アンケートの締め切りが近いヨ!
オレはキンジに頼まれて学園島のビデオショップにて「ある物」を途中で入手。
そして、女子寮の温室について来ていた。
キンジ1人で来るのはさすがに嫌だとご本人が言うのでルームメイトとして仕方なく……だがな。
「理子」
赤い薔薇が密集して咲くバラ園の奥で緩くウェーブのかかった長い金髪を揺らしてくるりと振り返る少女がいる。
「キーくぅーん!」
そのちっこい手をブンブン振っているのは……理子か?
ちなみにだが便宜上初対面な赤の他人として接しているので理子とは呼ばない。
「相変わらずの改造制服だな……なんだ、その白フリル過剰な改造は」
「コレは武偵高の女子制服・白ロリフリルスペシャルだおー!キーくん、いい加減ロリータの種類覚えようよぉ……あれ?あなたはだぁれ?」
理子も俺と合わせるつもりなのか初対面のフリをしている。
伊・Uでの付き合いもそこまでなかったからな……妥当だな。
「お初にお目にかかります。僕は天道ハヤトと申します」
「ハヤト……じゃあハヤトんね!理子は峰理子、りこりんって呼んでね!」
こら理子そのあだ名で呼ぶな……というよか珍妙なあだ名だ、やっぱり。
「りこりん……ですか。可愛らしいあだ名ですね」
「おいハヤト、リサがいるのにナンパのつもりか?」
「え!理子誘われてるの!?」
「2人とも、誤解を招く物言いはやめてください」
後ろからチリチリと俺に向けて殺気が放たれている気がしたのだ……後ろを確認しても誰もいないので理子に向き直ろうとした時……チラリと透き通るような白金髪の髪が後ろの木陰に隠れた……ように見えた……って!?
……あのーリサさん。
見えてますよチェック柄の布に包まれている
オレが突っ込むべきかどうか悩んでいるとキンジが理子に何やら差し出す。
それは紙袋に入れられて梱包された箱のような物2つだ……正式な依頼として後でオレにももまんを買ってくれる契約で来る途中で入手した「ある物」の正体が分かる。
なんだ……男がももまん好きで何が悪い!甘くて
嗜好は人それぞれだろうが!……ってオレは誰に切れているのだろうか?
「いいか?ここでのやり取りはアリアには漏らすなよ?」
「うー!ラジャー!」
理子は気を付けの姿勢に両手を敬礼のようなポーズで固まる……なんだこの動きは?
オレがさらに首を傾げているのを尻目にキンジは苦い顔。
ふんふんと荒い鼻息でびりびりと梱包を剥がす理子は……まるで獣のようである……オレを支えてくれてるメイドさんは
「うっっわー!『しろくろっ!』と『白詰草物語』に『
キンジが理子に渡したのはロリータ系の衣装に身を包んだキャラ達が描かれている物で……いわゆるギャルゲーだ。
おそらくだが……身長のせいで小学生扱いされた理子が報酬としてキンジに「おつかい」を依頼したのだろう。
……なんでもやる
で気になるキンジの理子に対する依頼はなんだ?
ちなみにオレが買ってきたのは『
ちなみに、理子は伊・UでR18指定の掛かったギャルゲーをやってたそうだ……だからそっち関連の知識も豊富だとかなんとか……誰からの情報だって?
……リサからの余計な情報だよ。
いろんな意味で伊・Uは「無法地帯」だったからな……遠い目はしてないぞ、うん。
「あ、このゲームはいらない」
ついと理子がふくれっ面でキンジに押し返したのは……キンジの買ってきた『しろくろっ!』の続編である『くろしろっ!!
