東方言葉録   作:ワロリッシュたん

30 / 30
ふっ、もうお前に語ることは何もない
さあ、儂の屍を越えてゆけ!!!
(訳:ここまで読んでいただきありがとうございました
では、三十話、よろしくお願いします)


第三十話、結末が待っているんだ

扉を開け、僕は辿り着く

この幻想郷でずっと探していた親友の元に

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「霊夢さん!!」

 

僕は地霊殿の大広間の扉を開け、中に入る

そこには、床に片膝を着いて蹲っている霊夢さん

それを遠くで嘲笑うような笑みを浮かべて見下すスキマ妖怪、八雲紫さん

そして大広間の最奥にて椅子に座っている変わり果てた姿の僕の親友、進藤話花

 

「アア、マコトクンダア〜」

 

話花が僕に話しかける、その声は人間のものではなく、多くの人間の叫び声の合唱のようだった

 

彼女は文字通り『バケモノ』になっていた

数多くの妖怪の力を取り込んだためか、彼女の身体は人間とは程遠いものになってしまっていた

彼女の肌は変色し、青色になり、身体中に歪な螺旋模様が描かれていた

彼女の右腕は刀のように鋭く、最早、肩から腕ではなく刀が生えているように見え、左腕は個体ではなく液体のように蠢いているーーー要するにスライムである

右脚は厚い鎧で覆われていて、左脚は獣のように毛深く、鋭い爪を生やしており、背中からは蝶のような翼が生えている

彼女の顔は辛うじて人間の輪郭を保っているが、その両目は真っ赤で白目まで赤で潰れていた、そして血の涙を流し続けている

 

「アハハハハハ!!マコトクンガキテクレタ!!

ウレシイナァウレシイナァ!!!」

 

話花の口から発せられる物凄い不快音

 

・・・・こ、これが話花?どうしてこんなことに

 

僕が放心していると、霊夢さんが立ち上がる

 

「真言さん、もう、あの女は人間じゃないわ」

 

「霊夢さん・・・・でも」

 

「でもじゃないわ、これは事実よ、認めなさい」

 

霊夢さんは冷たい声で告げる

 

「けど、可能性が無いわけではないわ

彼女が自分の取り込んだ妖怪達の力を束ねている'糸'のようなものを断ち切れば、話くらいはできるようになるかもしれないわね」

 

「糸?」

〈相棒、あの女の身体中に巻きついてる金色の糸がそうだ〉

 

よく話花を観察してみると、確かに彼女の身体に太い金色の糸のようなものが巻きついており、それが彼女の身体を維持しているように見える

 

・・・・とりあえず、近寄らなきゃ話にならないな

〈けど、タダでは近寄らせてくれないようだぜ、あれを見てみ〉

相棒が示す所には、半透明の壁の様なものが張られている

 

「気付いたようね、結界よ、紫が張った、ね」

 

霊夢さんが説明をくれる

 

「そして、弾幕攻撃は・・・・」

 

霊夢さんが通常弾幕を結界目掛けて放つ、すると、空間が開き、大量の目のような模様の空間が現れる

 

・・・・あの目の空間が八雲紫さんがスキマ妖怪と呼ばれる所以である『スキマ』ってやつか

 

霊夢さんの通常弾幕はスキマに吸い込まれる

そして、霊夢さんの真上にスキマが開きそこから先程吸い込まれた通常弾幕が吐き出される

霊夢さんはそれを最小限の動作で回避し言う

 

「弾幕は、通用しないわ

で、あの奥にいる人間に辿り着くためには結界を破るか、紫を倒して結界への力の供給を絶って、結界を解除する必要があるわね

但し、弾幕は紫のスキマで無効にされるから、結界を破る方法は現実的ではないわね

つまり、奥の人間に辿り着くには紫を倒さなければならないということ、分かった?」

 

「・・・・はい」

 

「いい返事ね、じゃあ、協力しなさい

紫には弾幕は通用しないから、近接戦闘しか有効打を与えられないわ

で、私は貴方ほど近接戦闘が得意じゃないから、私が補助をするわ

悪いけど、貴方は紫に接近して攻撃しなさい」

 

「わかりました、では、行きます!」

 

僕は紫さんに向かって最短距離を駆ける!

目の前にスキマ開く!

