IS/SLASH!   作:ダレトコ

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第八十八話~ミステリアス・レイディ~

 

 

 「…………」

 

 思わず言葉を失う。今目の前で繰り広げられている光景は、それほどまでに圧倒的だった。

 

 弾道、弾そのものが一切視認出来ない空気の砲弾『龍咆』。

 本体と四つのビット、合計五つの点から光の速度で放たれる青いレーザー。

 現状ISの遠距離兵装の中では連射が利かないという弱点こそあれ、それを度外視して尚余りある威力と貫通力を誇るレールカノン。

 三百六十度、あらゆる方向から生き物のような機動で襲い掛かり、起爆するタイミングさえ搭乗者の意思によって操作できるミサイル。

 

 それらの、普通のISなら数秒と持たず撃沈されるような圧倒的な飽和攻撃は、

 

 「ちょっと……おかしいでしょ、アレ」

 

 「なんだ、この防御力は……!」

 

 戦闘開始とほぼ同時。更識先輩の駆るIS『ミステリアス・レイディ』が展開した、彼女を中心に広がるドーム状の水壁に、完全に防がれていた。龍咆やミサイルの炸裂は薄さにして一センチにすら達していないように見えるそれを貫通することすら出来ずに減退、レーザーは鏡を撃ったかのように反射され、レールカノンや爆発せずに水壁を突破しようとするミサイルは、どうやら全体的に激しく流動しているらしいその水壁の流れに受け流されるように外側に弾き出される。

 そんな明らかに異常というか、現実感すら感じられないような事態に対峙している鈴達からも次々と困惑の声があがり始めた。

 

 『通称『ミステリアス・レイディ』。実質ロシアの第三世代機として扱われてきた機体ですが、公式戦に出場するようになって尚その詳しい実態は現在に至るまで解明されてきませんでした』

 

 ことここに至って、今まで妙に静かだった白煉がいつもの機体の解説を始める。だがそれは、いつにも増してはっきりとしない内容だ。打鉄弐式はまだ未完成の機体という事情があったが……

 

 『……ロシア政府は今まで、IS委員会内における自らの権限を一切放棄する代わりに、自身の研究機関が独自開発しているISに関する情報の一切を秘匿してきました。それには機体の正式名称すらも含みます。『ミステリアス・レイディ』という呼称は、あの機体が初の公式戦で勝利を収めた際、対戦相手のアメリカの国家代表があの搭乗者を揶揄して言った言葉を、当の搭乗者本人が気に入ってそのまま機体の俗称として採用したのが由来だと言われています』

 

 「じゃあ……あの機体に関しては、何にもわからないってことか?」

 

 『いいえ。公式戦を経験している以上、データは当然残ります。使用兵装の内容、主要インターフェイスの構造等は公になってはいますが……どうやら、元々収集してあったそれらの内容の大部分を直さなくてはいけなくなりそうです。実機を確認して確信を持てました、間違いなくあの機体は現状のIS開発理論から大きく外れた見識と技術体系をもって造られたもの。それも『ISの完成形』、『第三次形態変化(サードフォーム)』を擬似的に再現するためのインタフェースモジュール以外の機能を一切捨てた、最早機構ですらない非人道的な一点特化の直列回路……!』

 

 「白煉……?」

 

 受け答えに、いつになく感情が篭っている。それも何処か、物凄く怒っている声だ。それも俺が違和感を感じて名前を呼んだ頃には、もう既にすっかり自分の世界に入ってしまっているくらいに。

 

 『……しかしいかに偽物とはいえ、適合者以外の人間をあんなものに組み込んだところで本来なら実用に耐える筈が……第一、あれに関する情報を何故――――』

 

 「おい?」

 

 『……! 失礼しました。『識武』も大概でしたが、最早あのようなISとも呼べないような代物を前に少し混乱を……何か?』

 

 だがこっちとしても聞きたいことがある以上、いつまでもその状態でいて貰う訳にもいかない。

 少し強めに声を掛けると、まだ少し心ここにあらずといった様子なものの何とかこっち側に戻ってきた。

 

 「詳しいことはわからんが、あの先輩の機体が兎に角型破りだってことはわかった……でもそれは、四体のISを同時に向こうに回せるくらいのモンなのか?」

 

 『今更それを聞きますか? その答えなら今目の前で起こっている事実が全てを物語っていると思いますが』

 

 「…………」

 

 言われて、改めて試合の状況を見る。

 

 「ちょ……剣まで通らないってどういうことよ?! たかが水なんかの防御で……!」

 

 「その認識じゃあ、あなたに私のISは使えないよ、鈴ちゃん。私にとって、『水』とはこういうもの。私が『そうだと思えば』、たったコップ一杯の水でも銃弾も砲弾も弾く『盾』になる」

 

