IS/SLASH!   作:ダレトコ

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第百四話~鬼刃、嵐を断つ~

 

 

~~~~~~side「シャルロット」

 

 

 「教官……教官!」

 

 織斑先生の体の中心を撃ち抜いた、イブさんの腕が引き抜かれると同時に、真っ赤な鮮血が噴水のように噴出し、織斑先生は糸の切れた人形のようにその場に倒れこんでしまった。

 そんな先生にラウラはすかさず駆け寄っていき、自分が先生の血で濡れるのも構わずに、まるでいつもの強い彼女が嘘みたいに、しるべを失った子供のように縋りついた。

 

 「…………」

 

 返り血で真っ赤になったイブさんは、そんなラウラを感情のない冷たい目で一瞥するも、すぐに踵を返し僕たちに背を向けて歩き出した……まるで、もうこの場に用はないとばかりに。

 

 僕は……彼女を呼び止めることも、ラウラみたいに倒れた織斑先生に駆け寄ることも出来ずに、ただ、立ち尽くすことしかできなかった。

 僕にとってかけがいのない人が、目の前で同じくらい大事な人の命を奪ってしまった。その事実を、受け入れることが出来なくて。

 

 「織斑千冬が死んだ以上、いずれIS界隈では大きな動きがあるだろう……かつて君がイザベルと住んでいた家はまだそのままにしてある。少なくともあの場所なら、しばらくの間は面倒なことに巻き込まれるもないだろう。この場所から離れる決心がついたのなら、いつでも戻るといい……私のことは、今日を限りに忘れろ。君の知っている『イブ』などもうどこにもいない。今の私は、亡国機業の『パスカル』なのだから」

 

 最後に。こちらに振り向くこともなく、イブさんは僕にそう告げると、何かに指示を出すように織斑先生の血で濡れた左手を上に向かってかざそうとして――――

 

 「――――浅はかな。誰が死んだというのだ?」

 

 「……!」

 

 その、あり得ない声を聞いて固まった。

 尤もそれは僕も同じだ。驚いて倒れた織斑先生の方に目を向けると、胸に大穴の開いた織斑先生が何事もなかったかのような表情で気だるそうに起き上がろうとしているところだった。

 

 「きょ、きょう、かん……? だ、だめです! 動いては……!」

 

 織斑先生に寄添うラウラも、先生が無事?そうで嬉しそうにしながらも、それ以上にあまりに出鱈目な先生のその状態に目を白黒させながらも、必死に先生を止めようとしている。

 イブさんも流石に驚いたのか、こちらに振り返って目を見開いたものの、すぐに何かに気がついたように先程掲げた左手の指を開いて見つめだし、

 

 「雌狐(スコール)……あの余裕は、これを知っていたからか」

 

 彼女には珍しく、心底忌まわしそうな感情の篭った声で何かを呟くも、すぐに無表情に戻って織斑先生に視線を向けた。

 

 「まったく困ったものだ。まさか目の前でそうして何事もなく動いている人間の『心臓がない』とは誰が予測できるだろうか。その体は篠ノ之束によるものか?」

 

 「貴様に答える義理は無い……ラウラ、大丈夫だ。下がっていろ」

 

 言う間にも、織斑先生の体には先程見た緑色のノイズのようなものが走り、穿たれた体が修復されていく。

 ……いや、それだけじゃない。どこからともなく、少しだけピンクを帯びた桜の花びらのような形をした光が、織斑先生を中心に、この風のない空間でまるで風に巻かれるような自然な動きで無数にひらめきはじめた。

 

 『擬似生体量子基盤、規定、超えるダメージ、感知。緊急起動、実行……千冬。無茶、過ぎる。我が主、自覚、足りず。命知らずの面倒、見る義理、無し』

 

 「すまん。他にお前たちを呼び出す手を思いつかなかった……奴には覚えがあるだろう? 一年越しの不覚を存分に晴らす時だ。久方ぶりに暮桜共々手を貸せ、『桜火(おうか)』」

 

 『……御意』

 

 何処からとも無く、声が聞こえる。