ゴートゥースキマ!

駆け出した地点に吐き出される!

ビターン!

はいやり直しー!

 

・・・・果てしなく無駄な僕のファーストチャレンジを巻きで紹介致しました

 

「・・・・スキマに吸い込まれるのは弾幕だけじゃないのよ」

 

霊夢さんが呆れた調子で言う

 

「・・・・すいませんでした」

 

「はいはい、スキマには注意しなさい

けど、紫が一度に開けるスキマは一つだけ、で、次のスキマを開くために少し時間がかかるから、貴方のダッシュなら一つスキマを避けることができれば紫に接近できそうね」

 

「なるほど、じゃあ、行きます!」

 

僕は再び紫さん目掛けてダッシュしようとする、その瞬間、紫さんが通常弾幕を大量に放つ

 

・・・・弾幕を避けながら、スキマを見切り、接近するーーー無理ゲーだろ!!!

〈まあ、スキマに吸い込まれさえしなければ、通常弾幕は当たっても問題ないがな〉

 

ダッシュで接近する、これしか無いから・・・・迷わず挑むのみ!!

 

紫さんへの最短距離を弾幕を避けながら接近する

さっきと同じように僕の目の前にスキマが開く、僕は横に飛び、それを躱すが、横に飛んだ先にスキマが開いていて、はいやり直しー!

 

「おいいいいい!!!開くスキマは一つだけじゃなかったのかよぉおおおおお!!」

 

「は?貴方が自分からスキマに吸い込まれに行ったように見えたけど?」

 

霊夢さん?貴女と私の認識がずれているのですけど?

〈幻覚だよ、相棒〉

な、なんだってー!?一体いつから!?

〈多分最初からだ〉

マジかよ・・・・

〈次は大丈夫だ、相手の幻覚はどの程度か良く分かったから、

次は食らう前に止めてみせるぜ〉

にしても、スキマに幻覚・・・・紫さんは僕達を本気で倒しに来てるのか?

〈多分、時間稼ぎだよ、人里を攻め落とすまでの間の〉

・・・・成る程

〈防御や時間稼ぎに徹する奴を倒すほど骨の折れることはないわな〉

でも、負けられない

〈ああ、その通りだな〉

 

僕はもう深く考えるのは止めて、紫さんへの接近を試みる

ここまで、さっきまでとほぼ同じ感じだったが

 

『霊符【夢想妙珠】』

 

霊夢さんがスペルカードを発動する、5つの巨大な光球を紫さん目掛けて放つ・・・・どうして、紫さんに弾幕は通用しないことが分かってるのに弾幕を発射したんだろう?

それは、紫さんの通常弾幕を蹴散らし、紫さんに直撃・・・・しない、やっぱりスキマで全部吸い込んでる!

 

・・・・・・・・そういうことか!!

僕は全力で紫さん目掛けてダッシュする、霊夢さんの弾幕でスギマは既に開いている!!更に、紫さんの通常弾幕は霊夢さんの弾幕によって蹴散らされている!最早、僕の紫さんへの接近を邪魔する物は何も無い!!!

 

完全に僕の拳が届く位置にまで紫さんに接近できたーーー直後、僕の目の前にスキマが開き、先程霊夢さんが放った弾幕が僕に向かって吐き出される

 

あ、相棒!早く消すやつ!!早く!死ぬ!

〈・・・・・・・・はいよ〉

 

『拒絶【分かり合えない思い】』

 

スペルカードを発動し、霊夢さんの弾幕を消し去る

しかし、この消し去る間に発生した数秒で、紫さんにスペルカードを発動させる時間を与えてしまった

 

『結界【夢と現の呪】』

 

紫さんは二つの巨大な弾幕を発射する・・・・その弾幕はすぐに破裂すると、大量の小弾幕となり僕を襲う

僕はさっきまで発動していたスペルカードの効果で小弾幕を消しつつ、後退を余儀無くされた

 

・・・・くそっ!あんなに近くまで接近できたのに、悔しい!!

 

「私の弾幕を利用して真言さんの接近を止めるとは、操られてても頭は回るようね、そのまま私に返してくると思ったんだけど・・・・」

 

霊夢さんが冷静に分析する

・・・・どうして霊夢さんはあんなにクールなんだろうか?

