ギンガちゃん視点です。
私にとって死は身近な存在。
見えないけど自分の中に存在しているのがわかる。
ここにいる。
私の中に死に対する恐怖が存在する。
私の中に死の恐怖という概念が存在する。
怖い。ただ私は怖い。私を救ってほしい。
私はここに居る。
ここに居るから。
リリカルナデボ その4 アクティブ少女ギンガちゃん
陸の怪物と呼ばれているナイ一等陸尉の護衛として、街の視察に同行するという任務が陸士108部隊の私に下されました。ナイ一等陸尉・・・陸では良い噂を聞かない人です。私はあまり知らないのですが、次元犯罪者を何人も殺してきた危険人物のようね。
私の上司のお父さんや部隊の皆には気をつけるように、何かあったら念話ですぐに連絡を寄こすようにとも言われ・・・すごく不安です。
待ち合わせ場所で20分くらい待っているけれど一向に現れる気配がない。時間にルーズな人なのかしら?
「やぁおはよう。君がついてきてくれる局員でいいのかね?」
「うひゃあ!」
後ろから急に声を掛けられた私はびっくりして変な声を出してしまう。・・・恥ずかしい。
気を取り直して振り返り、後ろから声をかけてきた人を見る。そこにいたのは黒いローブを身にまとった長身の男性でした。資料に載っていた人物、ナイ一等陸尉で間違いないようです。
「・・・えーごほん。その通りです!私はギンガ・ナカジマ二等陸士であります!本日はミッドチルダ視察に同行させていただきます!」
わたしは敬礼しながら自己紹介する。するとナイ一等陸尉はニヤニヤしながら口を開く。
「最近はそんな可愛らしい挨拶が流行っているのかい?」
「い・・・いいえ!流行っていません。」
・・・なかなかフレンドリーな人のようね。
「ふむ・・・流行ってないのか。それは残念だ。では行こうか。」
ニヤニヤしながらその場から移動しようとするナイ一等陸尉。
「ま・・待ってください!」
私はナイ一等陸尉の後ろを慌ててついていくのだった。
外は雪が降っていました。季節は冬。お鍋が食べたくなってきたわね。今度スバルを誘って行こうかしら。
・・・ナイ一等陸尉と街中ではぐれた。
始めは好き勝手動き回って付いていくので精一杯だったけれど、はぐれることはなかった。
けれどお手洗いに行くというから、トイレの前で待っていたのにいつの間にかトイレからいなくなっていた。・・・逃げた?
「・・・ってどこに行ったのよー!」
叫びながらデバイスを起動。ナイ一等陸尉の魔力反応を探す。・・・裏路地を進んでいるようね。先回りして合流しよう。あの人はホント自由な人だなー。噂より怖い人ではなかったけれどこの任務は思ったとおり大変だったね。すぐ合流できるように走って裏路地に向かう。
「・・・・・・・・・・・・・・・ああああああああああああ!」
裏路地に向かうといきなり叫び声が聞こえた。何かあったのかと思った私はデバイスを展開する。叫び声が聞こえた場所にはナイ一等陸尉がいて、大釜を持った女の子が襲いかかろうてしていた。
がきっ!
微動だにしないナイ一等陸尉に鎌が振り下ろされそうになったが、私が横から割り込んで鎌ごと女の子を弾き飛ばす。
「ナイさん!御無事ですか?ようやく見つけましたよ!」
とりあえず無事だったことに安堵する。もし間に合わなかったとしたら・・・ゾッとするわね。
「ふむ・・・最近の街はこんな素敵な場所だったのだね。これなら毎日来ても退屈しないで済みそうだ。」
「そんなこと言ってる場合ですか!?「あああああああああああああああ!」きゃぁ!?」
ふざけたことを言うこの人に青筋をたてながらツッコミを入れるんだけど、目の前の女の子が突撃してくる。くっとりあえずこの子を取り押さえないと!
数分の戦闘のあと、私の一撃が女の子に入り倒れる。・・・なんとかなったわね。
息を整え一息つく。女の子は身体能力が高かったようだけど、技量は素人だったわね。
「ご苦労さまギンガちゃん。疲れたかい?はいジュース。」
ナイさんがジュースを渡してくる。いつのまに買ったんだろう?
「はぁはぁ・・・あ・・ありがとうございます。いただきます。」
私は受け取ったジュースを一気に飲む。そしてこの女の子に対して心当たりがあるので一応伝えておく。
「・・・この子は最近ミッドチルダを騒がしていた殺人鬼『死の恐怖』かもしれないですね。この前見た犯行資料に載っていたものと手口が似ています。こんな女の子だとは知りませんでしたが。」
ミッドチルダには殺人鬼が何人か存在する。有名どころでは『置き去り』や『芸術家』などがいる。資料にはこの子の特徴や手口が載っていた。
「いやぁそれは怖い。私みたいな非力な人間にとっては恐怖でしかないね。」
ニヤニヤしながらそんなことを言う・・・しょうがない人だなこの人。
「・・・増援は呼んでおきました。後10分もすれば合流してくれるでしょう。その間待機となりますがよろしいですか?」
念話で増援を呼んでおいた。援軍が来るまでこの子を見張っておかないと。
「よろしいよ。それとギンガちゃん。もうちょいそれから離れたほうがいいよ。」
そう言われ、反射的に私はその場から飛び退く・・・そこに巨大な鎌が突き刺さる。
大鎌を振り下ろしたのは、倒れた女の子から浮かび上がる、関節ごとにパーツを分解した人形のような奇妙な姿で、顔に当たる部分にはボウリングの球のような三つの穴が存在する者・・・何なの・・・これ?