 「戯言を……!」

 

 「適当なことなんて言ってないよ。ISってのは、本来こうやって……自分で使い方を決めるもの。ただあらかじめ決められた使用法に『使われてる』だけのあなた達のやり方は、はっきり言って無駄が多すぎる」

 

 全く攻撃が通らない焦りもあるのか四人の攻撃はますます苛烈になっているが、相変わらず結果は変わらない。あの水壁は遠距離兵装どころか格闘用の武装まで弾くらしい、双天牙月とワイヤーブレードで交互に襲い掛かるも水壁を貫くことは出来ずに表面を滑り地面に突き刺さる。

 そして、更識先輩は全く無傷のまま。先輩が最初に宣言した、先輩が受けに回るだけの四分が、無慈悲に消えていく。

 

 『……確かに、あの『ミステリアス・レイディ』は完全なものではありません。原型が『完全体のIS』とはいえ、それのデッドコピーをさらに劣化させたようなものに過ぎませんが、しかし――――』

 

 残り三十秒。そのタイミングになって、自身の周りに水壁を張り巡らせて以降攻撃を受け続けるだけで何もしなかった更識先輩がついに動いた。首にかけている水晶のロザリオを手に取ると、引き千切るように強く引っ張る。そんなことをすれば当然それをとめていた鎖は千切れ、ロザリオから滑り落ちるかと思われたが、

 

 「! なんだ、あれは……!」

 

 鎖は切れた途端まるで生き物のように空中で飛び跳ねると、蛇のようにスルスルと更識先輩の首に巻きつき、そのまま首を伝ってカソックの中に潜り込み始める。

 更識先輩は自分の首下に入っていくそれを少しくすぐったそうにしながら見送ると、これで準備は整った、とばかりにロザリオを片手に不適に笑う。

 

 『そもそも現状のISの『世代』の概念は、偏にどれだけ初期形態の状態から『サードフォーム』に正しく近づけられているかに因るもの。そういう意味では工程を無視し成果だけを強引に再現しているあの機体はどの世代にも属さない『例外』ですが……それ故に、現行機では手すら届かない領域にさえ、限定的とはいえ踏み入ることが出来ます。マスターはご自身の基準で彼女達相手に出来る者等いる筈がない、勝負になどならない、と考えておいでだったようですが――――奇しくもその通りになるでしょうね、尤も解釈は間逆ですが。ええ、間違いなく、勝負になどなり得ません』

 

 そして白煉は、それきり何も言わなくなり。

 

 「3、2、1、0……はーい、時間切れ。悪いけど私のターンを始めさせて貰うね。まずは小手調べ……さぁ起きて、私の『(ラスティーネイル)』。

 

 とうとう、最初に更識先輩が宣言した約束の時間が終わる。

 先輩は本当に心から残念そうに、若干大げさな素振りでそう呟くと、そのまま黒い手袋に覆われた右腕を空に掲げ――――

 

 「……!」

 

 一瞬。その腕に、禍々しい意匠の鎖で繋がれた刃が巻きつきながら這い上がり、手の甲辺りまで達したところでその鎌首をもたげたかと思うと、

 

 ――――!

 

 フィールド全体に黒い漣のような波濤が迸り。

 

 「え……?」

 

 「っ……!」

 

 気がついた時には対する四人全員の、ISの装甲の一部が弾け飛んでいた。

 

 

 

 

 「っ……な、なんだ? 何が起きてる?!」

 

 白煉の言葉通り。それは最早戦いではなく一方的な蹂躙だった。

 更識先輩の攻撃は、少なくとももう観客席からは完全に視認することが出来ず、精々黒い漣のようなものがフィールドの全体に走るのがわかるくらいで、見ている側からは何が起きているのか全く把握出来ない。

 ハイパーセンサーが機能している鈴達は少なくとも俺達よりは『それ』が具体的にどのようなものかわかっているようだが、やはりあまりに速すぎる攻撃に動きがついていけていない。相変わらず更識先輩の防御を破れないまま、四人の機体は致命的な損傷でこそないもの、黒い波に飲み込まれる度に確実に傷ついていった。

 

 「ぐぅっ……なに、これ?! 見えて、るのに……!」

 

 「な、何故回避できていませんの……? 確かに、今……!」

 

 ……いや、違う。あの戸惑い方は、ただ『速い』だけの攻撃を受けているのとは少し違うような……

 

 「っ……! ラウラっ! 『アレ』で止めらんないの?!」

 

 「う……」

 

 堪らず鈴が、絶えず龍咆を更識先輩に放ちながら叫ぶ。

 一方呼ばれたラウラは、何処かしどろもどろといった感じで満足に反応も返せない。心なしか、ほんの一瞬何故かチラリとこちらを見た気がした。

 ……何か様子がおかしい。そういやあいつ、今まで一度もAICを使ってない。いくつか弱点はあるとはいえ、あれほど鉄壁の防御力を誇る能力は他にそうそうないし、その弱点も僚機がいる以上ある程度カバーは出来る。この状況で使わない理由はない筈なのだが。

