魔王軍地上侵略前
〜鬼岩城〜
ここ鬼岩城にてかつての魔王にして現魔軍司令ハドラーは書類仕事をしていた。
「ふう。こんな物でいいか」
今日もハドラーは書類仕事をバッチリと終え、自分の主である大魔王バーンに報告しておこうと立ち上がった。
そんな彼はとても有能であり、部下であるバランやミストバーン達に力こそ劣るが書類に関しては凌ぐほどである。
しかし彼はとある悩みを持っていた。決して書類の量が多いとか、部下が自分に対して反抗的だとかそんなものではない。寧ろ反抗的でも文句は言わない。
そんな彼の悩みとは。
「ハドラー様〜♡」
いきなり魔族の女性が現れ、ハドラーに抱きつき頬ずりを始めた。
「ええい、離れんか!! ジゼル!」
ジゼルと呼ばれた魔族は、魔王軍の魔軍司令親衛隊の隊長でもあり、戦闘面においても魔軍司令候補としても名高いのだが、スイッチが入るとハドラーに恋しているせいか、公私混同問わずにいちゃつくのだ。
「嫌ですよ〜ハドラー様が大好きだからこうやって頬ずりしているんじゃないですか」
ジゼルは幸せそうな顔をハドラーに見せて、上目遣いで見る。
「いいから離れろ!」
「は〜い」
ジゼルはシュンとなり、渋々とハドラーから離れた。
これがハドラーの最大の悩みである。
しかも魔王軍はハドラーの悩みを解決しようとはしない。
主であるバーンは面白がり、ミストバーンはハドラーに胃薬をあげたり、バランは自分の過去を思い出し、フレイザードは完全無視、ヒュンケルは何故か凄まじい形相でこちらを見ていたり、ザボエラはジゼルの身体を凝視していてジゼルのお仕置きにあって入院させられたり、クロコダインに至ってはハドラーを祝う準備もしている。
「はぁ……誰かなんとかしてくれ」
そんなハドラーのつぶやきも通じない。
「ハドラー様、万歳! ジゼル様、万歳!」
何故なら自分の直属の隊である魔軍司令親衛隊もハドラーを祝う準備をしており、四面楚歌だった。
〜会議室〜
今日は魔軍司令と軍団長のみの会議でどの様に地上を攻めるか相談する会議だ。
「あ〜……はるばる遠征ご苦労。ではこの書類を見てくれ」
「この書類は?」
「この書類はハドラー様が先日書かれた、戦闘員が戦闘面に対する不満及び、戦闘アイテムの普及についての提案書です」
「おい、ジゼル」
ここでハドラーが若干不機嫌そうにジゼルを睨んだ。ジゼルは軍団長ではないためここにいるべきではなく、会議室に誰も入らない様に警備しているのが当たり前だ。
六人はハドラーの言うことは
「何故ここにいる!? ジゼル!! とっとと出て行け!!」
と予想していたが
「俺のセリフを取るなジゼル!! メラゾーマ!」
ハドラーの行動はジゼルにメラゾーマを唱えた。
「甘いですよハドラー様」
ジゼルはメラゾーマを回避して、余裕の笑みを見せていた。
「ふん!」
「あうっ!」
ハドラーはジゼルの顔を殴り、気絶させた。ジゼルの顔は喜んでいたが見なかったことにした。
「やれやれ。資料を見て少し待っていてくれ」
ハドラーはそう言うと会議室から出て、ジゼルを運んだ。
軍団長達からは生暖かい目で見られ、それ以外の部下達からは毎日の様に「ハドラー様、ジゼル様、万歳!」とか言う声が上がり、今にも結婚式をあげそうな勢いである。
これが魔軍司令ハドラーに襲いかかる難儀な日常である。
ハドラーが好きな女性を書こうと思ってこの作品を書きました。
ハドラーが好きな女性(?)はアルビナスですがそれだとつまらないので。
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