IS/SLASH!   作:ダレトコ

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第四十七話~一日目~

 「そ、そんな……束さんの『アリスな箒ちゃんゲット作戦』が、早くもこんなところで頓挫するなんて……箒ちゃんの好みは完全に押さえたのに、まさか違う人が掛かるなんて……」

 

 何年ぶりだろうか。久しぶりに会う束さんは、出会うなりいきなりなにやら打ちひしがれたように膝をついて落ち込み始めた。が、

 

 「……どうも、久しぶりです、束さん」

 

 「あ」

 

 このままだんまりもどうかと思って声を掛けた途端俺に気がつき、目を丸くすると、

 

 「いっく~~~~~~~~ん!!」

 

 「うぶっ!」

 

 次の瞬間飛び掛ってきた。

 

 「おっきくなったねぇ! よしよし、お姉ちゃんがいなくて寂しかったでしょ? 昔みたいに好きなだけ甘えていいよ?」

 

 一年ぶりじゃないですか、身長そんな変わってませんて。大体これ構図的に俺が甘えられてる側ですからね?! つーかあんた昔から歳関係なくずっと甘える側だったじゃないですか……そ、それにその箒を上回る凶器を顔に押し付けないでください。幸せですが窒息しそうです、恐るべし篠ノ之姉妹。

 

 「一夏……この人は?」

 

 隣にいる鈴が、白い目で俺を見ながら説明を求めてくる。

 いや……前更識先輩に襲われた時みたいに助けてよ。今回も被害者だぞ俺。

 

 「ああ、この人はな……」

 

 そこまで言いかけてつい考え込む。どう説明したものだろう、なにせ何かと肩書きの多い人だ、それも複雑な。

 ……やっぱ、無難な範囲にしておこう。

 

 「箒の姉ちゃん。俺達昔は近所ぐるみの付き合いだったから、俺にとってはもう一人の姉みたいなもんだな」

 

 「ふーん、面識ある感じなのはそれでか。でも、箒のお姉さんがなんでこんなところにいるの? ここら辺一体って、IS学園が所有してるのよ。関係者以外は入れない筈よ」

 

 「それは俺に聞かれてもなぁ……」

 

 元々神出鬼没さには結構定評がある上、他人の『所有権』というものに対して結構ズボラな人でもある。気まぐれで入ったと言われてもなにも不思議じゃない。

 

 「つーか、いい加減離れなさいよ、このシスコン」

 

 お前最初からそれ言いたかっただけだろ、だから俺に落ち度はない筈なんだけど。そもそもシスコン呼びだけは許さないと言った筈だ。

 

 「むー……いっくん。そんなのと話してないで、束さんとお話しようよ」

 

 と、鈴の相手をしていると、今度は俺の首に手を回したまま離そうとしない束さんが拗ね始める。

 実に面倒くさい。

 

 「はいはい。じゃあ束さん、何しに来たんです?」

 

 「なんかいっくんが冷たい……それに敬語もいいって言ってるのになぁ、昔みたいにタバ姉って呼んでよ。まぁいいや、束さんはね、箒ちゃんに会いにきたんだよ」

 

 「箒に?」

 

 「うん。そろそろ、箒ちゃんのお誕生日でしょ? ……もうここ五年くらいは、電話でおめでとうしか言えなかったからね。今度こそ、直接会っておめでとうって言って、プレゼントをあげたいんだ」

 

 「……そうですか。アイツ喜びますよ、きっと」

 

 「えへへ、そうかなそうかな」

 

 なにせこんな奔放な姉を信じて、ずっと放って置かれたことを恨みもせずにいた奴だ。素振りこそなんでもないように装っているが、現状あいつが置かれている立場を考えれば家族に会えるのは嬉しいことだろう。

 

 束さんは俺の返事に満足げにうんうんと頷くと、漸く俺を解放してくれる。

 ……本当に、嬉しそうだ。しばらく会えなかったとはいえ、やはり箒のことは妹として大切に想っているんだろう。

 昔から友好のあるこの二人の姉妹が仲がいいのは、俺にとっても嬉しい。つい、つられて笑顔になる。

 

 「ちょ、ちょっと?! 二人して和んでいらっしゃらないで、わたくしの服を元に戻してくださいまし!」

 

 そんなところに水を差したのは、束さんの悪戯で不思議の国ルックにされてしまったセシリア。

 束さんはその声で、先程まで浮かべていた満面の笑みを急に消して真顔になると、

 

 「ん~」

 

 両指で窓を作り、それでセシリアを覗き込んだのも束の間。

 

