緋弾のアリア 転生者はハートネット   作:狭霧 蓮

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一巻のエピローグから2巻に向けての間ですね、ハイ。




12弾 台風明けて……強襲の幼馴染!

気を失って目覚めたら全部夢だった……そんなオチに期待ができるのであれば期待したかったがな。

 

現実は時として残酷である。

 

ハイジャック事件を解決したあとオレはマスコミの取材やらを丁寧に断り、警察の事情聴取を受けてなんだかんだとやっていたら……夕方になってしまった。

 

帰宅途中のオレの携帯がなる。

 

「もしもし?」

 

『ふはははっははは!私でございますよ若様!』

 

声の主はオレの実家……ハートネット家に仕えてくれている従事者長(マスターフットマン)のセバスチャン・アレキサンドリアだった。

オレは電話越しの暑苦しい笑い声に我慢しつつ要件を聞いた。

 

お片づけ(・・・・)の件で何か問題でも起きたか?」

 

『……事後処理等は滞りなく、何も問題なく済ませてありますよ、若様』

 

セバスチャンの口調が一転して研ぎ澄まされたつららのような声音に変わる。

これはセバスチャン・アレキサンドリアから世界最強の暗殺者(アサシン)の……ジェームス・ボンドにマインドチェンジした合図だ。

 

「そうか、ロンドン武偵局は?」

 

『幾人かの幹部が突如として行方不明(・・・・)となったために幹部会の人事再編に乗り出したようでございますが……そちらにも手回しを済ませてございます。』

 

「……手回し?」

 

どういう訳か(・・・・・・)若様のご学友であらせられますアリアお嬢様と、若様のシンパの者たちが人選に選ばれております』

 

なんだとセバスチャン……⁉︎

 

「それはやり過ぎだぞセバスチャン⁉︎」

 

さすがにオレは声を荒げてしまう……いったい、何人の(タマ)を詰んでるんだよ……!

 

『若様、私は最初に言ったはずでございます。なんの問題もない(・・・・・・・・)……と』

 

セバスチャンがこう言うと本当になんの問題ないのだが……

 

「……わかった。それはセバスチャンを信じよう」

 

『そのお言葉だけでも私は感無量でございます、若様』

 

ハートネット家には粉骨砕身の意志で仕えてくれているセバスチャンを信じなくて何が主人か……今回のことは彼に任せよう。

 

『ところで……脂肪のついた武偵局の豚共はアリアお嬢様を本国に帰還させ、己の溜め込んできた仕事を彼女に押し付けようと某策しておりましたが……?』

 

「……それについては報告だけで結構だ。あとはオレがなんとかするよ」

 

『畏まりました。では……私はこれにて失礼いたしますぞ若様!ふはははっははは!ご健闘と御武運……願っておりますぞ!』

 

その言葉を残しセバスチャンは電話を切った。

 

 

 

 

寮室に戻ると「おかえりなさいませご主人様!」とリサが出迎えてくれた。

 

「リサ、キンジとアリアは?」

 

「アリア様は女子寮の屋上にてヘリのフライトがあるとおっしゃり、イギリスに帰還なさるようでしたが……キンジ様はそれを止めると言い残されて女子寮に向かわれましたよ?」

 

「……入れ違いか!」

 

「ご主人様?」

 

リサに説明する間も惜しいな……オレは踵を返して「この埋め合わせはいずれ!」と言い残して脱ぎかけだったスニーカーを履き直してドアを蹴り開ける勢いで寮室から飛び出した。

 

すまない、リサ……今はかまってやれないが……今は……!

