東方言葉録   作:ワロリッシュたん

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今までは、「短く完結に」をコンセプトにやってきましたが、この話から先は異様に一話一話が長くなります

すみませんが、この先も頑張って読んでくれるととても嬉しいです
では、第二十一話、よろしくお願いします!!!


第二十一話、一緒に行こう

どうも!いつもニコニコ貴方の隣に這い寄る高校生、日下部真言です!

 

今日は久しぶりに出番が来たということで、僕の名前の秘密について教えちゃいます!

僕の名前、『真言』ですが、『真』だけでも『まこと』と読めます

では、『言』には一体どういう意味があったのでしょう?

 

正解は某超有名漫画家『手◯治虫』の『虫』みたいなノリだそうです

 

・・・・すいません、久しぶりの出番なのでテンション上がり過ぎて変な事を口走ってました

 

では、今の僕が置かれている状況について言及すると

 

アリスと妖夢さんと一緒に三途の川に辿り着いたと思ったら何処か別の場所に一人だけ連れてこられたでござるの巻

ということだ

 

僕が連れてこられた場所は、本当に何も無い空間だった

壁の雰囲気的に建物の一室のような感じだ

全体的に霞がかっている・・・・室内なのに?

嫌な感覚がする、自分がここにいてはいけないと警鐘を鳴らしている

 

幾ら一人で考え込んでも状況が把握できるはずはないので、僕と同じくここにいる人物に尋ねることにする

緑の短髪に奇妙な帽子を被っている女性、ここには僕とその女性しかいなかった

 

「ここは、一体何処なんですか?」

 

彼女の凛とした声が響き渡る

「ここは、彼岸

死者達の終着駅ですよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私ーーーアリス・マーガトロイドは困惑していた

三途の川に着いた途端、日下部真言が

 

消えたのだった

 

 

 

 

 

「アリス殿、真言殿は一体何処に行ったのですか?」

妖夢も困惑した様子で私に尋ねる

「私にもわからないわよ・・・・」

私がそう答えた直後ーー

 

「おやおや、お二人さん

お困りかね?あたいで良ければ相談に乗ろうじゃないか」

赤い髪に青の着物を着て鎌を持った死神ーーー小野塚小町が現れた

 

 

 

「あら、サボリ魔の死神じゃない」

「おいおい、そんなこと言うんじゃないよ人形遣い

あたいだって働く時は働くさ・・・・ただ、休憩の時間が長いだけさ」

「だからって、仕事の時間もそっちのけで休憩ばっかりとるのはいかがなものかと・・・・小町殿」

「あれえ!?魂魄のはあたいの味方じゃないのかい!?

あんたもあたいと同じような従者的なポジションだろ?」

「従者的じゃなくて私は従者ですが」

「しかも、妖夢は年中無休で仕事してるわよ」

「うへー、あたいには理解できないねえ、年中無休とか・・・・下手すればあたいは1、2年で死ぬね」

「死神なのに死ぬの?」

「そりゃ、死ぬだろうさ・・・・多分」

小町はなんともいえない顔をしている

 

 

あれー死神って死ぬのかなー?死神が死ぬなんて聞いたこと無いから、まさかあたいは不死なのかーそーなのかー

 

・・・・とか考えてるんでしょうね

 

「・・・・あたいは人食いはしないよ」

「どうしたのですか?小町殿?」

「いや、なんだか凄く失礼な目で見られてるような気がして・・・・」

 

 

 

「で、サボリマイスター、質問があるのだけれど」

「だから、私はサボリじゃな・・・・

私だってさっきまで仕事してたんだよ!

しかも、四季様から頂いた超重要任務!