僕も落ち着いてクールになった方が強くなれるのかな?

〈能力的に感情を自由に動かせる今のままで良いと思うぜ?〉

まあ、確かに【思いを力に変える】には、クールな性格は向かないだろうな

 

「霊夢さん」

 

「何?」

 

「次、もう一回だけ僕一人に任せてくれませんか?」

 

「・・・・いいわよ、チャンスだと思ったら私も攻撃するけど」

 

「よっしゃ!行くぜぇ!『暴力【圧倒的な力による地殻変動】』!!!」

 

僕はスペルカードを発動させ、拳を地面に打ち付ける

すると、紫さんの足元の地面が隆起し槍のように紫さんを襲う

流石に地面はスキマで吸い込めないだろ!!

 

僕の読み通り紫さんはスキマを使わず、ステップで回避する

まあ、当たるとは思ってなかったけど、紫さんが回避するために生じる'時間'が大事なんだよね!

つまり、ステップで回避に集中している紫さんは僕に向かってスキマを使う余裕が無い

 

いつ接近するの?今でしょ!!

 

腕が届く距離まで紫さんに接近する

 

『霊符【夢想封印・集】』

 

霊夢さんの弾幕の援護射撃

色鮮やかな巨大な光球が紫さん目掛けて殺到する

それを紫さんはスキマで吸い込む

 

けど、スキマで吸い込んだ弾幕を吐き出すまでの間に僕は完全に攻撃を当てられる位置まで移動できる

僕は紫さんの目の前まで跳躍する

 

「もらったぁあああ!」

 

紫さん目掛けて拳を振り下ろす

 

「ネエ!ネエ!マコトクン!マコトクン!イッショニアソボウ!」

 

話花の叫び声が聞こえた直後、僕の目の前に'二つ目'のスキマが開き、僕は吸い込まれた

 

〈おい、これは幻覚じゃねえぞ!〉

じゃあ、紫さんがもう一個スキマを開けることが出来たってこと!?

〈その可能性もあるが、おそらく、あの人間が開けた可能性のが高いと思うぜ〉

話花が!?どうして!?

〈あの人間、自分が取り込んだ妖怪の能力を扱えるようになるのかもしれないな、推論でしかないが・・・・〉

 

相棒の推測が正しいのか、僕がスキマから吐き出された先は霊夢さんの近くではなく、結界を越えた、話花に近い場所に吐き出された

 

「アハハハハハハハ!!」

 

『爆符【ペタフレア】』

 

話花は笑いながら、右手を前に突き出す、そこから八咫烏と同じ、いや規模はそれ以上の巨大な人工太陽が出現する

 

・・・・死ぬ、冗談抜きで

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私はスキマから吐き出された私の弾幕を躱しつつ考える

 

・・・・キツイわね、真言さんと分断されていよいよ紫に対する攻め手が無くなったわ、弾幕はスキマで無効にされ、接近戦は怪我で紫と渡り合えるレベルの戦いが出来るとは思えない

 

「できるとしたら、時間稼ぎが限界かしらね」

 

私は独り呟く

・・・・そう、最悪時間さえ稼げればいい

 

真言さんがあの人間を倒してくれれば、紫やその他妖怪達の暴走も止まる

しかし、もしここで私が紫を真言さんのいる結界を越えて逃がしてしまったら、真言さんはあの人間と紫の二人の相手をしなくてはならなくなる

そうなっては真言さんの勝ち目は無くなってしまうだろう

 

だから、私はなんとしても紫をあの結界の先に逃がすわけにはいかないのだ

 

・・・・申し訳ないけど、ここは時間稼ぎに徹することにするわね

 

私は立ち上がり、紫と改めて対峙する

・・・・味方の時は頼もしいけど、敵になると本当に厄介な妖怪ねーーーでも、ここで負けるわけにはいかないのよね

 

「まあ、さっきまでで十分休憩はできたし、やれることをやりますか」

私はスペルカードを取り出し、それを宣言ーーーしようとした直後、地霊殿に巨大な太陽が生まれた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

僕に向かって太陽が近寄ってくる

 

・・・・どうしよぉおおおおおおおお

〈落ち着け!〉

だって、本家のはずの八咫烏よりもデカイ人工太陽とか、死だよ!Gameoverだよ!

