~鬼岩城~
「妖魔司教ザボエラただいま戻りました!」
そう言ってザボエラが戻ってきたのはあれから数分経った頃である……
「そう……でヒュンケル達は死んだ?」
ジゼルがそう言ってザボエラに近況はどうなっているか聞いた。
「いやいや……生き残っているのはベンではなく……ヒュンケル達じゃ!」
「なんだと?」
この場にいた魔王軍幹部のなかでもトップクラスの実力者達は驚いた。
と言うのもベンはジゼルほどではないにせよかなりの実力者だ。それこそ時代こそ違えば魔王と呼ばれてもおかしくない程に……だがそのベンが負けたのだ……驚くのは無理ない。
「間接的な死因となったのは遅効性の麻痺毒によるものが原因……つまりその遅効性の麻痺毒のせいでベンは動けなくなりその間に死んだと考えて良いでしょう」
ザボエラはベンの死因を解析し、それを発表した。
「なるほど……そういえばバランはどうなったの?」
ジゼルはベンのことはもう心配していないのがバランの様子をザボエラに聞く。
「これを見ればわかります……」
そう言ってザボエラは悪魔の目玉を使い、バラン達の様子を見せた。
「えっ……?! 嘘!?」
そこには信じられない光景が映っていた。
そこにはクロコダインやヒュンケル、レオナが倒れ、ポップもよろよろの姿で映っており、バランがダイを見つめていた。もちろんジゼルが驚いたのはそんなことではない。むしろ予測していたことだ。だがジゼルを驚かせたのはバランが竜魔人となっていたからだ……
~テラン城前~
「どうやらあんたを相手に俺もここまで頑張れるなんて思いもしなかったぜ……」
ポップはよく頑張った……バランの攻撃を避け、そして何度もフェイントを織り交ぜ、緩急をつけ、とにかくあらゆる手段で時間を稼いだ。
「ポップ! 無事か!?」
クロコダインとヒュンケル、そしてレオナが駆けつけ、ポップを心配する……
「へっ……俺達の思い通りに動いた気分はどうなんだ? 竜の騎士さんよ! ゲフッ!」
ポップはバランに最後の虚勢を張り、皮肉げに笑う。……するとすぐにポップの口から血が飛び出た。
「ポップ君!」
レオナはポップにベホマを唱え、治療に務める……
「確かに貴様らの思い通りに私は動いてしまった……だが私とて竜の騎士だ……貴様らがいくら策略を立ててもただで踊らされるほどマヌケではないわ」
バランはポップがしていることはハッタリだと言うこと気がついた。それ故にバランがしたことは……極めて単純なことである。
接近戦を極めた格闘家は肩を動かさずにパンチを放つことが出来る……通常で有れば肩が僅かに動き、格闘家はその動きを見て予想するものだが……肩が全く動かなければ予想がつかずいきなりパンチが飛び出してきた錯覚に陥る……
バランはそれを利用してポップに攻撃を与えたのだ。ポップは防御呪文スカラを唱えていたので何とかなったが相当応えた……そして二撃目がポップの腹にクリティカルヒットして現在にいたる。
「ヒュンケル、おっさん……タッチだ。流石にただの魔法使いが竜の騎士のパンチをモロに喰らっちゃ動けないわ……」
「いや……ポップ、よく頑張った。魔法使いの身でありながらバランにそれだけの軽傷で済んだのだ。後は俺たちに任せておけ……」
クロコダインがポップにそう言うと斧を持ち構えた。
「ヒュンケル、クロコダイン……まさかお前二人達があの二人を倒すとは思わなかった……あの二人は相当な手練れ……お前達程度の相手ならば十分だと判断したのだがどうやら私はお前達のことを過小評価していたようだな」
バランは剣を抜き、構えた……この場で唯一構えていないのはヒュンケルのみだ……
「バラン……お前は何故戦う?」
いきなりヒュンケルがそんなことを言い出し、バランに質問した。
「もちろんディーノを邪悪なる人間から取り戻すためだ!」
バランはその質問にダイを取り返すためだと答えた……
「何故邪悪だと言えるんだ? ラーハルトから聞いたぞ……! お前は妻のソアラを人間に殺されたから人間を憎んでいる……違うか?」
「そうだ! 私は全ての人間が憎い!」
「では聞くが……ソアラすらも憎いと言えるのか?」
「!? そ、それは……」
それは初めてバランがどもった瞬間だった……何故ならそんなことは考えておらず人間を殺すことを毎日考えていたからだ。
「やはりな……お前は人間が憎いのではない……お前は矛盾に耐えられなかっただけだ!」
「矛盾だと?」
「お前は人間であるソアラの慈愛に触れた……だが同時に人間の醜悪も見てしまった。お前はその矛盾に耐えきれずに人間を殺すという行動しか取れなかった……違うか……?」
「……そうかもしれん……だが今更そんなことを言ったところでもう遅い。もう私は唯一の家族であるディーノを取り戻すためにここまで来たのだ」
ヒュンケルの言葉はバランに届かず、バランは剣を置き、目に着けている竜の牙と呼ばれるアクセサリーを外した……
「この状態での私の実力はお前達2人同時に倒せるほどではない……故に私、いや竜の騎士の本気を出そう……竜の騎士は何故人間の姿をしているのかわかるか? それは本気で戦えば理性を失い、全ての敵を倒すまでに戦い続けるからだ……もちろん我が息子ディーノとて敵とみなせば例外ではない……!」