「なんでだよ?これ他とあんまり変わらんだろう」
「違うもん。
続編という単語から、自身の呪い……数字を連想したのかもしれないな……理子は。
キンジはには訳が分からんかもしれないが、理子の過去を知る身としては胸がチクリと痛む。
数字……4世と呼ばれるのを理子は本当に嫌がるからな。こっちで再会した時、軽々しく「ルパン四世」なんて呼ぶんじゃなかった。
オレが心の中で後悔していても理子には分かるまい……いつか謝罪か罪滅ぼしをしよう……絶対に。
オレの懺悔を知る由もなく、キンジと理子が話を進めていた。
「まぁ、とにかくだ、この続編以外のゲームはくれてやる。その代わり、俺の依頼……アリアについて調査したことをきっちり話せよ?」
「あい!」
なるほどな……「昼行燈」のキンジも一応武偵の端くれだったて訳か。
武偵同士の勝負……その初戦は実戦ではない。
多角的に
そして理子は……伊・Uにいた頃、「ある人物」にその情報戦のコツを伝授されている。
過去のルパン……金品を狙う怪盗ではなく、理子は情報を奪うことができる現代の情報怪盗だ。
まぁ、理子の一番の得意なことは殿向きの才能……異常なほどの逃げ足の速さだ。
伊・Uで模擬戦やった時は正面から来るのではなく遠回し遠回しにこっちの隙を突く戦い方だったからな。
その時はオレが『
根性も胆も据わってる大した女なんだよ、理子って。
最近少しだけ蘇った前世の記憶からルパン三世の行いも思い出した。
この世界の彼は基本的に戦うのは
そして、基本的にルパン三世の行いは窃盗……犯罪に違いはないが、彼らは「善人」ではなくて「悪党」なのに同じ「悪党」を倒していた。
優善懲悪……善も悪も関係のないこの世界ではどうなんだろうな……行き過ぎた正義も時として「悪」になるからな……
本当に難しい世の中だよ……と、オレは思考の海から意識を浮上させながらキンジと理子のやり取りに耳をすませる。
「よし、それじゃあとっととしろ。俺はトイレに行くフリをして小窓からベルトのワイヤーを使って脱出してきたんだ……アリアにバレて捕捉されるのも時間の問題でな。だから手短に頼むぞ?」
キンジは近くにあった足の突く高さにあった柵に座る。
理子は紙袋を破いてしまったためか服の中にゲームをしまいつつキンジの隣に座る。
身長のせいか足が地面につかないようで膝下からをぷらぷらさせているが。
オレは2人の座る柵近くの木に背中を預けて立つ。
「ハヤトんも一応聞いたらどう?」
理子がそう提案してきたのだがオレは……
「僕はここで聞くことにしましょうかね……ほとんど接点のない女性の隣にいきなり座れというのは英国紳士には些か無茶振りですよ?」
やんわりと断っておく。理子に盗聴器を仕込まれても困るというのが本音なのだがな……。
「ふーん……ハヤトんがそうしたいなら理子的には何もいえなーい。」
「……座りゃあいいじゃねぇか」
「キンジ、あまり気を使うな……オレのしたいようにさせてくれ」
口調を反転させつつオレはそこからはだんまりを決め込んだ。
「じゃーあー……あ、ねーねー。キーくんはアリアのお尻に敷かれてるの?カノジョなんだからプロフィールくらい自分で聞けばいいのに」
「あのピンクチビ鬼が俺のカノジョだぁ?んなもんちげーよ」
「えー?2人は完全にデキてるって噂だよー?今日も昨日の朝も腕組んでキンジとアリアが2人で寮から出てきたっていうんでアリアファンクラブの男子たちが『キンジ殺す!』って大騒ぎしてるんだよー?それにリア充撲滅委員会もハヤトんのことマークしてるし」
……なんか変な単語が聞こえたがオレはスルーしようと思う。
「あれは、腕にしがみついてきたアリアを引きずってただけだ」
「ねぇねぇ、どこまでしたの!?」
「何がだ?」
「えっちぃこと!」
「バカ!するか!オレはロリコンじゃねぇよ!?」
「理子もキーくんのストライクゾーンなの!?きゃー理子、キーくんに襲われちゃうの!?」
「アホか!それもしねぇよ!チビ専じゃない!」
なんと言うコントだ……ミスター豆にも引けを取らんなこいつらのやり取りは……
「ふはははっ!2人ともいつまでもバカやっててもいいのか?時間がないぞ?」
弄られるキンジが哀れなので助け舟を出しておいた。
理子も咳払いしてキンジに向き直っていた。
「ごほんっ。じゃあアリアについて聞きたいこと、キーくん教えて?」
真面目モードになった理子にキンジは質問をしていく。
ここから先のほとんどの情報はオレの知るものだったので聞き流した。
そして、理子は一旦シリアスに声のトーンを落としながらキンジに言う。
「で、ね。イギリスで活動していた時のアリアは犯罪者を一度も逃したことがないんだって」
「逃したことがない?」
「狙った相手を全員捕まえてるの。99回連続、それもたった一回の強襲で……ね……キーくんもハヤトんもこの意味わかるよね?」
「アリアはイギリスで大暴れしていたからな……オレもその活躍は知っている」
「なんだよ……それ……」
キンジは事態を飲み込んだようだな……アリアは強い。
これは俺が保証する……が……それでもあいつは未完成なのだ……だからパートナーが必要なのだ……!
