魔軍司令親衛隊隊長の恋愛!   作:ディア

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王女達、デパートに寄る

~鬼岩城~

「それでバラン君…どうする気だい?」

キルバーンはそう言ってバランにどうするかを尋ねる。

「当然…ダイが竜の騎士である以上連れて帰る!」

バランは当然とまで言い切り、ダイを魔王軍に勧誘すると言った…

「なるほど…それじゃ少し勇者君には人間への絶望を知って貰わないとね…ジゼル君が勇者君の心を折ったから少し楽だよ。」

確かにジゼルはこの中で唯一ダイの心を折っている…ハドラーやクロコダイン、ヒュンケル、フレイザードですらダイの心を折ることは不可能だった。それ故に純粋にキルバーンはジゼルの事を褒めていたのだが…

「あんたに言われても嬉しくも何でもないわ。」

ジゼルはキルバーンを嫌っている…それ故の反応だった。

 

「…ちょっとハドラー君を弄り過ぎたかな?」

その一言がジゼルを怒らせた…ジゼルはプルプルと震え…

「ヤバッ!逃げるぞアクデン!」

「ガッテン承知!」

アクデンとカラスは野生の本能で

すぐさま逃げ避難した。

 

するとジゼルの震えが収まり…遂に…

「キルバァァァンー!!使い魔と共にそこに直りなさい!!!」

ジゼルは大暴走…その勢いに目が覚めかけたザボエラが再び失神してしまった。

「(あんまりじゃ…何でワシがこんな目に…!)」

ザボエラの叫びもジゼルの怒りに妨害され、なかった物になった…

「不幸じゃ…」

 

「よさんか!ジゼル!」

それを止めたのは魔軍司令ハドラーだった…

「ハ、ハドラー様!こいつはハドラー様の事を侮辱したんですよ!?」

ハドラーはジゼルの身体を拘束し、ジゼルは相手が相手なので抜け出す訳にはいかずにそのまま拘束された状態になっていた。

「本当に俺の為を思うなら落ち着け…わかったな?」

ハドラーはジゼルに有無を言わせない声を出し、ジゼルを黙らした。

「はい…」

ジゼルが珍しくハドラーに対しションボリとして返事を返した。

「バラン君…うってつけの手を使うから少しの間君の軍団のドラゴンを借りるよ。」

「良いだろう…」

「サンキュー…じゃ、シーユー!」

そう言ってキルバーンは立ち去った。

「(…そういえば今日、ベンガーナでドラゴンキラーがオークションに出るって話ね。あれは私や超竜軍団にとって相性が悪い。私が管理するのが一番良いわね。)」

ジゼルはそう思い、少し支度をしてルーラでベンガーナへと向かった。

 

~平原~

三人は馬車に乗って移動していた。

「も、もうちょっとペース落としてくれよ!」

ポップは田舎者故に馬車に乗る機会がない。それ故にポップの腰が悲鳴を上げて、耐えきれずにポップは情けない声でそうレオナに訴えるが…

「何言っているの!このくらい常識よ、常識!」

レオナは馬車のスピードをあげてポップにとって更にきつくなった…

「ダイ!この姫さんの暴走止めてくれよ。一応仲良いんだろ!?」

ポップはそのきつさに耐えられずダイに頼むようにした。

「でも、レオナが元気になっているのに水を差すのはちょっとな…」

しかし現実はなかなか上手くいかない。ザボエラ同様にポップも苦労人となってしまった。

「ダメだこりゃ…」

ポップはがっくりと項垂れ、そのまま目的地まで行くことに決めた。

 

~ベンガーナ~

 

その後なんとかベンガーナに着き、デパートへと向かった。

「やれやれ…ひでえ目にあったぜ。」

「全く情けないわね。男の子でしょ?」

「あれは無理!」

などとやりとりをしてしばらく歩くと…巨大な建物が見えた。

「ひょえ~…でけえ城だな。」

ポップは城だと思いそう呟いてしまった…

「何言っているのよ…これがデパート。お城にあんな宣伝あると思う?」

そう言ってレオナが指さしたのは『大安売り!バーゲン中!』と書かれた看板だ。

「あ…本当だ…」

ポップは少し落ち込み拗ねた。

「こ、これがデパート!?」

ダイはダイで驚き、感心した…

 

その時…

ドンッ!

「きゃあ!」

「とと…」

レオナとメイド服を着た女性がぶつかってしまい、レオナと女性はともに倒れてしまった。

「だ、大丈夫ですか!?貴族様!」

女性はレオナの高級な服を見て慌てて、レオナに手を差し伸べた。

「ええ、大丈夫よ。心配しないで…」

レオナは女性に心配させないように声をかけた。

「あ、ありがとうございます!」

「ほら、ご主人様が待っているんでしょ?早く行きなさい。」

「失礼しました!」

そう言って女性は慌ててデパートの中へと向かった。

 

「…」

ダイは何かを考えており、真剣な顔になっていた。

「どうしたんだよダイ?」

ポップがそれを見て不思議に思い、ダイに声をかける。

「あの人…どこかで見たことがある気がする…ポップ、心当たりない?」

「お前が人の関係で思い出せないなら俺も無理だと思うぜ…」

「うん…ごめん。」

 

 

女性は内心こう思っていた…

「(魔王軍の為とはいえ演技は疲れるわね…)」

そう…その女性はジゼルが変装したものだった。ジゼルの変装はほぼ完璧なもので一度面識のあるレオナに気づかせない程で、あの中で唯一ダイはジゼルだと感づいていたが結局わからず仕舞い…それだけジゼルの変装は完璧だった。

「早いところオークションへ向かわないと…」

ジゼルはそう呟いてオークションの場所へと向かった。

 