〈ほら、スペルカードやるからなんとかしろ〉

おいィ?なんで7枚渡してくれるわけえ?僕に選べってこと!?

〈いや、全部使え〉

・・・・なるほど、それならいけそうだな

 

『怠惰【懶惰は自我を護るために】』

『嫉妬【嫉妬心ー刃の如くー】』

『傲慢【力有る故に生まれる思い上がり】』

『暴食【満たされない思い】』

『憤怒【超・衝・撃】』

『強欲【決して手に入らない苦痛】』

『色欲【恋人同士は嘘まみれ】』

 

僕は7枚のスペルカードを全て発動させる

 

怠惰で右腕にガントレットを装着、

嫉妬で左手で刀を生成し、それを地面に突き刺し、自分を固定

傲慢で右腕に身体強化の紫の炎が灯る

暴食で人工太陽のエネルギーを少し奪う

憤怒で人工太陽を弾き飛ばす

強欲で人工太陽は話花目掛けて飛んで行く

色欲で話花の空間認識を少しだけズラす

 

結果、人工太陽は少し規模が小さくなったものの、真っ直ぐ話花に向かって跳ね返り、彼女がそれを跳ね返そうとして振った腕は幻覚で空を切り、人工太陽は彼女の腹部に直撃した

 

・・・・無傷かよ、こっちは7枚もスペルカードを使ったってのに

 

「アハハ!タノシイネ!マコトクン!タノシイネ!」

 

無邪気に笑う話花・・・・だったもの

最早、彼女は人間じゃない、妖怪よりも化物らしい

会話以前の問題な気がしてくる、もし彼女を縛る金の糸を切ることができたとしても、彼女は正気でいるのだろうか・・・・

 

「モット!モット!タノシイコトシヨウヨォオオオオ!!!」

 

話花が叫び声の咆哮をあげる

 

『爆符【ペタフレア】』

『爆符【ペタフレア】』

『爆符【ペタフレア】』

『爆符【ペタフレア】』

『爆符【ペタフレア】』

 

先程までの巨大な人工太陽が5つ、出現する

圧倒的な光と熱量・・・・これだけ人工太陽が集まれば、本当の太陽に匹敵するのでは

 

「・・・・」

〈これは不味いな・・・・〉

 

僕と相棒が対処法を思い付く前に僕は人工太陽の炎に包まれた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私、風見幽香が鬼の星熊勇儀と地霊殿前で戦闘をしていると

地霊殿が、いや、地底が眩い光に包まれた

 

「一体何が起こってるんだ!?」

 

鬼が驚愕を露わにする

 

「・・・・」

 

私は冷静に光で眩む視界の中、地霊殿を見据える

 

数分後、光は止み、炎に包まれた地霊殿が姿を現した

・・・・これは本格的に不味いわね

 

「わ!?大火事じゃないか!?」

 

「鬼、ここは一時休戦よ、まず地霊殿の消化をするわ、手伝いなさい」

 

「お、おう」

 

私の言葉に意外そうな顔をしながら、鬼が首を振る

・・・・失礼な鬼ね

 

「おい!何が起こって・・・・地霊殿が大炎上してるじゃないか!?」

 

すると、魔法使い達や吸血鬼姉妹とそのメイドが駆けてくる

 

「見てわかるでしょ、火事よ、消化を手伝いなさい」

 

私は淡白に今の状況とすべき事を伝える

 

「咲夜、パチェを起こしなさい」

 

「かしこまりました」

 

吸血鬼はメイドに命令する

確かに七曜の魔法使いの魔法なら消化は楽になるわね

 

こうして、私達は地霊殿の消化活動を始める

・・・・真言・・・・死ぬんじゃないわよ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私、博麗霊夢が紫を相手に時間稼ぎをして数分が経った後

地霊殿が真っ赤な炎に包まれた

何事かと思って結界の方に視線をやると、5つの巨大な太陽

結界越しにも感じることができるほどの熱

 

そして、5つの太陽は真言さんに襲いかかり、大爆発を起こした

空気は震え、激しい閃光が視界を眩ませる

 