「なぁ、キンジ。お前……そこまでアリアのこと嫌いじゃないよな?」
「……何言ってんだよ、ハヤト」
「大ッキライなら乱暴にも追い出せるだろ……お前は武装した武力を持った探偵……
HSS……これの特性を俺が知ってるとは知らないキンジは黙り込む。
「お前がアリアにやられそうになった発砲をなぜしない?拳銃をチラつかせれば出て行ってくれるかもしれないのに何故だ?」
「その程度であいつを追い出せたら苦労はしないだろうが!それをしたらあいつから逃げたことになる。1人の
「腐っても
「は?何言ってんだよ」
オレはどうしてもキンジをアリアと組ませたくなった……だから、大事な
「頼む、この通りだ!一度だけでいい!アリアと組んでやってくれ!」
「お、おい!?何やってんだよハヤト!頭上げてくれ!」
オレが頭を上げると視界に入った理子の顔が驚愕に染まり、目を見開いて絶句していた。
そして、茫然とするキンジに理子が
「キーくん……この頼みを蹴るのはマズイよ?」
「何がだよ……」
キンジの額にはベットリと大粒の脂汗が滲んでいる……事態を把握しかけているがそれを認めたくないのだろう。
「理子ね、ハヤトんの事は転校してきた日にちょっと調べたんだー……誇り高きイギリスの
キンジは動揺の色が隠せないようで膝が震えている。
オレは内心でほくそ笑むが……もちろん表情には出さない。
アリアとキンジが一度でも組んでしまえば……強固な絆が生まれるとオレは未完全な「
確証はない……だがオレはオレの直感を信じて今はクソの役にも立たないプライドを捨てる!
断り辛い状況に持っていくことが大事なのだからな交渉というものは……それにオレは善人ではない「偽善者」だ。
アリアに借りを作るつもりだ……とは考えてないがな……伊・Uと戦う覚悟を俺に見せたアリアのためにキンジを落とすぞ!
「伯爵……だと……」
「言い忘れてたな……オレもアリアも貴族だ。さぁキンジ、返答を聞かせてくれ」
「待ってくれ!卑怯じゃねぇか……まさかこうなる事を考えて土下座したのか!?」
「その辺はなんとでも言ってくれて構わない。報酬なら望む金額を出そう……なんなら前金も出そうか?」
オレはコートの内側からを5キロ相当の
「
「ふぁっ!?」
うん、いいリアクションだぞ理子にキンジ……つか理子……フランス語になってるぞ。
「そうか、まだ足りないのか……欲張りだなぁキンジは」
オレはさらに金塊をだす……ゴトリッゴトリッと計15キロの金塊だ。
「今日の金1g単価に照らし合わせた単純計算だが大体約4700万円程の価値だぞ?」
キンジは話についていけないのか脂汗をにじませながら後ろにひっくり返ってしまった。
理子はその大きな目を見開いて唖然としている。
オレはコートの内側に出した金塊を直しながらキンジに
「武偵は金で動く……賢い判断を待ってるぞ、キンジ!」
オレはキンジを温室に残すようにして外套を翻し、颯爽とその場を離れるのであった……さて、どんな決断をキンジは下すのだろうかね?
「どうすりゃいいんだよぉぉぉ!?」
キンジの叫びに意地の悪い笑みを心の内に秘めてオレは帰宅した……ついでに木陰に隠れていたリサを連れてな。
(続く)
2日連続更新……やればできるな(白目
はい、皆様……お楽しみいただけましたか?
ハヤトは善人ではないと言ってますが……ただのお人好しでしょうね。
アンケートの方はバスジャック事件までが期限です。
感想批判と評価にアンケート回答も密かに楽しみにしつつ……ではこの辺で失礼します!