すいません
蒼矢達と蓮太郎たちが分かれてから少し後のこと。凛は木更と共に会議が行われているであろう防衛省に向かっていた。
「木更、用意はできているのよね?」
「ええ。しっかりと証拠をつかんだわ」
「ケイ、サラ。大丈夫だとは思うけど気を抜かないでね」
「「了解」」
「失礼するわ」
凛は勢いよく扉を開けた。
いきなりの登場に聖天子含めた全員が一瞬固まる。
「何事です!……金蜂さん!?」
「ごきげんよう、本日は皆様に見てもらいたいものがありまして。木更」
「これを」
木更は懐からとある一枚の紙をだし、聖天子に渡す
「これは、傘連判。……!」
連判状の中に書いてあった一つの名前を見て聖天子が驚く
「あら、顔色がすぐれないようですね。轡田大臣」
名前を出された轡田大臣は木更達を睨みつけ、つばを飛ばしながら叫ぶ
「こ、これは、何の冗談だ!」
「あなたの部下が持っていたものです。ずいぶんと古風ですね、直筆の傘連判なんて。まぁ、言いたいことはわかりますよね? 大臣、あなたが蛭子影胤の背後で暗躍していた依頼人ということです。」
「……この会議室内は国防を担うべく置かれた超法規的な場です!これ以上勝手な発言は許可できません」
聖天子の一言に乗っかり大臣が吠える
「そ、そうだ。貴様らは薄汚い民警の犬! さっさと帰れ!!」
喚く大臣に凛は近づいた。そして
「なんだ?文句があるなら――――」
大臣の頭をつかみ、勢いよくテーブルにたたきつけた。
「その薄汚い犬に追い詰められてんだよテメェは」
顔を強打した大臣は鼻血を出しながら凛をにらみつけるが彼女はひるまない
「納得できるような反論があるなら聞いてやる、なければその汚い口を開くな」
「ふざ「開くな、といったはずだが? ……3度目はないぞ?」……」
大臣はまだ文句がありそうな顔をしていたが口を閉じた
「木更、続けろ」
「え、ええ」
キャラが変わったような凛の態度に驚きながらも木更は話をつづける
「……聖天子様、私はこの事実を知って一刻も早くお知らせせねばといてもたってもいられずここに馳せ参じました。聖天子様もスパイを排除せねば落ち着いて議事を進めることはできないのでは?」
聖天子は少し考え、菊之丞に顔を向ける。菊之丞は頷き、警備員を呼ぶ
「連れて行け」
「そ、そんな!」
「ああ、少し待ってくれます?」
警備員に連れて行かれそうになっている大臣を止め、凛は話しかける
「大臣、あなた二日前に私の家に来ましたか?」
「……なんのことだ?」
「いえ、実はですね。二日前に私の家にあるものが届いたんですよ」
赤いリボンがあしらわれた箱を出し、この場にいる全員に見えるようにテーブルに置く。
「なんだそれは?」
「見覚えはありませんか?」
しばらくして誰かが震えた声をあげる
「以前影胤の持ってきていたものに似て……ま、まさか!」
「……中身は丁重に埋葬させていただきました」
「……だれが入っていたのだ?」
菊之丞に尋ねられ、凛は少しの間をおき答えた。
「三ヶ島ロイヤルガーターの取締役、 三ヶ島影似」
「なっ!」
「誰がやったのかはわかりません、目的も全く。大臣が犯人の可能性も考えてましたが……どうやら違うようですね。では用件は終わりましたので、私と木更は退室します」
「お待ちください!」
聖天子が出ていこうとする二人に声をかける
「すみませんがこの作戦が無事終了するまであなた方をこの部屋から出すわけには参りません」
「……しかたないわね」
凛は言葉とは裏腹に軽い足取りで聖天子の隣の席に座った。
菊之丞がそれを見て顔をしかめるが凛は気にする様子はない。
「凛ちゃんの言うとうりそういうことなら仕方がありませんね」
「木更……貴様」
怒気を含んだ低い声で菊之丞は木更をにらむ
「お久しぶりですね、天童閣下」
「地獄より戻ってきたか」
「ここに来たのは偶然にすぎませんよ。考えすぎです」
「戯言を……」
木更は氷のような目で菊之丞をにらみつける
「すべての『天童』は死ななければなりません。天童閣下」
「……二人を止めたほうがいいのでしょうか」
「大丈夫よ。いくら仲が悪くてもここでやり合うことはないはずだし、もしそうなってもサラとケイがいるわ」
「そうですね凛さん。でも時間もないので……二人とも、その辺で。……天童社長、里見ペアの勝率はいかほどだと思いますか?」
菊之丞との話をやめ木更は少し考えるそぶりを見せ聖天子の問いかけに答える
「彼が全力を出して戦うのなら30%。私の期待を足していいなら……絶対に勝ちます」木更の言葉に笑いながら反論する
「失礼だが天童社長、二十九人もの民警が殺され、あちらには『新人類創造計画』の生き残りがいる。勝ち目は30どころか10%もない」
「一人? 違いますよ」
木更の言葉に周りがざわめきを起こす。
「十年前、里見君が天童に引き取られてすぐに私の家に野良ガストレアが侵入して、私の両親を食い殺しました」
「……不幸な話だと思うが、それが何か関係あるのかね?」
「それがあるんですよ。−−−−里見君は私をかばい右手に右足、それに左眼を抉られました。その彼の執刀医を担当したのがあの室戸菫」
木更が室戸菫の名前を出した瞬間辺りがよりいっそうざわめく
「まさか!」
「頃合いですね……菊之丞さん、みなさんに彼らのスペック表をお配りしてください」
「馬鹿な! ……もう一人いるのか? ガストレア戦争が生んだ人間兵器が!」
「里見さんはカードリッジの推進力を利用した超火力。一方影胤は斥力フィールドによる絶対防御」
「絶対防御VS超人的な攻撃力。まるで最強の矛と盾の戦いね。矛盾は絶対に起きないけど」
「東京エリアの希望は彼だけです。……祈りましょう」
多分次回で一巻の内容が終わります。
二巻の内容は少しキャラ崩壊があるかもしれません
……感想お待ちしております