 

階段の柵を乗り越えて5階から飛び降りる……ズダンッ!と衝撃を脚に発生させた式力力場で斥力を生み出し半減させ、外套の衝撃半減効果でダメージを25%にカットしたので普通に動ける。

ノーヘルでバイクに跨るオレはキーを挿し込み、エンジンを起動させると同時にアクセル全開で発進……第3男子寮を後にした。

 

 

 

 

「乗ってけキンジ!」

 

バイクで追いついたキンジを拾ったオレは武偵高第2グラウンドの後ろにある女子寮でバイクを止める。

 

屋上にはヘリが既に停まっていた。

 

キンジを走らせようかと思ったが……ある事を思いついたオレは彼に待ったをかける。

不服そうな顔をするキンジに構わずオレは朱金の長髪を留めている白布を解き……

 

「我は紅蓮の者……災禍討つ紅蓮姫(カラミティ・モード)!」

 

髪を紅く明滅させた、紅蓮姫モードになる。

 

「んなぁ⁉︎なんだそれはハヤとぅぇ⁉︎」

 

キンジの言葉が中断されたのはオレがこいつの制服、襟首を掴んだから。

 

「キンジ、鳥になれ!」

 

「どういう事だアァァァァッ⁉︎」

 

柔道で言う背負い投げ一本!でキンジを投げやりのようにぶん投げる。

 

ジュリッ……バスン!とオレは筋繊維を圧縮して跳躍!

 

足元のアスファルトがオレの足型に凹み、バガンッとクレーターが出来上がるのを無視しつつ上空で先に飛ばしたキンジを抱えると女子寮の屋上に降り立った。

 

ヘリポートを見るとヘリはもう飛び上がる寸前だった。

 

「め、滅茶苦茶だ!何しやがる!」

 

キンジを下ろしてオレはこいつに言う。

 

「そんな事は端に置いとけ……今はアリアだろ?」

 

やりとりしている間にヘリが10メートルほど飛び上がっていた。

 

「……!」

 

オレは髪を白布で留めると後はキンジに任せる。

 

「アリア―――アリア、アリア―――っ!」

 

キンジが叫ぶ……なんども、なんども……。

 

「アリア―――ッ‼︎」

 

今までにない大声でキンジが叫ぶと―――

 

「―――バカキンジ!遅い!」

 

がらんとヘリのスライドドアが開きアリアが顔を出して……ヘリの縁にワイヤーを括り付けると下降気流の強風の中飛び降りてきたのだ。

 

「ちょ……おまっ⁉︎」

 

む……操縦士が慌てたのかヘリが揺れる。

 

「うっ?……あれ?あれれっ⁉︎」

 

当然アリアはヘリにつながっているワイヤーを持っているから……振り子のように揺らされる。

 

「ちょ……お、おい⁉︎」

 

アリアはなんと、揺れるワイヤーを切断して落ちてくる……!

 

キンジめがけて落ちてきたアリア……

 

 

 

 

―――空から女の子が降ってくると思うか?―――

 

 

 

 

がしゃんとアリアがキンジに抱きつく形で金網にぶつかって止まる。

金網は凹んで壊れてしまったようだ……全く、ヒヤヒヤさせやがって。

 

「お、お前なぁ……!」

 

アリア!何やってるんだ!(What are you doing aria)

 

ヘリからは武偵局の役員が叫んでいるがアリアはあっかんべーと返した。

オレも役人に中指を立てて挑発する。

 

ヘリの下降気流にオレは乱雑なポニーテールをピンク色のツインテールを揺らすアリア。

そんなオレたちの挑発に怒ったのか何人かの役人がワイヤーを使って屋上に降りてきた。

 

「全く……クォーターだからそこまで強くは言えないが、英国紳士ならばもっと余裕を持って欲しいところだよ」

 

「ハヤト!冗談言ってる場合かよ!」

 

オレはやるべき事を思い出してキンジたちに向き直る。

 

「お前ら、先に行けよ……あいつらにはオレから話があるからな」

 

「いくらあんたでも勝ち目がないわよ、加勢するわ!」

 

「アリア、荒事はよせ。紳士的に物事を解決するべきだろう?」

 

オレはアリアとキンジに微笑んでやる。

今までは世話を焼いてはきたが、こいつらならもう大丈夫だろう。

 

「男ならアリアを守ってやれキンジ。今この瞬間にな」

 

オレは降りてきた役人数名に英語で話しかけた。

 

キンジはアリア連れて屋上のドアから去って行く。

 

「諸君、公務ご苦労だね」

 

代表の役人がオレを見て硬直する……冷や汗をダラダラと流しているが。

 