 

 「む~りむり。そのちっちゃい子、全然集中できてないもん。そんなんじゃ全第三世代兵装中でもトップクラスの緻密性のあるイメージを要求される、『AIC』なんて発動できっこない……まぁこの結果は私にとってもちょっと拍子抜けだけど。いくら弟君の前での初試合だからってちょっと舞い上がり過ぎじゃない? 『お姉ちゃん』?」

 

 そんな疑問は、直後に発せられた更識先輩の煽るような言葉で吹っ飛んだ。

 そしてとっさに出会った当初の、冷たい目でこっちの顔面を張り倒そうとしてきたラウラを思い出し、いや、それは流石にないだろと思う一方で、同時に最近クラスのペット兼アイドル的ポジションに収まりつつある我が小さい方の姉を思い返しいやそうなのか、とも考えたりして一瞬混乱しかける……いやまぁ元を正せば俺も下手人の一人には違いないのだがよくもこうも変わったものだ。

 

 「ッ!! 舐めるなよ女狐! このようなもの、AICなどなくても……!!」

 

 が、俺がいつまでもそんな状態でいることが許されないくらい、現状は予断を許さず進行していた。

 更識先輩の言葉にどうやらカチンときた様子のラウラのシュバルツェア・レーゲンの右腕が、等間隔で放たれる黒い波濤に合わせるように紫電を纏いながら突き出され――――

 

 ――――!

 

 削岩機で鋼鉄の塊を無理矢理削りとるような、直接頭に響く凄まじい金属音の連打と共に、更識先輩から伸びる黒い鞭のようなものを絡めとっていた。

 ……いや。遠目だから少しわかり難いが、よく見ればそれは鞭というには物々しい見た目をしている。シュバルツェア・レーゲンに搭載されているワイヤーブレードのワイヤーで、蛇の脊髄のような禍々しく鋭利な刃を連結させたような伸縮自在の『剣』。それも今こそ絡めとられたことで無理矢理停止させられてようだが、その状態でもラウラのISの右腕部分に歯のように食い込みギシギシと嫌な音を立て続けていることから、どうやらいつか見た更識先輩の手袋についていたのと同じような水色の幾何学模様が浮かび上がっているそれのエッジ部分はそれぞれが生き物のように動くらしい……更識先輩のセンスを疑うわけではないが、あまり趣味がいいとはいえない意匠の武器だ。

 

 更識先輩のISには、今まで自身の身を守ってきた水壁を除けばあれ以外の武装は見当たらない。先程まで四機を攻撃していた黒い波濤のようなものの正体は高速で空中を乱舞するあの武器だったのか。ISの強化感覚をもってして尚捉えきれない程高速で動く蛇腹剣、確かに厄介だが、それもこう絡めとられた今となっては――――

 

 「――――はい。一人アウト」

 

 「なっ、ぐっ……!」

 

 と、思った瞬間だった。ラウラの苦しむような声がオープンチャンネルから響いたかと思うと、少し遅れてシュバルツェア・レーゲンの戦闘不能を知らせるブザーが鳴り響き、戦闘状態を解除されたラウラのISがゆっくりと戦線から離脱し始めていた。

 ラウラは意識こそはっきりした様子だが、明らかに苦痛に顔を歪めている。それを見た俺は、思わず席から身を乗り出して、

 

 「ラウラッ!!」

 

 『心配いりません、マスター。彼女にバイタルダメージはありません、絶対防御は正常に作動しています』

 

 走り出そうとしたところで白煉に止められた。

 ……そうだ、これは試合だ。どうも一学期の無人機といい福音といい例外ばかり相手だったせいで未だに実感はないが、基本的にこの競技は派手さの割りに負傷自体することはとても少ない。周囲からも目の前の試合のことよりも寧ろ俺が突然立ち上がったことに対する驚きの方が大きいようで、俺は急に一人で先走ったのが恥ずかしくなって、なにか釈然としないものを感じながらも軽く周りに会釈しながら再び座り直し、身近にいる相手にヒソヒソと言い訳をした。

 

 「……でも今、確かに苦しそうな顔してたんだよ」

 

 『絶対防御は攻撃自体を完全に無効に出来るものではありません、大部分を軽減されているとはいえダメージはゼロには出来ません。搭乗者を直接攻撃されれば尚更です』

 

 「直接……? 更識先輩はさっき何をしたんだ?」

 

 『あの『ラスティーネイル』は、エッジを連結している鎖部分に『ミステリアス・レイディ』本体が掌握している水を流すことで操作しています。白兵戦用武装としての能力は、あくまであの武装の一面に過ぎません。その本質は、内包している水をいつでも外部に『放出」できる点にあります』

