IS/SLASH!   作:ダレトコ

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第百二十三話~暴龍具現~

 

 

 ~~~~~~side「ラウラ」

 

 

 『それ』が異常事態であることは、すぐにわかった。

 

 「っ……!」

 

 ブツリ、と糸が切れるような音が頭の中で響くのと同時に、不意にAICのイメージが現実と急激に離れ、発動が強制解除される。

 同時に……凰の甲龍の装甲が、内側から隆起するかの如く『膨れ上がった』。

 

 「あ……あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァ!!!」

 

 凰の悲鳴が轟く。凰は頭を抱え苦しむような体勢のまま、メキメキと音を立てながら、まるで爬虫類の鱗が急激に生え替わるかのように、内側からめくり上がりながら出現してくる真新しい紫色の装甲に頭から飲み込まれた。

 元あった装甲は古くなった鱗のように、ボロボロと落ちていくもすぐに浮き上がって甲龍の外装に取り付き、機体の形を根本から作り替えていく。

 

 ――――こ、これは……? かつて私のレーゲンに強制的に発現させられた、『VTシステム』起動時に似た現象のように見えるが……

 

 様子を見ていると、数秒も経たぬうちに甲龍の変化は止まった。

 その姿は、最早人の面影すら残さぬ紫色の鋼の『龍』だ。肩部の装甲が剥がれ落ちた装甲と融合し、大きな翼のような多段スラスターとして展開される。無数の黒い鋼の牙と二本の角を生やした頭部がゆっくりとこちらを向き、狂気を宿したかのような赤い光を湛えた二つの目が、一層強く光り輝いていく。

 

 「グ、ハ。グハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 「ぐっ……!」

 

 そして目に焦点があったかのように。一層強い光が、一瞬だけ煌めいた瞬間。

 龍が、耳を劈く強烈な咆哮のような声で笑い出した。

 

 「ハハハハハッ……! なんじゃ、現世などつまらんものじゃと思っておったが、いざ顕現してみればなんとも心地良い! ……しかし他に起きとる奴の少ないことよ。どやつもこやつも、お行儀良く眠りよってからに」

 

 一頻り笑った後、龍は周囲を見渡し、最後に己の体をぐるりと首を回して眺め、嘆息するような妙に人間らしい仕草をする。

 

 「後は不満としてはやはりこの躰じゃの。大分盛ったが、如何せん元が貧相過ぎて見る影もないわ。まあ……こればかりは、我が主の成長と、次の移行を待つしかないかの」

 

 「……貴様。凰鈴音ではないな? 何者だ! 何故AICを解除できた!」

 

 「ぬ……?」

 

 声こそ凰のもののようだが、まるで私の知っている奴のそれとかけ離れた言動に、思わず声をあげて……龍の視線が、私を捉える。

 ――――途端。背骨から這い上がるようにゾクリと、冷気が押し寄せた。冷や汗が滝のように噴き出る。軍人としての私がその場からの退避を許さないものの、生物としての本能が一目散に逃げろと警鐘を鳴らし続ける。

 

 なんだ。なんだ、アレは……わからないが、一つ言えるのはVTシステム等という、所詮教官ならぬ人が作り上げたものなどとは、比較にすらならぬような『モノ』であるということだ。

 

 「――――ふむ。(わっぱ)に見えたが……よもや、そこまで『すら』いけなかったものとはの。妾等と違い、未練故に元の形を保ってしまっておる。詮方なきことであったじゃろうとはいえ……母も随分と残酷なことをなさる」

 

 「な、何を、言って……!」

 

 「そして、其方がその黒き泡子の主というわけかの……其方には礼を言わねばなるまいて。其方が我が主を追い詰めてくれたお陰で、妾はこうして出てくることが叶った故な」

 

 「まさか……貴様は……!」

 

 「では、礼代わりに名乗っておこうか。妾は『甲龍(しぇんろん)』。第二次形態移行(せかんどしふと)の折、主の身を借り現世に天下った。まあ、憶えなくともよい。其方も名乗り返す必要もない……これから妾の手で泡と消える者には、どちらも不要じゃろうしの」

 

 赤い目に明確な殺意が宿る。思わず竦みそうになりつつも、何とかその場に踏みとどまる。

 凰のISが第二次形態移行(セカンドシフト)した、のか……話を聞いたことはあるが、目の前の現象が飲み込めない。ISの自我が目覚めるというのは、こんなに危険なものなのか? これでは最早、暴走に近い……!