 ――――なんだろう、どこかで聞き覚えのあるような声……そうだ。忘れもしない、まだ僕が一夏を騙していた、あの時。僕の携帯を乗っ取って僕を追及してきた、女の子の声に何処と無く似てる、気がする。

 いや、でも……違う。確かに似ているところはあるが、あの時の声よりもどこか喋り方がたどたどしい。かといって幼稚に感じるかといえばそうでもなく、寧ろ声の感じはあの声よりもずっと大人びていて、さらに氷のように冷たい印象を受ける。

 

 織斑先生が『桜火』と呼んだ、その声の主と思わしき人の応えと同時に光が弾けた。花吹雪のような光の奔流の中から、一時僕たちから見えなくなっていた織斑先生が姿を現す。

 彼女はそれまでの黒いスーツではなく、黒を基調とした布地に見事な桜の狂い咲きと、牙を剥き出し恐ろしい形相をした、角の生えた女の人の顔があしらわれた着物をいつしか身に纏っていた。どういう仕掛けか、絵の中の桜はまるで本当にそこにあるかのように枝を揺らし、その度に周囲には先程見た光の桜の花びらが舞い散り、暖かさの中にどこさ寒々しさを覚えるような不思議な桜色の光が万華鏡のように広がっていく。

 

 織斑先生を中心として展開した、その現実とも思えないような幻想的な光景に、僕とラウラは今の状況も忘れて一時見入ってしまった。

 

 「第三形態(サードシフト)IS……未だ君と『彼女』しか到達していない、ISの完成形にして終極。やはり美しいな。それ一つの存在でこの世界そのものを破壊し得る代物だというのに」

 

 そしてそれは、イブさんも同じだったようだ。しかしすぐに彼女は気を取り直したかのように首を振ると、今までで一番ぞっとするような、暗い色を帯びた目で織斑先生を睨み付けた。

 

 「やはり君を生かしておくことはできない。そのIS共々、花のように散るといい」

 

 その言葉を引き金に、今度はイブさんの方に変化が起きた。まるで黒い絵の具で塗りつぶしていくかのように、彼女の左腕が先程一瞬見た、おぞましい鉤爪の生えた悪魔のような黒い腕になり代わり、腕が変化したほうの肩から、影が伸びるようにその腕に似た真っ黒な漆黒の翼が顕現する。

 いや……正確には古代の始祖鳥の羽のような、翼の生えた前脚だった。鉤爪の生えた翼を肩から出現させたイブさんの姿は、徐々に暗くなっていく視界の中でぼやけてまるで物語の中の悪魔のように見えた。

 

 でも、違うんだ。あの人は悪魔なんかじゃなくて、本当は――――

 

 「しゃ、シャル、ロット……! しっかりしろ、意識をしっかり保て!」

 

 異常に気がついたのはそんなラウラの大声を聞いて漸くだ。気づけばいつしか、体がすっかり冷え切って意識が朦朧としていた。

 周囲の気温が急激に低下しだしているんだ。ラウラも白い息を吐きながら震えているものの、普段鍛えているだけあって僕よりは意識もはっきりして動けそうだった。

 

 「貴様――――!」

 

 「責められるのは筋違いだな、君がISを展開したので私も対抗しただけだ。私のISは私の意志にかかわらず、展開するとこうなる。君は知っていたはずだが?」

 

 「……ラウラ、歩けるな? シャルロットを連れて、出来る限りここから離れろ、すぐにだ!」

 

 「し、しかし教官!」

 

 「ISのバイタルプロテクトがあって尚奴の能力に対抗出来ていない奴がいたところで何になる! シャルロットはもう限界だ、早く行け! これは命令だ!!」

 

 「――――くっ! はっ!」

 

 朦朧とする意識の中、織斑先生の激と、それに悔しそうに答えるラウラの声が聞こえて、直後に自分よりも小さくて暖かい何かに、担ぎ上げられるように抱えられ、視界が移動しだした。

 

 「あ……」

 

 待って、と声をあげたいのに、出来ない。それが悔しくて、悲しくて涙が溢れてくる。

 どうして、こんなことになってしまったんだろう。もう、昔みたいにあの人と一緒に過ごすことは、叶わないのかな。

 せめてもと、もう一度イブさんの方になんとか頭を向ける。織斑先生の背中の向こうに立ち尽くす、かつて僕の姉代わりになってくれた人は。

 ここからではもう、真っ黒な悪魔にしか、見えなかった。

 

 