 「駄目。全体的にインパクトがない。なにより金髪が下品」

 

 「なっ……」

 

 あまりの物言いに絶句するセシリア……これは不味い流れだ。

 

 「束さん」

 

 「はーいはい、わかったよ。元に戻せばいいんでしょ?」

 

 俺が注意して、漸く面倒臭そうにパチンと指を鳴らす束さん。それを合図のように再びセシリアが抱えている白兎が爆発、煙が晴れると、中からちゃんとIS学園の制服を着たデフォルトのセシリアが出てくる。

 

 「量子展開を使った瞬間着せ替え機能だよ……う~ん、やっぱり箒ちゃんで試さなきゃ! こうしちゃいられない、またねいっくん! 今度は『二人っきり』で話そう! 行こう、『るーくん』!」

 

 それの確認も程々に、うずうずしながら走り去る束さん。それを見て、セシリアの腕の中で丸まっていた白兎も弾ける様に飛び上がってセシリアの手から逃れ、束さんを追いかけていく。自称インドア派とは思えないそのあまりの速さに、こちらも放っておくのは不味いかもと思いつつも追いかける気力を失ってしまう。本当に、天災の異名どおり嵐のような人である。

 他の二人も同様のようで、セシリアなどは先程の暴言に対する反撃をし損ねて呆然としている。

 

 「……あれ、本当に箒の姉貴なの? なんか、ヤーな感じの人ね」

 

 一番最初に正気に戻った鈴が、そう率直な感想を漏らす。

 

 「いや、確かに変わり者だけど、悪い人ではないんだぞ。俺も昔から……なんだかんだで世話になってるし」

 

 「うん、アンタにとってはそうかもしれないけど……なんていうかな、あたし達をものの数として見てないっていうか。むしろ邪魔者扱いって感じじゃなかった?」

 

 ……わかるよな、やっぱり。

 けどそのことについて、俺があの人を責める資格はない。

 あの人がああなったのは……全部、俺のせいなんだから。

 

 「……行こう、鈴。セシリアも悪かったな。俺の知り合いが、迷惑掛けて」

 

 「……一夏? ……うん、わかった」

 

 「は、はい。まぁ一夏さんのお知り合いということでしたら、顔を立てましょう」

 

 俺の様子が変わったのを悟られたのか、二人はそれ以上追及してこず、海へ続く道を再び歩き出す。

 二人が俺の顔をあまり見ようとせず、先を歩いてくれたのは、正直有難かった。

 このことは、もう大分前からわかっていた筈なのに……実際に会った束さんの変化は、俺にとっては想像していた以上にキツいもので、正直……少し、泣きそうだったから。

 