バリンという音と共に崩れる紫の結界

そこから吹き飛ばされる真言さんの身体

彼の身体はまるでボールのように跳ねて、大広間の端から端まで飛ばされ、壁に叩きつけられた

彼は倒れこんだまま動かない

服は所々破けており、彼の周りに血だまりが出来ている

辛うじて五体満足で人間の形を保っているのがまさに奇跡だろう

 

「・・・・」

 

私は突然の出来事に呆然と立ち尽くすしかなかった

 

「・・・・終わりかしらね」

 

私は呟く

私が諦めかけたその時

 

彼、日下部真言は立ち上がった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・・悪いな」

〈どうしたんだ相棒?〉

「先に謝っておく、すまない」

〈だからどういうことなんだよ!?〉

「先に逝くことを許して欲しい・・・・けど、お前だけは生き残ってくれ」

〈おい!?相棒!?相棒ぉおおおおお!!!〉

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

'俺'は咆哮をあげ、涙を流す

相棒を失った悲しみが故に

 

さっきの5つの人工太陽の爆発の瞬間、相棒ーーー本物の日下部真言の人格は俺ーーー過去の記憶を封じる為に生まれた擬似人格を守る為に自分の人格を全て能力で防御力に変換し、俺を守った

 

・・・・どうして、俺なんかのために相棒が死ななきゃいけないんだよ!!!

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!スゴイスゴイ!!イキテル!!!イキテル!!!」

 

甲高い叫び声が聞こえてくる

 

「・・・・お前か」

 

呟く

 

「お前がやったのか」

 

呟く

 

「全部、全部、お前のせいか・・・・」

 

呟き、拳を握り締める

 

「お前のせいかぁああああああああああああああああ!!!」

 

俺が吼える、今の俺に残っているのは怒りと生への執着のみ

 

怒りが戦うための力を生み出し

生への執着が治癒力に変換され、身体の傷がふさがっていく

 

まだ俺が戦うことができるのを理解したのか

 

「マダマダアソボウ!モットモットアソボウ!アハハハハハハハ!!!」

 

 

『神槍【スピア・ザ・クングニル】』

『神槍【スピア・ザ・クングニル】』

『神槍【スピア・ザ・クングニル】』

『神槍【スピア・ザ・クングニル】』

『神槍【スピア・ザ・クングニル】』

 

あいつの笑い声が聞こえてくる

鼓膜が破れそうなくらいの大絶叫

そして放たれる巨大な槍の嵐

それは回避する隙間すらなく、全てが俺に向かって直進してくる

 

・・・・けれど、恐怖は無かった

 

「アハハハハハ!!コワレチャエ!!コワレチャエ!!!アハハハハハハハ!!!」

 

黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れこの化物がぁああああああああああああああああ!!!

 

 

 

「黙れぇええええええええええええええええええ!!!」

 

感情を爆発させる

俺の中に残っているのは、最早、怒りだけ

 

俺のその感情を読み取ったのか、俺の持つ7枚の罪のスペルカードが一つの巨大なスペルカードになった

 

『七罪【総てを統べる力・黒騎士】』

 

俺の身体を闇が包み込む

その闇は俺の身体全体を覆う

闇が晴れると

俺の頭にはフルヘルム、両腕にはガントレット、そして胴から脚にかけて甲冑を見に纏っており、そして全てが真っ黒、『黒騎士』の名に相応しい姿となっていた

 

俺は腰から剣を抜いて、構える

剣は、大きな両手剣で長さは1mくらいだろうか

 

俺に向かって降り注ぐ槍の雨

 

「おおおおおっ!!」

 

剣を力の限り振る

槍は全て剣を振った際に起こった暴風で床に落ちる

 

「アハハハハハ!!タノシイネ!タノシイネ!」

 

何が楽しいねだよ!!ふざけやがって!!!

 

俺の怒りが力に変わる

漆黒の鎧は黒い光を放ち、俺の思いに応える

 

「おおおおおおっ!」

 

俺は疾風のように駆ける、化物から放たれる通常弾幕やスキマを回避し、距離を詰める

 

『【百万鬼夜行】』

『【百万鬼夜行】』

『【百万鬼夜行】』

『【百万鬼夜行】』

『【百万鬼夜行】』

 

俺を迎撃するために放たれる大量の巨大弾幕

それは、隙間無く、確実に当たる圧倒的な弾幕密度

こういう攻撃には基本は自分の弾幕で相殺するか、距離をとって回避に専念するかの二択

 

・・・・けれど、俺はどちらもしない

あいつの弾幕を全て身体で受け、剣を思い切り突き出す

 

弾幕に当たる度に、身体が悲鳴をあげる

だが、俺はそれに一切気にしない

・・・・身体がどうしたっていうんだ!!俺はそんなものより大事な相棒を失ったんだよ!!!

