら全てが台無しになる。それどころかジゼルやハドラーは消えてなくなるだろう。いかにバーンに気付かれずにハドラーの爆弾を止めるかが鍵となるのだ。
「(そう言えばハドラー様はダイ君に執着していた。クロコダインを倒した時から自分が倒したいと言わんばかりだった)」
ジゼルはハドラーがクロコダインを倒したダイを一人の武人として戦いたいことに気がついた。それは名誉を目の前にしたフレイザードと同じ目だった。
「(やはり魔王軍を抜け出したことは間違いではなかったわね)」
元々ジゼルはハドラーを救う為にザムザをスカウトするつもりで魔王軍を抜け出したがそれ以上の得策も生まれた。ハドラーと戦うにはダイにくっついていることだ。そうすればハドラーの爆弾を止める事ができる。あながちジゼルの行動も間違いではなかったのだ。
「(その前にやるべきことをやらないとね……)」
ジゼルは体を動かし、その場を後にしようとした。
「イオラ!!」
爆発呪文がジゼルに襲いかかるがジゼルは竜の本能で避け、それを放った犯人を見た。
「誰だ?」
その犯人は蛇の髪を持った魔族の男性だった。
「俺は妖魔師団のベルドーサ。お話でも……キェェェッ!!」
ベルドーサの不意打ちがジゼルを襲うがカウンターをしてジゼルからすれば何一つ問題なかった。
「で? お話でもしましょうか?」
ベルドーサの不運はジゼルの機嫌が少し悪かったことだろう。ジゼルは自業自得とはいえ身体が動けなかった為にストレスがたまっていた。そのストレス発散の相手がベルドーサになった……それだけの話だ。
「ひいっ!」
ベルドーサが必死に逃げようとするが無駄だった。
「正拳突き!」
ジゼルの一撃がベルドーサを吹っ飛ばす。
「アッパーカット!」
そしてジゼルは回り込み、顎を的確に掬うように殴るとベルドーサは抵抗することすら許されずそのまま上に上がって行った。
「背負い投げ!」
そしてジゼルはベルドーサの腕……ではなく髪を掴み、蛇を千切りながら投げた。
「爆裂拳!」
そしてジゼルの拳の嵐がベルドーサを襲撃する。もう止めて! ベルドーサのライフはゼロよ!
それから5分後
「ふ~っ……スッキリした」
そこには人間年齢5才ほど若返ったジゼルと……
「」
ボロ雑巾のようなベルドーサの死体が転がっていた。呪文を使っていないあたり余程ストレスが溜まっていたと思われる。
「それじゃ本当に行こ」
ジゼルがベルドーサを殺したのは至って簡単でベルドーサは使えないと判断したからだ。ザムザは付け入る隙があったがベルドーサは違う。ベルドーサは超魔生物でもなければ心が腐っているとジゼルは感じたからだ。
~パプニカ~
パプニカでは鬼岩城が真っ二つにされ、妖魔師団の援護も悲しく魔王軍は無様な結果に終わった。
「ぬおぉぉぉっ!!」
ミストバーンは叫んだ。それはダイ達がミストバーンの素顔を僅かだが見えたからだ。
「見たな……っ!」
ミストバーンは冷静さを完全に失い、バーンのお気に入りの一つであった鬼岩城を真っ二つにしたダイ達を憎悪の対象としてみていた。
「そんなに怒ることか?」
ポップは暢気そうな声でミストバーンに尋ねるがそれがミストバーンの逆鱗に触れた。
「黙れ!」
ミストバーンの叫びにダイ達は驚く。フレイザード戦の時は少なくとも寡黙という印象があり、こんなに激怒するとは思っていなかったからだ。
「もはやこれまで。私の顔を見た以上アレをやるしかない!」
ミストバーンは闇の衣を剥がし始めるとミストバーンの背後から鎌を持った男がミストバーンを止めた。
「ストーップ。そこまでだよ。ミスト」
「キ、キル!」
「だいたいそれはバーン様から禁じられているだろう? ミスト……」
「そうであった……」
「それにこんな雑魚相手にそれをやる必要もないよ」
キルバーンはそう言ってポップを見るとポップが真っ赤な顔でキルバーンを見ていた。
「な、何おう!」
ポップはまだまだ未熟であり、フレイザードのフィンガーフレアボムズが最大火力でありキルバーンからしてみれば脅威でもなんでもなかった。それに精神面もバランに善戦したと言う事実もあり不安定だった。
「それじゃ僕達はお暇しようか」
キルバーンとミストバーンは宙に浮くとそのままゆったりとしたペースで死の大地へと向かっていった。