 

~~~~~~side「???」

 

 

 織斑君が、脱いでない。

 織斑君が、脱がない。大事なことなので二回言った。いや、これは本当重大な案件だよこれは。

 ……べ、別に織斑君の胸板が見たいって訳じゃないけど!

 

 「Tシャツ一枚がこれだけ憎いと思った日はないわ……」

 

 「というか、一人だけあれは不公平だよ! 他の娘はみんな水着に着替えてるし、織斑君だってそれをなんだかんだで嬉しそうに見てたの見たもん! むしろここはサービスで全裸になるくらいしたって罰は当たらない筈だよ!」

 

 「そうだそうだー」

 

 ……いや、全裸はどうかと思うよ? けど、不公平っていうのは同意。

 でも私、口に出した覚えないのに、この三人はどこから湧いて出たんだろう。

 

 「それで、清香? 作戦は?」

 

 「ちょ、私に振るの? ……う~ん、素直にお願いしてみるのが一番じゃない?」

 

 「正攻法ね、嫌いじゃないわ。そうと決まったら早速GO!」

 

 「ちょ、ちょっと?!」

 

 まぁ、こんな訳で。

 私相川清香は、谷本さん、夜竹さん、そして何故か、何処かで見覚えのある黄色いマスコットの着ぐるみを着た布仏さんと協力して、織斑君を脱がせるべく行動を開始した。

 ……あれ? どうしてこんなことになったんだろう?

 

 

 作戦1 ~お願い~

 

 

 という訳で、織斑君に『脱いで?』とお願いすべくやってきたのはいいけど。

 

 「ここか? ここがええのんか?」

 

 「あ、あふぅぅぅ! い、一夏さん! これ以上は、これ以上はぁ……!」

 

 「なんだよ、そっちから頼んできたんだろ? こっちもさっきの束さんの件の負い目があるからやってやってるんじゃないか。あんまし動かないでくれ、やり辛い」

 

 「うううううぅぅぅぅぅ……予想外ですわ、一夏さんがこんなテクニシャンでしたなんて……」

 

 「セシリアが敏感過ぎるんだ。それにまぁ、中学時代バイトで散々慣らし……なんでもない。ないったらない」

 

 せ、セシリアさんと物凄くイケナイことしてる現場に遭遇しちゃったよ! どどどどうしよう!

 

 「おおお落ち着くのよ清香。あんなのただサンオイル塗ってるだけじゃない」

 

 「そそそそうよ! 別に決していかがわしいことではないのだわ!」

 

 「……気持ち良さそうだよ?」

 

 谷本さんと夜竹さんももうダメっぽい。布仏さんはそもそもわかってないみたい、ちょっと可愛い。

 

 「ほほう、全身が満遍なくテカテカになってきたじゃねぇか……」

 

 「あひゃあああぁぁあぁあぁ!」

 

 ――――ご、ゴクリ。

 

 三人揃って聞き耳を立てて息を飲み込む。どうしよう、凄く声を掛け辛い。

 

 「せ、清香行きなさいよ」

 

 「む、無理だよ! 今行ったりしたら……」

 

 

 ――――……

 

 

 『ほう、俺に脱げだって、子猫ちゃんたち?』(←注:一夏)

 

 『は、はい……』

 

 『いいだろう。だけど、俺のヌゥードゥは高いぞ? それなりの対価を請求させて貰おう』

 

 『な、なにを……』

 

 『皆まで言わせるなよ、決まってるだろう?』(←掌ワキワキさせつつ)

 

 『き、きゃああああぁぁぁぁ!』

 

 牡丹の花がボトリ。終了。

 

 

 ――――……

 

 

 「か、顔に似合わずなんといかがわしいイメージ映像を流す子かッ!」

 

 「だが私は一向に構わんッ! 散ってきたまえ同志よ!」

 

 「出来るかッーーーー!」

 

 「……ぼたんの花ってどういうこと?」

 

 ――――作戦1、ファーストコンタクトの段階で失敗。

 

 

 作戦2 ~言う事を聞かせる~

 

 

 「やっぱり無条件で『脱いで?』なんて男の子に頼むのは女の子としてどうかと思うの、私」

 

 「その発想に至るまで大分時間が経ち過ぎたような気もするけど、それもそうね。じゃあ、どうする?」

 

 最初の段階でもう躓きかけた作戦だが、思わぬところで転機が訪れた。

 織斑君の指テクで、セシリアさんがすっかり足腰が立たなくされてしまったところで、あの二組の鈴ちゃんが現れ、織斑君を攫っていったのだ。

 

 鈴ちゃんは織斑君を砂浜の波打ち際まで連れて行くと、不意に足で海水を蹴り上げ、織斑君を攻撃しだした。織斑君は最初の一撃を避けきれずびしょ濡れになると、ムキになって反撃しだした。水の掛け合いが始まる。

 

 「……なんか微笑ましいわねー」

 

 「リンリンといるとちょっと子供っぽくなるよね、織斑君って」

 

 それはなんとなくわかる。子供っぽくなるっていうか、普段がちょっと大人っぽいから歳相応になるっていうか。

 このまま眺めていたい気もするけれど……

 

 「今なら、自然に声掛けられそうね。で、清香? さっき言いかけたのは?」

 