いやー久しぶりに良い仕事したねー」

四季様ーーーああ、四季映姫のことか

四季映姫・ヤマザナドゥーーー死者達を裁く、この三途の川の果てある彼岸で仕事をしている幻想郷専属の閻魔様

・・・・彼女に出会うと最後、死よりも辛いお説教が待っていると恐れられていることで有名ね

 

 

そこまで聞いた時、私はある可能性に辿り着く

小野塚小町の能力『【距離を操る】程度の能力』と消えた真言、ここから導き出される答えは・・・・

「で、その超重要任務ってのは人間をここから彼岸に送ることじゃないでしょうね?」

「ほう・・・・」

私の質問を聞いて、小町の雰囲気が変わる

「人形遣い、あんたなかなか頭が切れるじゃないか」

「こ、小町殿?」

小町の変化に妖夢は困惑しているみたいだけど、私は言葉を続ける

「あら、その様子だと正解みたいね」

つまり、小町は真言の彼岸への距離を操って彼を彼岸まで送ったのだ

「まあ、大体合ってるね、

でも、正答率としては80%くらいだね」

「残りの20%は?」

私がそう言うと小町は鎌を構えて言う

 

「残りの20%は・・・・

 

ここを越えて彼岸へ行こうとする不届き者を殲滅することだよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はい、どうも!日下部真言です!

えーと、僕は突然『彼岸』という幻想郷の死者の裁判所に来ています!

 

そして、そこにいた幻想郷の閻魔様ーーー四季映姫・ヤマザナドゥ様に・・・・

 

 

 

 

説教をされています、正座で

僕が彼岸についての質問を終えた直後、彼女は

「日下部真言、そこに正座しなさい・・・・・・・・

 

 

正座ぁっっっっ!」

と叫び、その勢いに思わず僕は正座をしてしまい・・・・すると

 

「そう、あなたは少し迂闊すぎる」

という彼女の言葉から

 

フェンスの老朽化の可能性くらい考えろとか、そもそも屋上は立ち入り禁止だとか・・・・幻想郷以前の出来事を中心に心が折れそうなくらい閻魔様のありがたい、ありがた〜い、ありがた迷惑な説教をいただきました

 

いやー、楽しい時間は直ぐに過ぎて、辛い時間は過ぎるのに時間が掛かるというのの典型ですね

・・・・永遠を感じました、割とガチで

 

 

ほう、と閻魔様は話を区切るかのように息を吐き

これからがまさに本題と言わんばかりに息を吸った

・・・・まだつづくんですかねえ

 

「さて、ここまで貴方が犯してきた過ちについてお話をさせて頂いたわけですが、私は未だ貴方の犯した許されざる罪については言及していません」

「僕の犯した罪・・・・」

罪・・・・?

僕は万引きだってしてないし、交通ルールもしっかり守っていた、ましてや殺人なん・・・・て・・・・

 

「どうやら、ほんの少し、記憶は残っているようですね・・・・

しかし、貴方は忘れてしまっている

 

いや、貴方は自分の記憶を封じているのです、自らの手で・・・・」

「記憶を封じてる・・・・?」

「ええ、貴方は自分の犯した罪の記憶を封じています、貴方の『真の能力』と共にね

『【言葉を現実にする】程度の能力』?そんなものは貴方の真の能力の一部に過ぎません

『【言霊を操る】程度の能力』?それは貴方の力の依り代を【言霊】という形にしただけです、貴方の真の能力はそんな形に囚われない自由な能力なはずです」

意味がわからない、閻魔様は何を言っているのか

「意味がわからないですか?知らないですか?

そうやって貴方は目を背けようとするのですか?

 

そう、日下部真言、貴方は少し、自己防衛が過ぎる」

 

閻魔様が僕に目を向ける

しかし、その瞳は僕を見てはいない

まるで、僕の中にある僕以外の何かを見ているそんな感覚・・・・彼女は一体何を見ているのだろうか・・・・

 

「やはり、貴方は己の罪に気づく必要があるようですね・・・・」

「僕は罪なんか犯してない!」

はぁ、と閻魔様は呆れたように溜息をついた

「いいえ、貴方は犯しています

では、問います・・・・貴方の両親は何処に行ったのですか?」

両親?閻魔様は一体何を?

「質問の意味がわからないです、僕の両親は何処にも行っていないし、そもそも外の世界の話は関係ないで「その両親ではありませんよ、日下部真言、貴方を産み貴方に名前をつけた両親の話です・・・・」

僕の言葉を途中で遮り閻魔様が告げる

僕を産んだ両親・・・・?

それは今の両親のことじゃな・・・・いの、か・・・・

 

そう考えた瞬間、僕の心が二つに別れた

違う!と言う心と違わない!と言う心ーーーその二つに・・・・

 

「少しは違和感を感じましたか?」

閻魔様は僕に尋ねる

「い、いや・・・・何も感じないね・・・・」

僕は虚勢を張る

「ふう、貴方も強情な人だ・・・・

これはあまり使いたくなかったのですが、

時間もありませんし

・・・・仕方ありませんね」

使いたくない?時間がない?一体彼女は何を言っているんだ?