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」

 

弾幕の嵐は止み、俺の剣はついに化物の腹を抉った

そこから緑色の血が吹き出し、化物は今までより一段と大きな悲鳴をあげる

・・・・うるせえな、とっとと死ねよ

 

さらに、剣で袈裟に斬りつける

血が吹き出し、化物が悲鳴をあげる

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"シニタクナイ!!!シニタクナイ!!!」

 

このままでは、自分が死ぬことを理解したのか蝶の翼を使い、化物は俺から逃げ出した

 

そして、左腕のスライムの腕で八雲紫を絡め取り

 

食べた

 

「オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"」

 

化物は咆哮をあげる

その直後、身体に変化が訪れた

化物の身体全体に目の模様が浮かび上がる

さらに、身体は一回り大きくなったーーー10mくらいあるだろうか、それ以上あるかもしれない

 

「ア"ア"ギガガガグゲゲアアアアアアアア"ア"ア"ア"」

 

最早、化物は言葉すら発する事が出来なくなっていた

恐らく、人間の身には強大すぎる力を制御しきれていないのだ

 

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

 

弾幕が爆ぜる

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

紫が食われた

先程まで紫と弾幕ごっこをしていた私、博麗霊夢は動揺が隠せなかった

 

その直後、

 

「ア"ア"ギガガガグゲゲアアアアアアアア"ア"ア"ア"」

 

咆哮と共に放たれる大量の弾幕、

『深弾幕結界ー夢幻泡影ー』は紫の最強のスペルカードにして、彼女の力の集大成

そのスペルカードが十枚発動されたのだ

その威力は単に十倍、それどころかそれ以上になっている

その規模は地霊殿どころではない、地霊殿周辺8kmがこの弾幕で恐らく塵も残さず、消え失せるだろう

 

それは、人にだって言える、まともに弾幕を受けてしまえば、骨も残らず存在を消されることになるだろう

 

 

私が出来るのは、精々結界を張って自分の身を守る事だけだろう、生き残れる可能性は1%も無いだろう

・・・・ああ、せめて美味しいものを食べてから死にたかったな・・・・

 

遂に、その時は訪れる大量の眩く、強大な弾幕結界が私を襲う、私は死を覚悟した

 

 

 

弾幕は

 

 

襲ってはこなかった

 

 

『【落ちる天幕】』

 

弾幕は全て強大な斬撃で、掻き消されていた

 

「僕はまだ、やらなきゃいけないことがある」

 

声のする方を見ると、先程まで漆黒だった色を白銀に変え、背中から白い翼を生やした騎士が化物と対峙していた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「オ………、タ…ケ…」

 

声が聞こえてくる

沈んでいる意識の中で僕はそれに耳を傾ける

 

「オネ……、タスケ…」

 

ノイズが混ざっている

もっと注意して聞いてみる

 

「オネガイ、タスケテ」

 

はっきりと聞こえてくる誰かが僕に助けを求める声・・・・僕はこの声を聞いたことがある

 

探し続けてきた親友ーーー進藤話花の声だ

 

「お願い」

 

そうだ、僕はまだ何も成せていない

 

「助けて」

 

彼女が助けてと言っている

なら僕はまだ立ち上がらなければならない!!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

僕が強く願うと、視界が開け、意識が戻ってくる

 

・・・・待たせたな、相棒

〈ホントに遅えよ馬鹿野郎〉

まだまだ、終わるわけにはいかないからな

〈ああ、行こうぜ、相棒〉

もちろん!

 

話花の元へ翼をはためかせる

もっと、もっと速く彼女の元へ!!