~~~~~~side「千冬」

 

 

 ラウラ達がこの場から立ち去って程なく、時間にして一分もないうちに、元々白かったIS学園の内装は霜によって一層白く様変わりしてしまった。

 

 「『あの時』と同じだな。わかるか、桜火」

 

 『周辺熱量の急激な減少、確認。基点、敵機、黒翼。武装使用、ための、エネルギー収集機構と、推測』

 

 この現象……やはり、あの翼が大気中からあらゆる熱エネルギーを奪うことで引き起こしているようだ。つまりこれは敵の攻撃ですらない、敵ISの『呼吸』のようなものなのか。

 つまりあのISは、基本的に自身のコアから発生するエネルギーで完結するISの内部機構外に、常にああやってエネルギーを集め続けなければならない何かあるということになる。基本ISにおいてそういった装備は切り札になりえる武装の場合が多い、それもあれほどのエネルギーを扱うものとなると……これは、下手に先手を渡すわけにはいかなくなった。

 それに長らく、私の手を離れていた力は一時的とはいえ今手元にある。ここまでして、一年前のように遅れは取れない。

 

 束のことだ。元より唯一無二の専用機を取り上げられた、私の身の安全を保障する手を何も考えていないとは思っていなかったので、いざという時がきたときは取り合えず一度『死んでみる』ことはあらかじめ決めていたのだ、が……正直、思っていた以上の過保護っぷりだった。まさか主要臓器を機能を維持したまま量子化したうえで強制的に暮桜を呼び出すとは。私も一夏のことを笑えない体になりつつあるな。尤も、出来ればもう二度目を試したくは無いが。

 

 しかし、奴らは大丈夫だろうか。心配ではあるが、ISもある。なんにせよ、今は信じるしかない。元より、目の前の元凶を駆除すれば解決する。

 

 「楽観的だな。あの直ぐに動けなかった娘の方に低体温症の症状が出ていたのに気づいていたか? あの様子では、ISがあるとはいえもう長くはないだろうな」

 

 そんなこちらの考えを嘲笑うかのように、お前のせいであの娘は死ぬのだと敵は言ってきた。

 ……どの口がそれを抜かすのか。そう思いながらも、こちらをかき乱すのが敵の目論見なのはわかっているので言葉には出さない。

 

 『……不届。二度、渡る、主、対する無礼。弟御……他、多くの者、対する、非道。最早温情、一考にも値、せず。刑を言い渡す』

 

 桜火もわかっているのか、ここで思わぬ活を入れてきてくれた。わかっている。ここで会った以上、今日こそ向後の憂いの一切をここで断つ。

 

 『斬首』

 

 最早一片の躊躇いもなく、目の前の敵の首を狙う。

 敵には、私自身まだその正体を掴めていない、空間を瞬時に渡る力がある。先程は敢えて攻撃を受けたとはいえ、全く動きを認識できないまま死角から一撃を受けたのは流石に肝が冷えた。狙いはある程度誘導したつもりだったが、万一頭を潰されていたら不味かったからだ。

 もう二度目は決して与えない。もう一度『見た』。どこを斬ればいいかはもうわかっている。それさえわかっていれば、相手の能力の正体など私には大した問題にはならない。

 

 「…………」

 

