~竜の神殿跡地~
ダイはバランのギガブレイクを受け、湖の底へと沈み一行は絶体絶命の危機に陥っていた。
「こいつの相手は俺がやる。」
そこに現れたのはクロコダインではなく鎧をまとったヒュンケルだった。
「ヒュンケル!」
ポップが安堵の声を出してヒュンケルを見るが…
「…」
バランの威圧に押されるかのようにヒュンケルは冷や汗をかいていた。
「(おいおい…元とは言え六軍団長のヒュンケルでもこいつとはこんなに差があるのかよ!?)」
ポップは二人の差がいやと言うほどにわかってしまった。ヒュンケルが魔物のがいこつだとするならバランはドラゴン…ポップはそう思えてしまった。
「ヒュンケル…貴様まさか私に歯向かうなどという愚行はせんだろうな?」
バランの一言一言に殺気が乗せられており、ヒュンケルを脅した。
「…確かにバラン…お前は俺よりも遥かに強い…だがそれでもやらなければならない!ダイという弟弟子を守るために…!!」
「貴様に何が出来る?せいぜい剣を振るうことくらいしか出来まい。その剣の腕もハドラーの格闘術とほぼ互角…私の敵ではないわ。」
バランは剣を構えた。
「行くぞ!バラン!」
それが戦いの合図となり、ヒュンケルはバランに向かって行った。
「大地斬!」
ヒュンケルはアバンの剣術…大地斬を用いて、バランに攻撃した…
「くだらん…」
しかしバランにはアバンストラッシュですらノーダメージなのだから当然ノーダメージである。
「ならば…これならどうだ!火炎斬り!」
「何っ!?」
バランはヒュンケルの技に驚いた…何故なら魔法を使えないはずのヒュンケルが剣に火を纏わせ攻撃してきたからだ。
「魔法が使えぬ者…それも人間が魔法剣を使うだと…!?」
バランはそれを自分のギガブレイク同様に魔法剣だと思った。通常火や雷など剣に纏わせて攻撃するのは竜の騎士のみの特典である。だが魔法も使えないただの人間であるヒュンケルが火を纏わせた剣を振るうのはありえないからだ。人間の手に竜の足がつくのと同様に…
「確かに俺は魔法は使えん。だが剣に火を纏わせることくらいは容易い。」
バランはヒュンケルのその言葉からいくつかの推測を立てた。そして一つの結論に達した。
「(…なるほど、これで説明がついた。かつて太古の時代魔力を使わずに火炎の剣や真空の剣を使った者たちとヒュンケルは同じことをしたのだろう…)」
「ブラッディースクライド!」
バランがそんなことを考えているとヒュンケルは自分の必殺技ブラッディースクライドを放った…しかも火炎斬りと同じ要領でブラッディースクライドにも火がついている。
「むっ……ふんっ!」
流石というべきかバランはそれを弾き、ヒュンケルの最大の必殺技を退けた。
「流石だな…バラン。(あれでもまだダメか…)」
ヒュンケルは表面上は余裕ぶっているが軽く絶望した。つけ刃とは言え強くなったことには変わりないブラッディースクライドを弾き返されたのだから。
「ヒュンケル…実に残念だ。お前の才能をここで埋もれたまま死なせることになると思うとな。」
バランはヒュンケルの剣術を認めた。バランはヒュンケルの技を受けて自分よりも剣術は上だと確信したからだ。だがそれでも勝てるとでも言いたげなのはバランは本気…竜の騎士の力を出していないからだ。
「はぁぁぁーっ!!」
バランは竜の紋章を光らせ、本気になった。
ドガッ!バギッ!メシャッ!