僕が願えば願うほど翼はその輝きを増し、グングン速度をあげていく

 

「ガア"ア"ア"ア"ア"ア"」

 

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【落ちる天幕】』

 

叫び声をあげ、弾幕が放たれるがそれは僕の放つ斬撃で霧散する

 

 

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【落ちる天幕】』

 

斬撃で弾幕を消し去り、僕は更に彼女に近づく

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」

 

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【深弾幕結界ー夢幻泡影ー】』

『【落ちる天幕】』

 

駄々っ子のように泣き叫び、弾幕を放つ

それは全て例外無く消え去る

 

遂に、僕は彼女の元へ辿り着いた

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"イ"イ"イ"ア"ア"ア"」

 

「もう・・・・終わりにしよう」

 

泣き叫び、イヤイヤと頭を振る彼女に向け、僕は手元の剣に自分の全ての力を集める

 

『【無情なるエンドロール】』

 

縦に一閃

 

それは、彼女の身体を維持する黄金の糸を綺麗に断ち切った

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"・・・・」

 

一際大きな悲鳴をあげると、彼女の身体はボロボロと崩れ落ちていく

そして、最後に残ったのは黒髪のショートボブの少女、進藤話花とスキマ妖怪、八雲紫さんのみ

 

気を失い、地面に向けて落下する彼女と紫さんを抱き留め、地面に優しく降ろした

 

「ふう、これにて一件落着かな」

 

僕は鎧を解除し、ほっと一息

 

「ええ、貴方のするべき事は終わったわ」

 

霊夢さんはゆっくりとこっちに近寄ってくる

 

「ここから先は巫女の仕事よ」

 

その手に鋭い針を持って

 

僕は咄嗟に両手を広げて霊夢さんに立ち塞がった

 

「・・・・後始末ってなんですか?」

 

「その人間の能力は危険すぎるのよ、外の世界でも、幻想郷でもね・・・・

 

むしろ、妖怪達の巣食う幻想郷だからこそ危険な能力だと言えるわね」

 

霊夢さんは無表情で何を思っているのか感じられない

 

「だから・・・・どうするんですか?」

 

霊夢さんは、少し顔を嫌そうに歪めるが、直ぐに無表情に戻って

 

 

 

 

「殺すのよ」

 

明確な殺意を剥き出しにした

背筋が凍る

・・・・本気だ

 

「・・・・」

 

「さあ、どきなさい、邪魔よ」

 

「嫌です」

 

「どきなさい」

 

「嫌だ」

 

「どけ」

 

「嫌」

 

「どけどけどけどけどけ」

 

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

 

どちらも譲らない、いや、譲れない

議論では無く、最早、意地の張り合いだった

 

・・・・ていうか、僕は三文字、相手は二文字・・・・ずるくね?

〈大事なのはそこじゃねえだろ〉

 

お互い、このままでは永遠に平行線だという事がわかったので、霊夢さんと僕は懐からスペルカードを取り出した

 

「まさか、異変の最後に貴方と戦うことになるとはね」

 

「異変を解決するのは、巫女の役目なんだろ?

僕は巫女じゃない」

 

「女みたいな顔して・・・・巫女服着れば十分巫女やれるんじゃないの?」

 

「・・・・人の黒歴史を思い出させやがって・・・・

 

許さん」

 

〈相変わらず、相棒の怒りの沸点が意味わからないぜ〉

 

僕は先手必勝とばかりにスペルカードを宣言ーーー

 

しようとした瞬間に後頭部に鋭い痛みが走った

 

 

薄れいく意識の中、後ろを向くとそこには「ごめんね」と僕に申し訳なさそうに言う進藤話花の姿があった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「で、そいつの代わりにあんたが私と戦うの?」

 

「いいえ」

 

「じゃあ、何の用なの?」

 

「・・・・私を殺して下さい」

 

「ふぅん、どういう風の吹きまわしかしら、まあ、こっちにとって協力的なのは嬉しいのだけれど」

 

「真言君ーーー彼が教えてくれたんです、自分の能力に取り込まれて薄れる意識の中、何度も呼んでくれた、諦めるな、守ってやるって・・・・でも、私がいる限り、彼に迷惑がかかってしまう、それだけは絶対に嫌なんです」

 

「そう」

 

「お願いします」

 

「出来るだけ苦しまないように終わらせてあげるわ」

 

私は真言君の唇にキスをした

 

・・・・これくらい、いいよね

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

僕が目を覚ましたのは、異変が終わってから三日後だった

 