 

 「……!」

 

 『……その表情からすると、もう凡そ把握は出来ていると思いますが。『ミステリアス・レイディ』の第三世代兵装の能力は、SEから精製される『アトミックマイクロウェーブ』の投射による、ありとあらゆる『水分子』に対する運動量、ベクトルの掌握、支配です。先程は、ラスティーネイルによって破壊したシュバルツェア・レーゲンの装甲内に当武装から放出した水を浸透させ、それが内部に到達するのと同時に凝固、刃状に凍結させて搭乗者を直接攻撃したのです。結果、シュバルツェア・レーゲンは搭乗者の保護にSEの大部分を消費せざるを得なくなり、戦闘不能に追い込まれました』

 

 つまり、更識先輩の機体はイメージインターフェイスによって操作、制御を行う第三世代兵装を搭載している、鈴達と同じ第三世代機ということになる。

 だが……あれは、そんな枠に収まるモノだろうか? それくらい、見た目同様その力まで更識先輩のISは異質だ。そもそも、俺が知っているISというものからすら根本的に違うものにさえ思える。

 

 「ラウラさん?! こうなったら……!」

 

 「何か手はある? もしかして、さっきからミサイルの誘爆に紛れさせながらこっそり私の近くに近づけてたこの子達のことカナー?」

 

 「くっ……! 『ブルーティアーズ』!!」

 

 先程から簪が更識先輩に撃ち込み、その全てが『ラスティーネイル』によって迎撃されているミサイル。その爆煙を突き破りながら、四基のセシリアのビットが瞬時加速もかくやというスピードで更識先輩に突進していく……あの速さはビット単体では出せないものだ。簪が手をかざしている方向を見るに、多分あのビットは『和泉』のサポートを受けているのだろう。

 その上爆煙を煙幕代わりにした奇襲は直前になって更識先輩に気づかれてしまったものの、既にその頃にはビットはラウラに絡めとられた際ラスティーネイルが一時的に動きを止めた隙を縫って更識先輩の眼前まで接近、一瞬更識先輩を守る水壁に受け流されそうになるも、ビットを保護している和泉が外側からかかる力を逸らしていく。しかしそれも完全ではなくビットの装甲は次第に激流に破砕されていくが、それでも構わず自らの推力で強引に厄介な水壁に剣のように突き刺さっていき、剥き出しになった銃身部分をとうとう内側にねじ込んだ。

 

 「これでもう防げませんわよ……!」

 

 「アハハハッ……! 連携攻撃なんてやるじゃない、けど甘いっ!」

 

 「……!」

 

 が。更識先輩を守る水壁は、破られたのと同時にその姿を変える。

 わが身を削ってまで更識先輩に一撃を見舞おうとしたセシリアのビット達は、その銃身部分がレーザーを発射する直前にその悉くが水壁から生み出された四本の水槍にその身を貫かれ、無念そうに銃口から青い光を漏らしながら轟沈していく。

 

 「そんな、ティアーズが……」

 

 「こら、セシリア! ボサッとすんな!!」

 

 「あっ……!」

 

 自身の切り札があっさりと断たれ、一瞬放心してしまうセシリア。とっさに鈴が気がついて激を飛ばすが、既に遅く。

 ブルーティアーズは、ラウラの脱落により完全に動きを取り戻したラスティーネイルの鞭のような連撃に瞬く間にSEをシールドの上から削ぎ落とされ、

 

 「これで、二人目」

 

 止めとばかりに恐ろしい唸り声のような爆音を伴いながら飛翔する三本の水槍をミサイルのように叩き込まれ沈黙した。更識先輩が宣言した、四分の半分も経たない内に、二人がやられた。

 

 「……!」

 

 その事実に呆然としている間もなく、試合は動く。

 簪が更識先輩の攻撃がビットを失い丸裸になったセシリアに集中したその一瞬の隙を縫って一気に接近、先の模擬戦で俺を苦しめた薙刀のような白兵武装を振りかざし、圧倒的な防御力を持っていた水壁を失った先輩に斬りかかったのだ。今度こそ、更識先輩に防ぐ術はないように思えた一撃だったが、

 

 ――――!