結果、バランのスピードは上がりヒュンケルはそれに対応出来ず、ヒュンケルの鎧はリズム良くボロボロに壊され、ヒュンケル自身も大ダメージを受けた。
「トドメだ…」
「がはっ…!」
ヒュンケルはトドメを刺され、血を吐き気絶した…
「酷い…酷すぎるわ!」
レオナはその残虐性にその言葉しか吐けなかった。
「…さて貴様達の番だ。」
バランは目標をポップとレオナに定め、二人がいる方向に向いた。
「くっ…どうすればいいんだ!?」
ポップは思わずそう叫ぶ。
「あいつ…バランは竜の紋章が出ている時はほとんど無敵だ。だけど倒せないわけじゃない。」
すると…湖から這い上がったダイがそういった。
「ダイ!」
ポップはダイを見つめ、無事だったことに安堵する。
「バランを攻略するには竜の紋章が出ている時に感じる不思議な力を打ち破るパワーが必要なんだ。魔法なんかじゃあの力の前では打ち消される。」
ダイはそれだけ言うと剣を持って構えた。
「まだ子供だと言うのにそれだけ私の攻略法を見つけるとはな…だが実際に出来るのか?ダイ?」
バランの場合、ジゼル以上のパワーがなければ竜の騎士の力…即ち竜闘気を打ち破ることは出来ない。バランはそれを知っていてダイにそう尋ねた…
「出来るさ…俺には守るべき大切なものがあるんだから!」
「その通りだ…ダイ。」
気絶していたヒュンケルが立ち上がり、ダイに賛同した。
「ヒュンケル…おめえ気絶していたんじゃなかったのかよ?」
ポップがヒュンケルのあまりの回復の速さに驚愕する…
「俺は不死身の男だ。それ故に気絶から回復するのも速い。」
ヒュンケルはそれだけ言うと剣を拾った。
「そうか…ならばギガブレイクを受ける覚悟は出来ているというのだな?」
バランはそういい空の雲を操り、ギガデインをいつでも打てるようにする。
「当たり前だ!」
そのセリフが合図となり、バランひギガデインを唱えた。
「ギガデイン!」
バランは剣を構え、雷光が剣に纏われるかと思われた…
バチバチッ!
「何っ!?」
ギガデインが剣に纏われる前に何に阻害された。その何かとは…ダイの剣だった。
「今だ!ヒュンケル!」
「ブラッディースクライド!」
先ほどとは違いヒュンケルは光の闘気を使ってブラッディースクライドの威力を高めた…何故先ほど使わなかったのかと言うと闘気は命の源である。それをバカスカ使ったら死ぬのは目に見えている。それ故に使えなかったのだ。
「アバンストラッシュ!」
ダイのアバンストラッシュがヒュンケルのブラッディースクライドと合わさるように混ざり、バランに襲いかかる。
「やった!流石にこれならバランにもダメージが入っているはずだぜ!」
ポップがそう評価するのは無理なかった…通常の敵であればダメージどころかオーバーキルしてもおかしくない攻撃だ。これでバランにダメージが入っていなかったら打つ手はない。そう思わざるを得なかった。
「いや…五分五分だ。」
ヒュンケルはバランの強さをいやというほど知っている。一度手合わせしたがとんでもないほど強いということだけがわかった。その経験から出た結論だ。
「ま、まさか…これならバランと言えども一溜まりもないはずだぜ?」
そして煙が晴れると、そこにいたのは無傷で立っていたバランだった。
「おいおい…嘘だろ!?」
「信じられないわ…!」
ポップとレオナは再び絶望した…あれだけの攻撃を受けて無事だったのだ。自分達が何をしたところで無駄ではないのかと…そう思ってしまった。
「いや…ダメージはある!」
ダイがそう言うとバランの頭から赤い血が流れた。
「血、赤い血だわ!」
通常赤い血を出すのは人間や動物などの種族であるが魔族などの特殊な種族は青い血が流れる。事実ダイやポップはその青い血をハドラーで見たことがある。しかし、バランの血の色は赤かった…そのことから魔族とは違うとわかる。
バランが手甲で頭ふくと手甲に血がついた。それを見たバランは驚きの一言だった。
「…!(私が血を流すとは…!やはりディーノの力は凄まじい…いや、その周りにいる者たちがディーノの力を引き出しているのか!となれば…私がやるべきことは一つ!)」
バランは冷静に考え、ダイの力を無力化する方法を思いつく。
「ダイよ。お前の力は凄まじい…これから魔王軍の脅威となり得るだろう…それ故にお前の力を奪ってやる…」
