~平原~
「あの魔法使いの小僧は生け捕りにしておきたかったのだが…やむを得ないか…」
ベンがそういい、ヒュンケルから距離を取る。
「ラーハルト…ヒュンケルの相手をしてやれ。」
「ベン…お前に指図される筋合いはない…だがそちらのほうが良いか。」
ラーハルトはバラン以外の命令はほとんど聞かない。というのも自分がバランの次に強いと思っているからである。しかし今のクロコダインを相手にしても全く勝てそうにもない…バランはクロコダインを相手にしろとは言っていない。ベンの言うとおりにした方が効率的だと考えた。
「クロコダイン…貴様と会うことはあっても戦うのは初めてだな。」
「確かにそうだな…」
「まさかこんな形で戦うとは思ってもいなかった…行くぞ!」
「来い!」
「ベギラゴン!」
ベンはハドラー以上のベギラゴンを放ち、すぐに別の魔法を唱えた。
「イオナズン!」
ベンはイオ系を得意としており、その威力はベギラゴンに迫る威力だ。
ベンの最大の特徴は二回行動にある。故に二つの呪文がほぼ同時に使えることが出来るのだ。
「むうっ!」
クロコダインは腕を×にして自分の体を守る。
そして二つの呪文が当たった時、クロコダインは無事だった。クロコダインが使った技は大防御である。この大防御は破邪の洞窟内で身につけて賜物であり、努力の結果である。
「流石は獣王クロコダイン…大したものだっ!」
ベンはクロコダインの大防御を解いた瞬間を狙い、クロコダインにトライデントを振り回しクロコダインに直撃させた。
「ぬおっ…貴様も相当な腕だな!」
クロコダインはベンの直接攻撃によろけたがすぐに立て直し、真空の斧を手に取り、振る。そして鍔迫り合いが始まった。
「ぬぅうううっ!!」
ベンがクロコダインを押し、体制が有利になる。
「うおおぉぉぉーっ!」
クロコダインは負けじとベンのトライデントを押し、体制を元に戻す。しばらくこの様子が続いた…
ヒュンケルとラーハルトの戦いは…一方的だった。
「がはっ…」
「この程度か?魔剣士とやらは…」
ラーハルトが一方的にヒュンケルを圧倒していたのである。何故なら…
「(こいつ…スピードが速すぎる!)」
そう…ラーハルトのスピードが速すぎるのだ。ヒュンケルの攻撃はラーハルトにかすることはなく、逆にラーハルトの攻撃はヒュンケルに大当たり…とにかく当たるのだ。おかげでヒュンケルの鎧は前よりもボロボロになり、使い物にならなかった。
「く、くそっ!」
ヒュンケルはとにかく動きを最小限にして突き、薙ぎ払い、その他もろもろの攻撃を速度を優先し、ラーハルトに少しでも当たるようにするが…全ての攻撃が紙一重で躱される。そしてヒュンケルはラーハルトに遊ばれていることに気がつき、かっとなるが冷静になる。
「(カウンターしか奴を倒すしかない!)」
ヒュンケルは先ほどとは打って変わってラーハルトの攻撃を待ち構える。
「もう抵抗は終わりか。よかろう…とどめを刺してやる!」
ラーハルトの槍はヒュンケルの心臓を目掛けて突っ込み、ヒュンケルにとって最大のチャンスがやってきた。
「ブラッディースクライド!!」
ヒュンケルは自身にラーハルトの槍が筋肉を貫かれたが寸前で止まり無事だった。またブラッディースクライドがラーハルトの心臓に当たれば死亡することは確実だ。だがラーハルトはそこまで甘くなかった。
「狙いは悪くなかったぞ。」
ラーハルトは生きていた。しかも無傷でだ。
「バカな!?完璧なタイミングだったはずだ!」
ヒュンケルのタイミングは確かにバッチリだった…ただそれがラーハルトで無ければの話しだ。ラーハルトは異常とも言える速さでヒュンケルのカウンターに対応した…それだけの話しなのだ。
「当たらなければどうと言うことはない!」
ラーハルトは槍を回し、前方へと傾けさせる。ヒュンケルはラーハルトのスピードについて行けず迎え撃つことはできなかった…
「ハーケンディストール!」
ラーハルト最強の技が決まった。
「(この俺が手も足も出んとは…!)」
「どうやらラーハルトの方は有利のようだな…」
ベンはクロコダインにそう言って焦りを生まれさせる。
「くっ…!」
クロコダインは焦りとベンの戦いに対する疲れが見え始め、徐々に押されて行った。
「ふんっ!」