「……ハートネット卿……!」

 

「君たちの活躍はよくよくセバスチャンから聞いているよ……自分達ではどう頑張っても上げれない手柄をどうやって上げていたんだい?」

 

オレは彼らに問う。この功績は一体誰が?どうやって得たのか?などと声をかける。

 

役人は脂汗をダラダラ流し無言で……いや、言葉が出せないようだ……そりゃそうだろう。

 

貴族であるアリアから手柄を横取りしている事がオレにバレるとやばいとわかっているからだ。

 

「なんだい?僕はカカシと喋っているつもりはないんけどね?……僕の考えている事が分かるなら今すぐに帰れ。アリアを使って得た功績については不問にしておく……ただし、また同じ事を繰り返すなら……オレが黙ってはいないぞ?」

 

今までの、ロンドン武偵局にいたアリアの扱いをオレが知っている……貴族に対する冒涜は重い罪だ。

それをあえて見逃すと聞いた奴らはオレに深々と頭を下げて降りてきたヘリに乗って逃げるように飛び立っていった。

 

 

台風明けの有明の空には大きな月が輝いていた。

 

 

 

 

あれから数日経った今日。

 

オレはキンジに紅蓮姫モードとヒステリアモードはお互いに抱える弱みだと言いくるめておいた……まぁそんなことはどうでもいいな。

 

「まぁ、いろいろあったが……健闘を祝して……」

 

『かんぱーい!』

 

テーブルに所狭しと並べられた料理をナイフとフォークで食べるオレと箸で行儀よく食べるキンジ、アリア。

 

一応『武偵殺し』を撃退できたとしてオレが開いた小さなパーティだ……表向きではな

 

実はあの後、キンジはアリアに言ったらしい

 

“俺がお前の味方になってやる”……と

 

後から聞いたのだが正義の味方にはなれないがアリアの味方にならなれる……そう言ってアリアを連れ戻すと決意したらしい。

 

キンジもなかなか快男児じゃねえか……そんな事を考えながらリサの作ってくれたパーティ用の料理を食べていたオレたち……一緒に暮らしていればチームワークも育つだろうとオレが言ったが災いしたのかアリアまでもがこの部屋に住み着いた。

 

キンジは困った顔をしていたが今はもうヤケクソだと一緒に暮らす事を容認している。

 

とオレはある事を思い出してアリアの隣でサーモンの刺身を食うキンジに話しかける。

 

「キンジ、お前に報酬渡してなかったな」

 

「……報酬?なんだそりゃ」

 

「アリアと組んでくれるなら金を出す……こう言ってはいたが、さすがに収賄はダメだと思ってな」

 

オレはコートを着ていないので足元に亜空間をそのまま呼び出し、開くとそこから銀色の小型なアタッシュケースを引っ張り出した。

 

「こいつがオレからの報酬だよ」

 

リサにそれを渡してキンジの前で開けてもらうその中身は……

 

「これって……ベレッタM93R……⁉︎」

 

「元々M92Fを使ってだろ?前の拳銃が理子に壊されてたし慣らせば同じように使えると思ってな」

 

今キンジが手にしている拳銃はベレッタM93R……民間には出回らない公的機関の要請があった場合に生産される3連バースト機関の備わった拳銃だ。

今回はコネと言うかロンドン武偵局を強請ってそのコネで手に入れた代物が昨日届いたので今のタイミングで渡したのだ。

 

「民間の所持は違法じゃないのか……?」

 

「元々違法改造したベレッタ使ってだろ?気にすんな」

 

オレが言うとぐうの音も出ないとキンジば黙りこくる。

 

「……じゃあ、ありがたく受け取っておくよ」

 

キンジば席を立ち、拳銃を試しに構えたりしている。

 

そんなこんなでパーティも終わり、後片付けを済ませたオレとリサは部屋にこもる。

キンジはアリアと話すと言ってベランダに出て行った。

 

……で、オレは今現在。

 

今までの埋め合わせにとリサの要望でマッサージしていたのだが……いつの間にかアッチ方面の……うん、恥ずかしくて口に出せないアレ(・・)をしている。

流された結果だったが今回は仕方ないのだ……今までリサに溜まっていたその……ゴニョゴニョを発散させてあげないとな……。

 

燃え上がるように求め合った結果……心身ともに絞りに搾り取られましたよ―――コッチがな!

