一晩に渡る霊夢の治療を終えて
服の中心で赤と青に色が別れている服を着た幻想郷の医者ーーー八意永琳が治療室から出てくる
「霊夢は大丈夫なのか!?」
「ええ、命に別状は無いわ
けれど、目を覚ますのに時間がかかるかもしれないわね」
「そうか、それなら問題ないんだ」
ところで、と私は間を作って
「話は変わるんだが、
どうしてここにいる住人は
ニートは'いない'のに
まるで'いるか'のような
振る舞いをしているんだ?」
ニートっていうのはここ永遠亭の主のかぐや姫ーーー蓬莱山輝夜のことだ
「っ!?魔理沙、貴方
姫様が'いないのがわかる'のね?」
「ああ、いないものはいないじゃないか」
「・・・・私の研究室までついてきなさい」
永琳は驚くと早足で研究室に入っていく
断る理由もないし、私も永琳の研究室に入る
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「確かに、姫様は数ヶ月前から姿を消しているわ
私の前だけにね」
「?どういうことだ?永琳の前だけ?鈴仙や兎達の前からも姿を消しているじゃないか」
「私だけから姿を消しているというのは、言い方がよくないわね、正しくは姫様が姿を消していることに'気づいている'のは私だけということよ」
「じゃあなにか?鈴仙達にはニートがいるように見えているってことなのか?」
「ええ、そうよ。
彼女達の『存在認識の境界』が弄られているの」
「存在認識の境界だって!?」
「そう、存在認識の境界が弄られた者は存在していないものを存在しているように認識する」
「だから、あいつらはニートがいるように振舞っているのか」
これで、鈴仙が誰もいない部屋に向けて呼びかけていたり、
食事を一人分多めに用意していた理由も理解できた
「そして、姫様を連れ去り、存在認識の境界を弄ったのは・・・・」
「八雲・・・・紫か」
いよいよきな臭くなってきたな
紫・・・・今度は何をたくらんでやがるんだ?
少しの間の後、今度は永琳の方が納得できないことがあるのか私に質問してきた
「ねえ、魔理沙
貴女はどうして姫様がいないことに気がついているの?」
「それは、永遠亭の外から来たからじゃないのか?」
「それだったら、他人が外から来たらすぐ失踪したことがバレちゃうじゃない、八雲紫はそんなミスはしないわ」
「・・・・正直、心当たりは無いぜ」
「本当?最近変なものを食べたとか、変なものを拾ったとかないの?」
「私は犬か何かかよ・・・・っ!?」
変なものではないけれど、一つ心当たりが見つかった
私は帽子から小瓶を取り出す
「これは?」
「つい最近来た外来人の日下部真言の荷物に入ってた林檎ジャムだ。
美味しいから借りておいたんだぜ」
「少し、いただくわね」
そう言うと、永琳は一口ジャムを舐めた
「・・・・やっぱり」
「ん?どうしたんだぜ?」
「このジャムには、
八雲紫の能力を打ち消す効果があるわ」
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私ーーー鈴仙・優曇華院・イナバは何時ものように、昼食を用意して、姫様を呼びにいく
「姫様ー?ご飯ですよー!」
「おい、鈴仙」
姫様を呼んでいる私に話しかける声が一つ
「何よ?魔理沙、あんたの分の昼食だって用意してうぇっ!」
すると、魔理沙は私の口に向かってスプーンを突き込んだ
「なにすんのよ!
・・・・あれ?」
私は魔理沙に文句を言おうとしてる間に異変に気づく
「姫様は一体どこに?」
「姫様はいないわ、失踪したのよ」
答えたのは、私の師匠ーーー八意永琳師匠だった
「うどんげ、目覚めたばかりで悪いのだけれど
魔理沙と一緒に姫様を探しに行って来なさい」
え、えぇーーーーー!?
続くわねって、座薬は関係ないでしょ!?