真・天地無用!~縁~   作:鵜飼 ひよこ。

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第141縁:僕等のポリシー。

「・・・それが子供だと言うのよ?アナタ、自分が一体何をしているのか解っているの?」

 

 木刀が折れているからではなく、一路の行動を一顧だにせずに瀬戸は応える。

 

「僕は、あんまり大人達に期待した事はなったんです。でも、とある人達に出会って、あの事件で重症を負って、死にかけて・・・新しい名前を貰った。その恩は忘れないし、少なくとも貰った名前に・・・朱螺の名に賭けて後悔するような事はしたくない。」

 

 譲れないモノの為に我が儘になる事、それは本当に、如何なるモノでも許されない事なのだろうか?

一路は思う。

 

「はぁ・・・そんな大層な名前じゃないって言ったのに。」

 

 ほんの一瞬、瀬戸の表情が困惑に緩んだような気がした。

 

「アナタ一人の為に、お友達にも迷惑がかかるのよ?」

 

 プー達の周りを闘士達が囲むのを視界の端で捉えながら、じっと考える。

 

「やれやれ、今度は樹雷だってさ。」

 

 急に自分達に話を振られたプーは照輝に目配せしながら、かじりついていた肉の骨を行儀悪く口からプッと飛ばして。

 

「しかし、何処に行っても走るか、食べる。もしくは暴れるかばかりでゴザるなぁ。」

 

 よっこいしょと二人は腰を上げる。

投げやりというより、非常に気怠げ、変な余裕すらそこにはあった。

 

「あ、いっちー、もう、なんか、ホント、コレ、定番みたくなっちゃってるから気にしないで。」

 

「本当、一体何時になったら脳筋キャラから抜け出せるでゴザるか?」

 

 二人共、本当に意に介してないように見受けられる。

素早くアウラを互いの背に庇う。

 

「これが樹雷流のやり方ですか?」

 

 瀬戸から視線を外さぬまま一路は呟く。

 

「ホントやな。坊、もっと相手を選んで喧嘩せなアカンで?それか、な?しっかりきっちり準備してからや。」

 

 鎧袖一触の緊張感の中、瀬戸と一路の間にコロコロと転がり出て来た球体。

 

「NB?僕、今大事な話を・・・。」

 

「ワシかて大事な話をしとる。全く今回の事もや、サポートロボットのサポートの域を越えまくってるっちゅーねん。」

 

 ガショッと細長い手足を出しながらNBは深い溜め息をつく。

 

「大体、交渉っちゅーのは対等な立場か、切り札を持ってやるもんやで?」

 

 ブンブンと手を振るNBの手には見慣れない棒状の・・・どう見てもスイッチが握られていた。

 

「坊、ワシがこのボタンを押したら、今一番頭に浮かんだ言葉を言ってやるんや。もう、何でもえぇで?どうせ乱闘になるのは変わらんやろ?久々にトサカにキたんやろ?しゃーないから手伝ったるわ。」

 

「・・・何をするか解らないけれど、ありがとうNB。」

 

 一路は心の中で強く呼びかける。

 

【け・ん・お・う・き】

 

-ミャオォォォォ-ンッ!-

 

 ガーディアンシステムが起動して、瞬時に一路を包んだ。

視界には【剣】の文字が浮かぶ。

エネルギー残量でもあるカウントが何故だか【∞】になっているのが少し気になったが、今はそれをあれこれと考えている暇はない。

 

「さて、全国8000万人の女子高生NBファンの皆様、お待たせしました。では、ご一緒に。あ、ポチっとな。」

 

 一路の準備に合わせて、前口上ヨロシクNBがボタンを押し込む。

 

「キャーッ!」 「うわぁぁぁッ!」

 

 次の瞬間、周囲から悲鳴が次々に上がり、プー達を拘束しようと近づいた者達を次々に弾き飛ばしてゆく。

 

「結界を張ったの?!」

 

 驚いたのは瀬戸の方だ。

樹に守られた樹雷でそんな暴挙が可能なはずがない。

そんな事を樹が許すわけ無いのだ。

 

「別に危害を加えとるワケやないしな。それにただの結界やないで?今頃、樹かて笑い転げとるやろ。」

 

 結界に弾き飛ばれた者、弾き飛ばされずとも触れた者、尚且つそれらの者に触れた者まで、その全てが・・・その何というか、所謂、下着姿だった。

 

「どや!NB様特製!武装解除結界・改、名づけて!【ウルトラ脱衣結界 脱げルンですC】の威力はァッ!なーはっはっはぁっ!」

 

 確かに相手の武力の無効化という点では間違っていないが、服が分解されただけで特に何かあるという事はない。

というより、絶対違う目的と用途で作られたとしか思えない。

 

「・・・後で没収。」

 

 アウラがすかさず突っ込む。

 

「かがみさ・・・いや、瀬戸さん。大人には通さなきゃならない理屈や筋があるのかも知れません。でも子供にだって子供なりの通さなきゃならないモノがあるんです。」

 

 そんな大人なんかいらない。

もうこうなったら、酒の勢いである。

NBに言われたように、その時に頭に浮かんだ言葉を言いたいだけ投げつけてやるしかない。

一路の頭に浮かんだのは、樹雷に来てから言われ続けたフレーズだった。

 

 

 

 

 

 

「このっ、分からず屋のクソババァッ!!」

 

 


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