というわけでスタート!
~テラン城~
バランによってダイは記憶を失った。しかしバランは「後日迎えに来る」と言いそのまま立ち去ってしまった。
レオナはその間、自慢の金とコネでテラン王国の城を使い、ダイをオリの中に入れた。決してレオナがSMに目覚めた訳ではない。
レオナがダイをオリの中に入れたのはせめてダイが無事で居られるようにするための処置だった。
しかし占い師のメルルらがバランの情報を映し、状況を伝えた。
「…けっ!馬鹿馬鹿しい!」
そんな時…ポップはとんでもない発言をした。
「…何が馬鹿馬鹿しいのよ!?」
「だいたいこんなところに閉じ込めたところであのバランってやろーは馬鹿げた力を持っているんだ。足止めすらも出来やしねー…」
ポップのいうことは正しかったが…少なくともアバンの使徒としては失格のセリフだ。
「…」
ヒュンケルはそれを責めず無言だった。
「悪いが俺は抜け出して貰うぜ。こんなところで死んだって一文の得にもなりはしないしな。」
「ちょっと!あんたそれでもアバンの使徒なの!?」
「うるせえ!主力のダイはこんな状態!ヒュンケル一人じゃバランには勝てねえ!バランからしてみれば俺は虫ケラ以下だ!オマケに敵はバランだけじゃなく最強の軍団!こんな絶望的な状況他にあるか!!こんな状況で逃げ出しても…」
「ポップ!アバンの使徒はどんなに絶望的な状況でも諦めずに命をかけて戦うのでしょう!?それに今ダイ君が敵の手に渡ったらそれこそ絶望的な状況になり得るのよ!」
「ギャーギャーうるせえ!…とにかく俺は抜けさせて貰うぜ。じゃあな。」
ポップはそれだけ言うと走って何処かへ行ってしまった…
「ハァ…」
レオナはポップのことを少しは信頼していた。だがそれを裏切られたのだ。ため息を付くには持ってこいの状況だった。
「…すまない。」
ヒュンケルは弟弟子のヘタレ具合にレオナに謝罪をした。
「貴方が謝ることではないわ…」
レオナはそう言ってヒュンケルの謝罪を断った。
「少し外へ出る…」
「ええ…どうぞ…」
レオナはブルーになっており、ヒュンケルが外へ出るのを止めなかった。
「(ポップ…お前のことだ。お前にはお前の考えというものがあるのだろう…だがそのまま行ってもお前は死ぬことは良くわかっているはずだ!)」
ヒュンケルは周りを見渡し、誰もいないことを確認して走る。
~アルゴ岬~
一方こちらはバランである。バランがここにいるのは体力の回復と…竜騎衆を呼び寄せることである。
「集え!竜騎衆!」
その合図で台座の炎が炎上する。
竜騎衆とはバラン直属の部下でその実力は軍団長クラスの強さを持つとも言われているドラゴンライダー三人のことである。
「空戦騎ガルダンディー見参!!」
鳥の獣人…ガルダンディーはスカイドラゴンに乗り、バランの目の前に現れた。
「海戦騎ボラホーン参りました!」
今度はトドのような獣人がバランの目の前に現れ…挨拶をした。
「陸戦騎ラーハルト推参!」
そして竜騎衆最強と言われている陸戦騎ラーハルトが現れたことによってバランは満足気に頷いた。
「我々三人を呼び寄せるとは…何かあったのですか?」