 

 「おおっと、危ない危ない。一本残してたのは正解ね」

 

 水壁から生み出した、四本の水槍の内、セシリアの撃墜に使わず手元に残した一本を手繰り寄せ際どいところでそれを受け止める更識先輩……あのこじんまりした外装でも、パワーアシストはしっかり機能しているらしい。

 

 「……にしても、酷い話ね。要は向こうには連携と思わせておいて、捨て駒にしたのよね、あなた。『わかってた』んでしょう? セシリアちゃんの奇襲、失敗するの」

 

 「…………」

 

 「『あっちが勝手にそう思っただけ』……とでも言いたげな目ね。まぁそうよねぇ、仕方ないわよねぇ、だってあなた喋れないんだもん。そういうのって、便利よね。ただ黙ってるだけで、『何も悪くない可哀想な私』でいられるもんね?」

 

 「……! ……!」

 

 そしてそのまま、仕方ないとはいえ更識先輩が一方的に話しながらの、激しい打ち合いに発展する。

 ……あのこの試合のきっかけになった話し合いの時も思ったことだが、簪の様子が何かおかしい。あの無骨さは抜けないものの冷静な判断で相手を受け流し隙を作る薙刀捌きは失われ、単調な突きと払いは更識先輩に簡単ににあしらわれてしまう。あまり付き合いは長くないが俺の知っているあいつなら、普段ならあんな風に煽られたところで涼しい顔で逆に痛烈な皮肉を書き起して突っ返すくらいのことはする筈、それがああも簡単に怒り狂ってペースを乱されるなんて……

 

 「ったく、見てらんないわ! 格闘戦苦手なら下がってなさいっての!」

 

 その理由がなんであれ、このままでは不味い。そう思ったのはどうやらあの場にいる鈴も同じようで、現れた時からずっと立っていた位置から相変わらず一歩も動かないまま簪を受け流す更識先輩に背後から襲い掛かる。

 

 「! っと!」

 

 それにも先輩は対応して見せた。簪からの胴目掛けての払いを蹴りで強引にかち上げて軌道をずらして自身は逃れながら、カウンターのように振り上げられ大きく撓らせたラスティーネイルの一閃を攻撃を受け流され死に体になった打鉄弐式に見舞い吹き飛ばすと、そのまま振り返って左手に手にした水槍で鈴の攻撃を受け止めようとした。

 だが、流石にあの水壁を形どっていた水とはいえ、四分の一の分量ではいかに更識先輩の強固なイメージでも第三世代機の中でも破格のパワーを持つ甲龍の強烈な鉄拳は防ぎきれず、両者がかち合った途端槍は勢い良く弾けた。槍を突き破った鈴の一撃はそのまま更識先輩の顔面に突き刺さ――――

 

 「た、たっちゃんバリアーンドトリモチ!」

 

 「っ!! な、なんでもありかアンタ?!」

 

 る直前。更識先輩右手元のラスティーネイルから不意に放出された霧のような白い靄によって弾けた槍の水は散らばらずに繋ぎ止められ、今度はグニャグニャのジェル状のものに形を変えて今度こそ鈴の拳を受け止めた。ジェルは拳が着弾した場所を中心に大きく抉れるも、弾け飛ぶことはなくそのまま甲龍の突き出された右腕を捕らえる。

 

 「うふふふふふ! 鈴ちゃんゲットぉ~!!」

 

 「うぎゃー! くんな! 手ワキワキさせながらこっちくんなぁ! このぉぉぉぉぉ!!」

 

 「ふふ、無駄無駄。残念だけど今のあなた達の実力じゃ、その張り付いた水はもう剥がせ……へ?」

 

 そうしてもう少しで取り戻せた形勢はあっという間に逆戻りし、余裕綽々で怪しい動きをしながら右手を封じられた鈴に迫る更識先輩。だが、その動きが不意に驚いたように止まる。

 

 その視線を追いかけると、鈴があろうことか、その右腕にくっついて離れないジェル状の水塊に今のところ無事な左腕まで突っ込んでいるところだった。

 

 「あ、あいつなにやってんだ?!」

 

 甲龍はその実質、両の腕が最大の武器だ。龍咆は発射口を空間内に作って発射する性質上360度何処にでも撃て、自身が直接触れている空間内ですらあれば発射する場所すら問わない非常に自由度の高い兵装だが、それ故に逆に狙った場所に撃つのが難しく、あいつはそうじゃなくてもエイムがヘナチョコなため手で標準を合わせないと当てられないという欠点があるらしく、腕を封じられると実質ほとんど全ての武器を鈴は失ってしまうのだ。

 

 「うーん……なんのつもりかな? 諦めちゃった? 別にいいけど、それじゃお姉さん楽しくないなー」

 

 それを更識先輩も知っているのか。微笑みこそ消さないものの、困惑を隠せない様子で鈴に探りを入れる。それに対して鈴は諦めた様子など見せずに不適に笑うと、

 

 「んな訳ないでしょ……泣かせてやるって言った筈よ!」

 

 力強く、そう宣言したのとほぼ同時。

 今までずっと同じ空間に甲龍の腕を固定し動きを封じていた更識先輩の水が、外側から抉り取られるように急速に周囲に散らばりだした。

 