 予想通り、奴の姿が実に自然に、まるで初めからそこにいなかったかのように『消えた』。知ったことか。

 

 「桜火」

 

 『零落白夜』

 

 気にすることなく今まで奴がいた空間を一閃。刃の軌跡を桜の花が追いかけ、花はそのまま桜色の光の奔流となって空間を穿ち、白くなった廊下の一部を何事もなかったかのように元に戻していく。

 ISの力によっていかに歪められようが、私の零落白夜はその結果を事象ごと『切断』する。よって、

 

 「捕まえたぞ」

 

 「な、に……」

 

 奴自身は死角をとったつもりで、間抜け面でその場に戻ってくることになる。私は零落白夜の光の中に腕を突き入れ奴を引きずり出すと、

 

 「……!」

 

 敵の絶対防御を零落白夜(力尽く)でねじ伏せ、一切の容赦なくその首を討ち取った。

 

 

 

 

 「ヒュ……カ、フッ……」

 

 意図したわけではなかったが、浅かったようだ。直前で迷いが出たのか、恐れたのか。とにかく錆びついた私の腕では、結局敵の首を落とすことは叶わなかった。そもそも今の『暮桜』の全力の零落白夜なら例えISの守りの上からだろうが奴を跡形もなく消し飛ばせたのだから、首に拘った時点で覚悟が足りなかったのだろう。

 だが刃が頸椎に達した感覚はあった。ああして奴が自らの血に塗れながらも芋虫のように這って逃げ出そうとすることが出来ているのは、偏にISによる生命保護機能の賜物に過ぎない。それも、直に限界に達して奴の命は終わる。

 

 「…………」

 

 後悔はしていない。いないが、初めて自らの手で人間の命を奪った。腕を磨り潰すだけとは訳が違う。思うところがないわけでもない。

 それに本命の、私を凌ぐ力を持つ『あの女』に繋がる手掛かりを断ってしまった。こいつが喋るとは思えなかったが、惜しいといえば惜しい。

 まあ、いい。今後一切私達に関わらないのなら良し、そうでないのなら、また三途の川渡しを請け負ってやるだけだ。私達に手を出したことを後悔させながら纏めてあの世に流してくれる。

 

 「さて……」

 

 必死に私から這って距離を取ろうとしている敵を見下ろす。

 元よりこいつ等には揃ってあの時の一夏と同じかそれ以上の苦しみを与えた上で死んで貰うつもりだったが……こうなってしまっては憐れなものだ。こいつらにくれてやる慈悲はないが、せめて最期くらい楽に逝かせてやるべきか。

 

 「ク、ククク……」

 

 「……!」

 

 そう思って雪平を構え直したところで、喉を潰され息をすることすら叶わない筈の敵が、急に笑い出した。こちらが怪訝に思う間もなく、敵は渾身の力を振り絞るようにこちらを向き、その血に染まった凄絶な表情をこちらに向ける。

 その瞳は、今まで見たこともないほどの、燃えるような憎しみで満ち溢れていた。

 

 「さす、が、だ。おりむら、ち、ふゆ……だが、わた、しはまだ、し、なぬ……おまえ、たちがしでかした、ことを、つみを、すべてせいさ、んさせる、までは、けして……!」

 

 ――――ギュア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!

 

 暗黒の翼が広がる。最早翼は片翼でなく一対のものとなり、その翼の主が奴の妄念に反応してか、おぞましい叫び声をあげながら奴自身の体を食い破るように外に現れ出ようとしているのが分かった。

 

 ……悪あがきだ。最早あれが起動したところでどうにもならない。搭乗者が死亡したところでISはもう機能が停止するのだ。だからこそ、ISは絶対防御という自身を切り詰めるような機能を自身に課してまで搭乗者を守るのだから。

 だが……私が切り抜けられても、今何処かに避難しているあいつらはそうはいかない。一瞬とはいえ、奴が完全に姿を現しここの温度をこれ以上下げられてはたまらないし、最後の一撃を許すなど以ての外だ。

 

 「……喧しい。とっとと地獄に行け。桜火、片付ける」

 

 『御意』

 

 零落白夜を叩き込んで終わらせる。そのつもりで雪平を鞘に落とし、再び抜き放とうとした。が、

 

 ――――!