そしてバランは竜の牙を握り、赤い血を流した……しばらくすると血が魔族特有の青い血となり徐々にバランの姿が変わって行った……
「これが竜の騎士最強の形態……竜魔人だ」
そしてバランは竜魔人となり、一行に絶望と恐怖を与えた……
「ウオォォオッ!!」
まずはじめにバランが剣を持ち、襲ったのはクロコダインだった……と言うのも今のクロコダインは通常の状態のバランのギガブレイクをほぼ無効化しているのだ……バランが警戒するのは当たり前のことである。
「ぬぅぅぅ……!」
クロコダインは手をクロスさせて大防御で防ぐが……
「ハァァァァッ!!」
バランはクロコダインに足払いをした。
「何ッ!?」
クロコダインがバランに足払いをされたことに驚き、そのまま尻餅をつく……何故なら竜魔人状態のバランとは言え、足のみでクロコダインを尻餅を付かせるのは無理だ。バランはテコの原理を利用してクロコダインを尻餅を付かせたのだ。
何にせよ今の状態のクロコダインは大防御が解除され、バランの格好の餌食だ……
「ドラゴニックブレイク!」
バランは竜闘気のみを用いてクロコダインに斬りかかる。何故なら先程も言った通りクロコダインにはギガブレイクを無効化する身体を持っている。そんな相手にギガブレイクを使ったところで無駄だ。ならばいっそのことデイン系を用いらずに竜闘気を用いて破壊力を高めた結果、新しい技ドラゴニックブレイクが産まれたのだ。名前のセンスがないのはバランが竜魔人であるが故だろう。
「ブラッディースクライドーッ!!」
ところがヒュンケルが自らの切り札ブラッディースクライドを放った。
するとバランはクロコダインの攻撃をやめ、とある呪文を唱える。
「ギガデイン!」
ここで言っておくがバランはギガブレイクのためにギガデインを出すようなイメージがある。しかし本来のギガデインの使い方──つまり剣ではなく人や魔物などに向けて放つことは滅多にしない。だがバランは本来の使い方の方を選んだ。すなわちヒュンケルにギガデインを放った。
「グァオォォーッ!」
ヒュンケルの装備している鎧、すなわちラーハルトの鎧は前装備していた鎧同様にデイン系の技は通す。
「ギガデイン!」
ライデインですら相当なダメージを負うのにその上位のギガデイン2発となればヒュンケルにとって致命傷とも言えるダメージを負わせることができる。
「これで一匹目」
バランはそう告げると空気となっていたレオナの首を叩き、気絶させた。
「二匹目」
レオナを気絶させたのは単純な理由でヒュンケルの回復を阻止させるためなのともうひとつ……自分の妻ソアラに通じるものがあったからだ。
「さてクロコダイン。後はお前を倒せば終わりだ……そこの魔法使いの小僧は魔力も尽き、先程のように逃げることすらもできん……」
「やむを得ん」
クロコダインは斧を落とし、自らの闘気を静め……ほぼ0にした。
「何の真似だ……? クロコダイン……」
バランがクロコダインの異変に気がついた……
「何、一か八かの賭けをするまでのことだ。これで失敗すれば俺はほぼ負けが決まる。ただし、成功すればバラン。お前に大ダメージを与えることが出来る」
「無刀の陣か……いいだろう。その勝負受けて立とう!」
無刀の陣。アバンがハドラーを倒す際に使った技のひとつで攻撃力を何倍にも上げる代わりに失敗した時のリスクも大きいカウンター攻撃だ。
「ドラゴニックブレイク!」
バランは竜闘気を込めた剣でクロコダインに一気に迫る……
「獣王会心撃!!」
クロコダインは一瞬で闘気を溜め、獣王会心撃を放った。そしてクロコダインのタイミングはバッチリでバランに決まった……ように見えた。
「何ッ!?」
簡単に言うならばバランはそれをよけたのだ……まさにその動きは芸術的な動きだった。
「(残念だったな……クロコダイン。お前が斧ではなく獣王会心撃で攻撃することはわかっていた。お前が斧をとっていれば間違いなく私に勝てただろう。欲を張りすぎた結果だ)」
そしてバランのドラゴニックブレイクが決まった。
「済まない……ポップ……俺が不甲斐ないばかりに……グフッ!」
そしてクロコダインは大量の血を流し気絶した。
「お、おっさ〜んっ!!」
ポップは信じられなかった。クロコダインがバランの攻撃に合わせてタイミングがバッチリ決まっていたのに、バランがそれをよけたことを。
「ハァッ!」
そんなことを考えているとバランはポップを蹴り飛ばした。
「ヴゲッ、ガフッ……ゴフッ……!!」
ポップは放物線を描き地面に叩きつけられ、口から血を出した……
「どうやらここまでのようだな」
バランが剣を持ち、ポップに近づこうかと思われたその時……
「なんてこった」
ポップがそうつぶやくのは無理なかった。この場にはいてはいけないダイが現れたのだから
最近はジゼルの出番があまりありませんよね…私としても出したいんですが…バラン編での出番は解説くらいしかありませんね…そんな自分にorz
とはいえ自分が書かなければ他の方にも迷惑をかける可能性も否定できませんので書き上げました!
そう言えば最近失踪している方々ってあれなんですよね…リアルが忙しいのもありますが名前を伏せて他の作品書いていたってパターンもあるんですよね…バクみたいな感じで実際に見かけました…
では感想が有れば感想に、この3次創作を書きたければメッセージボックスにどうぞ!