 

~~~~~~side「鈴」

 

 

 ……ヤバ。こいつ、少なくとも今のあたしより二つは格上だ。

 

 他の三人がどう思ったのかは知らない。けどあたしには、あのどうやっても削り取ることすら出来ない水壁を目にした時点で、既にそんな確信があった。

 もうこれは単純に強いとか、それ以前の問題だ。あいつとあたし達じゃ、根っこの部分から力の在り方が違う。元はただの水の筈なのにミサイルやレーザーが直撃してもビクともしない守り、見えている筈なのに防ぐことが出来ない攻めをいざ相手取った時真っ先に感じたのは、福音騒ぎの時見た箒のISのあの金色に輝く滅茶苦茶な力を目にしたときに思わず抱いた理不尽さだ。要するに、あいつのISは『アレ』と同じか、下手をすればそれ以上……!

 

 「でも、やってやる……!」

 

 かといって、そんなことで一々挫けてなんてられない。あたしが越えなきゃいけない相手は、そもそも世界最強(てっぺん)なのだ。箒だろうが生徒会長だろうが、あたしにとってはそこまでいくのに乗り越えていかなきゃいけない相手に過ぎない。躓いてなんていられないし、

 

 ――――あの守りを、抜く手立てはある。

 

 暫定最大攻撃力だった『剣龍殻』は、結局レギュレーションの審査で落っこちて取り上げられてしまったけど。あたしとしても、元々はあたしが提供した甲龍の実戦データから作られたものとはいえ、そんな顔も知らない奴等が作ったぽっと出のパッケージなんていつまでも頼みにするつもりもなかったのでそれはいい。あれは、あの時点で『こいつ』がまだ未完成だったから持ち出さざるを得なくなったもの。あたしが頼みにするのは、あたしと甲龍(こいつ)だけ。ここ最近調子が良くて一気に成果こそ出てきた以上、もう必要ないものだ。

 ……尤も、その調子が良かった理由ってのが、あの臨海学校明けからほんの少しだけ前より表情が明るくなった誰かさんを見れるようになったからってのが、我ながらわかりやすいというか、なんかそれはそれで負けたような気がして悔しいんだけど。いやまぁ、それはそれとして。

 

 問題は、やはりまだ『未完成』なのは変わらないお陰で至近距離から叩き込まなければいけないこと。けれど戦闘開始時から、あの馬鹿みたいに突っ立ているだけの相手のはずなのにこっちがどう牽制を入れてもどうしても『当たる』ビジョンが見えなかったことから、あたしは仲間がいることに賭けてその隙が生まれる瞬間を待った。

 

 そして、その味方は二人失ったものの、とうとうその『時』が来た。恐らく同じことを狙っていたと思われるあの四組のメガネはちょっと気に食わなかったけど、私も似たようなことを考えていた以上文句を言う資格もない……けど、にしてもうちょっと役に立ってくれてもいいんじゃないか。そこまでして得た成果があのお粗末な接近戦闘じゃ、あたしの見立てじゃまだ奇襲の成功率は半分に届かない。

 ……といっても、潮時だ。タイマンでは正直厳しい。多少強引でも、このチャンスをなんとかものにしてみせるしかない。そんなことを考えながら、仕掛けた結果が。

 

 「ふふ。つーかまえた」

 

 「……チィッ!!」

 

 このザマだ。あたしは後もう少しというところで詰めを誤り、ウネウネと気色悪く動く水に右腕を空中に縫い止められた。

 甲龍のパワーならこんなもの強引に……と思って力を入れるが、梃子でも動かない……やっぱ、悔しいけどことイメージインターフェイスの運用じゃダンチで差をつけられてると思ったほうがいいみたい。

 ……しょうが、ないか。出来れば確実に『やれる』瞬間になってから使いたかったけど、多分『これ』じゃなきゃこれは破れない。そう判断したあたしは、即座にこの『新技』のイメージを自らの腕に叩き込んだ。

 

 ――――!

 

 ……よし! ここ最近では最高の仕上がり。

 自分の中でも充分過ぎる手応えを感じるのと同時に、あたしの腕を捕らえている水ごと空気が、空間がうねり逆巻いて腕の拘束をズタズタに消し飛ばしていく。

 

 「……そっか、元々『龍咆(それ)』は空間を圧縮して大気を撃ちだすもの。その力を応用して空間に捩れを生んで大気の断層を作ってる……インスタント鎌鼬なんて、ぶっつけで中々面白いものを見せてくれるじゃない、鈴ちゃん?」

 

 と、気持ちが高揚したのも束の間。敵にあっという間にこっちのタネを見通される。これだからこいつは所見の一撃で仕留めてしまいたかったけど、こうなったら仕方ない。それに……

 

 「『ここ』からなら当たるしね……!」

 

 一瞬で水を消し飛ばし、自由になったあたしは会心のタイミングで、今度こそ本当に守りを失った生徒会長に向かって跳んだ。ISに対して試したことは一度もない、この技の威力の程はあたし自身まだ知らない部分が多いが、それでも単純に龍咆を撃ち込むよりは間違いなく威力は上の筈。この機を逃したらもうチャンスは無い、これで決めるとばかりに叩き込んだ必殺の一撃は、

 

 「ふ……!」

 

 それに対し生徒会長が突きつけるように勢い良く掲げた水晶のロザリオから、渦のように放出された水流によって受け止められる。

 

 「こんなものぉぉぉぉ!!」

 

 だが無駄だ。一度発動したあたしの両腕に纏った空気の刃は、あたしの腕を激流のように流れる水に飛沫の一滴触れることすら許さず、メスのように敵を守る渦潮に深く切込んでいく。

 ――――自分のやっていることながら、こいつは凄い! これなら……!

 

 「あは、凄いよ! いや、この中でほんのちょっぴりくらいの確率で、もしかして私を追い詰められるかもしれない子がいるとしたら、それは君だろうと最初から思ってたけどさ! ……流石は、そうじゃなくても世界最高の人手を抱えてる中国が多少汚い真似をしてでもグレーゾーンに手を突っ込んで無理矢理確保した至高の原石。あと五年……いや、二年経ってたら、私でも本当に危なかったかもね」

 

 「?!」

 

 いや、違う?! 飛沫があたしに降りかからないのは、空気の刃に切り飛ばされて散々になった水が、その場で飛沫にならず別の形に変化しているからだ。気がつけばあたしは、背後を三センチ程のシャボン玉のような形状に変化し滞空する大量の水に退路を完全に塞がれていた。

 それは別に問題ない、最初っからこいつに一発当てるまで逃げる気なんてないし。けどこの立ち込めるかのようなシャボン玉の大群は、後ろだけじゃなく、前、にも……

 

 これが一体なんなのかはわからない。けど、何か無性に嫌な感じがする。

 だからあたしは、これ以上状況が動く前に、目の前の敵の撃破を最優先に選択した。

 

 「……一応、先に謝っとく。ごめんね。君が才能だけの子じゃないのはわかってる。学園祭もISも君が色々頑張ってきたのも知ってる。君としては勝つしかなかったんだろうけど、私にもちょっと、まだ生徒会長降りるわけにはいかない理由があるの。ま、君は気に入らないだろうけど、最終的には悪いことにはならないから。だから……」

 

 もう少し。もう少しで、装甲も何も無い、敵のISに手が届く。大丈夫、絶対間に合う! そのことしか頭になくて、直前にその敵がポツリと言った、意図が良くわからない謝罪の言葉さえ、半分も耳に届かないまま。

 

 「今は、負けて」

 

 あたしの拳が、敵の防御を突き破ったのと、全く同時。

 まるでそれが、あらかじめ仕込まれた爆弾のスイッチだったかのように、凄まじい閃光と轟音、衝撃に襲われ。あたしは拳が相手に突き刺さったかどうかすら確認もとれないまま、それに世界を塗り潰された。

 

 

