ジゼルは夢を見ていた…彼女の過去の夢だ…
~魔界(過去)~
ハドラーとジゼルの住んでいた村が襲われ数日経った頃…ハドラーは地上に出る支度をしている時だった。
「ハドラー様…」
ハドラーのメイド…ジゼルがハドラーに話しかけてきた。
「なんだ?」
「私はハドラー様に何度も救われました…ですが私に出来ることと言えば掃除をしたり、料理を作ったりすることしか出来ません…」
当時のジゼルは十八番のジコスパークはおろか戦闘のせの字も知らないような少女だった。
「ああ…確かにそうだな。お前は地上に出たところで人間に襲われるのがオチだ。」
「ハドラー様…どうしたら強くなれますか?」
ジゼルは悔しかったのだ。ハドラーの手伝いを出来なかったのだから…
「戦え。そして勝って勝って勝ちまくれ。それだけだ…」
ハドラーの答えは実にシンプルで経験を積むというものだった…その理由は魔族と言うのは確かに魔力や力に優れているがダラダラと過ごしているものが多く、その力を良い方向へと使っていないのだ…それ故にすぐにでも経験を積めばあっと言う間に強くなる…ハドラーもそうやって強くなったらしく、ジゼルはその言葉を信じることにした。それがジゼルの規格外な強さを持った理由の一つである。
「それじゃ初めはぶちスライムとか倒さないとね…」
ジゼルはそう言って家を出てぶちスライムを倒しに行った…
しかしここ魔界にて普通のスライムはいない…ではジゼルの言うスライムと一体何なのかというと…
「見つけた♡」
ジゼルが見つけたのはメタルスライムである。ジゼルは悟られないようにこっそりと近づき…そしてハドラーから託された魔人の金槌を取り出し…思いっきりぶん回した。
「ピギィッ!」
メタルスライムに会心の一撃が炸裂し、ジゼルは一気にレベルが上がるのを感じた。
「なにこれ凄い…!」
ジゼルは天啓を得たのかのようにホイミやヒャド、バギなど次々と技を習得し、まるでさっきまでとは別人かのように思えた。
「だけどまだまだね…もっとやれば何かヒントが得られるかもしれないし、もう少し探してみよう…」
ジゼルは成長することの楽しみを覚え、メタルスライムを探しては倒し、たまたまその場にいたはぐれメタルを倒し経験値を大量に得た。もちろん全てが全て成功した訳ではないが二体に一体は倒せたのでそれでも十分な経験値だった。具体的にはメタルスライム10体に、はぐれメタル3体である。結果ジゼルのレベルが1から12になった。
一見メタル狩りをしていたにも関わらず少ないように感じるがそれは正しい。ジゼルの素質はあまりにも大きくその分成長するのが遅い。異世界での大魔王達やメタル系のモンスター達にしてもこの特徴が現れる。
しかし、大魔王やメタル系のモンスター達よりもジゼルの成長は遅すぎる。そのことからジゼルの素質はあまりにも大きいとわかる。
スライム狩り…もといメタル狩りを終わらしてきたジゼルは一旦ハドラーの屋敷へと入り、手入れをしていた。
「これは…何かの種子?」
ジゼルがタンスの裏にあった種子を見つけ、それを拾った。
「これ…育ててみようかしら。」
ジゼルの趣味は大変多い。料理、掃除、裁縫、栽培…などなど。これらは全て超一流のプロにも勝るほどである。なぜならハドラーを喜ばせるために始めたことが趣味となり、必然的に趣味が多くなってしまったのだ。腕が超一流のプロにも勝るのはもちろんハドラーへの愛である。
「でも他にもありそうね…徹底的に掃除をして探すのが一番ね。」
ジゼルはその後掃除をすると色々な種類の種子を見つけた。
「結構色々な種類の種子があるわね…」
ジゼルはそう言って掃除で見つけた種子を並べた。もう気づいているかもしれないが一応この種子全て、ステータス強化のための種子である。
「まあ育てて見るのが一番いいわ。」
ジゼルはそう言って種子を植えた…育て始めた…数日後、植えた種が成長し再び種となり、ジゼルは種を様々な調理法で食べた。
この調理の際にジゼルは種本来の用途であるステータス強化のエキスを凝縮していたのだ。その結果ステータスは上昇して行き、さらに強くなっていた。しかも余った種を再び植えて育てていたので数日に一回は種を食べていた。
結果メタル狩りの効果もあり、ステータスはカンスト寸前まで育って行った。
そんな毎日を過ごしていたある日のことである。この日は来客がやってきたのだ。
「はぁっ…くっ…まさか魔界にあんな化け物がいたとは…」
その男は竜を象った剣を装備していた。二十代あたりの人間といったところだろう。
「人間?!」
ジゼルはこの時自分とハドラーを別れさせた原因の人間がやってきて、驚きの声をあげるがすぐに構えた。
男は剣を持っており、ジゼルはそれを抜くと思って警戒していたが…
「魔族が住んでいたとは…私もここまでか…?」
しかし男は剣を抜くどころかそのままぶっ倒れてしまった…
「…」
ジゼルは人間に憎しみがある…その為に人間であるこの男を殺そうと考えるがためらう。
「なんで…?なんで殺せないの!?こいつはハドラー様と私を引き裂いた人間なのに!?」
ジゼルはそう声をあげて泣いてしまった…
正確に言えばこの男は人間ではない。気がついているとは思うが、この男は竜の騎士であり、後の超竜軍団長を勤めるバランだ。竜の騎士は人間、魔族、竜の三つの種族が混ざって出来た種族である。それ故に二つも同胞の血が混ざっているジゼルは殺せなかったのだ。
またバランはヴェルザー討伐の為に魔界に来たはいいもののヴェルザーの刺客に狙われてしまったのだ。もちろん撃退はしたが重傷を負い偶然ボロボロになっていたハドラーの屋敷を見つけ、そこに泊まろうと考えたがジゼルが住んでいたとは思わずショックで倒れたのだ。
「もう…わからないよ、ハドラー様。人間を憎んでも憎めないって、こんな従者失格ですよね…」
ジゼルは乾いた声を出しハドラーに嫌われる想像をしてしまい…失神した。
ベン「なあ…二人とも?」
カラス「どうしました?ベン様。」
アクデン「肩凝っているならイオナズンしますが…」
ベン「アクデン…俺がイオで回復するのを知っているとは言え無断でそれをやったら殺すぞ?」
アクデン「ひいっ…!すいませんでした!」
ベン「ってそんなことじゃねえよ!俺ら三人の出番が異常に少ないと思わないのか!?」
AC「そう言えば…」
ベン「まあそんな訳で俺ら三人は後書きで感想の解説コーナーを設けることにした。文句は言わせねえ!」
カラス「いいんですか?そんなことして…」
ベン「読者の感想を詳しく説明するんだからいいんだよ…それに文句は言わせねえと言ったはずだ。カラス…」
カラス「マジ勘弁してください!」
ベン「いや許さん!ドルモーア!」
AC「なんでそれ〜!?ぐふっ…」
ベン「と言う訳だ!読者のみんな、感想をどしどし応募しろ!そして次回も見ろ!以上だ!」