ラーハルトがバランにそう尋ねる…彼の疑問は最もだった。バランは三人に頼ることをせずとも竜を操るだけでリンガイア、カールなどの国々を短期間で滅ぼすだけの実力者である。それ故に三人の出番などはなく、長年待機状態だったのだ。
しかし、こうして呼び寄せられたということはリンガイアやカールなどを滅ぼすよりも骨の折れる事態が起きたという事である。
「やっと私が探し求めていた息子…ディーノが見つかったのだ!そのディーノは皮肉にも魔王軍の脅威…勇者ダイだったのだ!」
「…!なんと皮肉なめぐり合わせか!」
「私はダイ達勇者一行と一戦交えた…その結束力は想像以上に強く、私も手傷を負った。」
「バラン様が手傷を…!?」
「それでここに来られたのですか…」
「うむ…(もっとも来た理由はそれだけではない…)」
「心得ました。バラン様。要はディーノ様の奪還にお力ぞえをすればよろしいのですね。」
ラーハルトはバランの考えを察し、自分のやるべきことを述べた。
「そうだ。私は全精力を使いディーノの人間としての記憶を消去してある。あとは迎えに行くだけなのだが…厄介なのは仲間達なのだ。奴らは勇者ダイのためなら死を恐れん…特に魔王軍の元軍団長の二人…獣王クロコダインと魔剣戦士ヒュンケルは侮れん。」
バランの性格は自分のこととなれば大胆…所謂、過信しがちだが部下や他人のことになれば慎重になる。それ故の発言だった。
「ククク…バラン様にならともかく軍団長如きに遅れをとる私達竜騎衆ではありません!」
ガルダンディーがそういい、バランの過小評価を改めさせようとするが…無駄だった。
「確かにお前達は竜の騎士程の力はないがそれでも魔族、獣人族の中から選りすぐったエリートだ。だが…人間という者は厄介だ。奴らが死を覚悟すればとんでもない力を発揮し得るのだ。もし勇者の仲間達が抵抗していたならお前達3人で叩き潰せ!私はその間にディーノを取り戻す。」
バランは作戦を伝え、3人に命じる。
「「「ははっ!!」」」
「戦の準備を整えてくる…しばし待て。」
バランはそういって泉へと向かった。
「フッ…バラン様も相変わらず細心なお方よ…たかが人間と裏切り者の軍団長相手にわざわざ我らをお呼びになるとは…」
ガルダンディーという鳥男は傲慢である。人間を見下し、獣人である自分達が偉いとおもっている。バランもバランで人間を滅ぼすには丁度良いため性格の矯正はしなかった。
「無礼だぞ!ガルダンディー!!」
ボラホーンが窘め、ラーハルトも同意する。
「その通りだ。獅子は兎を狩る時も全力を尽くすと言う。その細心の配慮が最強の超竜軍団の栄光を支えていることを忘れるな!」
ラーハルトがそう注意するもガルダンディーには馬の耳に念仏だ。
ガルダンディーは周りを見渡し、街を見つけた。
「ん?あれは…確かベンガーナって言ったっけか?」
ガルダンディーはそう呟くとスカイドラゴンに乗った。
「丁度良い!人間達を相手にするのは久しぶりなんでな!ちょっとウォームアップしてくる!」
ガルダンディーはそう言うと二人をおいてぼりにしてベンガーナへと向かってしまった…それがガルダンディーの恐怖の始まりとは知らずに…
~鬼岩城~
それを見ていたジゼルは怒っていた。
「バランのアホ!」
ゲシッ!ドガッ!