 

満足げに眠るリサを自室のベッドで寝かせてオレは服を着る……裸族じゃないしアリアもいるからな……服を着ないと二挺拳銃で撃たれるのも御免だ。

と言うのも……この前風呂上がりで鉢合わせたキンジがアリアに銃撃されてたからそこから学習したんだよ。

 

風呂に入ろうとドアを開けてリビングに出るとキンジが震えている。

 

その手にもつ携帯が小刻みに震えているのだ。

 

「あ、アリア……ににに、にに、逃げろぉッ!」

 

「な、何よ。何急にガクガク震えてんのよ⁉︎キ、キモいわよキンジ……」

 

「本当に何震えてんだよ」

 

「ぶ、ぶ、『武装巫女』が―――うっ。き、キタっ!」

 

どどどど……ドドドドッ……‼︎

 

な、何事だ……マンションが震えてる……⁉︎

 

しゃきん……‼︎

 

金属音と共にドアが切り開かれた……!

 

巫女装束に額金、たすき掛けの戦装束に身を包んだ……

 

「白雪……ッ‼︎」

 

星伽白雪さんだった。

 

「やっぱりいた‼︎神崎!H!アリア‼︎」

 

「待て!落ち着け白雪!」

 

「キンちゃんは悪くない!キンちゃんは騙されたに決まってる!」

 

「……話が見えんぞ⁉︎」

 

オレの異議をスルーして星伽さんは上段に刀を構える。

 

「この泥棒ネコ!き、き、キンちゃんをたぶらかして汚した罪……あなたの罪を数えて……死んで償え‼︎」

 

標的にされたアリアは訳がわからないと銃すら抜いていない……その気持ちすっごいわかるぞアリア!

 

「や、やっ、やめろ白雪!俺はどこも汚れてない!」

 

「キンちゃんどいて!どいてくれないとアリアを……そいつを殺せない‼︎」

 

「よ、よせ!星伽さん!よせ!はやまるな!」

 

「き、キンジぃ!なんとかしなさいよ!なんなのよこの展開わぁ‼︎」

 

ドンッと飛んでくる武装巫女。狙いはアリアの首……‼︎

 

見てられずオレは絶界から引っ張り出した装飾剣(クライスト)で横薙ぎに振るわれる日本刀と切り結んだ!

 

ガギィンッと青白い火花散らしぶつかり合う剣と刀……この剣戟で飛び起きたのかオレの部屋から制服を着たリサが飛び出してきた……BARを携えて!

 

「どうしましたかご主人様⁉︎」

 

「……!二匹目の泥棒ネコ!」

 

「リサは猫ではありません!狼です!」

 

「だぁぁ!話がややこしくなる……ッ‼︎キンジ!なんとかしろぉ!!」

 

「なんとかできるわけねぇだろうがッ‼︎」

 

鍔迫り合いするオレ、銃向けるリサにガン垂れる武装巫女さん……なんなんだよ……本当になんなんだよこの展開……‼︎

 

「バカキンジ!なんとかしなさいよ!」

 

「なんとかしなさいよ、って―――俺 が 言 い て え よ !」

 

キンジの絶叫が響く室内は……それが合図になったかのように戦争映画のようなサウンドを鳴らすのであった……明日オレ……生きてるよな?

 

(続く)




と言う訳でちょっとゴリ押しなキンジの新しい拳銃……ベレッタM93R!
私の……作者の趣味が全開になってます!

まぁ……ベレッタM1951出そうかと悩んだのですが、後継モデルのベレッタM93Rに落ち着きました。

この拳銃でキンジはこの先活躍していくのでよろしくお願いします!

そして……原作と違い、キンジがイギリスに嫌われる展開がなくなりますが……これはこれで必要なことなので悪しからず。

では次のお話でお会いいたしましょうノシ

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