「あの野郎!」
ポップはキルバーン達に追いつけると判断し、一人で追っかけた。
「あっ!? ポップ待てよ!!」
ダイ達も慌ててそれを追いかけた。
~死の大地~
「案の定ってところだね」
キルバーンはうまく行きすぎてため息を吐いた。
そこにはポップが金縛りで動けなくなり苦しむ姿があった。何があったのかすら書かれないのは最早酷すぎる。
「じゃあね」
キルバーンは鎌を振り下ろし、ポップを殺そうとした瞬間、衝撃が走る。
「がはっ!?」
しかし後ろから何者かに殴られキルバーンは前へと吹っ飛んだ。そしてポップは恩人に礼を言おうとしたが……予想外の人物故に言葉が出なかった。
「久しぶりだな」
その声はジゼルにボコボコにされ、マァムに命の危機を救われた人物だった……
「ザムザ……!」
「全く、お前は礼も言えないのか? まあお前を助けるためじゃないからいらないが」
ザムザはそれだけ言ってミストバーンを見るとミストバーンは怒りに満ちていた。
「貴様も裏切るのか……ザムザ」
ミストバーンの低い声が響き渡るがザムザは鼻で笑った。
「確かに魔王軍は裏切ったが俺は俺を裏切ってはない!」
ザムザはドヤ顔で言い切って魔王軍を裏切ったことを宣言した。
「裏切り者は許さん!」
ミストバーンが指を伸ばし、それらがザムザに襲いかかる。
「ふっ……!」
ザムザはそれを避け、マァムを苦しめたタンをミストバーンに吐き、動きを止めようとするがミストバーンはそれを真っ二つに切り落とし、激戦が続いた。
「してやられたね……これは」
キルバーンがため息を吐くと次から次へと勇者達がやって来た。
「(あの魔法使いここまで計算していた、なんてことはないな。ザムザが現れたことは完全に予想外だったようだしザボエラが用意したとも思えない──となれば少し調べてみるか)」
キルバーンは心の奥でそう決意するとイオラが目の前まで来ていた。
「うおっ!?」
キルバーンは首を曲げて避け、ポップを睨むとポップはしてやったりと言わんばかりにガッツポーズしていた。
「まあ序曲もここまでさ」
キルバーンが後ろを振り向くとそこに現れたのは超魔生物となったハドラーだった。
「待たせたなミストバーン。俺のパワーアップは終わったぞ」
今のハドラーはバルジ島と戦ったハドラーとは桁が違う。ダイはそう感じていた。事実、魔界の鍛冶師ロンベルクに貰った剣の鞘が勝手に開いていた。この鞘が勝手に開くことはない。強者と戦う時のみ開くようになっている。暴走したフレイザードが覆っていた鎧を相手にする時ですら開くことはなかったのだ。つまり今のハドラーはかなりの強敵だ。
「さて……ダイ。早速だが俺と一対一の勝負をして貰おう! この時の為に俺はつまらぬ誇りと魔族の身体をも捨てた! 今やその望みはただ一つ! 我が生涯の宿敵アバンが残したお前達を倒すこと!」
ダイはこの時感じてしまった。ジゼルが惚れた理由と本気で戦わなければ殺されると。そしてダイは竜の紋章を光り輝せた。
「おいフルパワーでやったら体力温存出来なくなるぞ! もっと抑えておけよ!」
「いいや今回のハドラーはかつてない程の強敵だ。竜魔人のバランを凌ぎ得るかもしれない」
ポップはハドラーを見て信じられない顔をした。炎魔塔の時のハドラーは少なくとも自分が善戦したバランよりも弱かったと思っていた。だがその評価を覆すことになったのだ。驚かないほうがおかしい。
「よくぞ見破った!」
そしてハドラーはマントを投げるとそこにあったのはそこにいるザムザ──いやそれ以上の超魔生物の身体を持ったハドラーだった。
「それでこそアバンの使徒よ!!」
そういえばこのサイトで原作ダイの大冒険で原作初期からここまで進んでいるのって私くらいのものですから原作を思い出すのに物凄い苦労します…とはいえ他の作品も面白いんですよ?アンチではないのでご安心を。
出来ればクロスオーバーとかコラボとかいいよなぁ…私の表現力ではジゼルの面白さを1/10くらいにしてしまっている感がありますから…などと考えている私がいます。露骨なまでにここに書いてしまうのは嫌だけどジゼルの面白さを引き出せないのはもっと嫌なので頑張ります!
PS…もしメッセージボックスに書いてくれればジゼルを貸しますよ。