 

すると、彼女は一枚のスペルカードを発動させた

『知罪【フェイストゥユアイノセントシン】』

 

そのスペルカードは弾幕では無かった

スペルカードが発動した直後、僕の影は僕の足元を離れ、

 

立ち上がった

 

『立ち上がった』というのは少し語弊があるかもしれない

僕の影は足元を離れ、地を這っていた状態から人型に姿を変えた

 

その影の姿は、僕そのものであった

「おお、やっと外に出れたぜ」

影が喋る、僕と同じ声で

なんという違和感・・・・自分と話をするなんて

「その影は貴方の罪そのものですよ、日下部真言」

「・・・・僕の、罪」

「そうだ、俺はお前が長年封じてきた

罪の記憶ーーーそして、お前の真の能力、そのものだ」

「おや、能力まで出てきてしまいましたか」

「ああ、コイツの罪は能力に深く関係しているからな」

影が僕を見る・・・・

「よお、覚えてるか?いや、覚えてないから俺がいるんだよな・・・・」

「お前は・・・・一体なんなんだよ・・・・?」

「本当は気づいているくせに」

「っ!?」

「お前はまたそうやって、知らない振りをするのか?」

「う、るさい!うるさい!」

聞きたくない!僕はお前の話なんか聞きたくない!

『言霊【荒唐無稽】!!』

僕はスペルカードを発動させる

言霊に霊力を与え、レーザーを発射する

 

「逃げてんじゃねえ!」

『拒絶【分かり合えない思い】』

影もスペルカードを発動し、レーザーに向かって己の拳を突き出した

すると、僕の放ったレーザーは文字通り消え去った

「これは、拒絶・・・・相手のスペルカードや能力を無効にするスペルカード」

影は何故か自分のスペルカードを説明する・・・・こいつは一体何が伝えたいんだ

 

「くそ、まだだ!」

『言霊【快刀乱麻】』

僕は再びスペルカードを発動させる

言霊の口から空気の刃が放たれる

 

「邪魔だ、小賢しい」

『強欲【決して手に入らない苦痛】』

影は言霊から放たれた空気の刃に向けて掌を向けた

すると、空気の刃はすべて奴の掌に集まって進み、奴はその空気の刃を掴み取った

「これは強欲・・・・相手のスペルカードを相手に返すスペルカードだ」

そう言うと影は空気の刃を僕に向かって投げた

 

「う、くっそがぁあああ!」

僕は叫ぶと思い切り跳んだ、多少は食らってしまったが、まだ身体は動く!

 

この戦いで少し影の行動パターンが分かってきた

あいつは遠距離攻撃を行わない・・・・つまり、距離をとって冷静に戦えば!

 

僕はバックステップで影との距離をとろうとしたが

「遅過ぎるんだよ」

その間に奴は僕の真後ろに移動していた

「嘘・・・・だろ?」

「少し寝てな」

 

影は僕の後頭部を殴りつけた

鋭い痛み、意識が飛びそうだ吐き気がする

「ごほっ、ごほっ」

蹲り、咳をする僕・・・・少し血を吐いた

 

すると影は僕に止めをさすのではなく、言霊の首を握り持ち上げる

「そうだ、あの時もこうやって、」

やめろ、言うな

「両親のーー」

やめろ!これ以上言うんじゃない!!

僕の意思とは裏腹に身体はさっきの影の一撃の所為でまったく動かない

「こうやって両親の首を締めて殺してたなあ」

影は力を込めて言霊を『握り潰した』

「うわぁああああああああああああああああ!」

その直後、まるで封印が解かれたかのように流れてくる僕の過去の記憶・・・・そう、僕は自らの手で両親を殺したのだった

 

そして僕は全てを思い出す

己の罪、己の本当の能力を

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それは僕が小学低学年の頃、

両親は正直、真っ当な人間ではなかった

煙草は吸うわ、酒は飲むわ、借金だってあったし、僕を虐待することもあった

僕は必死に我慢した

しかし、あいつらは僕の宝物だった祖父から貰った絵本を僕の目の前で破り捨てた

 