隣にいたザボエラがジゼルの蹴りをくらい壁に当たる…
「何故ワシに八つ当たり!?」
ザボエラはそれだけいい…気絶した。どこまでも不幸である。
「バーン様!いくらなんでもこれは許される行動ではありません!今すぐ謹慎命令を解除してベンガーナに向かわせて下さい!」
ジゼルは無駄な犠牲は出さずに人間をなるべく生かすことを好む。そのためガルダンディーのように無駄に人間の命を奪う行為は許せないのだ。
フレイザードのオーザム滅亡に関しては世界最強と呼び声の高いカール騎士団と並ぶ軍隊がおり、生かしたまま攻略するのは難しいと判断したのとバーンの命令であることなので不問としたのだ。
「確かにあのガルダンディーと言う者、いささか問題がある。余に刃向かうことはなくとも行動に問題がある以上は罰が必要だな。良いだろう…ジゼルの謹慎命令を一日のみ解除する!ただし殺すな。灸を据える程度だ。」
またバーンもガルダンディーを見て罰が必要だと判断した。ある程度実力があれば多少の問題は見過ごすが…ガルダンディーでは実力不足だった…(とはいえ生きられるだけでもまだ実力があると言える。)強くて多少の問題を起こすならともかく弱くて問題を起こすなら処分する…それがバーンのやり方だ。
「かしこまりました!ルーラ!」
ジゼルはすぐさまベンガーナへと向かい、移動した。
「良いんですか?行かせちゃって…」
キルバーンがバーンに謹慎命令を一日だけなくしたのを許したことに疑問に思う。
「良い。どのように処分するか見ておきたかったのだ。ジゼルもバラン直属の部下を殺す真似はせんが…一応釘を刺しておいた。」
「なるほど…鳥がコゲ鳥になるか、バラバラになるか楽しみですよ…ウフフ…」
キルバーンは笑い声を出し、その場の雰囲気をかなり重くした。
~ベンガーナ~
「行け!ルード!」
ガルダンディーは自分の騎乗するスカイドラゴンに炎のブレスを吐くように命令した。
「かぁぁっ!」
すると横からガルダンディーと同じ竜騎衆の一人のボラホーン以上の氷のブレスにスカイドラゴンに直撃した。
「なっ…!?だ、誰だ!?てめえは!?」
ガルダンディーがそこをみるといたのはジゼルだった…ただしジゼルの顔は怒りに満ち溢れていた。
「魔王軍魔軍司令親衛隊隊長…ジゼル。」
ジゼルはそれだけ言い、おぞましい殺気を出した。その殺気の量はガルダンディーの上司であるバランすらも凌ぐ…
「は、ハドラーの使い魔がなんのようだ!!」
ガルダンディーはいきなり切れたバラン以上の殺気を叩きつけられ動揺していた。というのも何故自分は殺気を向けられているのか?という疑問とバラン以上の実力者がいるのかという疑問で満ち溢れているからだ。
「貴方は軍律違反をした。その罰を執行しに来ただけのこと…本当なら死んで貰いたいのだけれどバラン直属の部下である以上は私が決められることではない。」
「俺のどこが軍律違反したって言うんだよ!!」
ガルダンディーは逆ギレしてジゼルに問う。
「先ほど貴方はベンガーナの人間に攻撃をしようとしたわね?」
「それのどこがいけねんだよ!人間は滅ぼしてナンボだろうが!」
「貴方ね…人間を単純に滅ぼしたらどうなるかわかる?魔王軍のメンツってものがあるの?それを貴方は潰そうとした訳…罰は受けて貰う。」
ジゼルの殺気が最大限に強くなり、ガルダンディーは最早抵抗することも許されない。
「あ…ぁ…!」
いや実際には抵抗しようと必死でガルダンディーは自らの羽を持っていたが投げられなかった…上司であるバラン以上の化け物を相手に抵抗すると何をされるかわからなかった。
「ギガデイン!!」
ジゼルは勇者や特殊な魔物しか習得出来ないデイン系最強の技ギガデインでガルダンディーを処刑した。
「ぎゃぁぁぁあっ!」
ガルダンディーは腕や足がもぎ取られるような感覚に襲われ悲鳴を上げる。
「ハートブレイク!」
ジゼルはガルダンディーの心臓を目掛けてパンチをした…するとガルダンディーの時が止まった。
「はあぁぁっ!」
ジゼルは背負い投げの要領でガルダンディーを地面に落とした。
「がはっ…!」