 ――――なんにせよ、立ち会ってしまった以上は止めねばなるまい。許せよ凰、多少は痛めつけることになるかもしれん……!

 

 「では、ゆくぞ? 主よ、契約を果たそう。些か手荒になるが、我が単一仕様能力(わんおふあびりてぃ)撃鱗(じりん)』の真髄、その身で味わい、ものにして見せるがよい」

 

 「っ……!」

 

 ユラリ、と。その私のISの倍はありそうな巨体の割に、まるで存在感を感じさせない影のような飛行で迫る龍に、殆ど条件反射でAICを使用する……まだ、先程奴がAICを自力で解除した方法が、わかっていないのにも拘わらず。

 その悪手の代償はすぐに支払わされることになった。甲龍を捕まえるAICのイメージをした途端、イメージした網が『引き千切られた』。

 

 「あっ、がっ……!」

 

 瞬時にイメージと現実の現象が乖離を起こしAICは霧散。まったく見当違いのイメージで第三世代兵裝を使用したことによる、ダメージだけが強烈な頭痛という結果で残される。普段ならAICが霧散するだけで、自身にダメージがいくほどにはならないのだが、今は越界の瞳を使用し処理している情報量が桁違いだったのが、完全に仇となってしまった。

 これ以上は脳にダメージが入る恐れがあり、そうなるとISの保護機能で意識を落とされかねないので、とっさに左目を閉じ、一時的に越界の瞳を封じる。

 だが、代償は大きかったがAICを解除している方法はわかった……完全に力業だ。甲龍の空間圧縮能力で、私がAICを形成した空間を力場ごと瞬間的に圧縮、認識との乖離を起こさせ発動を未成立にしている。

 

 ――――今までの龍咆では、例え三倍程の出力があったとしても実現できない攻略法。空間圧縮能力が悍ましい程向上している。これが、奴の単一仕様能力なのか?

 

 「あんなしょっぱい空気の弾を撃ち出す程度が、妾の力と思っておったのか? あんなもんは妾の力の出涸らしすら満たん、猿共の浅知恵の産物に過ぎん。ほれ、今妾の力で撃ってやろうぞ。違いをよぉうく覧じてみるのじゃな」

 

 甲龍がそんな言葉を言ったのと同時、龍咆の砲身が形成されたことを示す空間の歪みを、ハイパーセンサーが感知した途端。右肩の残ったレールカノンが『消えた』。

 文字通りの意味だ。破砕音すら残さず、黒い砂のような粒子だけを残し根元から消失した。

 

 「……!?」

 

 口の中が干上がる。これが龍咆だと……こんなもの、まともに当たればただでは……!