そして、全てを聞かされた、親友の死やその他諸々

その他諸々って表現したのは、話花の死がショックすぎて他の事を聞ける余裕が無くなったから

 

霊夢さんに対して怒りや憎しみは抱かなかった、心の中はただただ、虚無感でいっぱいだった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

誰か一人が傷ついて責任を取るだけでは物語は終わらない

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

数日後、僕は妖怪の山の人気のない場所に来ていた

 

僕の物語は落下して始まった

なら、物語の終わりも当然落下して終わるに限る

 

・・・・悪いな、相棒

〈俺は元々は消える予定だったんだ・・・・今更文句はねえよ〉

ありがとう

 

僕はここに飛び降り自殺をしに来ていた

 

なぜか、恐怖という感情はない

・・・・今度こそ、親友と同じところに行けるからかな?

 

飛び降りようとした、その時

 

「おいおい、何しようとしてんだよ、真言」

「・・・・魔理沙」

「悪いけど、見逃せないわ」

「・・・・霊夢さん」

 

「見ろよ、あれを」

魔理沙が指差した方向には僕の知り合いの人間、妖怪達が僕を探している姿があった

 

「貴方に死なれると、いろいろめんどくさいのよ、まだ異変解決の宴会もやってないしね」

「まったく霊夢は素直じゃねえなあ」

ぶっきらぼうな霊夢さんに微笑む魔理沙

 

つられて僕も笑ってしまう

 

ああ、こんなに自分が思われてることを知ってしまったら

飛び降りなんてできるわけないじゃないか・・・・

 

 

こうして、僕の幻想郷永住が決まったのだった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

異変解決の宴会

始めて飲酒をした未成年の真言くんでした

 

泥酔しました

 

何をして何を口走ったのかは覚えていません

 

唯一分かることは、僕が目を覚ました時

 

僕は全裸でした

 

・・・・飛び降り自殺してやろうか

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここは彼岸、死者達の終着駅ですよーーーおや、貴女は」

 

「・・・・」

 

「こちらこそ、はじめまして、私は幻想郷の閻魔、四季映姫ヤマザナドゥです」

 

「・・・・」

 

「あんなに凄い異変を起こしたんです、勿論、貴女は地獄行きですよ」

 

「・・・・」

 

「おやおや、割とあっさりしてますね」

 

「・・・・」

 

「私はそれだけの事をした・・・・ですか、どうやら反省はしっかりしているようですね」

 

「・・・・」

 

「ぱんぱかぱんぱんぱーん」

 

「・・・・!?」

 

「貴女には、新しい選択肢が与えられました」

 

「・・・・?」

 

「貴女は天国に行く事は出来ませんが

 

新しい命として転成することが出来るようになりました

更に、どういう存在に生まれ変わりたいか、人間、動物、植物etcを貴女は自らの手で選ぶ事が出来ます

 

では、貴女はどのような新しい命を望みますか?」

 

「・・・・」

 

「ほう、それでいいんですか?

生まれてこれるかどうか不確定ですよ?」

 

「・・・・」

 

「それでもいいーーーですか、分かりました、では行きなさい」

 

「・・・・」

 

「お礼なんて要りませんよ

 

貴女は私の友人の親友ですからね

・・・・借りは返しましたよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、時は流れに流れて

 

「おー、よしよしパパだそー」

 

「ま、ま、こ、」

 

「ん?まこ?僕のことかい?」

 

「ま、こ、く、ん、あ、り、あ、と」

 

「っ!?

お、おい!この子の名前変えるぞ!!

 

名前は話花だ!話花!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

けれど、物語の最後には誰もが笑顔になれる結末が待っているんだ

ーーーーーーーーーーーーーーーー

Fin




これで、『東方言葉録』は終わりを迎えます

で、今後はタイトルを一新して
『東方真言記』という新しい連載小説を始めようと思います

これは、精霊異変から数年後の真言君の幻想郷生活を描いた物語です

そして、この東方言葉録の更新ですが、描けなかった霊夢vs萃香や幽香vs紫などのサイドストーリーを上げていくことを考えています、しかし、完全に不定期更新になってしまうのですが、時々チェックしてみて下さい

では、次はタイトルを変えた『東方真言記』にて会いましょう!
これからもよろしくお願いしますm(__)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。