そして鍔迫り合いはベンが勝ち、クロコダインの腹にトライデントが突き刺さった…ここでクロコダインの名誉のために言っておくがクロコダインが弱い訳ではない。ベンが強すぎるのだ。ベンの力はかなりのものであり、その力は古代最強兵器のオムド・ロレスですらも、トドメをさせるくらいにはある。
「ぐあっ…くっ!」
クロコダインはベンの攻撃を持ち前のタフネスさで耐えた。
「ここまで俺と戦ったのはお前が初めてだ。自分に誇りを持つがいい…ベリアル族最強の俺とほぼ互角に戦ったことを…!」
ベンはクロコダインに向けマホカンタが常にかかっているオムド・ロレス戦では使えなかったイオ系最強呪文イオナズンを超えた呪文を放とうとしていた。
「(イオナズン…いやそれにしては強すぎる!?)」
クロコダインはハドラーのイオナズンを見たことがあるがベンの唱えようとする呪文はそれとはまた違った。
「これがベリアル族に伝わる最強の呪文…イオグランデ!!」
瞬間、テラン城まで爆風が届き、ラーハルトやヒュンケルすらも巻き込んだ。
~鬼岩城~
ハドラー補給が終わったジゼルは悪魔の目玉を再び見ていた。
「あっ…通信切れた…」
ベンのイオグランテが悪魔の目玉を吹っ飛ばし、中継が繋がらなくなってしまったのだ。
「ザボエラ、とっとと悪魔の目玉を向こうに手配しなさい!」
ジゼルはザボエラにそう命令して悪魔の目玉を手配させるようにした。
「しかし今の爆風でテラン城付近の悪魔の目玉はおりません…手配するころにはもう終わっています…」
「死にたいの?」
ジゼルは笑って(目は全く笑っていなかったが)そうザボエラに向かって言った。
「し、至急準備してきます!」
ザボエラはピューっと逃げるかのようにすぐに悪魔の目玉の手配をしに向かった。
「(しっかし、ベンがあんな切り札を持っているとはね…)」
ジゼルはベンのイオグランデの威力に驚いていた…あれは自分のジゴスパークに匹敵するくらいの威力ではないかと思ってしまうくらいにはあった。
「ふっ…はっはっはっはっ!」
いきなりバーンが大笑いしてその場にいた全員の注目を集める。
「どうされましたか?バーン様…」
ハドラーがそう聞くと笑い声は消え、さも子供がおもちゃを与えられたかのようにご機嫌なバーンは愉快そうに答えた。
「まさか未だにこの世界でイオグランデを唱えられる者が余の配下になっているとは…愉快!実に愉快!」
バーンはかなり機嫌が良くそのように大声で言ってしまったことは無理もなかった。それだけイオグランデを扱えるのが珍しかったと言うことだ。
「イオグランデとは一体…どのような呪文なのですか?」
ハドラーがそう聞くとバーンは満足げに口を開いた。
「イオグランデとはイオナズンの上位にある呪文でな。その威力は凄まじいが消費魔力も溜めも大きい…また使用者自身もイオに関する素質がかなり無ければ覚えるのは無理だ。それ故にイオグランデは滅亡したかと思われたが…まさか魔王軍にいたとは驚きだ。」
「ベンがそんな呪文を使うなんて…」
「これなら百獣魔団と妖魔師団もベンに任せても良いだろうな。」
この場にザボエラがいたら確実に抗議していただろうが生憎ザボエラはいないので抗議する者はいなかった。
「それはベン次第でしょうね。」
ジゼルはそう言って話しを切り上げ、全員ザボエラの帰りを待った。
ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「何故か二回に一回はサボるコーナーですが始めましょう!」
B「もう俺の出番があるからこのコーナーは別にほっといてもいいんだが…そう言う訳にはいかないしな…」
C「まだそっちはいいですよ…おれなんか名前すらほとんどないですからね?」
ABC「…虚しい…」
A「それはそうと遂に出ましたね。イオグランデ…」
B「ようやく俺のチートタイムってわけだ。作者には大感謝だぜ…」
C「ラーハルトも順調に戦っていますが…これから本番ってことも頭に入れておかないと!」
A「クロコダインのパワーアップも凄いですね…」
B「インフレしすぎたかと思いきや俺が強すぎて噛ませ犬になったがな!」
C「インフレの連続…これダメなパターンじゃん。と時間だ!では…」
ABC「これからもよろしくお願いします!」