「・・・これは・・・この子の体から出てきた!?」
私が驚愕の声を上げると、私を捉えそこなった大鎌がナイ一等陸尉に狙いを変更して襲いかかる。
「ふむ。禍々しき波の八つの相の一つ、第一相『死の恐怖』スケィス。
私と似たような存在かな?実に興味深い。」
ナイ一等陸尉はこいつを知っている?死の恐怖・・・スケィス?
「あああああああああああああ!」
叫びを上げながらぬるりと立ち上がる女の子。・・・こんなにすぐに起き上がれるなんて!?
「ナイさん下がってください!この子は・・・いえこれは危険です!」
ナイ一等陸尉に呼びかける。しかしナイ一等陸尉は首を振り、殺人鬼に向かい合う。
「ギンガちゃん。私がこれの気を引こう。君は隙を見せたこれに一撃を入れてくれたまえ。」
・・・ナイ一等陸尉の実力はある程度噂で聞いている。危険だろうがわたしが前に出るよりかは大丈夫だろう。そう納得することにする。
「・・・わかりました。でも無理はしないでくださいね。」
そう言い、私は殺人鬼の死角に回り込む。
「さぁ第一相『死の恐怖』の力を得てしまった同郷の士よ。私が悪夢から目覚めさせてあげよう。遠慮する必要はない。さぁ私に全てを委ねなさい。君の狂気は私が受け継ぐ。」
後ろに回り込む途中の私の耳に、そう言って笑うナイ一等陸尉の声が聞こえた。
「死に恐怖する事は弱いわけではない。恐怖に打ち勝ってこそが強さである・・・とか誰かが言っていたような気がするがね。私はそうは思わない。恐怖に打ち勝ったとしても最後に訪れるのは絶対なる絶望。そして狂気に蝕まれる。不屈の心なんてものはこの世に存在しない。存在するとすれば・・・それは既に狂ってしまっている心。最初から狂っているものはもう狂うことはできない。」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ナイ一等陸尉の一撃で大鎌を持った腕を吹き飛ばし、その隙を逃さず殺人鬼に渾身の一撃を叩き込む。倒れ込んだ怪物は消滅する。そして少女はその場に崩れ落ちた。
「・・・倒したんですか?」
「あぁこれでこの少女は死の恐怖に怯える事はなくなったよ。」
私は少女を拘束しながら疑問に思ったことを口にする。
「この子は・・・貴方の同郷の方だったんですか?」
「・・・まぁそういう事になるね。」
そう言うこの人の顔には悲しみが浮かんでいた。
・・・けれどすぐにヘラヘラとした胡散臭い表情に戻る。
「さてギンガちゃん。今日から君は私のソウルフレンドです。いつでも遊びに誘っていいからね。じゃあ後は任せたよ。」
そう言ってナイ一等陸尉は転移魔法で離脱した。
私はいきなりソウルフレンドと言われてしまって、キョトンとしてしまった。
なんだったんだろうこの人は。不思議な人ね。・・・ってナイ一等陸尉の分も後処理私がやるの!?
その後、女の子はレアスキルの暴走によって殺人を起こしていた事が判明。精神状態が不安定のため、今は暴走しないよう監視されながら精神病棟で入院しているそうだ。
精神状態が安定してから裁判が行われるそうだ。
私はといえば、ナイ一等陸尉と同行したという理由で、異常がないかチェックされた。そこで私は変な人だったけれど、噂程ではなかったと発言したら、精神病棟に連れて行かれそうになった。私は正常だぁ!
後、端末の連絡先にいつの間にかナイ一等陸尉の連絡先が保存されていた。・・・いつの間に保存されていたのかしら?
主人公:ナイさん(偽名) その後、ちょいちょい街に遊びに行ったそうです。
ソウルフレンド:ギンガちゃん たまに主人公とメールするようになりました。
被害者:ヤンキー 頭がパーン。
被害者2:襲われていた女の子 頭がパーン。
殺人鬼:『死の恐怖』 頭がパーン・・・でも死ななかった。
増援:管理局員の皆様 いつもより現場がひどくなくてびっくり。でも別の場所で死体を見つけてびっくり。
タコ:Great Old Ones こんなん召喚されたらミッドチルダ詰むわ。
ひと夏の思い出:邪教徒 頭がパーン。
転生者達が作った一族:零崎 頭がパーンとなってほぼ全滅。
転生者の血を引く一族:七夜 頭がパーンとなってほぼ全滅。
今回はビグロくない:プラモ欲しい・・・作る時間ないけど