 

 その瞬間。校舎の『外側』から、漆黒の光というあり得ない現象が私達のいる場所に向かって叩きつけられた。

 光は校舎を一瞬で食い破り、顕現しようとしている怪物ごと敵を呑み込んだ。

 

 「新手だと……!」

 

 すぐさま桜火に索敵させるが、量子空間内にすでに敵影はない。新手は最初からこの一撃を撃つためだけに現れ、そして消えて行ったのだ。手際の良さから恐らくは、最初からその手はずになっていたのだろう。

 

 あらゆる光を呑み込む暗黒の極光の中、敵は怪物もろとも砂の城のようにボロボロと崩れ落ち、

 

 「そうだ。『彼女』が許そうと、私は決して許さない。ISなどというものをこの世に生み出したお前たちを。決して」

 

 そんな怨念に満ちた言葉を最後に黒い砂塵となり、徐々に薄れていく黒い光とともに跡形もなく消え去った。

 さっさと零落白夜を抜いておくべきだったか……いや、いまの『アレ』は拙いながらも私と同質のものを感じた。あの光が奴に当たった時点で、零落白夜を使ったところで手遅れだっただろう。私のISの力は、良くも悪くも『消す』のみだ。既に消されたものを戻すことはできないのだから。

 

 「くそ……瀬戸際でISごと自身を量子化させるとはな。そのまま根源量子海の中に溶け落ちてしまえ」

 

 口ではそう罵ったが、恐らくはそうはなるまい。あの躊躇いの無さから言って、どれだけのリスクがあるかはわからないが奴等にはサルベージ手段があると見た方がいい。つまり、まんまと逃げられたということだ。

 

 「チ……仕方ない。桜火。悪いが、一つ仕事を頼む。今日は、急に呼び出して悪かった」

 

 『……謝意、受領。要件は』

 

 「先程の娘達の安否と……一夏の現状を白煉に報告させろ」

 

 『御意……シャルロット・デュノア。ラウラ・ボーデヴィッヒ。両名、衰弱、見られるも、命に別状、なし。識別名『白煉』、応答せよ…………………………応答、無し。上位個体、我、対する、造反と、断定。有罪。刑を言い渡す』

 

 「早まるな阿呆……やはり本命はあちらか。どこまでも人を舐め腐ってくれる……! そうとわかれば話は早い。桜火、最後の仕事だ。奴等が人の許可なく生み出したこの空間を叩き斬る」

 

 『零落白夜』

 

 すっかり雪化粧の体をなしてしまった幻影の校舎を、桜色の稲妻(零落白夜)が打ち払っていく。これで春がくるとはいえないかもしれないが、少なくともラウラ達の安全は保障される。念のため、後のことは山田先生に連絡して任せておけばいいだろう。

 

 「一夏……無事でいろ」

 

 崩れていく空間の中、ただそれだけを願う。

 もう二度と、あいつを私達のことで苦しませたくない。あのモンドグロッソでの出来事からずっと、その一心で私は自分の道を決めてきた。

 だがあの臨海学校での一件以来、再びその道筋に暗雲が立ち込め始めたのを肌で感じるようになってきた。この事態が収束したら、もう一度、道を見つめ直してみるべきか。

 

 だが――――

 

 ――――私は決して許さない。ISなどというものをこの世に生み出したお前たちを。決して

 

 先程の、決して相容れない敵の言葉が脳裏を過る。事の発端が私達が生み出したものにあるのなら、もう逃れる道などないのかもしれない。 そんな考えを打ち消すように、私は弟の元に急いだ。なんにせよ、万が一にでもあいつを失うようなことになれば、私の道はそこで途絶えてしまうのだから。

 

 


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