 

「へえ~これがデパートか…」

「うちの100倍はでけえな~!」

ダイとポップの二人は田舎者そのものの行為をしていた。

「こらこら…そんな田舎者みたいにキョロキョロしないで、こっちに来なさい。」

「え?姫さん…そこただの部屋じゃねえか?」

ポップは訳がわからないと言わんばかりにレオナにそれを指摘する。

「いいから来なさい。」

「行ってみようよ!」

 

そうして二人がレオナのいる部屋に入ると…

「それじゃ行くわよ。」

レオナはボタンを押す…すると…床が動いた。

「わわわっ!?なんだ!?」

「床が動いた!?どうなっているんだ!!?」

二人は大仰天…デパートも見たこともない二人が床が動くということに驚くのは無理なかった。

「これはエレベーターっていってボタンを押すと自動的に上の階や下の階に運んでくれる便利な乗り物よ。」

そう…レオナの入った部屋はエレベーターになっていた。ちなみに残念ながら階段が常に動いているエスカレーターは開発中である…

 

~四階~

「それじゃ鎧とか剣とか5000ゴールドまでなら好きに買っていいわよ!」

「5000ゴールド!?」

ポップがそう驚くのは無理もない…何故ならその額はとても庶民であるポップには手が届かない額だからだ。

 

そもそも5000ゴールドの価値とはどのくらいなのか?という疑問もある。宿は少なくとも5ゴールド前後はする…高いところだと500ゴールドとかその辺を行くのである…日本の宿代は平均すると一人当たり1万円前後である。高級ホテルなどは100万円という値段だ。つまり…500ゴールドで100万円の価値である。少なくとも…宿代の価値はそうなる…

 

(この世界では)武具や服がやたら高かったりするのはジゼルとヒュンケルが買い占めて、供給量が不足して武具のみにものすごいインフレが来ている。また武具や服を作る際に材料がモンスターを倒すなどの手段でしか手に入らない為に材料も高くなり…結果武具も高くなる訳だ。

ちなみに薬草などの道具が高いのもその理由である。

 

ダイが見ているのは少し大きめの鎧だ。

「レオナ!俺この鎧が良い!」

ダイはそう言ってレオナにねだった。

「良いわよ。これいくら?」

レオナは気づかない…この鎧がダイにとってデカすぎるということに…

 

「その前に試着なされてはいかがでしょうか?」

店員はダイの身長を心配してか試着してから買うことを勧めた。

「あら…それもそうね。それじゃダイ君この鎧を着てみて。」

レオナがそういうとダイはすぐさま着替えた。

「よっ…ととと…!」

ダイは着替えたは良いものの問題がありありだった。

まず重い…どんなものであれ戦闘するものであればスピードが大切だ。二つ目…ぶかぶかである…サイズが合わない武具を装備しても弱体化するだけである…

「お客様。もしよろしければ他の防具を用意しましょうか?」

「お願いするわ…!」

流石のレオナもダイが今着ている防具が合わないことを判断して、レオナはそれに頷いた。

 

「新品の杖…新品の杖…」

ポップは新しい杖を探していた…

「おっ!良いもん見っけ!」

ポップは新しい杖を見つけその値段を見て見ると…

「マジで…!?」

となってしまった。その杖とは魔封じの杖である。価格は6000ゴールドと非常に高い。ポップ自身は1000ゴールドも持ってはいない。その為ポップは魔封じの杖を諦めるしかなかった…

 

しかしそれ以上探索をしても無駄だった…

「なんで売り切ればっかりなんだよ…!」

前にジゼルとヒュンケルが買い占めたからである。むしろあるだけマシとも言える。下手をしたらこのデパートにもない可能性も否定できなかったのだ。

 

「はあ…ん?」

ポップが肩を落として目をついたのはドラゴンキラーだった。

「あら、ドラゴンキラーじゃない…」

どこからともなくレオナが現れそう解説した…

「でも値段が書いて無いよ?」

ダイの言うとおり…値段が書いていなかった。

「こちらの商品はオークションの景品となっています。もし欲しければオークションで競り落として下さい。」

ここでレオナ達は気がついた…周りの戦士や商人達がドラゴンキラーを目当てに来ていることに…

「…(絶対に競り落としてやるから今に見てなさい!)」

レオナがそんなことを思っていると一人の老人がやって来た。

 

「やめときな…」

「あ?なんだってんだ?」

戦士がそう言って老人に何が言いたいのか聞く。

「自分の力量以上の武器を手に入れて強い気になった馬鹿の仲間入りなんて、およしと言ったのよ。」

「なんだとババァ!」

老人の言ったことに戦士達は激怒する…無理もない。自分よりも弱い老人に『お前達弱すぎ。そんな武器手に入れたって豚に真珠。』と言われているようなものだ。

「おやめ下さい!お婆様!」

不穏な空気になり始めたところで一人の少女が出てきた。

 

「皆さんすみません…祖母は口が悪くて…」

「フン…ワシは本当のことを言ったまでよ。」

あくまで老人は挑発的な態度を崩さず、少女は何度も申し訳なさそうな顔をして、そのまま老人と少女は階段を降りて立ち去った…

 

「…で?どうすんだ?」

ポップがそういうとレオナは少しキレ気味に…

「もちろん買うわよ!」

と言った。




私が武器代の割りに宿代が安いと思っているのはそう解釈しているからです。
それにしてもまさか第二話で武器を買い占めるイベントがこんなに役に立つとは思いませんでした。
ハドラーはそういった意味ではかなり有能ですね…

魔封じの杖の値段はⅥを参考にしました。

オークションの景品が誰が何ゴールドで落とすのかは次回のお楽しみに…

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