キンジを温室に残して俺とリサは寮に帰宅した……え?
リサは女子寮に帰らないのかって?
こっちにリサの荷物を
今更ながら追い出すのは気がひけるし、キンジの了承も
なんだかんだ言ってキンジを第二のご主人としてリサは扱ってるようだしな……料理もアリアが褒めたことからかいつも気合を入れて作ってくれる。
「リサはびっくりなのです。ご主人様の死角から覗き見をしていたと思っていましたのですが……」
「リサ。君が背負ってるその機関銃は布で隠しても目立つんだぞ?長い銃身が目立つし、何よりリサしか持ってないんだからなBARなんて」
俺が種明かしをするとリサはガーンという顔になって道端にうずくまり、地面を指でなぞり始めてしまう。
「うぅ……どうせリサなんて、天然で抜けてるメイドですよぉ……隠密のスキルは『アリア』お姉様の方が上手でしたし……」
イントネーションの違う『アリア』とはリサの師匠であるロベルタ女史の弟子で、リサの姉弟子となる人だ。
ロベルタ女史とは、
ロベルタ女史は、うちの実家に仕えてくれている
武勇伝がいくつかオレたち貴族の間で語り継がれており、そのうちの幾つかを例にあげると……
一つ、彼女の「
一つ、イギリスのロンドンから一瞬で消えて、10秒後にはフランスのパリに渡っていた……
などなどと彼女は人知を超えた偉業(?)を数多く成し遂げたとかなんとか……現在はバッキンガム宮殿に支えているらしい。
「リサ。そろそろ帰るぞ……いつまでもここでうじうじしているというのならオレは先に帰る」
「ま、待ってくださいご主人様!リサを放っていかないでくださいぃ!」
俺が立ち去ろうとすると、リサはその場で少しジャンプして立ち上がりダッシュして俺の腕に飛びついてきた……少しだけ意地悪がしたくなっただけだったのに……やっぱりリサは可愛いな!
そんなバカなことを考えていると俺のポケットから、ナナ様の某楽曲の着うたが鳴る。
ナナ様が誰だと?水樹奈々さんの事だよ。
二つ折りの、赤色の携帯を開くと画面には見知らぬ番号が表示されているが……誰だ?
「……誰だ?」
オレはいたずら電話も予期して少しだけ、ぶっきらぼうに電話を受けた。
『やや粗暴な話し方……ハヤトお兄様にしては珍しく好戦的ですね……ここまでのお話でもう私が誰かは推理できましたよね?……お久しぶりです、ハヤトお兄様』
懐かしく感じ、聞き覚えのあるこの落ち着いた感のある低いアニメ声……その声の主をオレは知っている。
「3年ぶりか……相変わらず遠回しな話し方の癖は治らないようだな……久しぶり、メヌエット」
電話の相手はアリアの異母妹で3つ年下の少女だ。
彼女の名はメヌエット・ホームズ。
名探偵でオレの師匠である
『突然で申し訳ありませんがハヤトお兄様。やはり、私の推理どおりに全ての物事が進んでいましたか……』
話が見えん……いったい何が推理通りなんだ?
「何がどういうわけだメヌエット。推理の意味もわからんぞ?」
『では
……この口癖も治っていないのか……前口上みたいだぞ?
『まず、お兄様の声です。 以前の、気弱な声音がこの3年の間に強く逞しい頼れる声音に変化していて自信を身につけられていること。 それは武装探偵としての格が上がったと見るべきで、お姉様と遜色のない武力……もしくはそれに近い武力を身につけたと言っても良い』
……相変わらずの推理力だよ。今回もピッタリ当ててきたことに恐縮していると、メヌエットはオレの沈黙を是と見たのかさらに続けてとても余計な推理を聞かせてくれた。
『そして、お兄様。男としても一皮向けられましたか?』
「……は?どう言う事だ?」
『お兄様。
……本当に余計な推理だ事だよ。
『まぁ、その話は今度。時間があるときにでも、お兄様への嫌がらせにとっておきましょう』
「やれやれ、嫌味な性格はなかなか治らないようだな」
『ハヤトお兄様とお姉様への嫌がらせは私の生き甲斐ですのでお許しください』
……つか、話が脱線してきてるぞメヌエット嬢よ。
「それは聞き流す。推理の続きを聞かせてくれないか?」
『近々、伊・Uが……「
「緋色の運命?」
『「あの日」からもう2年と少し経ちます。そして今年の夏……お兄様は選択を迫られます』
メヌエット……お前も「その先」を見ようとしてるのか?
「なるほど……警告を俺にくれてるのか?」
『この先、お姉様には困難が幾多にも訪れるでしょう……お兄様。どうかお姉様を助けてあげて欲しいのです』
メヌエット……なんだかんだ言ってもお前はアリアを想っているんだな。
「わかった。それについては善処するよ……でもアリアはまだパートナーを見つけてないんだがな」
『大丈夫です。私の推理ではそろそろパートナーが見つかる頃合いだと思いますので』
「ドンピシャだよ……さて、メヌエット。こっちはもう夜なんだ……また電話しておいで」
『はい、では……お兄様、どうかお姉様を守ってあげてください……お姉様をお願いします』
「任せとけ、アリアについてはお前の頼みだしな」
『お休みなさい……また電話させてもらいます』
「ああ、おやすみ」
オレはメヌエットとの電話を切り、携帯をポケットにしまった。
「ご主人様、電話の相手は誰だったのですか?」
「アリアの妹だよ……まぁ、幼馴染と言うより妹みたいな子だけどな」
変に勘ぐるリサの頭を撫でながら安心させるようにオレは彼女に笑いかけた。
「大丈夫だ。お前の考えてるような関係じゃないよ」
「ご主人様……はい!ではスーパーに行きましょう!買い物を済まして今日も美味しいご馳走を作りますよ!」
リサは走っていく……オレは苦笑いしながらその後を追うように……「緋色の運命」とはなんなのだろうかと考えながらリサを追って走り出すのであった。
◯
オレとリサが帰宅した頃。アリアの姿がなかった……
キンジがオレに買ってきたももまんを差し出しながらアリアが出て行ったと俺に報告してきたのだ。
「そうか、
「ああ。 アサルトに戻って最初に起きた事件を一緒に解決するつもりだ」
「なるほど。 条件付きの降伏か」
「まぁな。 これならあいつも納得してくれたから」
オレがキンジの体質を知っている事については言っていない。 まぁ知らん振りで通すけど。
「じゃあ、一時的な凹凸コンビ結成だな」
「極端な身長差だがな」
オレが言うとキンジはアリアに対して毒を吐く。
まぁそこには同感だがな。
「ご主人様、遠山様!ディナーの用意ができましたよ!」
リサが元気にテーブルに料理を並べ始めたので、オレとキンジは話を切り上げて……リサの愛情が隠し味のご馳走に舌鼓を打ちながらオレはキンジにある物を渡した。
「なんだよこれ……よくわからん札か何かか?」
「それは「ルーン護符」だ。まぁ、オレからの前金だよ……御守り代りに財布にでも入れとけ」
そう言いながらオレは「とある効果」を充式構築したルーン護符をキンジに渡したのだ。
虫の知らせ……大事にならなければいいがなと思うオレの願いは……天に届く事はなかったのだから。
(続く)
この作品でのキンジは「平穏な武偵になること」を目標にしてます。
……その理由は………次のお話で明らかにいたしましょう!
はい、平日に更新できました。
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では、この辺で失礼いたします。