その瞬間、僕の中で何かが弾けた

 

そう、それが僕の真の能力

『【思いを力に変える】程度』の目覚めだった

 

僕はその能力で両親への憎しみを力に変えて、人を優に超える力で両親を殺した

 

それが僕の封じていた罪だ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうやら、思い出したみたいだな」

影は僕に話しかける

 

「・・・・お前が」

今の僕には立ち上がる体力も精神力も無かった

倒れ込んだまま影に話しかける

「お前がやれよ・・・・僕には関係ないだろ」

「っ!?お前、本当に言ってんのか」

影の表情が驚愕に変わる

「ああ、身体だったらくれてやる、好きに使えばいい・・・・僕を巻き込むな」

そうだ、僕の代わりに影がすべてやればいい、異変の解決も何もかも・・・・お前は僕なんだろ?

 

「この腰抜け野郎が!!」

影は僕の胸倉を掴み叫ぶ

「俺だって、お前みたいな腰抜け野郎じゃなくてな、自分の手で解決してえよ!!

だけど・・・・」

冷たい感触・・・・涙?

影に視線をやると・・・・影は泣いていた

「俺じゃ駄目なんだ!!

俺じゃ、憎しみや怒りの感情に囚われちまう!!!

守りたいものも俺じゃ守れないんだよ!!!!」

 

ああ、そうか・・・・

「アリス、魔理沙、妖夢、霊夢、幽々子、幽香・・・・皆を俺じゃ守れない、むしろ壊してしまうかもしれない・・・・だから!!」

・・・・そうか、こいつは僕なんだ

 

気が付けば、僕は影を抱きしめていた

「気付くのに時間が掛かってすまなかった、お前は僕だったんだな・・・・」

「ああ、遅過ぎんだよ・・・・腰抜け野郎・・・・

後は、任せたぜ?」

影は僕を見て、泣きながら笑顔を作る

それに僕は

 

 

 

「嫌だ」

 

と渾身の笑顔で答えた

「はあ?」

影は泣くのも忘れて驚愕に顔を変える

 

「お前の言う通り、僕は腰抜け野郎だ

僕一人じゃ何もできない

だから・・・・

 

お前も一緒に来い、お前も僕なんだろ?」

僕は影に向かって言う

「ふっ、あはははははは」

影は笑い出す

・・・・失礼な奴だな、こっちは真剣だってのに

「・・・・後悔すんなよ?」

影は僕に問う

「後悔も反省も十分した、後は開き直るだけさ」

「ははっ、ちげえねえ」

影と僕は握手をした

「さあ、行こうぜ相棒」

「ああ、行こうぜ相棒」

「「幻想郷を守りに」」

 

僕等がそう言うと、影ーーー相棒は僕の身体の中に入ってきた

「どうやら、終わったようですね」

閻魔様が話しかけてくる

「ああ」

「貴方の罪は許されるものではありません」

「わかってる」

「けれど、善行を積めば天国には行けるかもしれませんね」

「そうか・・・・」

「幻想郷を救うこと、それが貴方の今の積める唯一の善行です」

「ああ、わかってる、僕に任せとけ」

「はい、任せましたよ」

閻魔様は笑顔で答えてくれた

・・・・笑ったら結構可愛いじゃないか

 

「『地底』を目指しなさい、そこに全ての元凶がいます・・・・貴方はもう、その正体に気付いてるかもしれませんけど」

「・・・・」

 

「一つだけ質問をさせて下さい、もし自分の親友が悪事に手を染めていたらどうしますか?」

 

「話し合って、

話し合って、

話し合って、

それでもだめなら、

 

殴ってでも連れ戻す」

「ふふっ、いいでしょう、及第点です

一つになっても他人に甘いところは変わらないようですね」

閻魔様は面白そうに言う

「うっせ」

僕は少し拗ねてみせる

 

「出口は用意しておきました、そこを通れば貴方の力ならすぐに三途の川を渡りきれるでしょう」

閻魔様が指を差す、その方向には穴ができていた

「またな」

「ええ、幻想郷を頼みますよ」

 

僕がその出口に入ろうとした瞬間、世界が震えた

 

 

続くのか続かないのか、白黒はっきりつけましょう!


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