魔軍司令親衛隊隊長の恋愛!   作:ディア

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今年最後の投稿です!


妖魔学士ボコボコにされる

 ~某所~

 

「なあカラス」

 

 アクデンがそう言ってカラスに話しかける。

 

「なんだ?」

 

 カラスはあくびをしながらもそれに答える。

 

「暇だな」

 

 ザグッ! 

 

 アクデンはいきなりカラスの影にトライデントを刺すと──

 

「ゲゲゲッ!?」

 

 魔影軍団のシャドーがカラスから出て行き死んだ。

 

「全くなんでこんなことをしなくちゃいけないんだか」

 

 カラスも影を剣で刺して魔影軍団の魔物を狩る。これには理由があった。

 

 ジゼル達一行にとって魔王軍はすでに敵である。しかし魔王軍はそうは思ってはいない。だがミストバーンはジゼルが産休を使ったことに疑問に思ったのとジゼルが魔王軍の目的である地上崩壊の動きに気づいたかどうか確かめるために動いた。しかし魔影軍団を使ってくることはお見通しでアクデン、ベン、カラスの3匹を使って影を徹底削除していた。

 

「よう、そっちは大丈夫か?」

 

 ベンが現れて2匹に挨拶をする。

 

「いえ、大丈夫ですよ。これで一応半径500m以内の影は全て殺しておきました」

 

 そう言ってアクデンはベンの質問に答えるとまたトライデントを影に刺す。

 

「ギャーッ!!」

 

 そして影が断末魔を上げて消え去った。

 

「なるほどな。これもジゼル様の為だ。魔影軍団の奴らには悪いが、こうでもしないとダメだしな」

 

「罪悪感は抱く必要なんかありませんよ。あいつらがプライバシーを侵害してきただけのことですから」

 

「それもそうか」

 

 そんな見張りをしているベン達だった。

 

 

 

 ~鬼岩城~

 

『やはり無理か』

 

 ミストバーンは影を使ってジゼル達の動向を探っていたがベン達に影を殺されてしまい不可能だった。しかもベン達がやったという証拠は不足しており、自ら行っても育児休暇で断られてしまうだろう。

 

「もうよい、ミスト。これ以上詮索しても無駄だ」

 

 バーンがそう言ってミストバーンにジゼルの詮索を止めるように命令した。

 

『畏まりました』

 

 ミストバーンはバーンに対して崇拝と言っていいほどバーンに忠誠心がある。その為、バーンの命令は絶対であり、例え殺すべき相手を生かせと命令されたらそれに従うしかないのだ。そこがミストバーンとジゼルの違いである。ジゼルの場合はハドラーの為にハドラーを裏切るようなことをするし、それこそが大切だと思っている。

 

 ミストバーンとジゼルの共通点は主人の為に動いているということだろう。

 

 

 

 ~ロモス~

 

「ヒヒヒっ! 面白い。たかが人間とは言えその牢獄から抜け出すことが出来るとはな」

 

 ザムザはマァムを見て多少驚いたもののマァムがどう脱出したかの方に興味を持った。

 

「私は貴方を許せない! 人間をゴミ呼ばわりして!」

 

 マァムは激怒し、ザムザに襲いかかった。

 

「(どれ、一撃受けてみるか)」

 

 ザムザは超魔生物である自分の身体を使い、マァムが魔牢獄を破った原因を調べようとし、わざと攻撃を受けた。

 

「がっ!?」

 

 そしてザムザは思い切り脇腹に拳を入れられ、その場所に穴が開いた。そこまではダイと同じだ。

 

「(回復せん!? どういうことだ?)」

 

 超魔生物は回復速度が異常なまでに速く、受けたダメージもすぐに元通りになってしまうのだが今回は戻らなかった。

 

「そうか、マホイミか」

 

 ザムザは一瞬で回復しないことからマァムの使った呪文が過剰回復呪文マホイミだと判断した。

 

 特定の場所を過剰に回復しすぎるとその場所は死滅してしまう。それを利用したのがマホイミである。もっと簡単に言えば最大HPを減らす呪文だと思ってくれればいい。

 

「(へえ、あの娘中々えげつない呪文を使うのね)」

 

 横たわっているジゼルはその呪文を聞いて少し驚いていた。雰囲気からしてそんな呪文を使うような感じでなかったからだ。

 

 

 

「これが私の新しい技、閃華烈光拳よ」

 

 マァムはそう言ってジリジリとザムザに近づき、再び放った。

 

「ふっ! 二度も同じ技が通用するか! かぁっ!」

 

 そう言ってザムザがジャンプで避けてタンを放った。

 

 

 

「(もう少しズレよう)」

 

 ジゼルは邪魔にならないように動こうとしたが……その際に指輪を落としてしまった。

 

「(ハドラー様の為に買った指輪が!)」

 

 

 

 バギッ! 

 

 

 

 そしてその指輪はマァムの閃華烈光拳を避け、タンを放ったザムザに踏まれた。

 

「ふふふふ……」

 

 そしてジゼルは産後の運動がなんぼのもんじゃ! と言わんばかりにゆらりと立ち上がった。

 

「これが愛の力よ」

 

 誰に言っているのかわからないがザムザにふらふらと歩いていった。

 

 

 

「くっ」

 

 マァムがザムザの放ったタンを取ろうとするが中々取れない。

 

「このタンは特殊な粘液で出来ている。お前のその技は呪文を応用したもの──つまり手からしか出来ないと判断してそうしたのだよ!」

 

 そう言ってザムザが片方の腕を上げ、マァムを殴ろうとしたがその瞬間音速を超えた風圧がマァム達に襲った。

 

 

 

「い、今の風は!?」

 

 マァムの後ろから突然風圧を感じ、マァムは重心を低くして対処した。

 