そしてガルダンディーは口の中から血を吐き出し、苦しんでいるとスピードをつけたジゼルがガルダンディーの右腕に着地した。
「ぎゃぁぁぁっ!?」
メシメシとガルダンディーの腕が悲鳴を上げ、ガルダンディー本人も悲鳴を上げる。
「まだ終わりじゃないわよ…」
ジゼルはさらにガルダンディーの右腕に負担をかけた。
「いぎゃゃぁぁぁあ!?や、やめてくれ!死ぬ!死んでしまう!」
ガルダンディーが痛みのあまり、情けなく泣き縋り、ジゼルに助けを求める。
「安心しなさい…死なない程度に手加減してあるから。ほらもう一丁!」
ジゼルはまさに魔王軍に相応しい邪悪な笑みでそう告げた。
ついにガルダンディーはそれを逃れることが出来た。その方法とは…
「ぎ…!」
ガルダンディーは失禁し、気絶することで痛みをなくしたのだ。
「…まだ生きているわね。それじゃバランのところに届けましょう…」
ジゼルはそう言って排泄物臭いガルダンディーを魔法の筒でしまい、アルゴ岬へと向かった。
~アルゴ岬~
「遅い!遅すぎる!」
ボラホーンはガルダンディーの帰りが遅いことにイラついていた。
「ベンガーナに行ってから数分が経つが煙の跡すらもない…ベンガーナの前で何かあったに違いない…」
ラーハルトはそう推測し、ガルダンディーの帰りを待っていた。
「準備は整ったぞ。…どうした?ガルダンディーが見当たらないが…」
するとバランが丁度帰ってきて、二人にとって非常にまずい状況になった。
「いえ…実はガルダンディーの奴が勝手にベンガーナに行ってからまだ帰って来ないのです。」
ボラホーンは事情を説明し、バランに告げた。
「…あの馬鹿が。」
バランは失念していた。魔王軍には人間共存主義者のジゼルがいるということを…ジゼルはバーンやハドラーの命令で無い限りは人間を滅ぼさないし、許さない。そのことを教え忘れていたのだ。もっともこの場合勝手にベンガーナを攻めたガルダンディーにも非があると言えるがそれを教えなかったバランにも責任はある。
「バラン…どういうつもり?」
噂をすればなんとやら。ジゼルが魔法の筒を出してボロボロになり、更にう○こ臭いガルダンディーを出した。さっきよりも表記がひどくなっているのは気のせいである。
「すまない…私の責任だ。」
それはボロボロになったガルダンディーに向けてなのかジゼルに向けてなのかわからないがバランは謝った。
「処罰は私の方でやっておいたわ…使えないそのボロクズの代わりに私の部下を貸すわ…ベン!」
ジゼルがそういうとベリアルのベンが現れた。
「お呼びですか?ジゼル様?」
「このボロクズの代わりを一日やってあげて。」
「こいつは…竜騎衆のガルダンディーじゃありませんか?アクデンの方が…実力的に近くありません?」
ベンはジゼルの命令に渋り、眉を顰める。
「だけどアクデンだと死ぬ可能性があるから…ね?生きて帰って来れるのは貴方だけなのよ。」
ジゼルは上目遣いでベンを説得する。
「そういうことでしたか。わかりました。」
ベンは納得した顔でジゼルの命令に従った。
ABC「モンスターABCのあとがきコーナー!」
A「そういえばまた前回あとがきコーナーやらなかったみたいですね…」
B「全く持ってけしからん…!最後に出番があったからよかったものの…これで出番なかったらイオグランデで木っ端微塵にしてやるところだったぞ。」
C「なんて物騒な…それよりもとっとと今回のお話について述べますよ。」
A「ガルダンディーの処罰か…これは酷い(苦笑)」
B「ジゼル様はキレたり、ハドラー様が絡んだりすると暴走するしな…」
C「本当迷惑ですよね。」
A「まあ普段優しいし、そのくらいのギャップがあってもいいんじゃないか?」
B「そうだな。」
C「と…まあそれはともかく前回の更新から一日で仕上げたわけですがそこらへんは?」
A「うーん…それよりも前々回から一ヶ月ぶりに更新した前回の方が驚いた…」
B「実は作者がなに一つ思い浮かばなくてそのまま放置して他の作品に手を出していたらそうなったらしい…」
C「あ〜…あれですね。まあ仕方ないといえば仕方ないのですが…とここまでですから最後にあれを!」
ABC「次回も見てくれよな!」