 谷本さんがあくまで作戦の続行を主張する……ゴメンね鈴ちゃん。

 

 「これ!」

 

 そう言って取り出したのは、先程膨らませておいたビーチバレーのボール。

 

 「これで一緒に遊ばないかって誘ってさ、罰ゲームで負けたら脱いで貰うっていうのはどうかな?」

 

 「おおーまたしても顔に似合わずダーティな手を。けど、勝てる見込みはあるの?」

 

 「ふふふ、『七月のサマーデビル』と呼ばれた私の実力、見せてあげましょう!」

 

 専門はハンドボールだけど、バレーも結構自信はある。鈴ちゃんはすばしっこいし見かけによらず力が強いけど、バレーでは生命線になる身長がないし、織斑君は器用だけど、体育とかでは箒さんみたいな規格外な人相手じゃないと結構手加減するところのある人なのは知っている。力任せのサーブやスパイクがないなら勝算は十分ある。

 

 ――――この時までは、そう、思っていた。

 

 

 

 

 ……結果を言えば、私と夜竹さんタッグは惨敗を喫した。

 ダブルスで挑んだのだけれども、布陣はまさかの身長の低い鈴ちゃんが前衛、織斑君が後衛。

 バレー素人だ。これは余裕、と内心でほくそ笑んだのも束の間。

 

 「な、なにあのジャンプ力?! あの身長でどうして今のブロックできるの?!」

 

 「それに後衛のレシーブが正確過ぎるよ! なんであれを拾えるの?! わ、私必殺のあの回転球がああもあっさり……」

 

 その実。その布陣は初めから意図された鉄壁の布陣だったと、私達は直ぐに思い知ることになった。

 鈴ちゃんは身長差等ものともしない圧倒的なジャンプ力と力強いスパイクで次々に得点を稼ぎ、織斑君は鈴ちゃんの隙を足の速い完璧なレシーブでフォロー、チャンスを作る。

 

 「決めるぞ織斑のシュートー」

 

 「何相手が普通の女の子だからって手抜いてんのよ! マジメにやんなさいよ!」

 

 「だがフェミニスト織斑と呼ばれた俺としては女子相手に全力というのも些か大人気ないというかだな」

 

 「……あたしだって女の子なんだけど。カッコいいとこ、見せてよ」

 

 「え? なんだって?」(←聞こえてる

 

 「死ねー!!」

 

 「うわー! す、すぱいくをきめてちょくごのらっかのたいせいからけりをはなってきただとー! なんてこったーこんなすごいこうげきをかわせるはずがないィィィ!!」

 

 「超棒読みで解説しながら余裕でブリッジ回避してるじゃない……! このー!!」

 

 「ちょ、鈴まだ試合中! 審判は何処だ、ペナルティとって!」

 

 くっ、しかも常に全力のこっちと違って向こうは痴話喧嘩してる余裕すらある。このまま終わるわけには……!

 

 「これで……」

 

 「止め!」

 

 ――――しかしそんな決意も空しく。結局二人のコンビネーションに、私達は一点も返すことも出来ないまま、最後の鈴ちゃんのスパイクを決められ負けた。

 

 「私が……『七月のサマーデビル』と呼ばれた、この私がぁ……」

 

 「私も球技は自信あったんだけどなぁ……」

 

 私達二人はそうじゃなくてもプライドをズタズタにされたところを、鈴ちゃんが最後に宣言した『罰ゲーム』の洗礼を受け、再起不能寸前のところまで追いやられていた。

 

 「し、しっかり! 傷は浅いわ!」

 

 「ネヴァーギブアップだよ、二人とも~」

 

 それぞれ谷本さんと布仏さんに励まされてなんとか持ち直したけど……ううっ、男の子がいる前で女の子に変顔の罰ゲームってホント容赦ないよ。少しでも鈴ちゃんに申し訳ないと思った自分が馬鹿だったよ……

 

 「大丈夫、織斑君は笑ってなかったから」

 

 ……どう見ても必死に笑いを堪えていたけどね。

 うううううぅぅぅぅ! もう、こうなったら最後の手段!

 

 

 作戦3 ~無理矢理~

 

 

 「ってわけで覚悟~!」

 

 「ころしてでもうばいとる!」

 

 「な、なにをするきさまら~!」

 

 鈴ちゃんと遊んだ後のバレーボールで疲れたのか、パラソルの下で気持ち良さそうに休んでいて隙だらけの織斑君に強襲をかける。このもはや乙女のプライドやその他諸々をかなぐり捨てた作戦は、当初成功するかと思われたのだけれども。

 

 「やめろォォォォォォ! 私の弟に何をするだァーーーー! ゆるさんッ!!」

 

 私達ごろつきは、近くに何故か転がっていたみかんのダンボールの中から突如現れたラウラちゃんに瞬く間に制圧された。

 ……イタタ、痛い! 流石軍人さん、サブミッション技まで本格的で容赦ない。

 

 「最後は貴様だっ!」

 

 悪意をもって織斑君を襲おうとした私達をまず捕縛すると、ラウラちゃんの魔の手が最後にただ楽しそうについてきただけの布仏さんに伸びる。

 

 「本音逃げてー!」

 

 「ダメーーーーーッ!!」

 

 谷本さんと夜竹さんの悲痛な叫びが木霊する……あれこれってどっちが悪いほうなんだろう?

 