「げはっ!?」

 

 何故かザムザがいきなり倒れ、頭から出血していた。

 

「さあ覚悟は出来ているんだろうね?」

 

 そこには赤いオーラを放っているゼシカ(ジゼル)がおりその姿はまさに修羅だった。

 

「な、何だ!? 貴様!!?」

 

「さすらいの魔法戦士ゼシカ」

 

 それだけ言うとジゼルはザムザの懐に入り……正拳突きを放った。

 

「ぐぁっ!?」

 

 そしてザムザは身体をくの字に曲げ、苦しむが……ジゼルの攻撃は終わらない。

 

「まだまだ」

 

 今度は爆裂拳を放ち、ピンポイントで正拳突きを放ったところにすべて当てていく。

 

「がぁぁぁぁっ!?」

 

 ザムザの回復が間に合わない。それだけがザムザの苦しみだった。

 

 回復が間に合わないのは2つほど要因がある。一つはジゼルを怒らせてしまったこと。もう一つは超魔生物対策とも言える一点に集中して攻撃することによって回復を間に合わせないということだ。

 

「これで終わりだ!」

 

 そしてジゼルの正拳突きがザムザに放たれ、ザムザの腹を貫き勝負は終わった。

 

 

 

 ジゼルの戦いを見た魔法使いPは後にこう言った──「あんなもん戦いじゃねえ、虐待だ」と。

 

 

 

「(せめて親父に報告しなければ……!)」

 

 ザムザは頭にある装飾品を取り、それを空に投げた。

 

「何をした!?」

 

 足手まといとなってしまったダイがそう言ってザムザに問い詰める。

 

「あれは親父に超魔生物の研究の成果、つまり今日あったことを報告した。それだけだ」

 

「馬鹿野郎! そんなことして奴がお前を褒めるとでも思っているのか!?」

 

 ポップは知っていた。先日ザボエラに騙されてザボエラがどれだけ狡智かを。

 

「そんなことわかっているさ。けどな、あんな奴でも俺の父であることに変わりはない」

 

 そう言ってザムザは目を瞑り死ぬのを待っていた。

 

「……?」

 

 しかし致命傷を負ったにもかかわらず死なないことに異変を感じたザムザは目を開けるととんでもない姿があった。

 

「! お前何をやっている!?」

 

 ザムザが見たのはマァムが敵である自分を治療している光景だ。

 

「動かないで!」

 

 マァムがそれだけ言うとザムザはビクッと反応して元の位置に戻った。

 

「お前、何をやっているのかわかっているのか? 俺はお前達の敵だぞ?」

 

 ザムザは横になりながらもマァムにそう尋ねた。

 

 

 

「確かに貴方は私の敵だわ。だけどあんな姿見せられて同情出来ない人はいないわ」

 

 グサッ! 

 

 ジゼルの良心に100のダメージ! 

 

「それにこれが私の力の使い道なのよ。私は誰かを傷つける為に力を得たんじゃない。私は出来るだけ守ろうとしたいから力を得た」

 

 グサグサッ! 

 

 ジゼルの良心に658のダメージ! 

 

「神様から得た命を弄るのは決していいことではない……だけどその弄った本人を殺すなんて真似は私には出来ない。私は守る為に戦うのだから……」

 

 

 

 バタッ! 

 

 ジゼルの良心は力尽きた! 

 

「ははは……私は何の為に怒っていたんだろう……」

 

 ジゼルはすっかり心を折られ、端の方で体育座りになっていた。

 

「……まあ元気だしてよ」

 

 そう言ってチウがジゼルを慰めた。

 

「ありがとう……」

 

 

 

「……だが俺を放っておいてもいいだろう?」

 

 しかしザムザはそれでも納得がいかなかった。放っておいても自分は死ぬし、ダイ達にとっても有益なことだ。わざわざ自分を生かす理由はない。

 

「誰かを助けるのに理由は必要?」

 

 この言葉でザムザはマァムの性格を理解した。甘い……こいつはシュガーパイとあんこクリームパフェを同時に食べるくらい甘いと……

 

 

 

 そんなことを思っていると立ち直ったジゼルがやってきた。

 

「ザムザ、一つ言っておくけど私はザボエラを知っている」

 

「何だと?」

 

「今のままじゃあの性格からしてザボエラは君のことを見向きもしないだろうね。だけどザボエラは無駄にプライドが高い。ザボエラの真似をするのではなく、超えるということを目標にしたらどうだろうか? 必ず奴は君を意識しざるを得なくなる」

 

 それを聞いてザムザはハッとした。確かにザボエラは無駄にプライドが高く、邪魔者は消そうと必死だった。その邪魔者になることでザボエラが自分を認めたら、そう思うとザムザは自分の身体に鞭を入れた。

 

「あっ!? ちょっと!? 治療はまだ終わってないわよ!」

 

 マァムがそう言ってザムザを止めようとするが手を払われた。

 

「もういい。俺は行く」

 

 そう言ってザムザは立ち上がり、武道場から出て行こうとしたが──

 

「どこへ行くんだ?」

 

 ダイがそう言ってザムザを立ち止まらせた。

 

「どこへでもいいだろう……」

 

 ザムザは振り返ると何かすっきりしたような顔で出て行った。

 

 

 

「(これでザムザは私の味方になり得るようになった)」

 

 ジゼルの目的はハドラーの核の結晶をどうにかすることである。そのためには専門家、つまりザムザのような人材が必要だった。まだ味方にはなっていないものの、ザボエラと対峙する以上はこちらの味方に引き込みやすい。そうすればハドラーの核の結晶をどうにかして外す……ということも夢ではない。

 

「それじゃまた会おう。ダイ君、ポップ君、マァム君、次会う時は共に戦おう」

 

 そしてジゼルも立ち去った……


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