 

 「驚いている暇はないのではないかの?」

 

 「くっ……!」

 

 レーゲンが空間の歪みをいくつも感知。すぐに破滅的な威力の不可視の砲弾が次々と飛んでくる。甲龍の自意識が制御している甲龍は、凰のそれと違い撃つ際腕で標準を定める必要がないらしい。

 お陰で凰と戦っていた時は、弾自体は不可視でも弾道予測が出来たのだが。今では飛んでくる前兆が直前に辛うじてわかる程度で、一切反撃を許されず、瞬時加速を織り交ぜながら、回避行動をとり続ける選択しかとれない状況に瞬く間に追いやられる。

 けれど、AICを潰された際のダメージが残っている私の躰では、その状況すら長続きせず。

 

 「ごっ……がはぁっ……!」

 

 「そぅら、直撃じゃ。まずいまずい。生き残れんぞ、それではのう」

 

 とうとう龍咆が当然のようにシールドを突き破り、脇腹辺りに直撃する。

 絶対防御のお陰で私の体は粒子化を免れるも、吹き飛ばされる。さらに、それだけでは終わらない。龍咆は先程凰が使っていた龍咆・烈のように、着弾と同時に鎌鼬が巻き起こる。

 が、規模が違う。大気の砲弾が膨れ上がるように巻き起こった、尋常ではない鎌鼬は瞬く間に竜巻のように渦を巻き、私とレーゲンを閉じ込めながら切り刻んだ。

 

 「う、あああああぁぁぁぁぁ!!」 

 

 絶対防御が働いて尚、全身をバラバラにされるような強烈な痛みが全身を襲う。必死に体と機体を動かし、鎌鼬の竜巻から逃れた頃には、レーゲンも私も満身創痍。SEも最早残り三割といったところになっていた。

 

 「こ、れは……い、かん、な……」

 

 少しの逡巡の後、再度越界の瞳を開く。

 脳のダメージで気を失うリスクはあるが……このままではどちらにせよ、過剰バイタルダメージによって同じ道を辿る。

 ……AICは駄目だ。使えはするが、また見切られて空間圧縮をされれば、その瞬間フィードバックで終わる。だが、越界の瞳で強化されたハイパーセンサーなら、あの龍咆を見切れる。

 AICがあんな形で無効化されているのは、奴が自身の力で瞬時に圧縮することの出来る、空間そのものにAICを『設置』してしまっているからだ。接敵し、ゼロ距離から奴自身の身体が間違いなくある場所にAICを叩き込めば、通用するはずだ。空間ごと自分自身を圧縮してしまうわけにはいかないからだ。

 

 「最早、活路はそれしかないか……!」

 

 ギリギリのところで龍咆を避けながら、瞬時加速で飛び込む。何発か掠り、レーゲンの装甲が黒い砂となって崩れていくが、SEもレーゲン自身の機体もなんとか残っている内に敵の懐に潜り込んだ。

 

 「これで……!」

 

 そのままAICを発動しようとしたところ……敵が消える。

 見失った? 馬鹿な……! 越界の瞳をもってすれば、例え敵が突如音速の数倍で動いたとしても目で追える。ハイパーセンサーと合わせれば、どんなに高速で動けたところで捉えられない道理はない、のに……!

 

 「――――児戯じゃの、其方。まるでよちよち歩きじゃ」

 

 「あっ――――」

 

 気づいた時には、背後からしなやかな鞭のようにしなる紫色の尾を叩きつけられ、海面に転がされていた。

 とっさに体勢を整えようとするも、立ち上がろうとした途端右足に激痛が走った。

 

 ――――あ、足を……!

 

 突然の背後からの攻撃にも体は反応できたが、あまりに突然で受けるのに失敗してしまった。骨が逝っている。すでに搭乗者保護機能が働きかけるバイタルダメージだが、この痛みのお陰でもうしばらくは気を失わずに済みそうだった。

 さらに先程の一撃と、その前の突進で無茶をしたせいで、スラスターが拉げた。これでは飛ぶことも出来ない。

 

 絶望的な状況だが、助けは望めない。教師陣は今回のCBFでは警護に回っており、そうすぐには駆けつけてこれない。生徒の援軍など論外だ。ここ最近の演習で学園生徒のレベルは粗方把握したが、私よりも明確に実力が上と言えるのは、あの生徒会長くらいだった。

 その私が、こうまで一方的に嬲られているのだ。処刑人達が全員来たところで、手に負えるかは怪しいところだ。

 