~~~~~~side「簪」

 

 

 こんなこと、良くないことだって最初からわかってた。

 だって悪いのは自分だから。あの人は、私が出来なかった……いや、やらなければならなかったのにしようともしなかったことを、仕方なくやっているだけだ。だからあの人が帰ってくるまで『更識』ですらいられなかった私をあんなに冷たい目で見るのも、前と同じように話してくれなくなったのも、仕方のないことだとずっと思っていた。

 

 けど、私の不手際の責任を他の一年生の人達にまで押し付けようとするあの人をいざ目の前にしたら、もう冷静ではいられなかった。気がつけば、せめて他のクラスには迷惑を掛けないようにしようと、代案なんてまるでないままあの人に勝負を挑んでいた。

 

 ……当然、後悔した。けど、ほんの微かに、嬉しさもあった。

 こんな形での実現は、当然望んでなんかいなかったけど。これは私の、いつか『やりたかったこと』には違いなかったから。

 

 ――――ただ黙ってるだけで、『何も悪くない可哀想な私』でいられるもんね?

 

 けれど。そんな仄かな感情も、その一言で完全に冷えた。他の人には今更別になんて思われても、言われても構わなかった。けど。

 

 『だいじょーぶ!! かんちゃんがどんなかんちゃんになっちゃったって、私はかんちゃんを守るよ! だって、私は――――』

 

 ……この人に、だけは。もう、昔に戻れないのは仕方ない。けどかつて、そんな言葉を私にくれたこの人には、せめて私のことをわかっていて、欲しかったのに……!

 

 ――――私は悪くないなんて、思ったことなんて一度もない! あなただけなら逃げられた! 私がいたから、あなたは……!