 「ぼーでん可愛いねー、その水着~。すっごい似合ってるよ~」

 

 「ハッ!」

 

 ラウラちゃんの手が、布仏さんにもう少しで触れるかという所で急停止する。

 ……どうしたのかな?

 

 「む……そ、そうだろうか?」

 

 「うん、すっごくかわい~~。でもどうしてずっと隠れてたのかな~? 知ってるよ~ぼーでんさっきからずっとおりむーのこと、気づかれないようについて回ってるよね~?」

 

 「……馬鹿な、あの完璧な偽装に気づいていたのか?! うう、それは……」

 

 なにやら布仏さんに問い詰められ、顔を真っ赤にして、見る見るうちにしおしおと小さくなっていくラウラちゃん。

 最近のこの子はなんか偶に可愛い。

 

 しかし布仏さんは、そんなラウラちゃんの様子を知ってか知らずか。考え込むように頬に指を当てて、しばらくラウラちゃんと織斑君を交互に見つめた後、いきなり合点がいったかのように、手をポン、と叩いた。

 

 「あ! そっか~。おりむーに水着を見せたかったけど、恥ずかしくて今まで出てこれなかったんだね~? あはは、ぼーでんかわい~~~~」

 

 「な、あっ……違う、違うぞ! そんな、こと……」

 

 ラウラちゃんは手をジタバタ振って必死に否定しようとしたけれど、

 

 「は……」

 

 直ぐ近くにいた織斑くんと目が合って固まってしまう。もうこれは認めてしまってるみたいなものだ。

 織斑君もそれを察したのか、にっこり笑っていつものようにラウラちゃんの頭を撫でると、

 

 「そっか、そうだったのか……うん、可愛いぞ、ラウラ。凄い可愛い」

 

 そんな、反則的な台詞を言い放った。

 

 「かわっ……!!」

 

 ラウラちゃんは、その言葉を受けて益々カチコチになり、おまけに茹蛸のように真っ赤になると、

 

 「う……」

 

 「う?」

 

 「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 怪訝そうな表情の織斑くんを残し、全力で走り去ってしまった。

 

 「ちょ、ラウラ?!」

 

 「良くわからないけど本音ナイス! 貰ったァーーー!」

 

 「な、なにィィィィィィ!」

 

 妨害も晴れてなくなり、いつの間にかロープによる拘束から抜け出していた谷本さんが、今度こそ織斑君に迫る。

 ……や、やった?!

 

 「こんなところにいたか」

 

 が、ここでまたしても新たな刺客……いやこの場合、寧ろ刺客は私達のほうだけど。

 

 「お、おおおおお、織斑、先生……」

 

 そこにいたのは紛れもなく世界最強のIS操縦者にして、ブリュンヒルデの称号を持つ、私達の担任。

 織斑千冬先生、その人だった。

 私達とは違い、ダイバースーツを着込んだその姿は、露出も殆どないにも拘らず、水着とはまた違った所謂『カッコイイ』色気を全方位に放出しており、織斑君はもちろん、同性の私達でさえ視線を離せず釘付けになる。

 

 「織斑先生、その格好は……」

 

 「いやなに、この辺りは水が綺麗だ、ここは一つダイビングを楽しんでみるのも一興かと思ってな。どうだ織斑、お前もやってみないか」

 

 「スキューバだよな……? 明らかにボンベらしきものが見当たらないんですが……遠慮します。どうぞ先生一人でお楽しみになってください」

 

 「まあまあそう言うな」

 

 「って、何? ねぇなんで俺の襟掴んで海の方いこうとするの? い、いやだー! 俺はまだ死にたくなッ……ガボゴボ」

 

 「…………」

 

 先生が出てきてからは、まさに彼女の独壇場だった。織斑君が海の中に連れ去られるまで誰一人その場を動けなかったのだ……私達の、完敗だった。

 

 「恐怖……! 私は、恐怖を感じているの……?」

 

 「これが……世界最強!」

 

 もう少しというところで呆気なく優位をひっくり返され、戦慄する谷本さんと夜竹さん。

 って、織斑君助けなくていいのかなぁ……

 

 「じゃあ、海の底までついていってみる?」

 

 「無理だね」

 

 ごめん織斑君私無力だっ……!

 

 ――――そんな訳で、最後の作戦、作戦3の結果は。

 あと少しというところで、唐突なラスボスの出現により失敗。私達は、これ以上の作戦の続行を不可能と判断。

 織斑君が消えていった海に敬礼を以って、本作戦を終了とする。以上。

 

 




 この間動画を薦めてくれた友人がまたしても凄いドヤ顔で薦めてきたので、落としてみた歪アリに嵌ってしまい最近眠れません。こんな面白いゲームを作ったナイプロは絶対に許しませんGJ(錯乱
 息抜き息抜きと言いつつも、緩い話ばかり書いていると今度はシリアスを書きたくなる不思議。次回は箒と束さんの話になる予定です。

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