 だがそう、『嬲られている』……敵は強大だが、その力の強さ故の傲慢さが見え隠れしている。どんなに追い詰められようが、向こうが遊び半分でいる内は、こちらの反撃の目は潰えない。

 

 「翼を捥がれ、足は折れ……目は死なぬ、か。成程、我が主と器だけでは手こずるわけじゃ。菲才で未熟ではあるが、悪くはない主を引いたの、泡……いや。雨の子よ。だが――――もうちょいと、踏ん張らねば失うぞ?」

 

 気が遠くなるような痛みに耐えながら、立ち上がる。足が折れようがもげようが、ISであればPICさえあれば戦闘行動は続行できる。ただでは終わらんと敵を睨む。

 

 「それが嫌なら……さっさと起きるのじゃな。妾は甘やかさぬ。次は、主頼りで凌がせはせん」

 

 甲龍は最早満足に飛ぶことすら出来なくなった私の前に悠々と降り立ち、四肢の全てを海面につけ、派手に水柱をあげながら着水。

 直後にハイパーセンサーが四つの空間の歪みを検知……場所は丁度甲龍が海面に足をつけている辺りの位置。

 ……空間圧縮の応用で四肢を海面に固定している。AICで止めるまでもなく、奴は自らを動きを止めた。

 

 ――――次の、最強の攻撃を行うための準備として。

 

 「……なんだ? この馬鹿げた高エネルギー反応は……!」

 

 甲龍の頭部装甲。龍の口に当たる部分に、最早肉眼で観測出来るほどの膨大なエネルギー体が収束していく。

 大気中の粒子を空間ごと高圧圧縮することで、純粋な破壊エネルギーを生成し空間内に閉じ込めている。あれを龍咆と同じ原理で撃ち出す気か……!

 あれは拙い……! シールドと絶対防御があって尚、全部抜かれて消し飛ばされる。直撃はせずともその余波だけで、致命的なバイタルダメージを受けかねない。

 だが最早、今の私とレーゲンでは回避は難しい。こうなれば――――

 

 「正念場だ……どうかもってくれ、レーゲン……!」

 

 AICで受け止める……! エネルギー兵器でもレーザーではなく粒子砲であれば、砲撃は粒子分の『質量』を持つ。甲龍が今四肢を固定しているのも、恐らくそれ故に砲撃に反動が伴うからだ。

 正直……勝ち目は薄い。質量部分を止めても、それに伴う高エネルギー波の直撃を貰うことになる。即死から、苦しんで死ぬ程度の結末に変わるだけかもしれない。だが……僅かでも生き残れる可能性があるなら、賭ける価値は、ある。

 

 腹を括り、今にも放たれようとしている白い破滅の光を、私は正面に見据え――――

 

 『ぃ――――いい加減に、しろおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

 「なっ……!」

 

 「ぬうっ……!?」

 

 AICを展開しようと、目を凝らしたところで。

 私の知っている、凰鈴音の叫びが、目の前の甲龍から響き渡り。

 甲龍は急に制御が効かなくなったかのように機体が揺れ、敵の恐るべき龍咆はその影響で、私から逸れ、青い空に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 『ちょっと甲龍アンタ! あにやってんのよ! こっからだせこらー!!』

 

 「ぬ、うぬぅ、これは驚きじゃ。主よ、この短時間でもう妾の腹の中から出てきおったのか!?」

 

 『っあー、そういや人を頭から飲み込んでくれたんだったわね。思い出したら腹たってきた。こうなったら師匠直伝の震脚で、あんたの口ん中片っ端から複雑骨折させてやるわ! 覚悟しなさい!!』

 

 「えっ。まっ……グアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!? やめっ、やめぬかっ! 痛い痛いっ! いたっ、ゆるし、許してたもー!」

 

 ……何やら、凰の叫びが聞こえたかと思ったら、今度は甲龍が四肢の固定を解き、前脚で口の辺りを押さえて海面をのたうち回り始めた。

 先程半ば死を覚悟した私の決意はなんだったのか。思わず半眼になりながら、最早威厳の欠片もない紫色の龍を睨むも、すぐに気を取り直す。

 

