ブラック・ブレット【蒼き閃光】   作:ウィキッド

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お久しぶりでーす! そして駄文でーす。はい


臆病者

「―――――なた――愛――」

「――ね! 悪魔め!」

「―――――なさい。そして、ありがとう――――」

 

 

 大切な人の憎悪の声。涙を流しながら自分にお礼を言う女性。それぞれの声がノイズ交じりに聞こえてくる。

 これは夢だ。そう確信した。だって

 

――――――――彼らは私が殺したのだから

 

 

 

 

 

 

 場面が変わり、先ほどよりもノイズがひどくなる。

 

「この老いぼれ――に――ことなら――と」

「お嬢ちゃん。――あんたのために――した」

「いままでの私は死にました。そして今日これからはあなたのためだけに――――。――――ください」

「――見つけてくれて……ありがとう」

「兄さんは渡しません……ですが、感謝は――」

 

 

 自分は話しかけられていた。しかしどれも姿は見えない。そして――――

 

「何があっても僕は君の味方になるよ」

 

 姿は見えなくとも間違えるはずない私の一番愛する人の声が聞こえた。すると視界に広がるのはいつもの天井。

 

「夢、か」

 

……寝汗がひどい。シャワーを浴びなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 家にある訓練場にケイ、蒼矢、伊熊、夏世ちゃんを連れてきた。

 

「今日はなにをするんだ? ケイの奴が今回は特別な訓練をするって言ってたが」

「ええ、今日は私が訓練を受け持つわ」

 

「おいおい大丈夫かよ?」

 

 伊熊が私をバカにした様な顔で見てくる。いらっとした。

 

「夏世ちゃんと伊熊。同時に来なさい。夏世ちゃんはこれ使ってね」

「これは?」

「ライフル。弾はゴム弾だけどね」

 

 反動は強いし、威力も高いから扱いには注意してほしい。まぁ夏世ちゃんなら大丈夫でしょ。

 

「木刀? なめてんのか?」

 

 伊熊が私の武器を見てにらむ。

 

「これじゃないとあなたたち大けがするから」

 

 事実を言うと少し怒ったようだ。むすっとしてるのがわかる。

 

「躊躇しちゃダメよ」

「それじゃあ、はじめ!」

 

 ケイの合図と共に伊熊が大剣を振りかぶって近づいてくる。

 

「オラッ!」

 

 私は木刀を大剣の刃のついてない部分――側面にあて剣の軌道をそらす。

 

「力を入れ過ぎ。避けられたら隙だらけだわ」

 

 剣を弾き飛ばし、がら空きになった体に突きを食らわせる。伊熊の体は衝撃に耐えきれず吹き飛んだ。

 

 さて、夏世ちゃんは――っと

 私から距離をとりこちら向かって銃を構えていた。なるほど。私が近接用の武器を取り出した時点で離れたのか。

 夏世は一瞬の硬直の後引き金を引いた。

 

「狙いはいい、でも――――」

「え?」

「”金蜂流銃弾返し”」

 

 飛んできたゴム弾を弾き返す。弾は夏世ちゃんの手前に落ちて跳ね、どこかに飛んでいった。

 

 

「撃つとき一瞬止まったわね。その一瞬が危ないのよ。そして今も隙だらけだわ」

「なるほど、やっとわかった」

 

 伊熊が何か納得したようにつぶやく。

 

「? 何がかしら?」

「いや、あの人間やめたようなやつの上司がこんな小娘で務まるのかって疑問に思ってたからな。つか、あの時の様子から分かれよ、俺」

 

 あの時というと……ああ。里見が天使ちゃんにつかみかかろうとした時のことか。あれはまぁ私も大人げなかったような気はする。

 

「ふふ、見直したかしら」

「ああ。そうだな」

 

 

「隙ありです!」

 

 

「会話に意識を向けさせ、もう一人が撃つ。なるほど悪くないわね。でも」

 

 体を右にそらしてゴム弾を避ける。また銃弾返しをしてもよかったが木刀が折れる可能性も出てくるしね。

 

「声を出すのは撃ってからにしなさい。完全に会話に意識を向けてはいないんだから」

 

 私は木刀を夏世ちゃんの銃に向けて投げた。木刀は真っすぐ飛んでいき銃に刺さって止まった。

 

「私の訓練はここまでかしら」

 

 

 

 

 夏世ちゃんが疑問を持った目をこちらに向け、質問をした。

 

「金蜂さんは何でそんなに強いのですか?」

 

 強い、ねぇ。

 

「私は強くないわ。ただ、臆病者なだけよ」

「どういう――」

「夏世! 行くぞ」

「あ! 待ってください」

 

 そう、ただ臆病なだけ。だから私は自分の敵は徹底的につぶす。一切の容赦なく。たった一人で復讐を遂げる。

 本当にできるのだろうか? 一人で戦うことは難しいことだ。自分にできるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛ちゃん? どうしたの?」

 

「え? 何がかしら?」

 

 気が付くと夏世ちゃんはいなくなり、代わりに蒼矢が近くに立って心配そうな顔をこちらに向けていた。

 

「何がって……怖い顔してたから」

「何でもないわ」

「ほんと? 体調崩してない?」

 

 そういって彼は私の額に手を当て熱を測る。 顔が熱くなるのがわかる。

 

「大丈夫、よ。だから離しなさい。手を。はやく」

 

「無茶しないでね?」

「わかってるわ」

 

 訝しげな顔をしながら蒼矢は去っていく。よかった顔を見られなくて。きっと今の私の顔は真っ赤に違いないから。

 

 

「ふふっ。さっきまで悩んでたのがバカみたい」

 

 私には味方がいる。彼がいる限り私は一人じゃない。臆病者だろうと何だろうと関係ない。

 彼が私と共にあるなら私は止まらない。金蜂凛は止まらない。

 

 

「今日の夜はトランプでもしようかしら」




次回からやっと2巻の内容に入ります

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