バランは一旦竜の紋章を消し…そして一気に輝かせた。
~鬼岩城~
「なるほど…考えたわねバラン。」
ジゼルが納得した顔で頷いた。
「どういうことじゃ?」
ザボエラはジゼルが何故頷いたかわからない…竜の騎士のことは研究しているがそれとこれとは別だからだ。
「バランは竜の騎士特有の闘気…竜闘気を使ってダイ君の記憶を消そうとしているの。」
「しかし何故それを使う必要が?」
「簡単に言えば、バランは竜の紋章の共鳴を応用してダイ君の記憶を無理やりなくそうとしている…小さな波が大きな波に飲み込まれるようにね。」
「(なるほど…流石はジゼル殿。フレイザードの親であることはよくも悪くも十分に説明がつくわい。)」
ザボエラがそう感心し、嫌な記憶も思い出す。というのもフレイザードの出世欲はハドラーに対するジゼルの狂愛から来ており、お互いに似たもの同士だったからだ。
フレイザードに絡まれると新しい魔法の実験という名のザボエラいじめ。特に半年前にあった出来事だとザボエラが縄に縛られフィンガーフレアボムズの餌食になった。
ジゼルの場合はとある出来事が原因でトラウマになった。それはえらく不機嫌なクロコダインに偶々遭遇し、「邪魔だ!ザボエラ!」と温厚なクロコダインらしくもないセリフを言われた時にはもう遅く、真空の斧でぶっ飛ばされ…その着地点がジゼル入浴中の風呂だった。それが原因でザボエラは一ヶ月間フレイザードの魔法の実験台となった。それ以来ジゼルの機嫌を損ねるような真似はしていない。
「ううむ…(しかしこのままではバランの言いなりになってしまい、俺と戦う口実が出来ん。…?俺とあろうものがダイと戦うことを楽しみにしているとはな。おそらくフレイザードが倒されたからか?いやデルムリン島でダイを仕留め損ねたからか…?)」
そのあとハドラーは思考するも全くダイと戦いたい理由はわからなかった。とにかく言えるのはダイと再び戦いたいと願っていることだけだ。
「これでダイが我が軍団に下れば世界に一人しかいないはずの竜の騎士が同時に二人も手に入る…実に愉快だ!」
『同意見です。』
バーンが上機嫌になったことでミストバーンも上機嫌になる。
「…一つ質問いいですか?」
これまで珍しくだんまりだったキルバーンが口を開いた…
「なんだ?」
「勇者君…いやダイ君の育成は誰がやるんですか?」
一気にその場がどよめいた…
「私がやります!バーン様!」
ジゼルが手を上げ、バーンに意見する。もしダイとバランが手を組まれればジゼルの目的である人間と共存することが出来ないからだ。ならばせめてダイだけはジゼルの考えに賛同させるように教育することで引き込もうとする。
「私もジゼルを推します。メラ系やギラ系の呪文などは私が教えます故…どうかお願いします!」
ハドラーはジゼルを推した。そうすることでジゼルの教えられない部分を教えることでダイに尊敬されるようにしようとした…ジゼルがいなければそんなことはしなかったかもしれない。また同時に訓練という名の戦闘が出来ると考えてもいたからだ。
「それならワシが教えます。ワシは妖魔士団故に魔法が得意です。どうかワシをお願いします!」
ザボエラはジゼルを推さずに自分を推した。だいたいはジゼルと同じ考えで違うことといったら竜の騎士の戦闘データが欲しかったからというところだろう。
『…』
ミストバーンはダイを育てさそうにバーンを見つめている!
「あらら…結構いるんだね。そういうの。」
キルバーンは全くと言っていいほど興味はなく、悪魔の目玉を見た。
そしてバーンの意見は…
「それはダイがこちらに来てから決める。未来のことを今決めたところでどうしようもあるまい…」
と至極当たり前のことを言った。
「「「わかりました。」」」
三人はそう言うと再び悪魔の目玉を見た。
『…』
ミストバーンはすごく悲しそうな顔(雰囲気)をしている!
「(さて…どう出るか?勇者を失った勇者達一行は?)」
バーンはそう思うと三人同様に悪魔の目玉を見た。
本来クロコダインのところをヒュンケルにしました。というのもジゼル戦の時にバランに対して言うセリフを言っちゃっているからですね。それとヒュンケルとダイの共同プレイも試したかったのが主な理由です。