 「凰、貴様か? 私の声が聞こえるか!」

 

 『っ、ラウラ? あんたもいんの? どこ? ってか、なに、今どういう状況?』

 

 「どうも何も、形態移行(フェイズシフト)で目覚めた貴様の機体(甲龍)の自意識が、今貴様を乗っ取って暴れている! 意識が戻ったのなら早く支配権を取り戻せ!」

 

 『はぁ? ……ああ、そういうこと。甲龍? わかってるわよね? なんなら、この立派な歯も全部入れ歯にしちゃう?』

 

 「あぐ、ぐうぅぅぅ……ふぁかった、わかったのじゃ。だから妾の口の中で暴れるのをやめよ!」

 

 『ん?』

 

 「や、やめて……ください」

 

 『よし』

 

 凰本人が今どのような状況なのかいまいち釈然としないが、同じ声でのやりとりが少し続いた後、凰の全身を覆っていた甲龍の外殻が、量子変換されながらボロボロ崩れていく。

 やがて龍の形も崩れ、以前と姿の変わった甲龍を纏った凰が姿を現す。

 ……元々甲龍は凰自身が小柄なのもあり、ISの中では小型の機体だったが、第二形態甲龍は各装甲がコンパクトになり一層一回り小さくなったような印象を受ける。かつての尻尾状のスラスターは物理ブレードが複数装着された鞭のような武器となり、先程の龍形態の際の翼状の大型スラスターと角状のセンサーは、小型されてそのまま残っている。

 それらの部品が合わさり、第二形態甲龍を纏った凰の姿は今まで以上に、さながら小さな龍人といった体を為していた。

 

 「終わった、のか……」

 

 甲龍の変化が終わったのを見届けて、大きく息を吐く。

 一時はどうなることかと思ったが、なんとか無事……かどうかは微妙なところだが、乗り切ることができた。

 凰も装甲が剥がれきったことで完全に機体の制御を取り戻したのか、PICで軽く浮かびながらこちらに近づいてきて――――

 

 「ラウラ、迷惑かけたみたいね。ごめん。あたし、甲龍が第二次形態移行(セカンドシフト)するからって、ちょっと舞い上がっちゃ、って――――」

 

 私のところにたどり着く前に。急に、糸が切れたかのように前のめりに倒れ込んだ。

 

 「凰っ……!」

 

 慌てて駆け寄り、受け止める。

 何事かと思い、すぐにハイパーセンサーを通し軽くバイタルチェックを行い……一瞬目を疑った。

 生命危機領域(レッドライン)だ。表面上は何事もないように見えるが、顔をみれば鼻血が出ており、体内の血管の一部がズタズタになっている。

 なんだこれは……絶対防御があって尚、何があれば搭乗者がこのような状態になる? そもそも凰は、甲龍の暴走以降一度も攻撃を受けていない筈なのに。

 とにかく、ISの搭乗者保護が効いているうちは万が一もないだろうが、早く医療班に診せないと拙い。そう思ってスタートに引き返そうしたが――――

 

 ――――バイタルダメージレベル、『D』に到達。生命危機領域(レッドライン)と断定。搭乗者保護状態(バイタルプロテクトモード)へ移行します。

 

 「……?」

 

 管制AIの無機質な声が頭の中に響き、同時に強烈な眠気が襲う。

 見れば体の所々に龍咆が直撃した際の裂傷が刻まれ、そこから溢れだした血で、ISスーツとレーゲンの装甲の一部が赤く染まっていた。折れた足も無理に動こうとしたせいで妙な方向に曲がり、頭の先まで突き抜けるような痛みを伝えてくる。

 

 そうか……限界だったのは、私もか。

 アドレナリンが切れ、冷静な思考を取り戻した頭で、他人事のようにそんなことを考えながら。

 気を失った凰を放り出さないよう、せめて重心を後ろ向きに倒れるよう最後に心がけ。凰と折り重なるように倒れこみながら、私の意識は闇に落ちた。

 

 






 第二形態甲龍はカタログスペックだけなら本作屈指の強機体の一つだったりします。単一仕様能力が実質ZOEのメタトロンでゼロ○フトとベ○ターキャノンが使えるようになると言えばヤバさがわかるでしょうか。

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