 

 ――――お母さんのことだって、そう。あなたなら、きっとあんな結末にはならなかった。きっと、お母さんをちゃんと受け入れて、助けてあげられた……!

 

 ――――あなたじゃない。私が、いなくなればよかった! そうなったら、更識だって……!

 

 次々に浮かんでくる言葉は、全部喉から出てこない。だったらせめてと、それの代わりに手にした武器をあの人に、子供みたいに無茶苦茶にぶつけた。

 

 ……そうして、結局。そんなどうしようもない自分を漸く省みれたのは、あの二組の人の不意討ちに対応するついでに、あの人が操る武器に呆気なく吹き飛ばされ、アリーナの外壁に叩きつけられた時だった。

 

 一体、なにをやってるんだろう。今は、そんな私情で動くべき時じゃないのに。

 そう思って立ち上がろうとするも、起き上がれない。体も、ISもまだ動けた。けれど、それ以前に……前には戻らないにしても、今からまた始めていけると思っていたけど、ダメだった。私達の道は、もう決して交わらずに、離れていくしかない。そう悟った瞬間、私の心は折れてしまっていた。

 

 そうしているうちに、アリーナの中心で凄まじい爆風が吹き荒れる。

 ……前に所長が見せてくれたあの人が戦っている映像の中で見たものそのままだ。『清き情動(クリア・パッション)』。対象に隣接する空間に、一秒間にゆうに三万を越える連鎖水蒸気爆発を発生させ、シールドの上から瞬時に敵ISのSEを根こそぎ刈り取る、あの人のISの奥の手だ。水蒸気爆発の余波による、濛々とした霧のような爆煙と陽炎が晴れ始めると、戦闘用SEを失い倒れ込んだ二組の人のISと、あれだけの爆発を自らも至近距離で受けた筈なのに全くの無傷のあの人のISが姿を現した。

 

 「――――三人目。あ~あ、多少ハプニングがあったとはいえ、まだ二分半ジャスト……うーん、ちょっとあなた達を高く見すぎてたみたい。ほんっと……拍子抜けよねぇ、布仏さん?」

 

 ――――あ……

 

 まるで氷にような、冷たい視線。私のことをなんでもない何処にでもいる人間、強いて言えば煩わしい知り合いの一人としてしか認識していないその目に射抜かれ、私はアリーナの外壁際にへたり込んだまま、あの人に自分の力を見せるどころか、八年前のあの時みたいに何も出来ずに敗れることを、どうしようもない虚無感と共に悟っていた。

 

 






楯「いくわよぉー……超必殺技! クリア・パゥッ?!」

簪「…………(『藤』発動……画面切り替わるの確認してから硬直中に昇竜余裕でした^q^) 」

楯「ちょ、気づいたらマイキャラ空飛んでるんですけど?! ……かんちゃんそれでも特撮好きなの?! 貴女が今やったのは変身ヒーローや魔法少女が今まさに変身してるところに乱入して攻撃を加えるような暴挙よ?!」

虚「いやぁ……それでもゲージ溜めた者勝ちのブッパでも当たる上に即死の超必の方が正直ないと思います、当代。大人げ無さ過ぎです」

本「大丈夫だよ~たっちゃん。C始動だよ~死ななきゃ安いよ~」

簪「…………(舐めないで本音……和泉で浮かせながらアドリブ入れれば補正切り込みで十割いけるって私の(ゴースト)が囁くの(゚∇^d)) 」

本「やっぱりかんちゃんすご~い゚+.(o,,〃ω〃)o +.*」

楯「み、味方なし?! 私主筋なのに?! っていうかかんちゃん何て言ってるのか私だけわかんないし!! ……うわぁぁぁん!! こんな分家に誰がしたぁぁぁ・゚・(ノД`)・゚・。」

―――― 一方織斑邸

数「クリアパッション。秒間三万発の爆発がリア充を襲う。あいてはしぬ」

弾「おい……おい。マジでゲージ十割逝ったぞ( ゚д゚)」

一「マジかよ更識最低だな。一撃必殺とかないわー」(零落白夜並みの感想)

鈴「巨乳死すべし慈悲はない(#・∀・)」(暮桜(レギュ違反SKCM(スーパーキチガイチートマシン))選びながら)


 たっちゃん無双回につき、原作でのドジっ子成分が不足したので思いつきで書きました。尚この後書きの内容は本編とはいっさい関わりはありません。
 本作のたっちゃんは実質、味方の中では実力が頭一つ以上抜けてる設定……というか、完全に味方にするとバランスが崩れるくらいのレベルです。レイディも、総合的な防御力という点では本作においてこれを越えるISはここから先も登場しません。
 そんなお方が相手な以上、かんちゃんももう時間の問題、と思いきや……?

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